2023年1月1日、2022年12月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、公開決定期限延長のうえ、2023年1月30日付で一部公開決定がなされた。
上記の期間(2022年12月)に調査を終了したのは7件で、このうち4件で調査結果が通知され、残る3件のうち2件で調査をしない旨、1件で調査中止が通知されている。
さて、今回公開された案件のうち最も興味深い案件ーただしオンブズマンの判断には大いに問題があるという意味においてーは、新型コロナウイルスの感染者情報の公開が十分ではないとして苦情が申し立てられた、第2022-66号である。調査担当のオンブズマンは、「札幌市が公表する新型コロナウイルス感染者情報が、申立人御自身に直接的・具体的な利害があるとは言えません」と判断し、調査を実施しなかった。
しかしながら、自らがコロナ感染を回避しようとした場合、札幌市の感染状況について正確な情報を知ることは、十分な利益があると思われる。したがって、新型コロナがまん延する状況において、①かつてはどのような情報を公表していたか、②現在はどのような情報を公表しているか、③公表する情報が変更されたのはどのような事情によるのか、④市民は感染を回避するためには公表された情報をどのように活用すればよいか、といった点について、市のコロナ担当部署に説明を求めることは、申立人の疑問を解消する可能性があるのみならず、市民一般にとっても有益であると当ブログ開設者は考えている。
それにもかかわらず、オンブズマンが調査を実施しなかったのは、コロナ担当部署の業務負担を忖度したか、あるいは、市の説明の当否を判断できるだけの専門的知見を欠くためであろうと当ブログ開設者は推測する。仮に後者であるならば、調査担当オンブズマンは、市の市民に対する説明責任(アカウンタビリティー)の意義を軽視していると言わざるを得ないであろう。
次に、市・道民税の減免が認められないこと等について苦情が申し立てられた第2022-46号も興味深い。市は申立人に対し一貫して「減免は認められない」旨の説明を行ってきたが、その過程で減免却下通知書(別紙)の記載に誤りがあったことが判明している。いみじくも調査担当オンブズマンも指摘しているように、「申立人の審査請求の意向が税政部を通して示されていなければ、更正を行う機会がなかった可能性」も否定できない。さらに、市の部署間での情報共有についても課題が浮き彫りになる等、調査がなされた実質的意義は大きい。くわしくは、結果通知書で確認して頂きたい。
このほか、農業委員会総会の席上における委員の発言を契機とする苦情(第2022-65号)について、調査担当オンブズマンは、条例16条2項を根拠として「調査しない旨」を通知した。しかし、技術的な話になるが、当該条項は苦情がオンブズマンの所轄事項(条例3条)に該当するとともに、調査対象外の事項(条例16条1項)に該当しない場合に適用する規定である。農業委員会の意思決定機関たる総会における事実関係は、オンブズマンの「所轄事項」に該当しない旨位置づけた方が、事案の処理として適切であろうと思われる。
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①第2022-46号
疾病を理由に退職したため市・道民税の納付が困難である旨を申し出たにもかかわらず、減免制度の説明をしない等、市職員の一連の対応に不備があるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
②第2022-51号
生活保護を受給する申立人が同一世帯構成員が施設に入所するに際し、当該構成員の受給する年金及び通帳の取扱い等について苦情が申し立てられたケース。なお、本件申立人は、別途、第2022-57号の苦情も申し立てている。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
③第2022-55号
成年被後見人(本人)が入居する市営住宅の退去手続きに際し、成年後見人の司法書士が退去届に本人の押印を求められたことを不服として苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
④第2022-57号
生活保護を受給する申立人が、転居費用を受領するために保護課を訪問した際、担当職員が何に使用するのかも説明しないまま申立人から受け取った印鑑を押印したことについて苦情が申し立てられたケース。なお、本件苦情の申立人は、第2022-51号の申立ても行っている。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
⑤第2022-59号
退職した勤務先から支払われた給与が収入認定されたことを不服として、苦情が申し立てられたケース。申立人の苦情申立ての取り下げにより、調査は中止された。(担当オンブズマン:原俊彦)
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