2026/03/24

このブログの読み方

札幌市オンブズマンによる調査内容を紹介するこのブログ、平成28年(2016年)4月以降に調査を終了した案件を紹介しているが、本ブログの開設者としては、このような作業には、主として以下の3つの意義があると考えている。

(1)オンブズマン「活動状況報告書」に掲載されない案件を紹介する
(2)オンブズマン「活動状況報告書」に掲載されない「市の回答」部分を紹介する
(3)「活動状況報告書」が発行されるよりも早くオンブズマン調査の内容を紹介する

以上を目的として、各月ごとに、調査を終了した案件を紹介するエントリーを作成してきた(なお、ブログ開設の意図については、「札幌市オンブズマン観察記はじめます」において、より詳しく説明している)。

しかしながら、このような紹介方法ではインデックス機能が弱く、同種の内容の苦情調査であっても、その終了月が異なる場合には両者を比較するのは困難であった。そこで、各年度に終了した調査を分野別に分類するエントリーを作成したものの、こうしたエントリーもまた、各月ごとのエントリーに埋没することが懸念されるところである。

以上のことから、このエントリーでは、これまで作成したエントリーを類型別に整理することで、読者の利便性を高めることを試みる。

各リンク先では、苦情の概要を紹介し、調査結果通知書等の全文のpdfファイルのリンクを張り付けてある。また、各月ごとに調査を終了した案件を紹介するエントリーにおいては、調査結果通知書等の1枚目の画像データも掲載してある。

読者諸氏においては、本ブログで紹介するデータを通じ、札幌市オンブズマンの活動状況を「観察」していただきたい。

〇オンブズマン調査の分野別分類
 平成29年度(2017年度)終了分
 平成28年度(2016年度)終了分

〇オンブズマン調査の調査終了時期別リスト
・2025年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月、1月、2月、3月
・2024年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2023年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2022年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2021年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2020年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2019年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・平成30年度(2018年度)
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・平成29年度(2017年度)
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・平成28年度(2016年度)
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月

〇オンブズマン調査の処理日数の状況

 ・年度別
  2022年度まで(最新版)

2026/03/23

「札幌市オンブズマン制度」についてのアンケート結果が公開される

札幌市では2021年度以来、「インターネットアンケート調査」を実施するようになった模様である。2025年度に実施したアンケートの結果はここから確認できるが、「札幌市オンブズマン制度」がテーマの一つとして設定されている。アンケートは、15歳以上の札幌市民500名を調査対象として、全25問のクローズ型のインターネットアンケートとして実施された。調査期間は、2025年9月11日~14日である。

このアンケートの特に「おもしろい」ところは、オンブズマンの調査結果が誰でも入手できることや、調査結果をwebで公開することについての質問項目が設定されていることである。つまり、当ブログ開設者が公文書公開請求で情報を収集することや、その結果を当ブログで公表すること自体に対する「市民の声」が可視化されているのである。当ブログ開設者は目がくぎ付けになった。それでは、アンケート結果をみていこう。


まず、Q12.では「調査結果を請求により誰でも入手できること」が問われている。回答は、「とても良いことだと思う」(21.0%)、「どちらかといえばよいと思う」(23.6%)と、半数近く(44.6%)が肯定的に受け止めている。これに対して、「どちらかといえば好ましくない」(6.2%)、「好ましくないと思う」(4.6%)という否定的見解は(10.8%)にとどまっている。

次に、Q13.は、「調査結果を入手した第三者がその内容をインターネットやSNSに掲載すること」が問われている。回答は、「とても良いことだと思う」(6.4%)、「どちらかといえば良いことだと思う」(12.8%)と、肯定的評価は2割弱(19.2%)であった。

これに対して、「どちらかといえば好ましくないと思う」(19.4%)、「全く好ましくないと思う」(24.2%)という否定的評価(43.6%)は、肯定的評価(19.2%)を大きく上回っている。このような回答は、当ブログにおいてオンブズマンの調査結果を紹介することは、必ずしも市民から肯定的に評価されない可能性を示している。

しかしながら、アンケートの結果は別の傾向も示している。それは、「実際の事例」を明らかにするニーズの存在である。

まず、Q19.では「今後オンブズマン制度をもっと知ってもらうために今一番重要だと思うこと」が問われている。そして、「実際の利用事例の紹介」という選択肢が13.2%(SA)から選ばれている。

また、Q22.では「25周年をきっかけに制度や広報に期待すること」が問われており、「実際の事例をもっと紹介してほしい」という選択肢が31.0%(MA)、Q23.では「オンブズマン制度の今後の方向性として必要だと思うこと」が問われており、「調査結果をわかりやすく公開する」という選択肢が31.8%(MA)から選ばれている。

したがって、このような回答は、個別案件を紹介することに対する一定のニーズがあることを示していると思われる。その一方で、当ブログ開設者のような「第三者」が公文書公開請求を通じて「実際の事例」や「調査結果」を紹介することはあまり歓迎されておらず、「実際の事例」や「調査結果」を紹介するにしても、それは制度運用者側が行うべきだというのが市民の受け止め方だと評価できるかもしれない。

ただし、留意すべき点もある。それは、アンケート回答者が現在、オンブズマン調査の「実際の事例」や「調査結果」がどのように紹介されているか、どの程度認識したうえで回答しているか、必ずしも明らかではないからである。

すなわち、毎年度公表される「札幌市オンブズマン活動状況報告書」に一部の案件が掲載されていることや、当ブログにおいて個別案件が(批判的に)紹介されていることは、必ずしも広く認知されていない可能性があるということである。この点、いささか自嘲的であるが、アンケート回答者が当ブログの存在を知って回答した場合、「否定的評価」がさらに高まる可能性があると当ブログ開設者は考えている。

ところで、当ブログ開設者は、「札幌市オンブズマン観察記はじめます」と題するエントリー(リンクはここ)において、当ブログの目的を以下のように論じている。

(1)オンブズマン「活動状況報告書」に掲載されない案件を紹介する
(2)オンブズマン「活動状況報告書」に掲載されない「市の回答」部分を紹介する
(3)「活動状況報告書」が発行されるよりも早くオンブズマン調査の内容を紹介する

そして、2016年(平成28年)4月に調査を終了した案件の公開請求を皮切りに、公開を受けたオンブズマンの調査結果等を当ブログで紹介してきたわけである。余談ながら、この3月(2026年3月のことである)に処理を終了した案件の請求を完了すると、まる10年分の調査について公開請求を行ったことになる。われながら、よくぞここまで継続してきたものである。

また、当初は案件を紹介することに主眼を置いてきたが、近時は調査そのものに対する批判を加える傾向が強まっている。それは、調査担当オンブズマンが苦情対象となった制度について、理解が十分でないと思われる案件が見受けられるからである。

こうした傾向は、当ブログ開設者が札幌市オンブズマン制度の究極的な存在意義を「住民自治の実質化」であると考えるとともに、この制度が「適切な説明を受ける利益」を実現する制度として独自の存在意義がある、という制度理解に基づいている。

すなわち、適切な制度理解があればもっと異なるオンブズマン判断もありえるのではないかということ、そして、適切な制度理解に基づくオンブズマン判断は「市政の改善」につながる可能性を高めると、当ブログ開設者は考えているのである(なお、当ブログ開設者の「札幌市オンブズマン」制度の理解については、さしあたりこのエントリーを参照されたい)。

もっとも、上述の「ブログの目的」はあくまで「表向き」の理由である。当ブログ開設者が、オンブズマン調査に関する文書について公文書公開請求をするとともに、公開された文書を当ブログで紹介することに踏み切ったのは、「オンブズマンの調査内容を公開すること」によって、それを嫌う申立人が苦情申し立てを忌避する「抑制効果」が生じるのではないかと、問題提起するためであった。そして、そのような問題提起をするためには、抽象的な指摘よりも「実際の請求」を行うのが効果的だと考えたのである。

こうして10年が経過した。前述のように、当ブログ開設者は、もともとオンブズマンの調査内容を公開することにより「抑制効果」が生じることを懸念していた。しかしながら、実際に公開を受けることで、当初の想定とは別の「意義」を発見することになった。

すなわち、上述の「表向き」の(かつ抽象的な)ブログの目的は不変であるが、実際に調査内容を記録した文書の公開を受けることで、市民の生活を支えるために市職員が「縁の下の力持ち」として職務を遂行する姿が見えてきたのである。これは当ブログ開設者にとって、大きな収穫であった。また、そうであるからこそ、当ブログ開設者が公文書公開請求を継続してきたといえるかもしれない。

以上の次第で、今回のアンケート結果をふまえると、制度運用側は、オンブズマンの調査結果を現在よりも積極的に公表する必要があると、当ブログ開設者は考えている。その一方で、オンブズマン調査についての「公文書公開請求」も閉ざされるべきではない。それは、制度運用側から公表される情報は制度運用側にとって「都合がよい」情報に限定される可能性があるほか、そもそも「市民の知る権利」の実現は「住民自治」の第一歩だからである。

それでも、オンブズマンの調査内容を公表することは、それにより、苦情申し立ての「抑制効果」が生じることは考慮する必要があるだろう。したがって、オンブズマンの調査内容について「第三者」からの公文書公開請求がなされた場合、制度運用側からの公表(「活動状況報告書」の公表を想定している)がなされるまで、調査内容を記録した文書の公開を控えることも検討されるべきである。

この点、札幌市情報公開条例は、「事務又は事業の性質上、公にすることにより、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」(同条例7条4号ク)を非公開情報としている。したがって、オンブズマン調査が終了したのち一定期間は、公開することで苦情申し立てに対する「抑制効果」が生じる可能性を考慮し、この号に基づき調査結果を非公開とする一方で、制度運用側から調査内容が公表されて以降は「事務または事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」がないという取り扱いをするわけである。

なお、同条例には次のような定めもある。「公開請求に係る公文書の全部又は一部を公開しない旨の決定(中略)をした場合において、当該公文書の全部又は一部についての公開が可能となる時期が明らかであるときは、実施機関は、その旨をこれらの規定による書面に付記しなければならない」。この規定は、制度運用側からオンブズマン調査を公表するまでは「非公開」とする扱いの根拠となると思われる。

また、以上の取り扱いは、オンブズマンの調査内容を記録した文書については、「事務事業情報」(同条例7条4号ク)の記載を理由として「非公開決定」をするということ意味するのみである。制度運用側からの調査内容が公開されて以後も、「特定個人識別情報」(同条例7条1号)等に該当する情報は「非公開」とすることは当然である。

2026/03/21

2025年12月に処理を終了した案件

 2026年1月1日、2025年12月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、2026年2月13日に一部公開決定がなされた。

上記の期間(2025年12月)に処理を完了したのは7件で、このうち4件で調査結果が通知された。また、残る3件のうち、2件については苦情について調査しない旨が通知され、1件については苦情申立ての取下げという取り扱いがなされている。

1.梶井祥子にオンブズマンの職務は「荷が重い」(その3)
前月(2025年11月)に調査を終了した案件を紹介する前回のエントリーで(その1)(その2)を論じたが、今回の公開分は(その3)。やはり、「梶井祥子にオンブズマンの職務は『荷が重い』」ようである。

今回公開分においても、梶井祥子は札幌市オンブズマン条例の「調査対象外事由」の規定が「オンブズマンの負担が荷重になること」を避けるために設けられた規定である旨の見解を披歴している(また、「本来の利害関係人の意思にそぐわない申立てがなされる事態を避ける」という見解も披歴している)。こうした見解については、すでに前回のエントリーで批判しているので繰り返さない。

むしろ、今回公開分で「梶井祥子にオンブズマンの職務は『荷が重い』」ことを痛感した案件は、「障がいのある方を対象とした札幌市職員選考」の応募者が、試験当日に担当職員から補聴器を外すよう求められて受験を断念したことを理由として申し立てられた苦情である(第2025-76号)。

苦情申し立て後の顛末は通知書で確認していただくとして、本件苦情は、当該選考試験に際し市が障害者差別解消法7条2項が規定する行政機関に求められる「合理的配慮」を具体的にどのように行っているのかということや、市の障害者雇用促進法が規定する法定雇用率の達成状況(同法38条~40条参照)などについて、当ブログ開設者は興味を抱くことになった(札幌市における2025年6月1日現在の法定雇用率の達成状況は以下の画像データのとおり)。
また、2025年度の採用選考案内によると、採用予定数は「一般事務」「学校事務」とも1~2名程度とされており、なかなかの「狭き門」の模様である。

さて、この案件担当の梶井祥子は、オンブズマン判断の「(4) おわりに」において、札幌市の「ユニバーサル展開プログラム」や、「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン(2023~2031年度)」の2件の行政計画について言及している。

この点、梶井祥子は「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン」を策定する「審議会」の副会長を務めていたようだ。どうやら、オンブズマンの地位を利用して、自らが関与した行政計画の宣伝をしようとしたか、当該行政計画についての「知ったかかぶり」をしようとしたものと思われる)。

しかしながら、上述の障害者差別解消法が規定する「合理的配慮」や、障害者雇用促進法が規定する地方公共団体の法令上の義務について言及しなかった(「市の回答」には、「受験上の配慮の申出」を受けている旨の記述あり)。当ブログ開設者が、「梶井祥子にオンブズマンの職は荷が重い」と感じる所以である。

2.前提となる「制度」を知らないと振り回されることになる
現在、国レベルで「給付付き税額控除」の議論が始まったところであるが、今回公開分の第2025-65号は、2025年度に実施された「定額減税給付金」についての苦情である。申立人は、給付額が不足すること、また、問い合わせた際の案内が不正確であるとして、苦情が申し立てられた。

この案件も、制度の詳細については通知書を参照されたいが、前提となる「制度」を理解していると、必要な「手続き」の意味も理解できるところ、前提となる「制度」を理解しないまま「手続き」を取ることになると「振り回された」印象を抱くことになると思われる。また、実際に適切な手続きを取っていなかったために、苦情申し立てにつながることになった。

おそらく申立人は、過去の納税額の還付を申告する手続きと「定額減税給付金」受給のための手続きや、「国税」の手続きと「市税」の手続きの違いについて、明確に認識できていなかったと思われる。前提となる「制度」への理解を欠いたが故の不幸であると当ブログ開設者は考えている。

ただし、制度を存在を前提とすると、所定の手続きを取ることが当然視されることになるものの、過度に制度が複雑化したために必要な手続きそのものが不明確になることは、過去のオンブズマンに対する苦情から明らかである。制度や手続きの周知のあり方、さらに、前提となる制度設計のあり方は「永遠の課題」かもしれないが、当ブログ開設者は、市民の苦情が制度の周知や制度そのものの改善につながる契機となることを期待している。

3.複数回の申立てをする「超上客」をいかに「おもてなし」すべきか(その3
前回のエントリーで「複数回の苦情を申し立てる『超上客』へのおもてなしのあり方については、次回のエントリーでも取り扱うことにしたい」と論じた。それは、今回公開分の第2025-79号がまさにそうした案件だからである。

本件苦情の申立人は、前回のエントリーで紹介した第2025-74号において、市の担当課からの回答が「双方の主張に食い違いがあり、当時の記録が存在しないため判断できない」ということに不満を述べる一方で、「私が市に対して行ってきた複数の苦情申し立てに関し、『双方の主張が食い違い、記録がないため判断できない』という同一の理由により、すべてが実質的に判断不能として処理されている現状」について改善の必要性を訴えていた。

こうした主張からは、申立人が「担当課」と「オンブズマン」を混同していることが疑われたが、今回公開を受けた本件第2025-79号の記述から、申立人はオンブズマンに対する苦情申し立てのほかにも、「人事課」にも対応を求め、その対応に不満を抱いたことにより苦情が申し立てられたことが判明することになった(前回のエントリーにも記述したところである)。

本件担当オンブズマン神谷奈保子(今般の申立人の複数の申立ても担当している)は、本件の「調査しない理由」において、①申立人が人事課からの回答に不満を覚えて本件苦情を申し立てたこと、②申立人の当初の不満である担当ケースワーカーの対応についてはすでにオンブズマンが「前回調査」(第2025-57号)を実施していること、③『前回調査』において、オンブズマンは「双方の主張に食い違いがあり」「事実を確認することができず、本件ケースワーカーの行為が個人情報保護及びプライバシー尊重の観点に照らし不適切であるかどうかを判断することができません」という判断をしていることについて言及した。

こうした「事実関係」の整理は、複数回の苦情申立てがなされたケースにおいて、論点を明確化するために一定の意義を有することは間違いない。しかしながら、そのことがかえって、本件申立人の場合には、論点や対応を求める担当部局を拡散させることに「一役買う」結果になることを当ブログ開設者は懸念する。

そうすると、ケースによっては、オンブズマンが申立人の苦情申立ての論点を「ピンポイント」で絞り込み、その点についてオンブズマンの見解を示すことに徹するほうが「おもてなし」として適切なケースもあるのではないかと当ブログ開設者は考えている。

なお、当ブログ開設者は、市職員の対応に不満を抱いた市民が当該職員に懲戒処分を課すことを求めて「人事課」に情報提供した場合、人事課の対応の原理原則に興味があるが(一般論としては、懲戒処分の要否を判断するのは当該職員の直近の上長の模様である)、オンブズマンがこの点について調査するとなると「収拾がつかない」ことになりそうである(ので、やめておいたほうがいいだろう)。

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①第2025-65号
 令和7年度の定額減税補足給付金の申立てをしたが、必要書類の提出がないとして認められなかったことに納得がいかないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:樋川恒一)

②第2025-72号
 生活保護を受給する申立人が収入申告書を提出しに行った際、担当職員が不在のため担当外に職員が申立人に対応したところ、当該担当外の職員の対応に恐怖を覚えたとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:樋川恒一)

③第2025-76号
 「障害のある方を対象とした札幌市職員採用選考」の試験当日に補聴器を外すことを求められ、試験の受験を断念することになったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

④第2025-77号
 生活保護を受給する申立人が、担当ケースワーカーの一連の対応に不満があるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑤第2025-79号
 (申立人に対応した市職員の対応について申立人が人事課に不満を伝えたことを契機とする)人事課による市職員の対応に関する調査は、(市とは別組織である)社会福祉協議会への調査を行っていない点で不備があるとして、このような人事課の対応についてオンブズマンによる調査を求めて苦情が申し立てられたケース。本件苦情はすでにオンブズマンが実施した調査(第2025-57号)と同内容と思われるとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑥第2025-81号
 定期券で市電に乗車している申立人が車内の清掃状況について電車事業所に連絡したところ「4~5日おきに清掃している」という回答を受けたが、日常的に汚い状態で運転していることをオンブズマンにも確認してほしいとして苦情が申し立てられたケース。申立人に直接的な利害関係があるとはいえないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑦第2025-83号
 (おそらく市立体育館で何らかのスポーツの教室の講師を務めていた申立人が当該教室の運営担当者から教室閉鎖を言い渡されたために)当該担当者の処分と教室の継続を求めて苦情が申し立てられたケース。本件苦情がオンブズマンの調査対象事項であることを伝えたところ、申立てを取り下げる意向が確認された。(担当オンブズマン:樋川恒一)

2026/03/19

2025年11月に処理を終了した案件

 2025年12月1日、同年11月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、2026年1月14日に一部公開決定がなされた。

上記の期間(2025年11月)に処理を完了したのは11件で、このうち4件で調査結果が通知された。また、残る7件のうち、6件については苦情について調査しない旨が通知され、1件については苦情申立ての取下げという取り扱いがなされている。

1.梶井祥子にオンブズマンの職務は「荷が重い」(その1)
今回の公開分、写しの交付を受けてからこのエントリーを公開するまでにいつも以上時間がかかることになったのは、論ずべき点が盛りだくさんになったためである。そのうち、まず第一に指摘しておくべきことは、この3月からオンブズマン2期目に入った梶井祥子にとって、オンブズマンの職務は「荷が重い」のであろうことである。論より証拠、「苦情について調査しない旨の通知書(第2025-66号)において、梶井祥子は「オンブズマンの負担が荷重になる」旨の見解を示している。

この「荷重」という文字、業務が過重であるがゆえ梶井祥子が誤字に気づかなかったものと思われる。おそらく「オンブズマンの負担が過重になる」と書きたかったのであろうが、些細な誤字に気づかないオンブズマンがより重大だが難解、本質的だが複雑な市政の課題をそれと認識できるのか、疑問を抱かざるを得ない。

実際、この案件において、梶井祥子は札幌市オンブズマン条例が定める調査対象外の事項について、「本来の利害関係人の意思にそぐわない申立てがなされる事態を避けるために設けられている」という見解を示している。

しかしながら、条例が定める調査対象外の事項は、当該事項に該当する苦情が申し立てられた場合においてオンブズマンが当該苦情を調査しない根拠となるに過ぎない。したがって、「調査対象外の事項」を定めることが申立てを抑止することができるものではなく、抑止効果があるとすれば、それは「調査対象外の事項」を周知した結果であろう。

この点、札幌市オンブズマン条例は、「何人も、オンブズマンに対し、市の業務について苦情を申し立てることができる」(札幌市オンブズマン条例14条)ことを規定している。したがって、ひとたび苦情が申し立てられた場合、オンブズマンは条例が定める権限の範囲内で対応していくことになる。

また、梶井祥子のいう「本来の利害関係人」という記述もその趣旨は不明である。前述のように、何人もオンブズマンに対し苦情申立てができるのである。その苦情がオンブズマン所轄事項でない場合を含めて、「調査対象外の事項」である場合、オンブズマンは当該苦情に関する調査を実施しないことになる。

なお、この案件の苦情申立人は、過去に苦情を申し立てた(第2022-12号)「その後」の市の対応について、苦情を申し立てている。こうした場合において、「オンブズマンが一度調査して結果を通知している」ことは、そのこと自体が調査をしない理由とはならないと思われる。それは、調査を終了した後の「新たな事実」に基づいて苦情が申し立てられたと評価することができるからである。

以上のように、梶井祥子による札幌市オンブズマン制度の理解ははなはだ心もとない。「梶井祥子にオンブズマンの職務は『荷が重い』」と論ずるゆえんである(なお、今回公開分は2025年11月に処理を終了した案件であるが、梶井祥子は翌2025年12月終了分においても、「オンブズマンの負担が荷重になる」という見解を披歴している)。

2.梶井祥子にオンブズマンの職務は「荷が重い」(その2)
のみならず、今回公開分のうち、梶井祥子が調査を実施した別の案件(第2025-50号)も、梶井祥子にオンブズマンの職務は「荷が重い」と感じさせるものである。

この案件は、サービス付き高齢者住宅に入居していた申立人が施設で提供される食事を取らなかったにもかかわらず施設が当該サービス利用料の返金に応じないことを苦情申立ての前提とする案件である。そして、申立人は市が施設に返金を指導することを求めたにもかかわらず適切な対応がなされないとして、オンブズマンに苦情を申し立てた。

このような場合、市は施設に対し、法令等が定める基準が順守されているかを監督する権限を有する。その一方で、契約上のサービスが適切に提供されているか否かという問題については、基本的に関与できないことになる。

それは、事業者による法令順守と契約上の義務の履行はその実現を図るためのシステムが異なり、市の権限は前者を監督することであり、後者の契約上の義務の履行については、市の権限の範囲外になるからである。したがって、市が申立人が望むような対応をしなかったとしても、市の権限行使という観点からは、やむを得ないことになる。

ただし、このような場合にも、都道府県社会福祉協議会の「運営適正化委員会」による「苦情解決」の制度は、施設とサービス利用者間の紛争解決のために利用可能である(社会福祉法85条)。オンブズマンも「その職務の遂行に当たり、市民の権利利益を擁護し、並びに市政を監視し、及び市政の改善を図る他の諸制度と有機的な連携を図ることなどにより、その役割を効果的に果たすよう努めなければならない」(札幌市オンブズマン条例5条2項)ことからすると、オンブズマンは「運営適正化委員会」による「苦情解決」の制度を申立人に紹介することが期待されると当ブログ開設者は考えている。

しかし、残念ながら梶井祥子が上記の「紛争解決」の制度について言及することはなかったが(「事業の経営者による紛争解決」(社会福祉法82条)について言及するのみである)、梶井祥子は「札幌市社会福祉協議会会長」の肩書も有するようである。

「札幌市」社協の会長の肩書を有するにもかかわらず、「北海道」社協が設置する制度については知見を欠いていたということであろうか。仮にそうならば、当ブログ開設者は、梶井祥子にオンブズマンの職は「荷が重い」という思いを抱かざるを得ない(なお、オンブズマンと市社協会長の兼職は、「オンブズマンは、市と特別の利害関係を有する法人その他の団体の役員を兼ねることができない」と規定する札幌市オンブズマン条例9条2項との関係でも議論の余地がある)。

3.「フリーペーパー」の扱いはどうなる?
次は、市が管理する公園内で写真撮影をする際に「利用料」の支払いを求められたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられた案件である(第2025-39号)。この案件では、他の自治体における取り扱いを丹念に調査している点が興味深い。担当オンブズマン樋川恒一の「ファインプレー」かもしれない。

ただし、当ブログ開設者は、市条例が「業として写真を撮影する場合」には許可を得るとともに使用料の支払いを要することを規定している点について、市の回答への疑念を抱いている。それは、「有料刊行物に掲載するための撮影もこれに該当する」という記述があるからである。こうした記述は、広告収入に基づいて発行される「フリーペーパー」の取り扱いがあいまいになるきらいがあるのではなかろうか。

この点、調査担当オンブズマン樋川恒一も、どのような場合が「業として写真撮影をする場合」となるのか基準が明確でないとして、市に基準の明確化を求めている。このようなオンブズマン判断は、市の主張を鵜呑みにすることなく、オンブズマンの果たすべき役割を適切に果たしていると評価できると思われる。

惜しむらくは、苦情申し立てから調査結果通知書の発送まで、3か月以上かかっていることである。さすがに時間がかかりすぎという印象をぬぐえないが(調査実施通知書の発送からも2か月半程度要している)、オンブズマンが調査に習熟するにしたがい、迅速化が図られることを期待したい。

4.「会計年度任用職員」の任用手続きについて
さきほどの案件では樋川恒一オンブズマンの「ファインプレー」を紹介したが、こちらの「会計年度任用職員」の任用手続きに関する案件(第2025-71号)は、樋川恒一オンブズマンの「凡プレー」といえるかもしれない。

申立人は、会計年度任用職員の選考を一括で行わないことに対し苦情を申し立てた。現状、札幌市における会計年度任用職員の選考は、部署ごとの個別の対応になっているようだ。

この点、調査担当オンブズマン樋川恒一は、「本件申立ては、他の応募希望者も同様の取り扱いを受ける会計年度任用職員の『選考』という採用方法を問題としていることに鑑みると、他の応募希望者とは異なる申立人自身の利益にかかる事案とは認められません」という見解を示し、調査を実施しなかった。

しかし、である。申立人の調べたところによると、他の自治体では会計年度任用職員の選考を一括で行っているところもあるそうだ。このような運用がなされている場合、応募者は一度の応募で手続きを完了することができるのに対し、札幌市のように部署ごとの対応であれば、応募者は選考に漏れるたび、再度の応募を余儀なくされることになる。

調査担当オンブズマンの樋川恒一は、他の応募者も同様の取り扱いになるために申立人がことさら他の応募者より不利益な取り扱いを受けているわけではない、という見解のようである。しかしながら、当ブログ開設者は、「一括選考」しない理由の説明を受けること自体に「申立人の利害」が認められるべきだと考えている。

むしろ、調査担当オンブズマンの樋川恒一が従来の札幌市オンブズマン制度の運用と平仄をあわせるならば、「申立人が実際に複数回の応募を余儀なくされた事実は存在しない」ため「具体的利害」がない、という理由で調査しないほうが適切であったかもしれない(ただし、前述したように当ブログ開設者は、「説明を受けること」自体に「利害」があると考えている)。

5.行政内部文書と「保有個人情報の訂正請求権」
今回公開分にはもう1件、樋川恒一オンブズマンの「凡プレー」を疑われる案件がある。それは、市職員が申立人に対応した際の記録(公文書)に誤字があることを申立人が指摘した際の職員の対応について、苦情が申し立てられた案件である(第2025-73号)。

調査担当オンブズマンの樋川恒一は、当該公文書が「対外文書ではなく、対内文書であり、あくまで担当課での内部報告のため作成された文書である」として、「当該対応記録に誤字があったからといって、申立人に不利益が発生しているとは認められず、この点について申立人は利害を有しない」と判断した。

しかし、である。「個人情報保護法」は、行政機関の「保有個人情報」(同法60条1項)について、本人の「訂正請求権」を規定している(同法90条1項)。したがって、行政内部文書の記載が「保有個人情報」に該当する限り、当該文書に誤字があったとしても「申立人に不利益が発生してい(ない)」というオンブズマンの判断は、この「訂正請求権」の意義を没却すると思われる。

むしろ論ずべきは、申立人が本件苦情で申し立てた内容がオンブズマン制度を通じて実現すべき「利害」として適切か、という点ではなかったか。「誤字に対しての詫び、第三者(承認)を交えての面会を求める」等の申立人の主張は、いささか過大だという印象を禁じ得ないからである(ただし、当ブログ開設者の制度理解に基づくと、オンブズマンは「申立人の主張」の当否ではなく、「行政対応の適否」を判断すべきである。したがって、こうした印象論の適否については別途、議論の余地がある)。

6.複数回の申立てをする「超上客」をいかに「おもてなし」すべきか
今回のエントリーは、公開対象公文書の写しの交付を受けてからエントリーを公開するまで、およそ2か月の時間を要した。これから紹介する第2025-69号第2025-74号の2件をどのように紹介するのが適切か、頭を悩ませたこともその理由の一つである。この2件はいずれも、2025年10月に処理を終了した案件を紹介するエントリーで、「札幌市オンブズマン制度にとっては『超上客』であろう」と論じた申立人による苦情である(いずれの案件も、「苦情について調査しない旨」が通知されている)。

ところで、同一の申立人による複数回の苦情申立てがなされた場合、オンブズマンの取扱件数がかさ上げされたため、対外的にはオンブズマンが活発に活動を行っているような外観を呈することになる。しかし、同一の申立人による繰り返しの苦情申し立ては、オンブズマンの負担が過重になることは否定できないであろう(ただし、オンブズマンによるその旨の泣き言の適否については、別途論じる必要がある)。

その一方で、同一の申立人が繰り返しオンブズマンに苦情を申し立てることは、オンブズマンに対する「信頼」の証明であるという評価もできるかもしれない。なぜなら、オンブズマンをまったく信頼できないならば、苦情を申し立てることすらしないであろうからである。そうでなくても、改善は期待できないとしても、せめてひとこと、文句を言っておきたいというはけ口としてオンブズマンが選択される可能性はあるかもしれない。

それでは、具体的な検討である。上記2件の申立人は、過去に複数回の苦情を申し立てているが、まず第2025-69号では、調査時の担当部局によるオンブズマンへの回答が事実に反するものであるとして、再度担当部局から市社協に照会するようオンブズマンが担当部局に対する指導を求めて苦情が申し立てられた。

この案件で興味深い点は、申立人が「ケースワーカーに対し、個別具体的な貸付制度の確認を依頼した事実はありません」と主張していることである。これに対し、担当部局は先行案件(第2025-57号)で、「社協へ申立人の名前及び困窮している理由を説明したうえで問い合わせました」と回答し、調査担当オンブズマンもこの点を問題視することはなかった。

しかし、当ブログ開設者は、先行案件について、「本件のように申立人からの依頼があったような場合においても、ケースワーカーは申立人に対し、①社協に対する問い合わせは一般論としての問い合わせか、それとも申立人の具体的な事情に基づく問い合わせか、②申立人の具体的な事情に基づく問い合わせの場合には、申立人の個人情報を社協に説明することは差し支えないか、確認するのが適切であった」と当該案件を紹介するエントリーで論じたところである。

上記の指摘は申立人の不満にも通じると思われる。すなわち、先行案件でオンブズマンがこの点の指摘をしていれば、本件苦情申し立てはなされていなかったかもしれないからである。「超上客」のおもてなしとして、不十分だったのではあるまいか。

続いて、第2025-74号である。この案件では、申立人が「札幌市が組織全体として改善に取り組むよう、オンブズマンが助言や指導をいただければと強く希望している」として、申立人から「意見書を提出する」という名目で苦情が申し立てられた。申立人のオンブズマンに対する「信頼」が垣間見えるといえるかもしれない。なお、担当オンブズマンは、申立人に具体的な利害が発生していないという理由で調査をしない旨を通知した。

さて、この案件で興味深いのは、申立人が「現状の問題点」として、「私はこれまで4~5件の苦情申し立てを行ってきたが、市の担当課からの回答は、すべて『双方の主張に違いがあり、当時の記録が存在していないため判断できない』というものだった」と主張している点である。

ここでいう「苦情申し立て」とはオンブズマンに対する苦情であると思われる。しかしながら、申立人の苦情と当ブログ開設者が特定できた範囲では、「市の担当課からの回答」が「双方の主張に違いがあ(る)」という記述のある案件は見当たらなかった。むしろ、「双方の見解が異なっており、事実関係を確認できない」旨の言及は、オンブズマン判断の常套句かもしれない。たとえば、前述の第2025⁻69号にも、「その場にいないオンブズマンには事実を確認することができず、本件ケースワーカーの行為が(中略)不適切であるかどうかを判断することができません」という記述がある。

そこで、当ブログ開設者は、申立人が「市の担当課」と「オンブズマン」を混同しているのではないかと疑ったが、どうやらそうではなかったようだ。それというのも、今回の2025年11月終了分のエントリーの公開が遅々として進まない一方で、同年12月分の写しの交付を受けたところ、この案件の申立人による別件の苦情(第2025-79号)の存在が判明したからである。その案件において、申立人は市の職員課の対応にも苦情を申し立てている(この案件は、また次回のエントリーで紹介することにしたい)。したがって、申立人は「市の担当課」と「オンブズマン」の区分はできているようであった。

もっとも、、自らの不満が適切に対処されない不満を抱く市民がその不満を拡散させ、複数の部局に不満を伝えるのは、典型的な行動パターンの一つといえるかもしれない。ただし、あくまで当ブログ開設者が抱いた印象である(その典型的な受け皿が「市民の声を聞く課」である)。

なお、複数回の苦情を申し立てる「超上客」へのおもてなしのあり方については、次回のエントリーでも取り扱うことにしたい。ただし、オンブズマンには荷が重いかもしれない。そして、当ブログ開設者は気が重い。

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①第2025-39号
 市が管理する公園内での写真撮影について、当該撮影が小冊子に掲載する公園紹介記事に利用するためのものであったとしても「使用料」の支払いが必要であること等について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:樋川恒一)

②第2025-50号
 サービス付き高齢者住宅の入居者が食事提供を断ったにもかかわらず事業者に支払った食事代の返還がなされないとして市の担当課に対応を求めたが、「役所には仲介する権限はない」として担当課による事業者への対応がなされないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

③第2025-51号
 札幌市電を定期券で利用している申立人が、イベントが開催されるたびに一部区間が運休されることを不服として苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

④第2025-58号
 生活保護を受給する申立人が、入居する居宅の修繕のために一時的に転居するための費用を保護費として支給することをを求める申請が妨害されたり、所持する金銭を保護課に申告するよう求める文書が送付されてくる等、一連の保護課の対応に納得がいかないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑤第2025-66号
 月寒体育館の利用状況に関して過去にオンブズマンに苦情を申し立て、調査結果を踏まえて担当課と協議したが、その際に決定された対応が徹底されていないとして苦情が申し立てられたケース。「オンブズマンが一度調査して結果を通知した事項」は「オンブズマンの行為に関する事項」(札幌市オンブズマン条例3条6号)に該当するとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑥第2025-67号
 生活保護受給者が現在居住する住居から退去を求められる可能性があるとして転居費用の支給を求めたが断られたとして苦情が申し立てられたケース。担当課に確認したところ転居費用が支給ずみであるとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑦第2025-69号
 オンブズマンの調査結果通知書を受領したが(おそらく第2025-57号)、オンブズマン調査に対する市の回答は事実と異なる点があるとして、市が事実関係を(申立人が訪問した際に対応に不信感を抱いた)社会福祉協議会に確認するようオンブズマンが市に対し助言または勧告することを求めて苦情が申し立てられたケース。「オンブズマンの行為に関する事項」はオンブズマンの所轄外であるとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑧第2025-70号
 生活保護受給者の生活品の移送を請け負ったがその対価が支払われていないとして、担当者から受給者に支払うよう伝えてほしいとして苦情が申し立てられたケース。オンブズマンから担当課と話し合うよう伝えたところ、苦情申立てが取り下げられた。(担当オンブズマン:樋川恒一)

⑨第2025-71号
 札幌市においては会計年度任用職員を各部署で個別に任用しているが、他の都市では一括で採用しているところもあるとして、一括募集ではない理由の説明を求めて苦情が申し立てられたケース。会計年度任用職員の「選考」という採用方法は、他の応募者とは異なる申立人自身の利益にかかる事案とは認められないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:樋川恒一)

⑩第2025-73号
 市職員と申立人の対応記録に誤字があったことに関し、その後の市の対応が不十分であるとして苦情が申し立てられてケース。対応記録は申立人のために作成された文書でなく内部報告のために作成された文書であり、対応記録に誤字があったからといって申立人に不利益が発生しているとは認められないとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:樋川恒一)

⑪第2025-74号
 申立人が市職員の対応について担当課に苦情を申し立てた際(人事課の模様)、「双方の主張が食い違い、記録がないため判断できない」旨の対処がなされることに改善を求めるため、オンブズマンから市に対し指導や助言をすることを求めて「意見書」が提出されたケース。オンブズマンへの意見書として生活保護行政に関する「指導」を求める本件は、個別具体的な利害が発生しているとは言えないとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

2026/02/28

オンブズマン再任(2026年)

2026年2月27日、以下の議案が札幌市議会に提出され、同日、議会の同意を得た。これにより、梶井祥子氏(NPO法人理事、元大学教授)がオンブズマンとして2期目の委嘱がなされた(任期は2028年2月29日まで)。

2026年3月1日以降も引き続き1年間、神谷奈保子氏(オンブズマン2期目2年目・民事調停委員)、樋川恒一氏(オンブズマン1期目2年目・弁護士)との3名の体制で、札幌市オンブズマンの職務が遂行される。

 


2026/01/07

「札幌市オンブズマン」を過大評価する朝日新聞

 2026年1月6日、朝日新聞朝刊に「札幌市、重大事態認定せず」という記事が掲載された(北海道支社版のみならず、東京本社版・名古屋本社版・大阪本社版・西部本社版も同様。web版は1月5日付)。

記事の内容は、8年前(2018年)に市立高校1年生の女子生徒が下校中に同学年の男子生徒から体を触られ不登校になり、3か月後にPTSDと診断されたところ、その案件について札幌市が2025年に「いじめ重大事態」と認め調査を始めたというものである(以下、この調査を便宜的に「調査A」という。)。また、記事では事案発生の翌年(2019年)に「第三者機関に重大事態に当たる可能性を指摘」されていたことも紹介されている。

以上が「有料会員」登録しなくても読める記事の内容であるが、この「第三者機関」こそ、札幌市オンブズマンである。そして、上記の「重大事態に当たる可能性」を指摘しているのが、苦情等調査結果通知書第30-55号である(2019年3月22日付・担当オンブズマン:杉岡直人。以下、当該苦情等調査結果通知書を「通知書」、実施された調査を「調査B」という。なお、調査Bは調査Aよりも時間的に先行する)。当ブログでは、このエントリーで当該案件を紹介している。

この調査Bの通知書は、A4用紙55枚におよぶ「超大作」であるが、現時点で再読すると、調査担当オンブズマン杉岡直人の指摘は捉えるべきポイントがややずれているように思われる。それと同時に、当ブログ開設者がその点について無自覚であったことが、今さらながら悔やまれる。おそらく、当ブログ開設者は公開を受けた当時に通知書が「超大作」であるがゆえ、「流し読み」したものと思われる。この点については恥じ入るばかりである。

とはいえ、当ブログ開設者に公開された調査Bの通知書は「非公開」とされた箇所が多く、前提となる事実関係が十分に把握できなかったのも事実である。こうした観点からは、今回の朝日新聞の記事は、被害者の高校生が受けた加害行為が明らかになった点に意義がある。そのことによって、当該オンブズマンによる調査Bのあり方を考える際、「いじめ防止対策推進法」の規定が手がかりになることが明らかになったからである(なお、調査Bの通知書において、同法は参照されていない)。

この点、上記の記事の有料部分は、「いじめ防止対策推進法は、いじめにより子どもが不登校を余儀なくされたり、深刻な被害を受けたりした疑いがあれば『重大事態』だと定義。被害に遭った子どもの心のケアといった対策に役立てるため、学校側に『速やかに、事実関係を明確にする調査を行う』ことを義務づけている」ことを紹介している。そして、札幌市は今般、同法に基づく調査に着手したというのが記事の内容である(なお、根拠条項は同法28条1項である)。

また、当該オンブズマンによる調査B(第30-55号)においても、「今回の事案は(中略)いじめにおける重大事態に相当する内容であると考えます」という判断が示されていた

しかしながら、同法が規定する「重大事態」においてなされる調査は、「当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため」になされるものである(同法28条1項)。したがって、被害者を救済したり、加害者に行為を止めさせることを目的としているわけではない。それでもなお、今回の事案において「重大事態」においてなされる調査に意義があるとすれば、「当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供する」(同条2項)とされていることが指摘できるであろう(したがって、今回の朝日新聞の記事は「調査」の目的についての説明が不正確である)。

ところで、オンブズマンによる調査Bがなされたのは、被害者に対する学校および教育委員会の対応が不十分であるとして苦情が申し立てられたからである。この点、「いじめ防止対策推進法」は、第四章において「いじめ防止等に関する措置」を規定している点が重要である(「重大事態への対処」が規定されているのは第五章である)。なかでも同法23条3項は、「いじめがあったことが確認された場合」において、「いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援」、「いじめを行った児童等に対する指導」および「その保護者に対する助言」を「継続的に行う」ことを規定している。

この点、調査Bの契機となった苦情申立てにおいては、学校の対応が不十分な点として「加害者に対する懲戒」が適切になされていないという点についても主張されている。しかしながら、「いじめ防止対策推進法」23条3項の規定を前提にするならば、たとえ上記苦情の申立人が学校に対し「加害生徒に対する懲戒」を求めたとしても、より優先されるのは「いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援」であり、「いじめを行った児童等に対する指導」になるといえるだろう。

ところが、残念なことに「いじめを受けた児童又はその保護者に対する支援」が不十分だった結果として、上記苦情の申立人は「加害生徒に対する懲戒」を求めることになったのであろうと、現時点において当ブログ開設者は考えている。また、オンブズマンによる調査Bにおいても、被害生徒および家族に対する支援が不十分であったことが厳しく指摘されている。

また、学校の対応の適切さという観点からは、「いじめ防止対策推進法」23条5項についても考慮しておく必要があると思われる。同項は、「いじめを受けた児童等の保護者といじめを行った児童等の保護者との間で争いが起きることのないよう」に学校が必要な措置を講ずることを規定しているからである。

実際、上記苦情の申立人は、学校の対応により加害行為をした生徒の家族との直接交渉の開始が大幅に遅れた、という主張をしている。しかしながら、通知書の以下の記載は、学校と教育委員会は、いじめ被害者と加害者の保護者間で「争いが起きることがないよう」に、直接交渉の場をお膳立てすべく尽力していたと評価することができるようにも思われる(ただし、こうした評価が「甘い」という批判は甘受する)。

「同月26日、当該高校にて、子の代理人、Aの代理人、学校、教育委員会の四者が話し合いを行い、子の登校の実現に向けて協議しました。学校からは、両者が顔を合わせないための校内での動線について配慮案を複数提示しました。また、登校時のルートについても配慮したいため、子の代理人に対し、子の登校(車での送迎)ルートを教えてほしいと依頼しました。」(※ここに記されたAとは加害生徒である。通知書16頁)

以上の次第で、当該オンブズマンによる調査Bにおいては、学校および教育委員会が「いじめ防止対策推進法」23条が規定する一連の措置を適切に講じたか、という点を中心的な論点とする必要があったと当ブログ開設者は考えている。ところが、調査担当オンブズマン杉岡直人はこうした発想を欠き、当ブロブ開設者も通知書の公開を受けた当時は、そのような発想を欠いていた。痛恨の極みである。

ここでようやく、冒頭に挙げた朝日新聞の記事についてである。この記事は、「弁護士らからなる第三者機関に重大事態に当たる可能性を指摘され」ていたにもかかわらず、長期間経過後に被害者側から疑問を呈されたことを契機として、「いじめ防止対策推進法」が規定する重大事案についての調査を開始した札幌市の対応に批判的である。

また、有料会員登録することで読める箇所(以下に指摘する記事の記述も同様に、有料会員登録することで読める箇所である)においても、「市が設置し、弁護士ら有識者でつくる市オンブズマン」という記載があるように、この記事を執筆した記者の古畑航希は、札幌市オンブズマンに弁護士が携わっていることに一定の意義を見出しているようである。

ところが、上記調査Bの担当オンブズマンの杉岡直人は、その当時、北星学園大学社会福祉学部教授であって弁護士ではない。したがって、札幌市オンブズマンによる調査を権威づけるする理由として弁護士が携わっていることを強調することは、ミスリーディングであるという印象である。

さらに、記事には「弁護士ら有識者でつくる市オンブズマン」という記述もあるが、札幌市オンブズマンは、議会の同意を得て市長が委嘱するのであって(札幌市オンブズマン条例8条2項)、有識者が市オンブズマンをつくっているわけではない。

この点、記事には「同市のオンブズマンは市条例にもとづく第三者機関」という記述もあるが、前記の「有識者でつくる市オンブズマン」という記述が併存していることからすると、この記者は行政オンブズマンである札幌市オンブズマンと、民間のいわゆる「市民オンブズマン」との区別がついていないのかもしれない(ちなみに、「札幌市民オンブズマン」の代表は島田度弁護士で、現在「札幌市オンブズマン」に任用されている3人のうちの1人が樋川恒一弁護士である)。

このほか、記事は「市が19年11月にまとめたオンブズマンへの報告書」が、「重大事態や検証には言及しなかった」という記述がある。この「報告書」とは、調査を実施したオンブズマンが通知書に記載した「意見」をふまえ、調査対象部局がその後どのような対応をしたか、さらには現在の状況について、オンブズマン事務局長名での照会に対する回答内容が記載された文書のことである。

したがって、照会内容に対する回答文書という性格上、「重大事態に相当する」旨の指摘をするのみで「重大事態として取り扱う」ことを求めているわけではないオンブズマンの意見に対し報告書が「重大事態」に言及しないことも、「本格的な検証」を行った上で「被害生徒の学習環境の確保について、十分な検討を求める」オンブズマンの意見に対し報告書が「検証」について言及しないことも、照会に対する回答文書という上記「報告書」の性格からすると、やむを得ないように思われる(ただし、照会事項を明確に特定している場合にはこの限りでない)。

・・・いかがであろうか。当ブログはここ最近の傾向として、札幌市オンブズマンが行う調査が積み残した課題を指摘することに注力してきた。そのため、このエントリーにおいても、冒頭に挙げた朝日新聞の記事を契機として、オンブズマンが実施した調査Bについて同様の指摘を行うこととしたものである。

これに対し、冒頭の記事は札幌市オンブズマンの判断を当然視、あるいは神聖視し、疑問を差し挟むことをしていない。当ブログ開設者が、朝日新聞が札幌市オンブズマンを過大評価していると感じる所以である。1月6日付「素粒子」も参照されたい。

【参照条文】
◯いじめ防止対策推進法
第四章 
(いじめの防止等に関する措置)
第23条
1〜2 (略)
3 学校は、前項の規定による事実の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該学校の複数の教職員によって、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行うものとする。
4 学校は、前項の場合において必要があると認めるときは、いじめを行った児童等についていじめを受けた児童等が使用する教室以外の場所において学習を行わせる等いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにするために必要な措置を講ずるものとする。
5 学校は、当該学校の教職員が第3項の規定による支援又は指導若しくは助言を行うに当たっては、いじめを受けた児童等の保護者といじめを行った児童等の保護者との間で争いが起きることのないよう、いじめの事案に係る情報をこれらの保護者と共有するための措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
(以下略)

第五章 重大事態への対処
(学校の設置者又はその設置する学校による対処)
第28条 学校の設置者又はその設置する学校は、次に掲げる場合には、その事態(以下「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。
一 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
二 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
2 学校の設置者又はその設置する学校は、前項の規定による調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供するものとする。
(以下略)

2025/12/28

2025年10月に処理を終了した案件

 2025年11月2日、同年10月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、同年12月17日に一部公開決定がなされた。

上記の期間(2025年10月)に処理を完了したのは7件で、このうち4件で調査結果が通知された。また、残る3件のうち、1件については苦情について調査しない旨が通知され、2件については苦情申立ての取下げという取り扱いがなされている。

ところで、今回の公開分に限らないのだが、オンブズマン調査における市の回答は、「できない理由」についての説明が展開される傾向にある。しかし、そうした回答は苦情を申し立てた市民にとっては、自らの要望が拒絶されたという印象を残すことになると思われる。むしろ市は「できること」を説明したほうが苦情を申し立てた市民に対して好印象を与えると思うのだが、いかがであろうか。

しかしながら、市の回答がそのような内容にならないのは、いったん市が「できること」についての説明することで、そうした対応をする責任が生じるのを避けたいという意向が働く、あるいは、職務遂行にあたって前例踏襲をよしとする組織文化がある場合には、「できること」を考える、という発想にそもそもならないのかもしれない。

仮にそうだとすると、調査を担当したオンブズマンが改善提案をすることは、前例踏襲をよしとしない組織内部の職員に対する精神的支援(理論的支援ならばさらによし)になり、市政改善の可能性を広げると当ブログ開設者は考えているのだが、残念ながら現在(過去においても)任用されているオンブズマンにはそうした発想が欠けているようである。

今回公開分の第2025-43号もそのような案件である。この案件では、自宅前の歩道が隆起したために補修を要請し、その際、家族が身体障がい者になり歩くこともままならないことを伝えたにもかかわらず、修復内容が依頼したとおりではなかったとして苦情が申し立てられた。

この案件における市の回答は、市が道路を補修する際の原理原則について説明している点で興味深いものの、当ブログ開設者は「身体障がい者がいることを理由に特別な対応はとれないことについてご理解いただけるようにお願いしました」という記述に驚いた(なお、このような説明は、補修工事後に申立人から再度の工事の要望を受けてなされたものである)。障害者差別解消法7条2項は行政機関に「合理的配慮」を義務づけているのではなかったか。上記の市の回答は、この規定の趣旨に抵触する疑いがあるのではなかろうか。

また、調査担当オンブズマン樋川恒一の判断においても「合理的配慮」についての言及はない。しかしながら、当ブログ開設者は、市としては実際の補修工事に先だち、どのような工事を行うかという説明を申立人に行うことが適切だったのではないかと考えている。もちろん、補修工事の内容が申立人の要望に沿ったものである必要はないにせよ、事前の説明は市にできる「配慮」であろうと考えている(ただし、こうした配慮が障害者差別解消法が規定する「合理的配慮」とイコールであるかは、別途検討する必要がある)。

次に紹介する2件(第2025-57号,第2025-60号)は、いずれも生活保護を受給する同一の申立人による苦情で、調査担当オンブズマンは神谷奈保子である。

ところで、この2件の案件には既視感がある。それは、苦情の内容が前回のエントリー(2025年9月に処理を終了した案件)で紹介した案件と重複しているからである。

まず、今回公開された第2025-57号は、担当ケースワーカーが申立人の同意を得ることなく申立人の個人情報を社会福祉協議会に提供したとして、担当ケースワーカーの対応についての苦情が申し立てられた案件である(苦情申立日は9月19日)。

これに対し、前回公開した第2025-56号では、社会福祉協議会の対応について苦情が申し立てられ、市の機関の業務ではないとして調査しない旨が通知された(苦情申立日は2025年9月19日)。

また、今回公開された第2025-60号は、入院・通院のために必要な交通費の支給を求めるとともに、担当ケースワーカー等の対応が保護受給者の尊厳を毀損するものであるとして苦情が申し立てられた案件である(苦情申立日は9月20日)。

これに対し、前回公開した第2025-59号では、保護課から提示された「食材支給」の内容が栄養バランスを欠き健康を害する恐れがあるとして苦情が申し立てられ(「不利益を受けているとはいえない」として調査しない旨が通知された。苦情申立日は9月19日)、同じく前回公開した第2025-61号では、「食材支給」で提示された内容では栄養が不足すること、さらに、担当ケースワーカーおよび係長の対応が保護受給者の尊厳を損なうものであるとして苦情が申し立てられている(食材支給は第2025-59号で調査しない旨、ケースワーカーの対応は第2025-60号で調査を行うとして調査しない旨が通知された。苦情申立日は9月21日)。

このように、同一の申立人から3日間にわたり、立て続けに5件の苦情が申し立てられたわけである。オンブズマンの取扱件数がかさ上げされ、活発な活動を行っていると対外的にアピールすることができるという点で、札幌市オンブズマン制度にとっては「超上客」であろう。

しかしながら、オンブズマンの対応が「超上客」へのおもてなしとして適切であったかどうかは、なお、検討の必要があると思われる。それは、この申立人が立て続けに苦情を申し立てたのは、苦情を申し立てることで、かえって自らの不安を募らせたのであろうと推測できるからである。

この5件の申立てに対し(ただし、この申立人はほかにも苦情を申し立てている可能性がある)は、オンブズマンは9月29日付で3件について「調査しない旨」を通知し、10月31日付で2件の「調査結果」を通知した。しかし、このような対応は、調査結果よりも調査しない旨の通知を受けた申立人が「自らがオンブズマンから拒絶された」という不安を募らせる要因となるのではなかろうか。

もちろん、こうした懸念は当ブログ開設者の杞憂かもしれないが、たとえ申立人を待たせたとしても、5件まとめて通知を発送したほうが、「超上客」への「おもてなし」として適切ではないかと感じている(「ブルシット・ジョブ」を増やさないための配慮の余地があるのではないか、という趣旨である)。

さて、それでは具体的に調査の内容を確認していこう。第2025-57号は、担当ケースワーカーが社会福祉協議会に個人情報を提供したという苦情であるが、事実の経緯としては、申立人からケースワーカーに社協に問い合わせをしてほしいという申し出があったということである。

この点、市の回答には、「氏名等の個人情報の提示を伴った問い合わせの場合などには、本人への再確認・・・など、徹底してまいります」という記述はあるものの、「ケースワーカーは、申立人から事前に社協に相談していることを聞き取っていた」のみで、社協に問い合わせる際に申立人の個人情報を提供することについて「再確認」した旨の記述はない。

また、調査担当オンブズマン神谷奈保子も、「相談者は、社協から保護受給者の場合はケースワーカーを通して相談するようにと言われた時点で、社協がケースワーカーを通して相談者の名前や最低限の現況を確認するものと想定できるのではないかと考えます。そのため、相談者が自分の担当ケースワーカーへ社協への連絡を依頼した時点で、同意がないとは言い切れないように思います」という見解を示している。

しかしながら、行政機関による個人情報の提供は、法令に基づく場合や利用目的の範囲内の提供であれば必ずしも本人同意を要しないものの、一般論としては本人の同意を得ることが原則である。また、オンブズマンによる「同意がないとは言い切れない」という判断も、いかにも粗雑であろう。

したがって、本件のように申立人からの依頼があったような場合においても、ケースワーカーは申立人に対し、①社協に対する問い合わせは一般論としての問い合わせか、それとも申立人の具体的な事情に基づく問い合わせか、②申立人の具体的な事情に基づく問い合わせの場合には、申立人の個人情報を社協に説明することは差し支えないか、確認するのが適切であったと当ブログ開設者は考えている。

次に、第2025-60号では、入院・通院のために必要な交通費の支給を求めるとともに、担当ケースワーカー等の対応が保護受給者の尊厳を毀損するものであるとして苦情が申し立てられた。

まず、市の回答によると、担当ケースワーカーは申立人が通院する際の交通費について「どうしても9月中の通院を希望するということであれば、売却などにより活用できる資産を確認し、交通費に充てようと考える必要がある旨を説明」するとともに、「この説明の際に、室内にあった申立人のパソコンやコーヒーメーカーなどを示し」たのだそうである。

その一方で、「現実的にはこれらの資産を今すぐ売却するなどの対応が難しいことは一定の理解ができることから、そこまで求めることはしないことを併せて伝えた」というのであるが、結局のところ、伝えるべきことは「早急な通院の必要性が確認できない現時点では、・・・通院移送費の支給の検討は難しい」ということだけだったと当ブログ開設者は考えている。

また、担当ケースワーカーならば、申立人が「仮定」の話を理解できるのか、考慮する必要があると思われる。そして、実際に資産を売却しても収入申告する必要があるのみならず、収入から交通費相当額が費用として控除されない限り交通費を捻出することはできないのである。したがって、「(資産を売却すること)までは求めることはしない」のであるならば、担当ケースワーカによる資産売却を検討する必要性の説明は不要であり、その説明は申立人が不満を募らせる効果しかなかったと思われる。

この点、調査担当オンブズマン神谷奈保子は、「申立人が『人権を軽視した発言だ』と感じたことは事実であり、発言の意図が正しく伝わっていなかったと思われ、残念に思います」という見解を示している。すなわち、資産を売却を例示したこと自体は問題視していないのであるが、オンブズマン判断としては不十分であると思われる。

ところで、この2件の調査担当オンブズマン神谷奈保子は、2024年度に、「アサーティブコミュニケーション」のスキルを持った市職員を育成する視点から、市職員の対人コミュニケーションの現状について、発意調査を実施している(第2024-発1号)。

この「アサーティブコミュニケーション」とは、調査担当オンブズマンに神谷奈保子によると「自己主張しながらも他人を尊重するコミュニケーション」である。そして、神谷奈保子はライフワークとして、アサーティブコミュニケーションの在り方を研究しているのだそうである。

そうであるならば、市職員が市民に対応する際にどのような点にコミュニケーションギャップがあるのか、さらに、そのギャップを埋めるためにはどのような工夫が考えられるのかなどなど、個別の調査案件において積極的に提案してもよさそうなものであるが、担当オンブズマン神谷奈保子は市の回答を鵜呑みにするだけであった。実に残念なことである。

最後に、苦情申立ての取り下げがされた案件である。このうち、第2025-64号は、「取下げの経緯」と題する文書に「申立て取り下げの意向」が記載されている一方で、第2025-68号についてはその旨の記載がない。申立人に「通知書」が発送されておらず、申立人の苦情申立てを取り下げる意向が文書に記載されていない案件において、「申立て」はどこへ行ったのであろうか。この点について、現在、オンブズマン事務局に照会中である。回答については、当ブログで紹介する予定である。

以上でこのエントリーを完結させるつもりであったが、今回公開された調査結果のうち、言及していないもう1件についてもふれることにする。webから図書館の図書を予約したにも関わらず、その図書が別の人物に貸し出しされてしまったという苦情である(第2025-49号)。

市の回答によると、webから予約を入れても、職員が当該図書を確保し「予約を確定」するまでは、貸出時に予約が入っていることがわからないのだそうである。おそらく、予約システムと貸出システムが連携していないということなのであろう。

しかし、「予約を確定」する前に実際に図書館を訪問して貸し出しを受けようとした者を優先するにしても、「確定前予約」の存在がわかれば、「貸し出しの延長はできません」という注意を喚起することができるし、延滞防止につながると思われた。

それにしても、「予約」後に職員が図書を確保する前に、別の人物がその図書の貸し出しを受けるとは。まるで「奇跡の瞬間」に立ち会ったような気分である。

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①第2025-43号
 自宅前の歩道が隆起したために補修を要請し、その際、家族が身体障がい者になり歩くこともままならないことを伝えたにも関わらず、修復内容が依頼したとおりではなかったとして苦情が申し立てられた(担当オンブズマン:樋川恒一)

②第2025-49号
 図書館蔵書予約・検索システムで検索した際には「貸出中」ではなかった図書を予約したにもかかわらず、当該図書が別の人物に貸し出されたとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:樋川恒一)

③第2025-57号
 生活保護を受給する申立人が、担当ケースワーカーが申立人の同意を得ることなく申立人の個人情報を社会福祉協議会に提供したことは不適切であるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

④第2025-60号
 生活保護を受給する申立人が、入院・通院のために必要な交通費の支給を求めるとともに、担当ケースワーカー等の対応が保護受給者の尊厳を毀損するものであるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑤第2025-63号
 申立人に関係する人物が緊急搬送されたことをきっかけに施設に入所し現在に至るが、当該施設職員の対応等に不満を抱いており、病院や施設を変えるように区役所職員に働きかけているものの、十分な対応がなされないとして苦情が申し立てられたケース。本件においては専門的知見に基づく対応がなされており、オンブズマンが調査・判断することは相当でないとして、「調査することが相当でない特別の事情」(札幌市オンブズマン条例16条2項)を理由に調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑥第2025-64号
 生活保護受給者の生活品の移送を請け負ったが、その対価がいまだに支払われていないとして苦情が申し立てられたケース。(保護受給者に対する)少額訴訟の利用手続き等について無料法律相談の利用を提案したところ、苦情申し立ての意向が取り下げられた。(担当オンブズマン:樋川恒一)

⑦第2025-68号
 市税事務所職員に高圧的な対応をされる一方で、後日、別の職員は穏やかで丁寧な口調で対応したことから、職員間の接遇の差が大きいので、適切な接遇がなされることを求めて苦情が申し立てられたケース。苦情内容及び申立人の要望を市税事務所に伝達する旨を申立人に伝達した(と文書に記載されるのみで、申立人の苦情申し立てを取り下げる意向を確認した旨は記載されていない)。(担当オンブズマン:樋川恒一)