2024/02/14

札幌市オンブズマン苦情処理日数の状況(オンブズマン別・最新版)

前回のエントリーでは、オンブズマン調査の年度別の処理状況を紹介した。このエントリーでは、オンブズマン別の処理状況を紹介する。

なお、札幌市オンブズマンの制度が発足した2001年3月(年度としては2000年度)以来、オンブズマンは、各年度の3月1日付で2年の任期で任用されている。そのため、初年度の任用期間は当該年度の3月、1か月間だけとなることから、以下の表では、任用初年度は2年度目と合算した13か月間に申し立てられた苦情の処理状況のデータ計上した。


また、オンブズマン任用の最終年度は、4月から翌年2月末までの11か月間の任用であるため、この11か月間に申し立てられた苦情の処理状況について計上した(それ以外の各年度は、4月から翌年3月までの12か月間に申し立てられた苦情の処理状況を計上)。

このほか、「取扱件数」のうち、「結果通知処理件数」に計上した件数は、「苦情等調査結果通知書」が発送された件数であり、「平均処理日数」、「中央値」及び「30日以内処理率」のデータは、この苦情等調査結果通知が発送された案件について計上したものである。

(1) 廣岡得一郎(弁護士・2001年3月1日〜2005年2月28日)


取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2000/01年度
57
39
43.67
29
56.4%
2002年度
33
27
28.85
26
66.7%
2003年度
32
29
26.38
25
53.8%
2004年度
28
18
29.11
26
66.7%
通算
150
113
33.37
28
64.6%

(2) 長井敬子(札幌地方・簡易裁判所民事調停委員、人権擁護委員・2001年3月1日〜2005年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2000/01年度
62
42
38.29
31
47.6%
2002年度
41
32
31.88
28
68.8%
2003年度
39
26
33.73
31
38.5%
2004年度
23
20
33.10
30
55.0%
通算
165
120
34.73
30
52.5%

(3) 三谷鉄夫(北海道大学名誉教授・2001年3月1日〜2004年2月29日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2000/01年度
58
39
49.54
29
53.8%
2002年度
37
29
32.45
28
62.1%
2003年度
32
26
29.50
30
53.8%
通算
127
94
38.72
29
56.4%

(4) 佐藤譲治(元会社役員・2004年3月1日〜2008年2月29日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2003/04年度
36
31
31.55
29
64.5%
2005年度
35
30
22.73
22
96.7%
2006年度
39
33
23.42
25
93.9%
2007年度
30
26
24.00
22
92.3%
通算
140
120
25.48
25
86.7%

(5) 文仙俊一(弁護士・2005年3月1日〜2009年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2004/05年度
41
36
27.44
27.5
75.0%
2006年度
38
32
27.03
26.5
90.6%
2007年度
37
28
24.50
23.5
89.3%
2008年度
33
29
31.14
28
75.9%
通算
149
125
27.54
27
82.4%

(6) 杉野目康子(翻訳家、元北海道教育委員・2005年3月1日〜2009年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2004/05年度
36
29
24.55
27
72.4%
2006年度
38
27
25.59
27
92.6%
2007年度
39
31
24.90
23
87.1%
2008年度
31
29
34.48
29
69.0%
通算
144
116
27.37
27
80.2%

(7) 前野正明(元会社役員・2008年3月1日〜2012年2月29日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2007/08年度
48
46
31.70
27.5
78.3%
2009年度
43
36
38.36
35
38.9%
2010年度
46
37
34.12
35
45.9%
2011年度
35
27
45.78
44
18.5%
通算
172
146
36.56
31.5
49.3%

(8) 岩本勝彦(弁護士・2009年3月1日〜2013年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2008/09年度
54
43
32.40
30
58.1%
2010年度
43
37
35.54
29
51.4%
2011年度
46
43
35.77
35
39.5%
2012年度
42
36
25.56
22.5
80.6%
通算
185
159
32.49
29
56.6%

(9) 井上宏子(消費生活アドバイザー・20009年3月1日〜2013年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2008/09年度
46
39
38.54
36
35.9%
2010年度
41
35
34.69
30
51.4%
2011年度
40
37
37.78
35
35.1%
2012年度
33
25
27.28
27
80.0%
通算
160
136
35.27
31
47.8%

(10) 相澤重明(札幌家庭裁判所家事調停委員・2012年3月1日〜2016年2月29日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2011/12年度
46
39
34.13
30
53.8%
2013年度
42
35
31.11
30
57.1%
2014年度
46
39
34.15
30
51.3%
2015年度
31
26
36.92
36
23.1%
通算
165
139
33.90
31
48.2%

(11) 三木正俊(弁護士・2013年3月1日〜2017年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2012/13年度
50
43
29.63
28
72.1%
2014年度
43
35
34.57
33
45.7%
2015年度
51
40
32.35
30
55.0%
2016年度
25
22
33.55
32.5
31.8%
通算
169
140
32.26
30
58.5%

(12) 吉田かよ子(北星学園大学教授・2013年3月1日〜2015年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2012/13年度
48
40
29.13
28
75.0%
2014年度
34
28
32.96
31
50.0%
通算
82
68
30.71
29
64.7%

(13) 岩田雅子(札幌地方・簡易裁判所民事調停委員・2015年3月1日〜2019年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2014/15年度
46
41
30.76
28
63.4%
2016年度
34
31
34.26
30
58.1%
2017年度
28
20
36.25
34.5
35.0%
2018年度
20
17
39.35
41
17.6%
通算
128
109
34.10
31
49.5%

(14) 杉岡直人(北星学園大学教授・2016年3月1日〜2020年2月29日)
取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2015/16年度
42
36
34.81
32
47.2%
2017年度
27
24
37.71
35.5
20.8%
2018年度
26
20
42.60
38
15.0%
2019年度
24
20
36.20
36.5
20.0%
通算
119
100
37.34
36
29.0%

(15) 房川樹芳(弁護士・2017年3月1日〜2021年2月28日
取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2016/17年度
34
29
35.38
30
51.7%
2018年度
28
26
*37.62
*36
19.2%
2019年度
43
32
36.25
36
25.0%
2020年度
27
16
33.06
34
37.5%
通算
132
103
*35.85
*35
32.0%
*を付したデータは、2018年度の案件のうち1件について推定値に基づくことを示している。

(16) 八木橋眞規子(札幌地方・簡易裁判所民事調停委員・2019年3月1日~2023年2月28日)
取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2018/19年度
50
38
41.82
38.5
26.3%
2020年度
27
22
33.91
31.5
40.9%
2021年度
40
31
42.42
42
12.9%
2022年度
23
17
41.88
38
5.9%
通算
140
108
40.39
37.5
22.2%

(17) 原俊彦(札幌市立大学名誉教授・2020年3月1日~現職)
取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2019/20年度
39
26
39.81
38.5
23.1%
2021年度
30
22
43.91
38.5
18.2%
2022年度
36
26
42.85
39
15.4%
通算
105
74
42.09
38.5
18.9%

(18)田村智幸(弁護士・2021年3月1日~現職)
取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2020/21年度
47
29
43.28
41
24.1%
2022年度
31
24
47.63
49
12.5%
通算
78
53
45.25
46
18.9%

(19)神谷奈保子(民事調停委員・2023年3月1日~現職)
取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2022年度
4
4
48.75
47
25.0%
通算
4
4
48.75
47
25.0%

次に、以下の(グラフ1)は、オンブズマン別の結果通知の平均処理日数を示したものである。オンブズマンの任期の古い順に左から右に並べた。


(グラフ1)

また、以下の(表1)は各オンブズマンの処理日数区分ごとの度数分布である。上から下にオンブズマン任期の古い順である。

(表1)
   
20日
以内
 21日〜
30日
 31日〜
45日
46日〜
60日
61日〜
90日
91日
以上
30日
以内
処理率
30日
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
廣岡
23
20.4%
50
55.6%
24
21.2%
9
8.0%
2
1.8%
5
4.4%
64.6%
35.4%
長井
16
13.3%
47
39.2%
39
32.5%
7
5.8%
8
6.7%
3
2.5%
52,5%
47.5%
三谷
18
19.1%
35
37.2%
24
25.5%
5
5.3%
7
7.4%
5
5.3%
56.4%
43.6%
佐藤
22
18.3%
82
68.3%
12
10.0%
3
2.5%
1
0.8%
0
0.0%
86.7%
13.3%
文仙
20
16.0%
83
66.4%
17
13.6%
3
2.4%
1
0.8%
1
0.8%
82.4%
17.6%
杉野目
25
21.6%
68
58.6%
14
12.1%
6
5.2%
3
2.6%
0
0.0%
80.2%
19.8%
前野
13
8.9%
59
40.4%
40
27.4%
22
15.1%
10
6.8%
2
1.4%
49.3%
50.7%
岩本
20
12.6%
70
44.0%
48
30.2%
15
9.4%
6
3.8%
0
0.0%
56.6%
43.4%
井上
13
9.6%
52
38.2%
47
34.6%
17
12.5%
5
3.7%
2
1,5%
47.8%
52.2%
相澤
7
5.0%
60
43.2%
52
37.4%
18
12.9%
2
1.4%
0
0.0%
48.2%
51.8%
三木
7
5.0%
69
49.3%
52
37.1%
10
7.1%
2
1.4%
0
0.0%
54.3%
45.7%
吉田
3
4.4%
41
60.3%
21
30.9%
2
2.9%
1
1.5%
0
0.0%
64.7%
35.3%
岩田
5
4.6%
49
45.0%
39
35.8%
16
14.7%
1
0.9%
0
0.0%
49.5%
50.5%
杉岡
3
3.0%
26
26.0%
53
53.0%
13
13.0%
5
5.0%
0
0.0%
29.0%
71.0%
房川
1
1.1%
32
31.1%
53
51.5%
17
16.5%
0
0.0%
0
0.0%
32.0%
68.0%
八木橋
1
0.9%
23
21.3%
51
47.2%
24
22.2%
9
8.3%
0
0.0%
22.2%
77.8%
2
2.7%
12
16.2%
35
47.3%
19
25.7%
4
5.4%
2
2.7%
18.9%
81.1%
田村
0
0.0%
10
18.9%
17
32.1%
19
35.8%
7
13.2%
0
0.0%
18.9%
81.1%
神谷
0
0.0%
1
25.0%
2
50.0%
0
0.0%
1
25.0%
0
0.0%
25.0%
75.0%
通算
199
9.8%
869
42.9%
639
31.5%
225
11.1%
75
3.7%
20
1.0%
52.7%
47.3%

以下の(グラフ2)は、(表1)よりも度数分布を細かく区分した。オンブズマンの並び順は、平均処理日数の短い順である。

(グラフ2)

前回のエントリーで紹介したように、2022年度に調査結果を通知するまでに要した日数は2年連続で40日を超えている。また、各オンブズマンの処理日数を前年度と比較した場合、原俊彦オンブズマンは取扱件数及び結果通知処理件数を増やしながらも処理日数を縮めている。その一方で、田村智幸オンブズマンは件数が減っているにもかかわらず日数が延びている。

ところで、2021年度の処理日数の状況は、原俊彦オンブズマンの担当件数が他のオンブズマンよりも明らかに少なく、当ブログ開設者は、他のオンブズマンに過大な負担を負わせている可能性を指摘したところである(くわしくはこのエントリー)。これに対し、2022年度は原俊彦オンブズマンの健闘むなしく、田村智幸オンブズマンのキャパをオーバーする負担があったようだ。

この点、当ブログ開設者は、田村智幸オンブズマンの調査手腕を過大評価していたと大いに反省している(くわしくはこのエントリー)。また、「法令及び法律事務に精通しなければならない」(弁護士法2条)はずの弁護士という肩書きを有する同オンブズマンが、行政の監督権限を定めた規定を見出すことができない旨公言していることにも大いに驚いた(くわしくはこのエントリー

それでも、田村智幸オンブズマンによると、調査に際する「執務の責任をオンブズマンが負うことは言うまでもありません」(令和4年度札幌市オンブズマン活動状況報告書 巻頭言」)とのことである。ここでいう「執務の責任」が何を意味するのかその趣旨は明らかではないが、よせばいいのにずいぶん大見栄を切ったものである。

この点、当ブログ開設者は、同オンブズマンが適切に執務の責任を果たすことを期待するのは無いものねだりであると考えている。過大な期待は慎みたい(注1)。

(注1)2023年度の案件(2023-6号)であるが、田村智幸オンブズマンが児童扶養手当について「職権で直ちに支給停止できることについては、明確な法令上の根拠や規定を見出すことはできませんでした」という判断を披歴している(そのおかげで、当ブログ開設者は自らの見識を深めることができた。くわしくはこのエントリー)。

田村智幸オンブズマンも「法令に精通」(弁護士法2条参照)していれば、「職権で直ちに支給できることについて、法令上の根拠に基づいて行われていることの説明を得たかった」などと泣き言をいわずにすんだのではあるまいか。結局、根拠が不明なまま「(児童扶養手当を支給)停止するのもやむを得ない」と結論づけた。「法律に基づく行政の原理」を著しく軽視した見解であると言わざるを得ない。

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