札幌市オンブズマンは、毎年、活動状況を公表することが義務付けられている(札幌市オンブズマン条例27条1項)ところ、先日、平成30年度札幌市オンブズマン活動状況報告書が公表された。
当該活動状況報告書によると、平成30年度に市民から札幌市オンブズマンに申し立てられた苦情は77件で、このうち調査結果が通知されたものが66件、調査結果が通知されることなく調査が終了したものが11件となっている。また、調査結果が通知された事例のうち38件については、調査内容の要約が掲載されている(ほかにオンブズマンの発意に基づく調査2件の要約も掲載)(注1)。
このように、活動状況報告書には、市民の苦情についてオンブズマンが調査した事例のすべてが掲載されているわけではなく、調査結果が通知された事例のうち残る28件と、調査結果が通知されることなく調査が終了した全11件が非掲載となっている。
そこで、このエントリーでは、平成29年度に引き続き、活動状況報告書の掲載から漏れたあわれな事例を紹介する(注2)。以下に紹介する案件が、いかなる事情により活動状況報告書の掲載から漏れたのか、その理由を想像するのも一興であろう。
(注1
)なお、平成29年度は、苦情申立件数全82件中、調査結果を通知した67件のうち40件が活動状況報告書に掲載されていた(非掲載27件)。したがって、活動状況報告書に掲載された案件の件数及び掲載される割合は、特に大きく変化していない(平成29年度・30年度とも、全苦情申立件数のうち約半数、調査結果を通知した件数の6割弱が、活動状況報告書に掲載されている)。
(注2
)当ブログ開設者は、オンブズマン調査は、全件公表を原則とするべきであると考えている。それは、活動状況報告書への掲載事例が恣意的に選択されないようにするとともに、全件公表がオンブズマン調査の質を確保するためには必要不可欠であると考えているためである。この点、札幌市よりも遅れて自治体オンブズマン制度を設けた熊本市では、全件・全文の公開を原則とした運用がなされており、札幌市ができない理由はないように思われる。
(1)調査結果を通知したもの(28件)
児童相談所の職員の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
児童相談所が子どもを一時保護したことに関し苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
・第30−10号
申立人が考える水道使用量増加の原因は水抜栓の漏水であるところ、水抜栓の構造を知るために市から提供を受けた図面は水抜栓が「閉」の状態のみ記載されたものであったことから、「開」の状態の図面も提供してほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
・第30−10号
申立人が考える水道使用量増加の原因は水抜栓の漏水であるところ、水抜栓の構造を知るために市から提供を受けた図面は水抜栓が「閉」の状態のみ記載されたものであったことから、「開」の状態の図面も提供してほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
生活保護の受給者が居宅から立ち退きを余儀なくされるとともに、保護を廃止されたとして、保護廃止された日付の決定理由、立ち退きに際し保護課職員が立ち会わなかった理由についての説明及び退去した居宅の私財の現状についての調査を求め、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
生活保護の受給者が、交付された文書の交付方法や内容、担当ケースワーカーの家庭訪問時の対応等、市職員の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
生活保護を受給する申立人が、担当ケースワーカーに質問しても十分な回答を得られない一方で、医療機関の受診に関して質問攻めにされたり、医療機関の受診に関し受信先医療機関への連絡もれがあるなど、その対応に不信感を抱いており、担当ケースワーカーの交代を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
新年度から改定となった市営住宅の賃料について疑問があり、7月以降、適正な金額に訂正されたが、4月から6月分については訂正されないままであることに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
消防署が防火査察を実施する基準が不明瞭であるとともに、消防訓練の実施を依頼した際の職員の対応が不躾なものであったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
インターネットからの公文書公開請求について、請求を受理した旨の返信メールが送られてくるように改善を求め、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
市営住宅の居住者が、他の居住者から迷惑行為を受けているとして、改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
・第30−38号
マンションの管理組合は「消費者」に該当しないとして、消費者センターが十分な相談対応を行わないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
マンションの管理組合は「消費者」に該当しないとして、消費者センターが十分な相談対応を行わないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
申立人が公文書公開請求を行ったっところ、請求した文書(の一部)は作成しておらず保有していないとのことであったが、そうであるならば、「公開しないという事実を公文書で明らかにすべきである」として、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
生活保護を受給している申立人が、旧担当ケースワーカーが自身の個人情報を主治医に漏洩したことを契機として、旧担当ケースワーカーの姓だけではなく名も明らかにすること等を求めて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
生活保護の受給を開始した申立人が、当初居住していたウィークリーマンションの滞在費が保護費として認められなかったことや、所持金が収入として認定されたこと等を不服として、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
・第30-52号
滞納していた水道料金を納付するために出向いたにもかかわらず、納付金額が少なすぎるとして受け取りを拒否されたこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
・第30-52号
滞納していた水道料金を納付するために出向いたにもかかわらず、納付金額が少なすぎるとして受け取りを拒否されたこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
申立人の子が通う高校から下校時に同校の生徒から何某かの加害行為を受けたことについて、その後の高校及び市教委の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
・第30−59号
札幌市オンブズマンの苦情等調査結果通知書(第30-46号)について一部公開決定を受けたが、当該公文書における非公開部分の取り扱いが不当であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
・第30−59号
札幌市オンブズマンの苦情等調査結果通知書(第30-46号)について一部公開決定を受けたが、当該公文書における非公開部分の取り扱いが不当であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
市民の声を聞く課で実施している法律相談を受けた際の記録について、市として相談内容の記録を残していなことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
申立人の両親に対し、高齢者虐待防止法に基づく分離措置が行われたこと関し、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
・第30−66号
生活保護受給者が、担当ケースワーカーの家庭訪問を受けた際の対応について、担当ケースワーカーの上司から事実に反する発言をされたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
・第30−66号
生活保護受給者が、担当ケースワーカーの家庭訪問を受けた際の対応について、担当ケースワーカーの上司から事実に反する発言をされたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
児童扶養手当の申請に際し、過去に提示したのと同様の資料の提示を求められたことについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
障がい者の交通費助成で交付を受けた物(詳細は不明)の再発行手続きの際の説明を含む、市職員の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
他の公園利用者によるテニスコートの雪割り作業によって、公園内を散歩することに支障が生じているとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
自宅近隣の建物の建築確認に関し、建築計画概要書と実際の建築物の違いや、完了検査が未実施であること等について、納得のいく回答が得られていないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
統一地方選の開票事務のアルバイトに不採用になったがその理由に疑問があるとして、今後の選考方法の改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
市民税・住民税の差押予告書が届いたが、差押予告書には「再三にわたり納付催告をしてきました」と記載されているものの納付催告を受けた事実はないとして、延滞金支払いの免除等を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
DV被害を理由とする住民票等の閲覧制限の支援措置を受けているにもかかわらず、担当職員が電話での問い合わせに回答したこと及び転居を急かす保護課の担当職員の対応等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
香料や化学物質の被害に苦しむ申立人が(※化学物質過敏症と思われる。)、これらの物質の利用の自粛を求めるポスターの掲示や被害に苦しむ者への合理的配慮を求めて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
(2)調査結果を通知しなかったもの(11件) ・第30-6号
申立人の苦情が、「職員の自己の勤務内容に関する事項」に該当するとして、調査しない旨が通知されたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
障害程度区分認定に関し、区保健福祉課の職員の対応について苦情が申し立てられたケース。苦情申し立ての原因となった事実が1年以上前のことであるとして、苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:杉岡直人)
保健所に設置された医療安全支援センターの対応等について苦情が申し立てられたケース。苦情申し立ての原因となった事実が1年以上前のことであるとして、苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:杉岡直人、なお、第30-56号は、この案件の申立人が後日、改めて苦情を申し立てた案件と思われる。)
障害児相談支援費の不正受給に関し、返還の意思があるにもかかわらず行政処分を言い渡されたとして苦情が申し立てられたケース。申立人が苦情申し立てを取り下げたことで、調査が終了している。(担当オンブズマン:房川樹芳)
生活保護受給者が、現在の担当ケースワーカーと十分に連絡をとることができないとして、苦情が申し立てられたケース。申立人が苦情を取り下げたことにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:杉岡直人)
家の前の道路とマンホールの間の段差について土木センターに相談しても取り合ってもらえないという苦情について、申立人の取り下げにより調査が終了したケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
市が管理する緑地帯にごみステーションが設置されていることにつき、市に解決を求めているものの未だ解決が図られていないとして、苦情が申し立てられたケース。申立人には直接の利害関係がないとして、調査しない旨が通知されている。(担当オンブズマン:杉岡直人)
特別児童手当の支給が遅れているとして、早期の支給を求めて苦情が申し立てられてケース。申立人が苦情を取り下げたことにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:杉岡直人)
インフルエンザに罹患した子が保育園に再登園するにあたり、治癒証明書の提出を求められたところ、保育園の説明によれば市が提出を義務づけているということであったので、そうした取扱いの是正を求めて苦情が申し立てられたケース。申立人が苦情を取り下げたことにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:岩田雅子)
子どもが一時保護を受けたことに関し、児童福祉総合センターの対応に時間がかかりすぎるとして、苦情が申し立てられたケース。申立人が苦情を取り下げたことにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:房川樹芳)
滞納している市税を積極的に納付する前提として、市が20年前に行った福祉サービスに関する処分に違法行為があったことを認め、謝罪するなどの解決策を行うことを求め、苦情が申し立てられたケース。「申立人の原因となった事実があった日」が調査対象外の事項に該当するとして、苦情申立人に調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:杉岡直人)
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