2026年3月1日、同年2月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、2026年4月15日に一部公開決定がなされた。
上記の期間(2026年2月)に処理を完了したのは11件で、このうち6件で調査結果が通知された。また、残る5件のうち2件については苦情について調査しない旨が通知され、3件は苦情申立ての取り下げという取り扱いがなされている。
1.「複数回」の苦情申立てがなされた場合はどのように対応すべきか
さて、今回公開を受けた案件で興味深いのが、過去に複数回の申立てを行った申立人が改めて苦情申し立てを行った案件が2件存在し(第2025-93号および第2025-100号)、どちらの案件も担当オンブズマンの梶井祥子は「調査しない旨」を通知した。
このような「複数回」の申立てについて、当ブログ開設者は「オンブズマンの取扱件数がかさ上げされ、活発な活動を行っていると対外的にアピールすることができるという点で、札幌市オンブズマン制度にとっては『超上客』であろう」と論じたことがある(このエントリー)。
また、「複数回の申立てをする『超上客』をいかに『おもてなし』すべきか」として、別のエントリーに見出しを設けて論じたこともある(1回目および2回目)が、現在の札幌市オンブズマン制度の運用においては、こうしたケースの取り扱いが必ずしも十分に整序されていないと当ブログ開設者は考えている(このエントリーも参照されたい)。
そのように考える至った事情については再論しない(上述の過去のエントリーを参照されたい)が、札幌市オンブズマン条例が「オンブズマン(中略)の行為に関する事項」(同条例3条6号)については「オンブズマンの所轄外」である旨を規定する下においては、同一の申立人による再度の苦情申し立てについて、以下のような対応をするのが適切であると当ブログ開設者は考えている(なお、調査を実施する場合は、当該苦情申立てがオンブズマンの「所轄事項」に該当することは当然の前提である)。
(1) 過去にオンブズマンが調査を実施し調査結果を通知した苦情と同内容の苦情申し立てについては、調査結果を通知し当該苦情に対する判断を示したという「オンブズマンの行為」についての苦情申し立てであるとして調査しない。
(2) 過去にオンブズマンが調査を実施しない旨を通知した苦情と同内容の苦情申し立てについては、「調査しない」旨の判断をしたという「オンブズマンの行為」についての苦情申し立てであるとして調査しない。
(3) 過去にオンブズマンが調査を実施した苦情の「その後の事情」に関する苦情申立てについては、先行調査終了後の「その後の事情」を調査事項として調査を実施する(その際、必要に応じて再度苦情申し立てに至るまでの経緯の説明が求められる)。
(4) 過去にオンブズマンが調査しない旨を通知した苦情の「その後の事情」に関する苦情申立てについては、過去の案件以後の「その後の事情」を調査事項として調査を実施する。
以上が当ブログ開設者が考える「原理原則」である。その際、「その後の事情」についてさほど厳格に解さずに、オンブズマンは「論点を絞ったうえで」積極的に調査を実施するの適切であろうと当ブログ開設者は考えている。それは、「調査しない」というオンブズマン判断が、かえってその後の苦情申し立てを誘発しているのではないかという疑念を禁じ得ないからである。
なお、個別の案件の適否については、項を改めて論じることにする。
2.オンブズマン調査後の担当部局の対応に関する苦情の取り扱いについて
今回公開された第2025-93号の申立人は、これまで、以下の苦情申し立てを行っている(ことが確認できるが、さらに別件で申立てを行っている可能性はある)。
月寒体育館のスケートリンクで接触事故に遭遇したが、以前から改善を要求しているにもかかわらず未だ実現されていないとして、改めて改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
月寒体育館の利用状況に関して過去にオンブズマンに苦情を申し立て、調査結果を踏まえて担当課と協議したが、その際に決定された対応が徹底されていないとして苦情が申し立てられたケース。「オンブズマンが一度調査して結果を通知した事項」は「オンブズマンの行為に関する事項」(札幌市オンブズマン条例3条6号)に該当するとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:梶井祥子)
過去に調査を終了した案件(第2022−12号)の調査終了後の対応について苦情を申し立てたところ「調査をしない旨の通知」(第2025−66号)を受けたが、オンブズマン室から担当部局あてに苦情申立てがなされたことが通知されていなかったとして、苦情が申し立てられたケース。担当部局に通知をしないのは条例に基づく対応であり、苦情はオンブズマンの所轄事項ではないとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:樋川恒一)
札幌市営のスケート場で禁止されている「営利行為」について説明を求めても適切な回答がなされない等、市の対応について苦情が申し立てられたケース。「営利行為の状況についてはスケート場の管理・運営にかかわる問題であり、様々な立場の利用者に及ぶことを考慮すると、その利害を一元的にとらえてオンブズマンの調査の対象にすることは難しい」として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:梶井祥子)
以上の次第で、第2025-66号および本件第2025-93号はいずれも担当オンブズマンは梶井祥子であるが、どちらの案件も「調査しない旨」が通知されたが、当ブログ開設者はどちらの案件も、「先行調査終了後のその後の事情」についての苦情申立てとして調査を実施するのが適切であったと考えている。
この点、当ブログ開設者は、第2025₋66号について、「この案件の苦情申立人は、過去に苦情を申し立てた(第2022-12号)『その後』の市の対応について、苦情を申し立てている。こうした場合において、『オンブズマンが一度調査して結果を通知している』ことは、そのこと自体が調査をしない理由とはならないと思われる。それは、調査を終了した後の『新たな事実』に基づいて苦情が申し立てられたと評価することができるからである。」と論じている(このエントリー)。
また、第2025-93号も、「市営スケート場で禁止されている『営利行為』について明確にするよう求めても納得のいく回答が得られない」ことが苦情申し立ての趣旨であり、その点について説明を受けることは申立人の利害が認めらると当ブログ開設者は考えている。
しかしながら、調査担当の梶井祥子は、「営利行為の状況についてはスケート場の管理・運営にかかわる問題であり、様々な立場の利用者に及ぶことを考慮すると、その利害を一元的にとらえてオンブズマンの調査の対象にすることは難しいと考えます」として、調査をしない旨を通知した。
このような判断は、申立人が当該スケート場における禁止行為である「営利行為」についての説明を受ける「利害」と、「営利行為」が禁止されることに伴う利用者の「利害」を故意に混同する極めて不適切な判断であると当ブログ開設者は考えている。図らずも「梶井祥子にオンブズマンの職は荷が重い」ことを示していると思われる(「その1」および「その2」はこのエントリー、「その3」はこのエントリー)。
ところで、第2025-87号の「苦情申立ての趣旨」に記載された申立人の主張が興味深い。それによると、「第2025-66号のオンブズマンの面談の際に同一事案として調査しない旨の見解は示されていた」ということだからである。どうやら梶井祥子は、申立人と面談した際、「調査終了後の対応についての苦情」を「同一事案」として認識している旨、直接伝えていたらしい。
もっとも、申立人は調査終了後の対応に不満を抱いたから新たに苦情を申し立てたにもかかわらず、「同一事案」として調査すらされなかったことに「異議はない」と主張しており、オンブズマンも申立人も(調査を終了した案件と)「同一事案」という点で見解が一致している。
それでも、申立人は結局、第2025₋87号において、「第2022-12号が3年経っても履行されていないことに対する苦情申し立てであることを強調し、調査することをもっと強調すべきであった」と後悔の念をにじませている。梶井祥子が第2025-66号について「調査しない旨」の判断をしたことの「罪深さ」を示していると思われる。
3.再三の問い合わせをする市民に対し『今後は回答を控える場合がある』旨の回答をすることの当否について
続いて、第2025-100号も、同一の申立人が複数回にわたりオンブズマンに対する苦情申し立てを行ったうちの1件である。
苦情申し立ての趣旨は、生活保護を受給する申立人が第2025-60号の調査における指摘内容について問い合わせても担当部局は具体的な言及をせず、申立人が受けた精神的苦痛や混乱について再度説明を求めても話が平行線である旨の見解を示すのみで具体的な説明を行わず、さらに、回答文書には「今後は回答を控える場合がある」と記載されており、申立人は説明や対話が打ち切られることへの強い不安と精神的苦痛を受けた、というものである。
担当部局にとって、申立人から再三にわたり説明を求める要望に対応することが、過重な業務負担に感じられるであろうことは容易に想像できる。しかしながら、『今後は回答を控える場合がある』という文書回答の記載はおだやかでない。結局、さらに申立人の不安をあおることになり、本件苦情が申し立てられることになったものと思われる。
これに対し、調査担当オンブズマンは、「本件苦情申立ては、第2025-60号を通知した後の市の対応に関する内容であり、前回の苦情申立てと一連のもので、背景が同一であると考えられ」、「すでにオンブズマン判断が示されていることから、『オンブズマンの行為に関する事項』として所轄外の事項に該当する」と判断した。
しかしながら、前述したように、『今後は回答を控える場合がある』という回答はおだやかではない。オンブズマンがこの点に限定して調査を実施すると、担当部局がなにゆえにそのような回答をせざるを得なかったのか、その理由が調査結果通知書に記録として残されることになったはずであるが、残念ながら本件調査が実施されることはなかった。
オンブズマンとしても、本件申立人からの複数回の苦情申し立てに業を煮やしている可能性はあるが、「行き場」を失ったと感じる本件申立人からの苦情申し立てにさらに拍車がかかることを当ブログ開設者は懸念する。
なお、当ブログ開設者が確認できた限りではあるが、本件苦情申立人が申し立てた苦情は以下のとおりである。苦情調査を行った案件には(実)、しない旨が通知された案件には(不)を付した(あくまで「確認できた限り」なので、このほかにも本件申立人が申し立てた案件や、今後、公開対象となる案件が存在する可能性がある)。
4.そのほかの注目案件
このほか、医療保険の「高額療養費」の支給に関する第2025-91号は、苦情申立てにいたる前提事実が興味深い。すなわち、「限度額認定証」の交付を受けていなかったために償還払いとなったのであろうことと、さらに、未支給の「高額療養費」が「本人」死亡により法定相続人に支給されるべきところ、「パートナー」である本件申立人はその対象とならなかったであろうことが推測されるからである(が、苦情等調査結果通知書は正面からは論じていない)。
もっとも、こうした「制度に即した一般論」は、当ブログ開設者のように「制度そのもの」に対する興味関心があるものにとっては興味深いものの、少なくとも本件苦情申立人には「相性が悪い」ものとなるであろう。本件苦情申立人にとっては、神経を逆撫でされるであろうからである。
また、第2025-80号は、当ブログ開設者が申し立てた案件である。「制度に精通した市民」に対しては制度説明を省いても差し支えないかのような説明をする市の回答や、「公開請求に対する決定は、札幌市情報公開条例第13条第1項の特例の場合を除き、公開請求の一部について直ちに非公開決定をすることも想定されていないと認められます」というオンブズマン判断など、疑念を抱かざるを得ない点が散見される調査である(同条例13条1項は、公開決定の期限の延長についての規定であり、「直ちに非公開決定」をするための根拠とはならない)。
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①第2025-80号
公文書公開請求を受けた担当部局による今後取得することになる文書の取り扱いについての説明が要領を得ず、その後も複数回の問い合わせをする必要が生じたとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:樋川恒一)
②第2025-86号
市民の声を聞く課に電話した際の職員の対応が市民の声に寄り添うものでなかったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)
③第2025-88号
申立人が金銭管理の支援をしている生活保護の受給者がおむつ代を自費負担していたところ、おむつ代が支給される制度があるとして遡及支給を求めたところ過去2か月分しか支給されず、おむつ代支給の制度についてケースワーカーからの説明も受けていないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)
④第2025-89号
生活保護受給者が特定の診療科受信を強要されたことや、転居費用が保護費として支給されないこと等について苦情が申立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)
⑤第2025-90号
生活保護受給者が体調がすぐれないにもかかわらず就職活動をするよう強制されたとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)
⑥第2025-91号
申立人のパートナー(申立人とは法律婚関係にはない模様)が死亡した後に高額療養費が振り込まれる旨の通知が届いたこと(ただし未支給)や、保険年金課からパートナーの相続人の存否を聞かれたこと等について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)
⑦第2025-93号
札幌市営のスケート場で禁止されている「営利行為」について説明を求めても適切な回答がなされない等、市の対応について苦情が申し立てられたケース。「営利行為の状況についてはスケート場の管理・運営にかかわる問題であり、様々な立場の利用者に及ぶことを考慮すると、その利害を一元的にとらえてオンブズマンの調査の対象にすることは難しい」として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:梶井祥子)
⑧第2025-98号
除雪の際、雪の塊をマンションの壁に窓の高さ以上に積んでいくとして苦情が申し立てられたケース。オンブズマン事務局から土木センターに要望を伝えるので土木センターからの説明を待つよう連絡し了承を得た(何についての了承を得たのか不明だが「申立ての取下げ」と思われる)。(担当オンブズマン:神谷奈保子)
⑨第2025-100号
オンブズマン調査(第2025-60号)の調査終了後、生活保護を受給する申立人がこれまで受けた精神的苦痛や混乱に陥ったことついての再度の問い合わせに対する回答内容が不十分であるとして苦情が申し立てられたケース。本件苦情申し立てが前回の苦情申し立てと一連のもので背景が同一であるとして、調査しない旨が通知された。なお、本件苦情申立人はほかにも複数の申立てを行っている(このエントリーを参照)。(担当オンブズマン:梶井祥子)
⑩第2025-102号
期日前投票が適正に行われているか確認するためにどのような手段があるか相談したいとしてオンブズマンに対する苦情申し立てがなされたケース。選挙管理委員会に説明をもめるようオンブズマンが助言し、申立てを取り下げる旨を聴取した。(担当オンブズマン:樋川恒一)
⑪第2025-107号
自宅前の除雪作業で申立人の至近距離で重機が操作されるという危険な状況にあったとして、札幌市の安全管理体制についての回答を求めて苦情が申し立てられたケース。申立人からの質問や要望についての担当部局から回答に納得いかない場合にはあらためてオンブズマン室に相談するよう案内し了承を得た(何についての了承を得たのか不明だが「申立ての取下げ」と思われる)。(担当オンブズマン:神谷奈保子)