2023/06/21

2023年4月に調査を終了したケース

 2023年5月1日、同年4月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、6月2日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2023年4月)に調査を終了したのは8件で、このうち苦情申し立てに基づくものが7件、オンブズマンの自己の発意に基づくもの(いわゆる「発意調査」)が1件となっている。また、苦情申立に基づく調査のうち、6件で調査結果が通知され、残る1件で調査しない旨が通知されている。

さて、今回公開された案件のうち、第2022-87号は当ブログ開設者が申し立てた苦情である。この苦情は、2022年11月に調査を終了した「路面電車無料デー」に関する苦情(第2022-44号)に触発されて申し立てたものである。路面電車と地下鉄の乗継割引において、ルールと運用実態にギャップがあることからその解消を求めて苦情を申し立てた。

この案件では、調査を担当した田村智幸オンブズマンの見解、特に以下の2点が興味深いと当ブログ開設者は考えている。まず第1の点が、路面電車利用者に対する「約款」の適用関係である。田村智幸オンブズマンはICカード利用の場合、約款に定めのない停留場と地下鉄駅との乗り継ぎにも乗継割引が適用になることについて、「不合理とまでは言えない」と結論づけた。

しかしながら、約款は誰に対しても等しく適用されるものである。そのため、利用者に対し、約款に定めのない取扱いをすることが許容される余地はないのではないか。田村智幸オンブズマンも、前述の「路面電車無料デー」に関する苦情において、約款に定めがないことを根拠として「無料デーの実施を理由にした日割り返金を求めたり、定期券の有効期限の延長を求めることは困難である」と結論づけていた(第2022-44号)。それにもかかわらず、この案件では一転、ICカード利用時には、約款に定めのない乗継割引が適用されることを是認した。

このように、田村智幸オンブズマンは約款に定めのない取扱いについて、一貫性を欠く判断をしているように思われる。制度屋でなければ理論屋でもない、紛争処理屋の面目躍如といえようか。このような田村智幸オンブズマンの見解は、長く記憶にとどめたい。

第2の点が、路面電車における「2リーダー方式」(ICカードを利用する際は中ドアからの乗車時に乗車停留場の情報を記録し、降車時に料金を支払う方式)の採用についてである。市の回答によると、札幌市電が同方式を採用しなかった理由の一つが「路面電車の受電容量が少なく機器設置が困難なこと」である。田村智幸オンブズマンも、この点について「やむを得ないこと」だとして是認した。

しかしながら、札幌市電には導入時期の異なる車両が混在する(電車博物館/札幌市交通事業振興公社)。1950〜60年代に製造された車両と2010年代に製造された車両の受電容量が等しいとは、当ブログ開設者にはにわかに信じ難かった。そこで、担当部局に照会した回答(の一部)を引用する。

「各世代の車両によって受電容量に差がある状況であり、200型以外の車両においてはICカードリーダーの設置は可能でありましたが、設置・未設置が混在すると、制度上・運用上の統一性が担保できないことから、200型車両以外にのみICカードリーダーを設置することは困難であります。」

やはり、である。上記の200型とは、1958年から1961年にかけて製造された車両である。実際に行うかは別にして、これらの車両が引退した以降であれば、「2リーダー」方式を採用する技術的な障害は存在しないわけである。当ブログ開設者としては、わが意を得たりの回答であるが、田村智幸オンブズマンは同様の疑問を抱かなかったのであろうか。

実のところ、当ブログ開設者は、まさかオンブズマンがこの案件の調査を実施するとは考えていなかった。はたして申立人に「利害」があるのか、疑わしいためである。それでも、改善のために自説を展開することに意義があると考え、苦情を申し立てた。

ところが、結果的に田村智幸オンブズマンからは、実に興味深い見解が披瀝された。また、調査対象部局からは、「費用対効果の点からも、現時点では喫緊の課題としての検討は行っていない」ものの、「今後の運賃制度の検討と併せて、乗継指定停留場のあり方を検討していく必要もあると考えて」(いる)という回答を得た。以上の次第で、当ブログ開設者としては、苦情を申し立てたことには一定の成果があったと考えている。

なお、約款に定めのないケースにまで「乗継割引」を適用することの当否に関しては、「住民監査請求」を行うことも考えた。しかしながら、約款の定めどおりの運用が徹底されると、現在よりも乗り継ぎ割引の適用ケースが縮小することになり、それは必ずしも当ブログ開設者の意図するところではない。今後、具体的な行動を起こすか否かについては、慎重に検討したい。

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①第2022-81号
 介護保険施設に勤務する申立人が、勤務先が人員基準を満たしていないとして市が調査及び是正のための権限を行使することを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

②第2022-83号
 申立人と関係のある「本人」が生活保護を受給しているところ、申立人が依頼しても「本人」の安否確認をしない等、保護課の対応に問題があるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2022-84号
 身体障害者手帳を取得した申立人が、医療費助成について当該助成の申請日より遡って疾病の発生日とすることを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

④第2022-86号
 就学指定先が変更される前に申立人の関係者が通っていた小学校における「いじめ」に関し、一連の学校の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑤第2022-87号
 ICカードを利用して路面電車と地下鉄を乗り継いだ際、利用者に周知している内容と実態に齟齬があるとして、その是正を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑥第2022-88号
 札幌市内に事務所を開設する士業者が、市が所有する建物を利用する顧問先法人の解散に関し市からの問合せに再三にわたり対応を余儀なくされたり、荷物の保管を要求される等、過大な負担を負わされているとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑦第2022-発2号
 札幌市における児童手当の支給状況と認定請求手続きについて、オンブズマンが自己の発意により調査を実施したケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑧第2023-3
 町内会が実施する除雪の騒音及び費用徴収について、苦情が申し立てられたケース。「市の機関の業務の執行」(札幌市オンブズマン条例16条1項)に該当しないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)

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