この条例に基づいて、札幌市では「札幌市オンブズマン」という特別職を設け、任期2年(1回のみ再任可)のオンブズマン3名が、市民から寄せられた市政に関する苦情を受け、その苦情について市に対する調査を実施し、市の対応についてその当否、適否を中立な立場で判断し、必要に応じて、市に何らかの対応を求めるという活動を行っている。
また、この札幌市オンブズマンが行った活動については、毎年度ごとに「札幌市オンブズマン活動状況報告書」(以下、「活動状況報告書」という。)を公刊することで、市民に対する周知が図られている(webでも公開されている)。
しかしながら、この活動状況報告書の公刊は年に1度である。オンブズマンに対し申し立てられた苦情と同じような不満を抱える市民にとって、その件に関しオンブズマンが行った調査の内容を知ることは、有益であると思われるが、年に1度の公開では、時宜を失することもあるのではないだろうか。
のみならず、札幌市の活動状況報告書には、市民から申し立てられた苦情の全件が掲載されるわけではない。前述したように、オンブズマンによる調査内容を知ることが市民に有益であるならば、一部の限られた苦情についてのみ掲載するのでは、市民に対する活動状況の公表として不十分と言わざるを得ない。
さらに、市民による苦情申立てに基づいてオンブズマンが調査を実施した場合、その内容は、「苦情等調査結果通知書」(以下、「結果通知書」という。)という文書に取りまとめられ、申立人及び市の担当部局あてに通知されることになる。この文書は、大まかにいって、「苦情申立ての趣旨」、「市の回答」及び「オンブズマンの判断」の三つの部分から構成されるが、現在の活動状況報告書には、苦情の概要とオンブズマン判断(要旨)が掲載されるのみとなっている(平成19年度までは市の回答の要旨についても掲載)。
あくまで私見であるが、結果通知書における市の回答の部分は、日ごろ市民の目につきにくいところで、市がどのような業務を行っているかを知ることができるものであり、資料的価値が高い内容となっている。もちろん、積極的にプラス評価すべき業務や職員の対応のみならず、それではいかにも拙いとマイナス評価せざるをえないものも含まれているが、たとえマイナス評価せざるを得ない業務や職員の対応であっても、少なくとも拙い点を包み隠さず公開し、今後の改善につなげようとするならば、「市民の市政に対する理解と信頼の確保」(札幌市オンブズマン条例第1条)に資することになるであろう。
以上のことから、このブログでは、公文書公開請求手続きにより公開された結果通知書等、札幌市オンブズマンの活動を観察(「監察」ではない点に留意されたい。)した内容を掲載することで、札幌市オンブズマンの活動に興味を持つ人々に対し、その内容を提供することにしたい。その狙いとするところは、要約すると以下の3点である。
(1)オンブズマン「活動状況報告書」に掲載されない案件を紹介する
(2)オンブズマン「活動状況報告書」に掲載されない「市の回答」部分を紹介する
(3)「活動状況報告書」が発行されるよりも早くオンブズマン調査の内容を紹介する
※なお、オンブズマンの制度を設ける他の自治体のうち、熊本市は毎年度公刊される「報告書」に、オンブズマンが行った苦情調査を全件掲載することを原則としている。また、各苦情調査の紹介において、苦情の概要とオンブズマン判断のみならず、市の回答についても掲載している(webでも公開されている)。熊本市にできることが、札幌市にできないことはないように思われる。
※※以下に、結果通知書の実例を掲載する(苦情は、オンブズマン事務局職員の対応について)。オンブズマン事務局は、市職員がオンブズマンを補佐する立場から、オンブズマン制度の調査研究、苦情申し立ての受け付けや事務手続に関することなどを行う部署である。このケースでは、オンブズマン判断において、申立人の態度をたしなめる趣旨の記述がなされているが、オンブズマンが判断すべきは市の対応の当否であって、こうした判断は、読む者にオンブズマンが「身内」に甘い「お手盛り」の調査を行っているとの印象を与える可能性がある。制度としての「札幌市オンブズマン」が市職員及び市民双方からの信頼を得ようとするならば、オンブズマン自身、あえてオンブズマン事務局に対しては、厳しい見解を表明すべきではなかろうか。