上記の期間(2020年11月)に調査を終了したのは8件で、このうち6件で調査結果が通知されている。また、残る2件は調査しない旨が通知され、調査が終了している。
このうち、興味深い案件はいくつかあるが、まずは、第2020-44号である。この案件では、市の業務の受託事業者の元従業員が、勤務先での処遇に関し苦情を申し立てた。
こうした事例では、勤務先の違法行為に対して市が何らかの権限を有していることを前提に、市に権限行使を求める苦情であれば、市に権限行使を求める申立人への市の対応の当否が問われることになろう。
これに対し、単に労使関係上のトラブルに対し市の関与を求める場合には、果たして、オンブズマンの調査の対象「市の機関の業務の執行に関する事項」(札幌市オンブズマン条例3条)といえるのか、検討の余地があると思われる。また、「市の機関の業務の執行に関する事項」に該当するとしても、市職員であれば、「自己の勤務内容に関する事項」はオンブズマンの所轄外の事項であるところ、受託事業者の従業員であれば「自己の勤務内容に関する事項」がオンブズマン調査の対象となるというのは、整合性を欠くようにも思われる。
次に、第2020-50号である。この苦情は、市営住宅の「家賃減免通知書」記載の申請日と実際の申請日が異なるという苦情であるが、オンブズマンは「申立人の事情を酌んだものである」として、通知書記載の日付を格別、問題視しなかった。
たしかに、減免を認めることは申立人の利益となる取扱いではあるものの、制度運用として適切であるかは、なお課題を残すように思われる。より実態に即した対処ができるように、たとえば、申請書に「申請日」と「減免事由発生日」を記載し、「減免事由発生日」からの減免を認める等の対応を求める等、オンブズマンは、安易に例外を認めることを戒める必要があるのではなかろうか。
以上が、2020年11月に調査を終了した案件について、当ブログ開設者の考えるところである。
なお、2020年12月に調査を終了した案件について、2021年1月1日に公文書公開請求を行ったところ、公開決定の期間を延長し、2021年2月5日までとする通知を受けた。したがって、当該期間(2020年12月)に調査を終了した案件を当ブログに掲載するのは、2021年2月以降になると思われる。掲載まで、しばしお待ちいただきたい。
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①第2020-39号
申立人が障害を有する娘の通学のため「移動支援事業」を利用しようとした際の市職員の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
②第2020-42号
市営住宅入居に先立つ説明において、「家賃減免」の説明がなかったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
③第2020-44号
市の事業の受託事業者の元従業員が、当該事業者が違法な行為を行っているにもかかわらず事業を委託した理由の説明や、市が当該事業者に対し必要な調査を行わなかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。申し立ての原因となった事実から1年以上経過しているとともに、申立ての内容がすでにオンブズマンが調査を行った事項についての再調査を求めるものであるとして、調査をしない旨が通知された。
なお、すでにオンブズマンが調査を行った案件として記載されているのは、第28-12号である。(担当オンブズマン:房川樹芳)
④第2020-45号
国外滞在した期間について住民票を海外転出しないままであったところ、その後、国内の住民票を移動させたために過去の住民票を訂正することができないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
⑤第2020-47号
「アイヌ施策推進委員会傍聴要領」が、傍聴者の写真撮影及び録画を禁止していることについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
⑥第2020-49号
市営住宅の駐車場使用料の減免対象を拡大することを求めて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
⑦第2020-50号
市営住宅の家賃減免を受けられることになったが、実際の申請日と「減免通知書」記載の申請日が異なっているとして、事実を記載した通知書の作成と今後の対処についての説明を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
⑧第2020-56号
2018年9月にあった北海道胆振東部地震の災害義援金について、2019年9月1日以降の申請受理分を減額したことについて、苦情が申し立てられたケース。申立人自身が災害義援金の申請を行っていないことから、申立人に直接の利害関係がないとして、調査しない旨が通知されている。(担当オンブズマン:房川樹芳)
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