上記の期間(2021年11月)に調査を終了したのは9件で、このうち6件で調査結果が通知されている。また、残る3件は調査をしない旨が通知され、調査が終了している。
さて、このエントリーはおそらく、2021年最後になると思われる。そこで、今回は公開を受けた案件についてコメントする前に、2021年に「公文書公開制度」をめぐって強く印象に残ったケースについて、言及することにしたい。
さて、このエントリーはおそらく、2021年最後になると思われる。そこで、今回は公開を受けた案件についてコメントする前に、2021年に「公文書公開制度」をめぐって強く印象に残ったケースについて、言及することにしたい。
当ブログ開設者はこれまで、「公文書公開制度」は、文書に記載された「内容」を明らかにする制度であると考えていた。しかしながら、開示を受けた文書の「形状」も問題になりうるということで、認識を新たにした。すなわち、2021年8月6日に広島で開催された平和祈念式典で、菅義偉首相(当時)が挨拶文の一部を読み飛ばした一件である。
メディアでは、挨拶文の「原稿がのりでくっついてて剝がれなかった」旨の報道もなされたが、その後、公文書公開請求に基づいて公開された挨拶文の「原本」には、糊付けの跡は見られなかったという報道がなされたことは記憶に新しい(【総理の挨拶文】のり付着の痕跡はなかった(上))。公開を受けた挨拶文の原本は、「丁寧で細やかな仕事ぶり」だったそうだ。
ここでは、菅義偉首相(当時)の読み飛ばしを問題にしたいのではない。当ブログ開設者は、挨拶文の原本を作成した担当者の丁寧な仕事ぶり、さらに、式典終了後に挨拶文の「原本」を取得した広島市が、公文書公開請求に基づいて文書を公開したことに、大いに感銘を受けたのである。「こんな情報公開請求ははじめてですよ」と語る広島市職員も、内部で検討の後、挨拶文の「原本」が「公文書」に該当すると判断し、公開に至ったそうだ。
このように、公開を受けた文書の「形状」が、菅義偉首相(当時)があいさつ文を読み飛ばした理由について行った説明に、疑念を生じさせたわけである。「こんなこともあるのか!」と、当ブログ開設者は大いに驚くとともに、あまりに興味深い事態に強い印象が残った次第である。
願わくば、当ブログも読者諸氏にとって、何某かの有益な知見をもたらすものでありたい。今後も、当面は公文書公開請求を継続していくつもりである。もっとも、止めるにしても、年度末の3月終了分まで公開請求するか、翌年度に持ち越した前年度中の申立て分まで請求するか、決めかねているという事情もあるのだが。
次に、今回公開を受けた案件についてである。第2021-72号は、申立人の妻が市立病院で出産したところ、コロナ禍により申立人のみならず、出産した妻も出産した子に会えずにいるという苦情である。調査担当のオンブズマンは「感染対策の当否が判断できない」として、調査することが適当でない特別の事情があることを理由に調査を実施しなかった。
しかしながら、申立人の苦情の趣旨は、「納得のいく説明が受けられない」ということである。したがって、病院が申立人に対し、これまでどのような説明を行ってきたのかという経緯については、必ずしも医学的知見を有さなくとも、調査することは可能であろう。説明自体行っていないのか、説明が不十分なのか、十分に説明をしたが申立人の理解を得られていないのか等々、様々な事情があり得るところ、全く説明が行われていないのであれば、まずは説明するようにとオンブズマンが自らの見解を示すことは、十分可能なはずである。
のみならず、説明内容についても、専門的知見を欠くオンブズマンにとっても、説得力あると感じられるものかどうかという一定の見解を示すことは、高度の専門性を有する医療分野の専門家にとって、専門的知見を有さない市民に向けた説明がいかにあるべきかを検討する一要素になりうると思われる。
この点、当ブログ開設者は、現在の札幌市オンブズマン制度では、苦情申立人が「適切な説明を受ける利益」を過度に軽視していると考えている。この案件における調査しないという判断も、こうした「適切な説明を受ける利益」を軽視していることの反映に他ならないように思われる。
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①第2021-48号
NPO法人が市の担当課から過度な圧迫、行政指導を受けたことから、NPO法人の理事長や職員が体調を害したとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
②第2021-56号
生活保護受給者が、保護費返還決定書が届いたものの、自分だけが返還を求められることに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
生活保護の受給者が、住環境が悪いため転居したいが転居費用が支給されないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
日本年金機構から送付された年金振込通知書に記載された後期高齢者医療保険料の特別徴収額と、札幌市から通知された後期高齢者医療保険料の特別徴収額に違いがあることや、同一年度の各期で特別徴収される保険料額に差があることに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
⑤第2021-61号
パートナーシップ除雪制度による除雪作業は危険であり、無駄な制度であるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
生活保護受給者が、療養上の理由による転居について保護費の支給が受けられることになったが、保護費の支給日が実際の転居手続に間に合わないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
⑦第2021-66号
生活保護を受給していた叔母が交通事故に遭ったが、加害者が加入していた保険会社から保険金が支払われるまで生活保護の支給が継続したことについて、高額な治療費が税金が財源の生活保護費から支払われてよいものか真実が知りたいとして、苦情が申し立てられたケース。申立の原因となった事実から1年以上の期間が経過しているとして、調査しない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)
⑧第2021-72号
申立人の妻が市立病院で出産したところ、申立人のみならず、出産した妻も出産した子に会えずにいるところ、納得のいく説明をお願いしても全く返事がないとして、苦情が申し立てられたケース。「感染対策の当否が判断できない」ために調査することが適当でない特別の事情があるとして、調査しない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)
⑨第2021-74号
申立人の兄が生活保護を不正に受給している旨を再三保護課に知らせているにもかかわらず、兄に対する生活保護が支給され続けたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人の兄に対する生活保護支給について申立人には利害がないとして、調査しない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)
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