2022/06/15

2022年5月に調査を終了したケース

 2022年6月1日、同年5月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、2022年6月10日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年5月)に調査を終了したのは4件で、全4件で調査結果が通知されている。なお、今回の公開分で、2021年度に申し立てられた案件は、すべて公開が完了した。

さて、今回交付された案件はいずれも興味深いが、そのうち新型コロナウイルス感染症に関する苦情が申し立てられた2件は(第2022-2号及び第2022-3号)、札幌市が感染者に対してどのように対応しているかの一端を知ることができる点で特に興味深い。また、申し立てられた前提となる事実からすると、同一の申立人が申し立てた苦情と思われるが、ややエキセントリックな気質の人物であることが伺われ、対応した職員の苦労がしのばれる。

ところで、この2件を担当したのは、「眠れるオンブズマン」として高名な原俊彦オンブズマン、2か月ぶりの登場である。なかでも、第2022-3号のオンブズマン判断では、当ブログ開設者の知的好奇心を刺激してやまない見解が開陳されている。

この案件では、新型コロナウイルスの感染者がホテル療養をするに際し、他の感染者と同乗してホテルに移動する旨の説明に不満を覚えたことに端を発し、苦情が申し立てられた。オンブズマンは、判断の末尾において、「民主主義社会では、新型コロナウイルス感染拡大防止のための施策は、基本的に、行政から市民に対し協力を要請するものです。必ずしも市民の意向に添うものであるとは限りませんが、市民の意向を無視して強要できるものではありません。」という見解を示している。

ところで、たとえば、グローバルダイニング訴訟で問題になった点であるが、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」では、都道府県知事による事業者に対する要請(同法31条の6第1項)及び命令(同条3項)ならびに命令に従わなかった場合の過料(同法80条1号)が規定されている。

また、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、「感染症法」という。)」では、新型インフルエンザ等感染症(新型コロナウイルス感染症はこれに該当する・同法6条7項3号)にも一類感染症の規定が準用されることが規定され(同法26条2項)、患者に対する入院の勧告(同法19条1項)及び勧告に従わない場合の入院措置(同条3項)ならびに勧告に従わなかった時、入院の期間中に逃げた時及び入院すべき期間の始期までに入院しなかった時の過料(同法80条)が定められている。

これらの規定はあくまでその一例に過ぎないが、「新型コロナウイルス感染症課拡大防止のための施策」には、こうした罰則が規定されているものも存在するのであり、「まん延防止」のために行政が強制力のある措置を執りうると言えるだろう。

したがって、「民主主義社会」たる日本で、国権の最高機関たる国会が制定した法律が上述したような規定をしている以上、原俊彦オンブズマンによる「市民の意向を無視して強要できるものではない」という見解は、正鵠を得たものではないと思われる。

むしろ、ケースによっては、「市民の意向を無視してでも強制しなければならない場合もある」というべきあろうと考えるが、原俊彦オンブズマンがそこまで論ずることができなかったのは、当該オンブズマンが腰抜けであることを何よりも証明しているのかもしれない。なるほど、腰抜けのオンブズマンであるからこそ、当ブログ開設者と面談した際、声を荒らげる一幕もあったのだろう。

なお、感染症法は、都道府県知事は、新型インフルエンザ等感染疑いの者(同法44条の3第1項)及び同感染症の感染者(同条第2項)に対し報告及び協力を求めることができるとともに、報告を求められた者は、報告に応じる義務及び協力に応じる努力義務が定められている(同条3項)が、これらの義務の違反については、罰則は定められていない。

原俊彦オンブズマンが、「新型コロナウイルス感染拡大防止のための施策は、基本的に、行政から市民に対し協力を要請するもの」と論ずるのは、この点を考慮している可能性も考えられる。しかし、そうであるとしても、そのことを明示しない限り、「協力を要請するもの」というオンブズマンの見解は、単なる思い込み、あるいは知ったかぶりの誹りを免れないであろう。よくわからないまま大風呂敷を広げすぎ、とも言えようか。

ただし、そうした原俊彦オンブズマンの判断だからこそ、当ブログ開設者の知的好奇心を刺激してやまないのであり、市民の主体的・自律的活動を促すという観点からは、原俊彦オンブズマンは絶大なる貢献をしていると、当ブログ開設者は考えるのである。

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①第2021-111号
 市道の除雪で雪山ができることでその雪山から敷地内にシカが侵入し被害を受けているとして、市に対応を求めて苦情が申し立てられたケース。黒塗りで非公開とされているために判然としないが、シカによる食害が生じているものと推測される。シカの食害については、北海道新聞のニュースサイト掲載の記事が参考になる。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

②第2022-2号
 新型コロナウイルスの濃厚接触者となったことによりPCR検査を受けることにしたが、問い合わせた一般相談電話窓口では保健所が実施する無料の検査についての説明を受けられず、有償の発熱外来を受診したとして、その分の費用の支払いを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2022-3号
 新型コロナウイルスの感染者がホテル療養するに際し、当初は他の感染者と同乗するという説明だったのに、翌日には単独で搬送できることになったとして、当初の説明と職員の説明時の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

④第2022-4号
 子育て支援特別給付金を申請したところ申請期限を過ぎていることを理由に申請書が返却されたが、当初の申請書類には申請期限の記載がなされていなかったとして、当該給付の支給を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

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