2021/06/19

2021年5月に調査を終了したケース

2021年6月1日、同年5月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、同年6月14日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2021年5月)に調査を終了したのは8件で、このうち5件で調査結果が通知されている。また、残る3件は、調査をしない旨が通知され調査は終了している。

興味深い案件は複数あるが、一番の注目は、おなじみの”眠れるオンブズマン”こと原俊彦オンブズマンが担当した、第2021-10号である。

この案件は、生活保護の受給者が過支給分の保護費の減額や担当職員の一連の説明について、苦情を申し立てた事例である。そして、申立人は、転居に際し、引っ越し移送費の支給には「3社の見積もりが必要である」旨、職員から後になって説明を受けたという主張を行なっている。

これに対し、担当の原俊彦オンブズマンは、「仮に後からであっても、A職員から3社の見積もりが必要であるという説明がなされたことには問題がない」と述べている。市民としては、事前に受けた説明に基づいて具体的に行動するのであり、「事後的に説明をするのでも問題ない」という原俊彦オンブズマンの判断は、たとえ仮定の話であっても、不意打ちを容認するに等しい。このような判断からは、原俊彦オンブズマンが、「市職員の市民に対する説明」を軽視していることが顕著であると思われる。

この点、当ブログ開設者は、市職員の理解が必ずしも十分でないケースを別とすれば、市職員にとっては、市民に対し事前に説明しても、市民の理解がついてこないことが悩みの種であろうと推測する。市職員には、オンブズマンがどのような判断をなそうとも、市民の理解を得られるように、適時に適切な説明を行うことを期待する。 

次に、戸籍の訂正に関する事務について苦情が申し立てられた第2021−4号も興味深い(担当は田村智幸オンブズマン)。ただし、非公開とされた部分が多く、事実関係の詳細が不明であるほか、戸籍の訂正がどのような場合に、どのような手続きで実施されるかという一般論についての記述もないため、戸籍制度についての知見を獲得するという観点からは、不満の残る調査内容となっている。

このほか、所有するアパートが、隣接する市営住宅の長期にわたる工事により外壁の損傷被害を受けたとして苦情が申し立てられた第2021-13号が興味深い。

この案件では、建築や工事に関する専門的知識せず、簡易迅速な調査を職務とするオンブズマンが工事の影響の有無について判断を述べることは適当ではないとして、調査しない旨が通知されている(担当は八木橋眞規子オンブズマン)。

しかしながら、札幌市オンブズマン条例19条3項は、「オンブズマンは、専門的又は技術的な事項について、特に必要があると認めるときは、専門的機関に対し、調査、鑑定、分析等の依頼をすることができる。」と規定している。したがって、オンブズマンが「専門知識」を有さないことは、調査を実施しないことを正当化しない。

また、条例に専門的機関への依頼の規定があるからには、「簡易迅速な調査」という要請がこの依頼を妨げることにもならない。そのため、調査を実施しないというオンブズマンの判断は、職務に対する熱意に欠けるという疑念を生じさせると思われる。

-------------------------------------------------------------------------------------------------

①第2021−2号
 市営住宅の入居者が、連日怒鳴り声が聞こえるとして相談していることについて、管理人、住宅管理公社及び市の担当課の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

②第2021−4号
 戸籍訂正の手続きについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
③第2021−5号
 自宅前の除雪について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

④第2021−6号
 投票事務の不採用通知を受けたが、欠員が生じた場合の追加募集について問い合わせた際の職員の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑤第2021−10号
 生活保護の受給者から、転居費用、職業訓練校への交通費及び同校へ通学することで支給される給付金に関する説明等、市職員の一連の対応について苦情が申し立てられたケース(担当オンブズマン:原俊彦)

⑥第2021−12号
 産業廃棄物処分業の許可に関する北海道の対応について、苦情が申し立てられたケース。「市の機関の業務の執行」に該当しないとして、調査しない旨が通知されている。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑦第2021−13号
 所有するアパートが隣接する市営住宅の長期にわたる工事により外壁の損傷被害を受けたとして、苦情が申し立てられたケース。建築や工事に関する専門的知識を有しないオンブズマンが工事の影響の有無について判断を述べることは適当ではなく、「調査することが相当でない特別の事情があると認めるとき」に該当するとして、調査しない旨が通知されている。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
⑧第2021−14号
 札幌市の保育所等の利用調整基準が、国の通知に「基づいたうえで」制定されるという説明のうち、「基づいたうえで」の具体的に意味するところの説明を求めて苦情が申し立てられたケース。調査しない旨が通知され、調査は終了している。
 なお、この案件は当ブログ開設者が申し立てた案件である。調査しないというオンブズマン判断の当否については、別エントリーで検討している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

0 件のコメント:

コメントを投稿