2021/04/07

2021年2月に調査を終了したケース(案件追加・第2020-発1号)

2021年3月1日、同年2月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、同年3月31日付で一部公開決定がなされた。

また、この一部公開決定に際し、オンブズマンが自己の発意により実施した調査に関する文書が公開対象に含まれていなかったことから、同年6月15日付で公開請求を行い、同月23日付で、全部公開決定がなされた。

上記の期間(2021年2月)に調査を終了した案件は、苦情申立てに基づく調査は8件で、このうち5件で調査結果が通知されている。また、残る3件中2件で調査しない旨が通知され、1件は申立人による苦情取り下げにより、調査は終了し
ている。このほか、オンブズマンの自己の発意に基づく調査が1件終了している。

さて、この2021年2月末をもって、房川樹芳オンブズマンの2期4年にわたる任期が満了した。このブログでは、房川樹芳オンブズマンが担当した案件に疑義を呈したこともあるが(たとえばこのエントリー)、そんな房川樹芳オンブズマンが、苦情調査として最後に調査結果を通知した案件が、第2020-67号である(発意調査の第2020-発1号も房川樹芳オンブズマンが担当)。

この案件は、申立人が市職員の対応について苦情を申し立てたケースであるが、「市の回答」及び「オンブズマン判断」によると、申立人による数々のカスタマーハラスメントというべき言動があった模様である。市職員が対応に苦慮した模様がうかがえるほか、こうしたケースにおいて、市がどのように組織的な対応を行っているかが可視化されており興味深い。

ところで、今回の公開分の写しの交付を受けた際、市の担当者に確認したところ、2021年4月からは、札幌市総務局オンブズマン事務局に配置されていた次長(課長職)が異動した後、そのポストに人員が補充されていないということであった(ポストが廃止されたのか空席となっているのかは不明)。

また、2020年度中も、オンブズマン事務局に2名配置されている係長職の1名が保健所での業務を担当していたということであり、コロナ禍の渦中にある現在、オンブズマン事務局は従来よりも手薄な人員での業務を余儀なくされている模様である。

2020年度のオンブズマン調査は2021年2月末の時点において、調査結果を通知せずに調査を終了した案件が全体の37.1%という高率となっているが(この割合は、2018年度は2月終了分までで16.9%、2019年度は2月終了分までで27.6%と、近年上昇傾向を示している)、オンブズマン事務局の人員体制が手薄になったため、オンブズマンが調査を実施しない案件の割合が高まったといった疑念を生じさせないような制度運用が期待されるところである。

この点、札幌市オンブズマン条例は、調査対象外の事項として、苦情申立人が「申立ての原因となった事実についての利害を有しないとき」と規定しているが(同条例16条1項1号)、制度の発足に際し当時の桂信夫市長は、「苦情申し立てに当たっての制約につきましても、市民の権利利益を擁護するというオンブズマン制度の目的に照らして、できる限り広く取り扱うことにしたい」という議会答弁を行っている(平成12年第4回定例会12月5日-02号)。

のみならず、当ブログ開設者が照会したところ、オンブズマン事務局から「札幌市オンブズマン室においては、オンブズマン制度に関し、現在も平成12年第4回定例議会における市長答弁と同様の運用を行っております。」という、オンブズマン事務局長名の文書回答を受けた(2020年10月9日付・札オ第10071号)。

札幌市オンブズマン条例は、市民の権利利益を擁護することを目的の一つとして掲げているところ(札幌市オンブズマン条例1条)、当ブログ開設者は、市民が適切な説明を受けることもまた、「市民の利益」の一つであると考えている。オンブズマンが調査の過程において市の担当部局から説明を受けることは、申立人にとって「適切な説明を受ける」利益をもたらすことはもちろん、ひいては、市民全般が「適切な説明を受ける」ことにつながっていくと思われる。

なお、当ブログ開設者が苦情を申し立てるため担当の原俊彦オンブズマンと面談した際(2020年7月22日)、「オンブズマンの申し合わせにより、『申立人の利害』は限定的に解することになった」という趣旨の説明を受けた(記憶がある)。そこで、申し合わせの内容等についてオンブズマン事務局に照会したところ、オンブズマン事務局長名の文章回答(2020年10月26日付・札オ10075号)には、「原オンブズマン確認したところ、『お問い合わせいただいた内容の説明はしておらず、そのような申し合わせをした事実もない』という回答を受けた」旨記されていたことも、指摘しておきたい(申し立てた苦情は、「調査しない旨」の通知を受け調査が終了している・第2020-20号)。

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①第2020−62号
 自宅前の道路で下水道工事がなされた際の振動でブロック塀にクラック(ひび割れ)が生じたとして、市に補償することを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)


②第2020−64号
 市交通局から賃借していた施設を返還する際に原状回復を求められたことが、他の施設を返却した際の取扱いと異なるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2020−65号
 国民健康保険に加入する以前の期間について保険料の納付を求められたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

④第2020−67号
 区役所広聴課の職員の対応が横柄かつ高圧的であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑤第2020−68号
 市営住宅入居者の代理人が、滞納していた賃料を支払っているにもかかわらず、市の担当職員から納付を求められるとともに、その際の対応がひどいものであったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑥第2020−73号
 市の会計年度任用職員だった申立人が、在職中に受けたパワハラや不当な人事評価等について、苦情が申し立てられたケース。本件苦情が「職員の自己の勤務内容に関する事項」に該当するとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑦第2020−76号
 区役所窓口でSAPICAへのチャージを依頼した際(敬老者優待乗車証か障がい者交通費助成のいずれかと思われる)、職員からつじつまの合わない説明を受けたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人の苦情取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑧第2020−77号
 市営住宅の敷金減免について、市民に広く周知することを求めて苦情が申し立てられたケース。申立人が「申立ての原因となった事実についての利害を有さない」として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑨第2020ー発1号(追加案件)
 札幌市における街路灯の安全対策について(担当オンブズマン:房川樹芳)

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