2021/05/24

2021年4月に調査を終了したケース

2021年5月1日、同年4月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、同年5月17日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2021年4月)に調査を終了したのは10件で、このうち8件で調査結果が通知されている。また、残る2件は、申立人による申立ての取り下げにより、調査は終了している。


今回もまた、いくつかの興味深い案件が公開対象となったが、最も注目に値するのが、第2020−79号である。この案件は、障がいのある娘が短期入所を利用するに際し、聴き取りが行われないまま支給量が決定されたというものである。

担当の原俊彦オンブズマンは、「不適切な事務処理」があったとは考えていないようだが、この案件では、いったん支給量が決定されたのち、遡って再度、支給量の再認定がなされている。このことは、申請時点で適切な聴き取りがなされないまま支給量が決定されたからこそ、再認定する必要が生じたことを意味すると思われる。

また、原俊彦オンブズマンは、「具体的な利用日数を聞き取らなかったとしても、それが直ちに問題であるとは言え」(ない)とも述べているが、支給決定を受けるための「申請があったとき」には、市町村の職員が障害児の保護者に面接して調査するのが原則である(障害者総合支援法20条2項)。

その際、「障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容」が調査事項とされている(障害者総合支援法施行規則8条3号)のだが、原俊彦オンブズマンは、サービスを何日利用するかは、「サービスの利用に関する意向の具体的内容」に該当しないというのだろうか。

さらに、原俊彦オンブズマンは、相談支援事業所が作成した「サービス等利用計画案」に記載された利用日数をもって、市が「サービスの利用に関する意向」を把握したと考えているようだが、サービス等利用計画案を作成する相談支援事業所が利用日数の要望を把握することは、上記の障害者総合支援法20条2項が規定する「面接」とは異なる手続きである。

このように、この案件の調査担当の原俊彦オンブズマンの判断は、市が対応の拙さを糊塗するために行った説明をそっくり鵜呑みにした代物であるように思われる。この案件の処理には7週間を要しているが、下手の考え休むに似たりとでもいうべきか。”眠れるオンブズマン”原俊彦のネーミングも、あながち的外れではないのかもしれない(”眠れるオンブズマン”の由来は、このエントリー及びこのエントリーを参照されたい)。

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①第2020−79号
 障がいのある娘が短期入所を利用するに際し、利用日数や利用の仕方等について聴き取りが行われないまま利用量が決定されたことをはじめとして、職員の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

②第2020−80号
 新たに戸籍を作成した際に名前の漢字を間違えられたが、2年ほど前に札幌市に転入した際には住民票の住所の表記を間違えられたこともあることから、入力ミスが発生した原因の説明と、再発防止を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

③第2020−83号
 芸術の森の木工房をグループで利用する際に危険な行為があったとして、後日、代表者に対する注意がなされたが、注意をするのであればその場で行うべきであるし、安全管理は施設の側の責任であり利用者に責任を負わせるのは適切ではないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

④第2020−84号
 パートナーシップ除雪の際の誘導が適切ではなかったこと及びその件についての問い合わせを2週間以上放置されたことについて、苦情が申してられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑤第2020−87号
 生活保護受給者から委任を受けて市に対応を求めているにもかかわらず、市は文書、メール以外では対応をしないと主張することをはじめとする、市職員の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑥第2020−88号
 札幌市が独自に実施しているパーソナルアシスタンス制度(※市の制度紹介)において、障がい者のヘルパーとして仕事をしているが、契約先の障がい者から不当な取り扱いをされているとして、制度を利用する際のルールの確立を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑦第2020−89号
 死亡した生活保護受給者が入居していたアパートの大家が、保護課が受給者に対する支援が不十分だったこと及び受給者が滞納していた家賃の支払いを求めて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑧第2020−90号
 NPO法人が法人事務所の住所変更を市に届け出ようとした際の職員の対応について、苦情が申し立てられたケース。申し立ての取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:原俊彦)
⑨第2021−1号
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う飲食店への営業時間の短縮要請を受け、第五次対策協力支援金の申請をしようとしたものの、申請期限を過ぎているとして申請を受け付けてもらえなかったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
⑩第2021−3号
 知人のアパートに勝手に出入りしていた生活保護受給者が、知人が死亡したのち、申立人に対し荷物の処分料を請求してきたので支払ったが、後になっておかしいと思ったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

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