2021/07/17

2021年6月に調査を終了したケース

 2021年7月1日、同年6月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、同年7月12日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2021年6月)に調査を終了したのは6件で、このうち3件で調査結果が通知されている。また、残る3件のうち2件は、申立ての取り下げ、1件は申立ての意思が確認できないとして、オンブズマンが「取扱いを中止」することにより、調査は終了している。

このうち、第2021-7号の案件処理が興味深い。この案件では、「法人の代理人」と称する者が苦情申立書を提出したものの、法人の苦情申立ての意思が確認できないとして、オンブズマンは「取り扱いを中止」した。

このような、申立人の「意思」を媒介としてオンブズマンが調査を実施しないという取り扱いは、おそらく、申立人が自らの意思により苦情申立てを取り下げた場合に調査を終了する、という取り扱いとの平仄をとったものと思われる。

しかしながら、申立人が申し立てを取り下げた場合とは異なり、このケースでは、申立人たる法人の申し立てを取り下げる意思は明確ではない。こうした場合、オンブズマンは「調査しない旨」を申立人に通知し調査を終了するのが、札幌市オンブズマン条例(以下、「条例」という。)に即した案件処理であると思われる。

すなわち、条例は、オンブズマンの調査について、申立てに係る苦情及びオンブズマンの自己の発意に基づく事案について、実施することを規定している(条例4条1号及び2号、条例17条2項)。また、何人もオンブズマンに苦情を申し立てることができるとされている(条例14条)。

そして、申立てを受けたオンブズマンは、苦情申立人に対し、調査しないとき(条例17条1項)及び調査を開始したが調査を中止したとき(条例18条2項1号)には、理由を付してその旨を通知するとされており、調査を終了したときには、調査結果を通知することになっている(条例21条1号)。

また、「調査しないとき」と「調査の中止」の異同は、オンブズマンが調査を開始する旨を調査対象部局に通知する(条例17条2項)前ならば「調査しないとき」、調査対象部局に通知した後ならば「調査中止」の扱いとなる(条例18条1項)。

このように、条例は、いったんオンブズマンが苦情申立てを受け付けたからには、苦情申立人に対し何らかの「通知」がなされることを規定している。したがって、第2021-7号の調査で「取り扱いを中止」したことが条例に即した適切な取扱いであるか否かは、なお検討を要すると思われる。

この点、今回公開された文書が「経緯」を記載した文書であったことから、オンブズマン事務局に問い合わせたところ、何某かの「通知」は行ったとのことである。ただし、内容の詳細についてまでは確認しなかったため、近日中に再度照会する予定である。

さらに、遡って考えると、申立人の取り下げによる調査の終了の場合も、条例が定める「通知」がなされないまま、調査が終了する取扱いである。こうした取扱いは、オンブズマンが取り扱った件数を多く見せるための苦肉の策であると思われる。

むしろ、オンブズマンが面談したその場で申立てが取り下げられる場合や、申立て内容を確認した際に取り下げがなされた場合などは、苦情申立て自体、受理しなかったとして取り扱うことが、条例と整合的な取扱いであろう。

もっとも、苦情自体を受理しなければ、「取扱件数を多く見せる」ことができなくなる。それでは困るというのであれば、申立てを受理した上で、申立人が苦情申立てを取り下げたことを理由として、オンブズマンが調査をしない旨を申立人に「通知」するのが、次善の策となるであろう。とはいえ、納得して苦情申立てを取り下げた申立人に対し、さらに調査しない旨を「通知」するのは、いかにも手続的に煩わしいことは間違いない(のみならず、必要以上に申立人の感情を刺激することも懸念される)。

以上、オンブズマンによる苦情申立人への「通知」のあり方について論じてきたが、札幌市オンブズマンによる調査の実態を知るべく公文書公開請求を行う場合において、対象公文書を条例が規定された文書で足りるならば、請求者にとっても好都合である。

現在、当ブログ開設者は、調査実施通知書及び苦情等調査結果通知書のほか、「調査結果を通知せずに調査を終了した案件の苦情内容及び調査をしない理由について確認できる文書」についても公開請求しているものの、必ずしもその趣旨が明確ではないところに難があると考えている。

※このエントリーは、2016年7月に初のエントリーを投稿して以来、100件目のエントリーである。このブログが5年も継続したことは、実に感慨深い。今後も、当面は継続する予定である。

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①第2021-7号
 NPO法人が市の担当課からかどの圧迫、行政指導を受けたとして苦情が申し立てられたケース。当該法人の代理人を称する者が申立書が提出されたが、法人の苦情申立ての意思が確認できないとしてい、オンブズマンは「取り扱いを中止」した。(担当オンブズマン:原俊彦)

②第2021-8号
 バレーボール大会を開催するために地区センターを予約していたが、新型コロナ感染拡大のため大会を中止し地区センターのキャンセルしたところ、キャンセル料がかかることになったことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2021-9号
 生活保護受給者が、振込から手渡しになった生活保護費の支払いを再度振込にすることを求めるとともに、職員の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

④第2021-15号
 市立小学校に導入された見守りシステムの監視カメラによる撮影は、通学する子どもの個人情報保護に欠けるとともに肖像権を侵害しているとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑤第2021-21号
 体育館で開催された〇〇教室が新型コロナ感染拡大により、全6回のうち2回を実施したのみで中止されたが、残り4回の受講料は返金されることになったものの道具のレンタル料が返金されないことは納得いかないとして、苦情が申し立てられたケース。苦情申立後、返金されることになったとして、申し立ての取り下げにより調査は終了している。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑥第2021-25号
 親が通所する就労支援事業所に子も通うことの希望して区の保健福祉課を訪問したものの、その際の説明や手続き時時間がかかること等を不服として苦情が申し立てられたケース。この苦情が申立人自身のが当事者でないこと等から調査対象とならない可能性が高い旨を説明したところ、申し立てが取り下げられ調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)

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