札幌市オンブズマンでは、毎年公刊する活動状況報告書において、苦情処理日数の状況を公表している。しかしながら、そこに掲載された処理日数のデータは、「30日以内」「31〜60日」及び「61日以上」の3段階の区分となっており(*1)、刻みの幅が大きすぎることもあり、実際にどれだけの日数がかかったのかは、実にわかりにくい。
たとえば、オンブズマンの調査に要する期間について尋ねた際、30日以内に調査を終了する割合は〇〇パーセントという回答を得たとしても、十分に納得できるであろうか。むしろ、ケースによってばらつきはあるが平均日数としては〇〇日、という説明を受けた方が、尋ねた者にとっては、具体的なイメージが掴みやすいのではなかろうか。
また、札幌市オンブズマン条例には、オンブズマンの職務の一つとして、市の業務に関する苦情を受け付け、簡易迅速に処理すること(同条例第4条第1号)が規定されている。具体的な処理日数を明らかにすることは、調査担当者が迅速な処理を心がけるよう動機づけることになると思われる。
以上のことから、札幌市オンブズマンが、市民から申立てがあった苦情に対し、実際にどれくらいの日数をかけて処理しているのかを確認すべく、同制度の事務局に各年度の個別の案件の処理日数及び担当オンブズマンについての情報提供を求めたところ、先日、その回答があった。この回答をもとに、平均処理日数を算出したのが、以下の表である(*2)(*3)。また、比較のため、30日以内に結果通知を発送した処理率も掲載しておく(*4)。
平成17〜19年度及び24〜25年度は、平均処理日数が30日を切るとともに、平成25年度を除き、30日以内の処理率は70%を上回っている。また、平成20年度は平均処理日数は30日を越えるものの、30日以内の処理率は70%を上回っている。
一方、平成27年度は、4年ぶりに30日以内の処理率が50%を切っている。苦情申立てに対し簡易迅速に処理するという制度目的に照らすと、何らかのテコ入れが必要な状況にあるように思われる。また、オンブズマン自らの処理の遅滞を改善することもなく、市に対する要望・要請を行ったとしても、説得力を欠くおそれがあるだろう。
いずれにせよ、この程度の処理状況は達成しておきたいという目標値を設定することによって、簡易迅速な処理を行う上で、一定の効果が期待できるように思われる。過去の実績も踏まえて、無い物ねだりをすることない値を設定するならば、平均処理日数30日以内または30日以内の処理率70%といったあたりが妥当ではなかろうか。
なお、オンブズマン別の苦情処理日数の状況については、次回のエントリーで紹介したい。
苦情申立
件数
|
結果通知
処理件数 |
結果通知
平均処理
日数
|
結果通知
30日以内
処理率
|
|
平成12年度
|
49
|
28
|
46.64
|
57.1%
|
平成13年度
|
128
|
92
|
42.79
|
51.1%
|
平成14年度
|
111
|
88
|
31.14
|
65.9%
|
平成15年度
|
113
|
83
|
30.07
|
54.2%
|
平成16年度
|
93
|
74
|
30.78
|
63.5%
|
平成17年度
|
103
|
88
|
24.78
|
83.0%
|
平成18年度
|
115
|
92
|
25.32
|
92.4%
|
平成19年度
|
111
|
90
|
24.70
|
88.9%
|
平成20年度
|
117
|
108
|
32.45
|
73.1%
|
平成21年度
|
133
|
109
|
36.62
|
44.0%
|
平成22年度
|
130
|
109
|
34.79
|
49.5%
|
平成23年度
|
125
|
111
|
38.94
|
32.4%
|
平成24年度
|
135
|
110
|
29.16
|
71.8%
|
平成25年度
|
122
|
104
|
29.84
|
68.3%
|
平成26年度
|
129
|
107
|
33.45
|
51.4%
|
平成27年度
|
130
|
109
|
33.05
|
47.7%
|
全期間通算
|
1844
|
1502
|
32.35
|
61.6%
|
(*1)平成16年度以前の活動状況報告書においては、当該年度に調査を終了した案件の処理日数の状況について、「30日以内」「31〜60日」、「61日〜90日」及び「91日以上」の4段階の区分で掲載していた。これに対し、平成17年度以降の活動状況報告書においては、当該年度に申立てがあった苦情に関する処理日数の状況を掲載するようになっている。
(*2)札幌市オンブズマンの制度が発足したのは、平成13年3月1日であることから、平成12年度のデータは、平成13年3月の1か月に申立てがあった案件のものである。また、他の年度も当該年度に申立てがあった案件についてのデータであり、案件によっては調査の終了が翌年度になっている場合もある。
(*3)東京都多摩市が設置する「総合オンブズマン」の年次報告書では、各年度の平均処理日数が掲載されている。札幌市も同市に倣い、処理日数の状況について、よりわかりやすい情報提供がなされることを期待している。
(*4)各年度のデータは、いずれも申立ての時点をベースにしており、調査終了が翌年度に及んだケースについても、申立てのなされた年度に計上している。
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