2023/10/30

2023年9月に調査を終了したケース

2023年10月1日、同年9月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、10月16日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2023年9月)に調査を終了したのは7件で、このうち5件で調査結果が通知された。また、残る2件のうち1件は調査しない旨が通知され、1件は申立人による苦情申し立ての取り下げにより調査が終了している。

さて、今回公開された全7件の案件のうち6件が神谷奈保子オンブズマンの担当である。あたかも”ワンマンショー”の趣である(残る1件の担当は田村智之オンブズマン)が、その仕上がりは決して芳しいものではないと、当ブログ開設者は考えている。

まず、第2023-23号である。この案件は、WEST19(札幌市保健所等が入所している施設である)の駐輪場所に関する苦情であるが、申立人は2023年5月17日から8月2日までの間、市が何の対策を示さなかったことについて苦情を申し立てている。これに対し、神谷奈保子オンブズマンは、7月6日に市民の声を聞く課から保健所健康企画課に情報提供がなされて以降の担当係の対応についての見解を示している。

しかしながら、申立人は、市民の声を聞く課から保健所担当課への情報提供がなされるに先立ち、5月17日、同月23日及び6月12日にも、市民の声を聞く課に対し苦情や要望を出していることを、神谷奈保子オンブズマンは「市政相談票」で確認した旨を自らの判断中で言及している。このような事情を把握しながら、神谷奈保子オンブズマンが市民の声を聞く課から保健所担当課へ7月6日まで情報提供がなされなかった事情についての調査を行っていない。当ブログ開設者は、神谷奈保子オンブズマンの明らかな職務懈怠であると考えている。

次に、第2023-25号である。この案件は、住民税の「減免」を受けている生活保護受給者が札幌市住民税「非課税」世帯支援給付金の支給を受けられなかったことについて、苦情を申し立てた事例である。

この住民税の「減免」と「非課税」の違いは、住民税の賦課期日である1月1日の時点で生活保護を受給している場合には住民税が「非課税」となり、賦課期日より後に生活保護の受給を開始した場合には申請により住民税が「減免」されるというものである(ただし、生活保護受給開始前の賦課期日の時点で住民税非課税の場合は減免の申請は不要である)。

この点、神谷奈保子オンブズマンが自らの判断中でこうした両者の違いを説明していれば、もっと要領のよい判断となったと思われる。とはいえ、制度をベースに勘所を押さえた説明をオンブズマンに期待するのは、"ないものねだり"かもしれない(なお、上記の説明は、あくまで「減免」と「非課税」の違いについてである。「減免」と「非課税」で支援給付金の支給に差を設けることの当否については、別途、検討を要することはいうまでもない)。

さらに、第2023-30号である。この案件は、市職員が勤務時間中にイントラメールで私的なやり取りをしたり、勤務時間中に調査施設を私的に利用しているとして申し立てられた苦情である。神谷奈保子オンブズマンは、「本件申立てに係る市の職員同士間の不適切な行為については、市の業務執行に該当するものではなく、職員個人の私的な行為にあたる」ことから、オンブズマンの所轄事項である「市の機関の業務の執行に関する事項及び当該業務に関する職員の行為」(札幌市オンブズマン条例3条)に該当しないと判断したようである。

しかしながら、こうした判断は是認できない。なぜなら、市職員は職務専念義務を課されているため(地方公務員法35条)、本来行うべき業務を行っていないという職務専念義務の懈怠は、「当該業務に関する職員の(不作為という)行為」として、オンブズマンの所轄事項に該当すると考えられるからである。

もっとも、市職員が不適切な行為をしているという苦情がオンブズマンの所轄事項であったとしても、申立人が申立ての原因となった事実に「利害」を有しないときには、オンブズマンの調査対象外の事項となる(札幌市オンブズマン条例16条1項1号)。したがって、この案件においてオンブズマンが調査をしない理由は、オンブズマンの所轄外の事項だからではなく、申立人が利害を有しないためであるとするのが適切であったと当ブログ開設者は考えている。

このほか、第2023-22号の判断においては、「共感の姿勢や寄り添う気持ちを持った対応をお願いしたい」という見解を披瀝する神谷奈保子オンブズマンであるが、市職員の主観的な姿勢や感情のあり方について云々することについて、当ブログ開設者は根本的な疑問を抱いている。それは、当ブログ開設者が市職員に期待することは、市民の要望を適切に把握することであり、市民に対し適切な説明を行うことだからである。どのようなタイミングでどのような説明を行うのが適切かは、ケースバイケースで案外難しい。求められるのは、職務遂行のための日々の研鑽であろう。

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①第2023-20号
 生活保護受給者がクーラー設置費用の支給を求めたが、その際の職員の対応がけんもほろろであったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

②第2023-22号
 生活保護受給者が家賃の更新料の支払いおよび障害者加算を求めた際の職員の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

③第2023-23号
 WEST19の庁舎周辺部の駐輪禁止エリアを明確にすることを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)
④第2023-24号
 札幌市住民税非課税世帯支援給付金の支給に時間がかかりすぎているとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智之)

⑤第2023-25号
 生活保護受給者がケースワーカーから札幌市住民税非課税世帯支援給付金の支給対象になると思われる旨の説明を受けたにも関わらず、支給対象の「非課税者」ではなく「免税者」であることを理由として支給されなかったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑥第2023-29号
 交通事故の現場で受傷者の救護に当たった際、その後到着した救急隊から失礼な発言をされたとして苦情が申し立てられたケース。申立人が苦情申し立てを取り下げたことにより調査は終了している。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑦第2023-30号
 市職員が勤務時間中にイントラメールで私的なやり取りをしたり、勤務時間中に調査施設を私的に利用しているとして苦情が申し立てられたケース。本件申立てに係る市の職員同士間の不適切な行為については、市の業務執行に該当するものではないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

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