2022/10/14

2022年8月に調査を終了したケース

 2022年9月1日、同年8月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、公開決定期限延長のうえ、9月27日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年8月)に調査を終了したのは11件で、このうち7件で調査結果が通知されている。また、残る4件は調査をしない旨が通知されている。

さて、今回公開された案件のうち、最も興味深い案件が、第2022-22号である。この案件は、札幌市は敬老パスのチャージ業務を日本郵便北海道支社に委託しているところ、申立人がチャージのために郵便局を訪れた際の郵便局職員の対応について市に改善を求めたが適切な対応がなされないとして、苦情が申し立てられた事案である。

残念ながら、事実関係の詳細は非公開とされていて不明である。のみならず、業務委託契約に関する業務マニュアルの記載内容についても非公開とされている。当ブログ開設者は、当該箇所を非公開とすることについて、公文書一部公開決定通知書における非公開部分の記載及び非公開とする理由の記載が適切ではないように思われたことから、札幌市オンブズマンに苦情を申し立てたところである。調査終了の時期がいつになるかは不明であるが、調査について公文書公開を受けて以降、当ブログで紹介したい(追記:当該苦情の調査結果通知書(第2022-52号)は、このエントリーで紹介している。また、オンブズマン調査終了後に行った審査請求が認容されたことから、第2022-22号のファイルを差し替えた)。

次に、第2022-28号、当ブログ開設者が申し立てた苦情である。公文書公開請求に対する公開対象公文書の特定が適切ではなく(公開対象とされた「一覧表」のみの公開では不十分であるという趣旨である)、文書の追加がなされたことを不服として申し立てた苦情である。すなわち、追加に要する間待つことを余儀なくされる、ということである。この点、調査対象のオンブズマン事務局は、対象公文書の追加をしておきながら、当初の対象公文書の特定が適切であったと「二枚舌」の説明をおこなっている。しかしながら、当初の決定が適切ならば、公開対象公文書を追加する必要もなかったはずである。

そして、調査担当のオンブズマンも、こうした市の「二枚舌」の説明を疑問視することなく是認した。こうした判断は、苦情申立人が何を問題視しているかを理解できない、あるいは曲解したまま調査を実施したためであると思われる。すなわち、調査担当オンブズマンには、オンブズマンが調査結果通知書において調査対象部局に要請した内容と、フォローアップ調査でオンブズマン事務局が調査対象部局に照会した内容の違いが認識できなかった、ということのようである。もっとも、そうした調査であっても、調査担当のオンブズマンが何を理解できなかったかが理解できたという点においては、有益だったという評価も可能かもしれない。

とはいえ、「オンブズマン事務局が実施したフォローアップ調査の内容が確認できる文書」という公文書公開請求に対し、「一覧表を全体としてみれば、容易に内容を把握できるものが公開され」というオンブズマン判断はいかにもひどい。他に適切な文書がなかったのならば話は別であるが、追加で公開された文書には、オンブズマン事務局が調査対象部局に対し、「①前回のフォローアップ調査後の対応、②その他、本件を受けて実施又は検討している事項」について回答を求める旨が記載されていた。こうした記載は、公開請求の対象とした「オンブズマン事務局が実施したフォローアップ調査の内容」そのものであるが、当初公開された「一覧表」には、全く記載されていない。

さらに、調査担当のオンブズマンは、担当職員が情報提供により知る権利が損なわれないよう配慮したとも言及しているが、公文書公開決定に対しては審査請求が行える。それに対し、情報提供に対しては不服申し立ては制度化されていない。したがって、公文書公開請求に対し情報提供で対応したからそれでよい、という話にはならないと当ブログ開設者は考えている。

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①第2022-13号
 除雪が迅速になされなかったことや、その際の業者が受注した道路工事において安全が十分に確保されていなかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2022-17号
 住民基本台帳カードを紛失し再発行を依頼したところ、当該カードが有効期限内であるにもかかわらずマイナンバーカードの発行しかできないという対応をされたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2022-19号
 自営業を営む申立人が新型コロナに伴う各種給付金を受給することで生活保護が廃止されることになったが、当初説明を受けていた金額よりも納入通知書記載の返還金の額が大きかったことや、納入通知書記載の金額にも誤りがあったこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

④第2022-20号
 非公開とされた部分が多く詳細は不明であるが、申立人が児童相談所に虐待の通報をしたことについて、児童相談所が当該児童の世帯に情報を漏洩したとして苦情が申し立てられたと思われるケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑤第2022-22号
 敬老優待乗車証のチャージのために郵便局を訪れた際の職員の対応(詳細不明)等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
*追記:2022年3月3日付の裁決により、当初の決定では非公開とされていた箇所が追加で公開されている。

⑥第2022-24号
 生活保護受給者が保護課から適切な支援を受けていないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑦第2022-28号
 公文書公開請求をしたところ、当初なされた一部公開決定では対象公文書の特定に漏れがあり、追加決定がなされることになったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)


⑧第2022-30号
 生活保護受給中の申立人が入居中の住宅の大家から退去するよう命じられたが借地借家法に違反しているとして苦情が申し立てられたケース。住居の貸主・借主間の関係は「市の業務」に該当せず、市の対応に関してはすでに調査を実施している(第2022-15号)として、申立人に対し苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑨第2022−31号
 過去に2度、居宅に滞在していた際に保健師が訪問してきて病院に救急搬送されることがあったとして、苦情が申し立てられたケース。苦情申し立ての原因となった事実のあった日から1年が経過しているとして、申立人に苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑩第2022−33号
 介護施設内で生じた窃盗事件を施設がもみ消しをするのに市職員が加担する等の行為があったとして、苦情が申し立てられたケース。申立人が現に施設と係争中であるとともに、苦情申し立ての原因となった事実のあった日から1年が経過しているとして、申立人に苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑪第2022−34号
 生活保護を受給している申立人が、過去に年金を受給した際に返還の通知を受けるまで3年近くかかったことの理由を調査することを求め、苦情が申し立てられたケース。申立ての原因となった事実からすでに10年以上経過しているとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)

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