2019/04/24

2019年3月に調査を終了したケース

2019年4月1日、2019年3月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、4月19日に一部公開決定がなされた。 

上記の期間(2019年3月)に調査を終了した全5件(発意調査1件を含む)で、調査結果が通知されている。


このうち、興味深いのが、①第30−55号の案件である。この案件は、申立人の子が、同じ学校の生徒から何某かの加害行為を受けたことを契機として、学校及び教育委員会の対応について、苦情が申し立てられたケースである。そして、加害行為を行った生徒に対する制裁が不十分であることも、論点の一つとなっている。

オンブズマンは結論として、懲戒規定の整備を求めているのだが、本ブログ開設者としては、「オンブズマンは苦情申立人におもねった判断をした」、との印象を抱かざるをえない。

なぜなら、校長及び教員に児童生徒への懲戒権限があることを前提としながら(学校教育法11条)、懲戒規定を整備することで、根拠も曖昧なまま濫用的に生徒への懲戒処分がなされることを防ぐことが、苦情申立人が指摘する文科省通知の趣旨であると思われる。

そのため根拠が不明なまま懲戒処分が行われている、あるいは、「教育的措置」の名の下に、根拠が不明なまま事実上の制裁が行われている、という苦情であれば、関連規定を整備する必要性は高いことになろう。

これに対し、今回の申立人が求めるように、加害行為を行った生徒に対する制裁が不十分であるから懲戒規定を整備せよというのであれば、申立人が求めるような報復的な懲戒処分が正当化される危険があるように思われる。したがって、オンブズマンが懲戒規定の整備を求めるならば、規定を整備する必要性や目的が問われなければならないであろう。

この点、札幌市立の高校には、高い進学実績を誇る学校もあれば、挫折経験のある生徒を広く受け入れる学校も存在し、学校の性格はさまざまである。個別の学校の実情に応じた生徒への対応がなされるべく、校長が校務をつかさどる(学校教育法62条が準用する同法37条4項)ことが期待されるのであり、校長による懲戒規定の制定もその一環である。

そうすると、たとえばある高校で、生徒の非違行為には教育的措置で臨むことを旨とし、懲戒処分は実施しないとして、あえて懲戒規定を定めないという方針をとった場合、「懲戒規定を定めないことはまかりならん」、という話になるのであろうか。本ブログ開設者が、オンブズマン判断に疑問を抱く所以である。

①第30−55号
 申立人の子が通う高校から下校時に同校の生徒から何某かの加害行為を受けたことについて、その後の高校及び市教委の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

②第30−65号
 申立人の両親に対し、高齢者虐待防止法に基づく分離措置が行われたこと関し、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

③第30−66号
 生活保護受給者が、担当ケースワーカーの家庭訪問を受けた際の対応について、担当ケースワーカーの上司から事実に反する発言をされたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

④第30−69号
 児童扶養手当の申請に際し、過去に提示したのと同様の資料の提示を求められたことについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑤第30−発2号
 水道局が水道工事を発注する際、周辺住民に工事の実施をどのように周知しているかについて、オンブズマンの自己の発意により調査が行われたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

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