2021/05/26

オンブズマン室の専門調査員を募集中

オンブズマン室専門調査員とは、「オンブズマンの職務の遂行を補佐するため」置くことができると規定されている職種である(札幌市オンブズマン条例28条1項)。このたび、札幌市オンブズマンの公式webサイトに、オンブズマン室の専門調査員を募集する旨が掲載された。

求める人材は、「法学、行政学等、行政に関する知識を有する方で、大学院の在籍者又は修了者若しくは 同等の知識を有するとオンブズマン事務局長が特に認める方」だそうだ。

勤務条件は、1週あたり3日の勤務日(勤務時間7時間)で、月額129,471円の給与(含・地域手当)+諸手当となっている。時給に換算すると、(月額129,471円)÷(年間52週×3日×7時間/12)≒1,423円となる(1か月平均の所定勤務時間は91時間)。

また、諸手当としては、「時間外勤務手当」と「期末手当」が明記されている。なお、「期末手当」についての関連規定を確認したところ、6月1日及び12月1日に在職する場合、過去6か月勤続した場合には、期末基礎手当基礎額(給与+地域手当)×1.25の額が支給される模様である(6か月に満たない場合は、期間に応じて段階的に減額される)。

以下に、サイトに掲載された募集要項の画像データを貼付する。

2021/05/24

2021年4月に調査を終了したケース

2021年5月1日、同年4月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、同年5月17日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2021年4月)に調査を終了したのは10件で、このうち8件で調査結果が通知されている。また、残る2件は、申立人による申立ての取り下げにより、調査は終了している。


今回もまた、いくつかの興味深い案件が公開対象となったが、最も注目に値するのが、第2020−79号である。この案件は、障がいのある娘が短期入所を利用するに際し、聴き取りが行われないまま支給量が決定されたというものである。

担当の原俊彦オンブズマンは、「不適切な事務処理」があったとは考えていないようだが、この案件では、いったん支給量が決定されたのち、遡って再度、支給量の再認定がなされている。このことは、申請時点で適切な聴き取りがなされないまま支給量が決定されたからこそ、再認定する必要が生じたことを意味すると思われる。

また、原俊彦オンブズマンは、「具体的な利用日数を聞き取らなかったとしても、それが直ちに問題であるとは言え」(ない)とも述べているが、支給決定を受けるための「申請があったとき」には、市町村の職員が障害児の保護者に面接して調査するのが原則である(障害者総合支援法20条2項)。

その際、「障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容」が調査事項とされている(障害者総合支援法施行規則8条3号)のだが、原俊彦オンブズマンは、サービスを何日利用するかは、「サービスの利用に関する意向の具体的内容」に該当しないというのだろうか。

さらに、原俊彦オンブズマンは、相談支援事業所が作成した「サービス等利用計画案」に記載された利用日数をもって、市が「サービスの利用に関する意向」を把握したと考えているようだが、サービス等利用計画案を作成する相談支援事業所が利用日数の要望を把握することは、上記の障害者総合支援法20条2項が規定する「面接」とは異なる手続きである。

このように、この案件の調査担当の原俊彦オンブズマンの判断は、市が対応の拙さを糊塗するために行った説明をそっくり鵜呑みにした代物であるように思われる。この案件の処理には7週間を要しているが、下手の考え休むに似たりとでもいうべきか。”眠れるオンブズマン”原俊彦のネーミングも、あながち的外れではないのかもしれない(”眠れるオンブズマン”の由来は、このエントリー及びこのエントリーを参照されたい)。

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①第2020−79号
 障がいのある娘が短期入所を利用するに際し、利用日数や利用の仕方等について聴き取りが行われないまま利用量が決定されたことをはじめとして、職員の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

②第2020−80号
 新たに戸籍を作成した際に名前の漢字を間違えられたが、2年ほど前に札幌市に転入した際には住民票の住所の表記を間違えられたこともあることから、入力ミスが発生した原因の説明と、再発防止を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

③第2020−83号
 芸術の森の木工房をグループで利用する際に危険な行為があったとして、後日、代表者に対する注意がなされたが、注意をするのであればその場で行うべきであるし、安全管理は施設の側の責任であり利用者に責任を負わせるのは適切ではないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

④第2020−84号
 パートナーシップ除雪の際の誘導が適切ではなかったこと及びその件についての問い合わせを2週間以上放置されたことについて、苦情が申してられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑤第2020−87号
 生活保護受給者から委任を受けて市に対応を求めているにもかかわらず、市は文書、メール以外では対応をしないと主張することをはじめとする、市職員の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑥第2020−88号
 札幌市が独自に実施しているパーソナルアシスタンス制度(※市の制度紹介)において、障がい者のヘルパーとして仕事をしているが、契約先の障がい者から不当な取り扱いをされているとして、制度を利用する際のルールの確立を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑦第2020−89号
 死亡した生活保護受給者が入居していたアパートの大家が、保護課が受給者に対する支援が不十分だったこと及び受給者が滞納していた家賃の支払いを求めて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑧第2020−90号
 NPO法人が法人事務所の住所変更を市に届け出ようとした際の職員の対応について、苦情が申し立てられたケース。申し立ての取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:原俊彦)
⑨第2021−1号
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う飲食店への営業時間の短縮要請を受け、第五次対策協力支援金の申請をしようとしたものの、申請期限を過ぎているとして申請を受け付けてもらえなかったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
⑩第2021−3号
 知人のアパートに勝手に出入りしていた生活保護受給者が、知人が死亡したのち、申立人に対し荷物の処分料を請求してきたので支払ったが、後になっておかしいと思ったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

2021/05/10

オンブズマン調査の分野別分類(2020年度終了分・全件)

このブログでは、読者の利便性を高めるべく、過去の各年度に調査を終了した案件について、大まかな行政区分後のエントリーを作成してきた(平成28年度平成29年度平成30年度及び2019年度)。それにならい、2020年度も、オンブズマン調査を大まかな行政分野ごとに区分することにした。

 とはいえ、分類は必ずしも厳格なものではなく、あくまで便宜的なものである。そのため、職員対応に関する苦情という項目には、この項目のみに掲載した案件のみならず、他の項目と重複する案件も掲載してある。また、区分が困難な案件は、「その他の苦情」という項目に掲載した。

 なお、各案件番号には、pdfファイルへのリンクが張り付けてある。より詳しい内容が知りたい場合には、pdfファイルを開いて確認していただきたい。

この1年を振り返ると、新型コロナに翻弄された一年であったことが、オンブズマンに申し立てられた苦情にも現れている。具体的な内容は、相談電話の対応のほか、特別定額給付金や事業者向け支援金に関する苦情で確認していただきたい。 

<苦情分野の一覧>
◎市税に関する苦情 
◎国民健康保険・介護保険に関する苦情 
 〇国民健康保険関連
 〇介護保険関連
◎社会福祉に関する苦情
 〇高齢者福祉関連
 〇障がい者福祉関連
 〇児童福祉関連
◎生活保護に関する苦情
 〇受給者からの苦情
 〇第三者からの苦情
◎幼稚園・学校教育に関する苦情
◎社会教育施設・イベントに関する苦情
◎体育施設・イベントに関する苦情
◎公共施設に関する苦情
◎保健・衛生に関する苦情
◎除雪・道路管理に関する苦情
◎戸籍・住民票等に関する苦情
◎都市・環境問題に関する苦情
◎市民生活に関する苦情
 〇DV被害者支援関連
 〇震災被害関連
 〇特別定額給付金関連
 〇アイヌ施策関連
◎まちづくり・市民参加に関する苦情
◎情報公開・個人情報保護に関する苦情
◎広報・広聴に関する苦情
◎市営住宅に関する苦情
◎経済施策に関する苦情
◎交通事業に関する苦情
◎上下水道に関する苦情
◎職員対応に関する苦情
◎その他の苦情
◎オンブズマンの自己の発意による調査

<苦情分野別の案件一覧>
◎市税に関する苦情
 住民税をインターネットからクレジットカードで納付する際に決済手数料がかかることが納得いかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン::原俊彦)
 札幌市税の減免申請が却下されたことにつき、市民に公開されていない「事務取扱要領」に基づいていること、また、当初は「結果が出るまで4か月程度かかる」という説明だったのが、実際は1か月程度で決定が出されたとして、苦情が申し立てられたケース。審査請求中であること等を理由として、調査しない旨が通知されている。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎国民健康保険・介護保険に関する苦情
〇国民健康保険関連
 国民健康保険の医療費の返還について、担当した職員からいい加減な説明を受けたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 国民健康保険に加入する以前の期間について保険料の納付を求められたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子
〇介護保険関連
 介護保険サービスを利用することに関連し、地域包括支援センターのケアマネージャーの対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子

◎社会福祉に関する苦情
〇高齢者福祉関連
 母が入所する介護老人保健施設で転倒する事故が生じたが、市の担当課の施設に対する調査が不十分であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
〇障がい者福祉関連
 元勤務先のグループホームが不正請求を行っていると公益通報を行った後、市がどのような対応を行ったのか問い合わせても回答が得られないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 障害者であることを示す手帳の交付及び交通費助成をSAPICAへチャージする際の職員の対応等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 申立人がかつて通所していた就労支援A型事業所に対し市が指導を行うことに要望したにもかかわらず指導がなされないばかりか、対応した市職員の一連の対応も納得できるものではないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子
〇児童福祉関連
 市が国から送付を受けたエタノールを医療的ケア児に配布した際の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳) ・第2020-25号  里親に出している娘に関する児童相談所職員の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 申立人が障害を有する娘の通学のため「移動支援事業」を利用しようとした際の市職員の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 申請したはずの児童手当が支給されていなかったこと及び申請時に提出した所得証明書がその後どのように使われたか教えてほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 次女が認可保育所に入所できない旨の通知を受けたが、札幌市における認可保育所の選考及び利用調整の基準は正当性及び平等性に欠けるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎生活保護に関する苦情
〇受給者からの苦情
 生活保護を受給しているが、家族のところに転居するので保護を廃止してほしいと伝えたにもかかわらず、生活がきちんとするまで保護を廃止できないといわれたとして、保護の廃止を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 生活保護の受給者に対する資産調査が過酷であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 生活保護課職員の電話対応や保護課訪問時の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 生活保護を受給する申立人が、現在の住居は水漏れがするとして、転居費用の支給を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 生活保護を受給する申立人が、ケースワーカーによる家庭訪問が行われていないことを監査の対象とするよう保護自立支援課に依頼したにもかかわらず、監査が行われなかったこと等が苦情として申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 生活保護の受給者から、保護費の支給額の計算方法の説明や、提出するコピーの金銭負担の大きさ、自動車の利用が認められないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 生活保護の受給者が、転居した実態がないにもかかわらず、転居に要した費用が一時扶助として支給されたことが不正受給に該当するのではないかとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 生活保護の受給者が、再度の転居費用及び転居後に上限額を超える家賃の支給を求めるほか、保護課の職員による個人情報の漏洩があったことをはじめとして市職員の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 生活保護費返還決定がなされたことを不服として審査請求を行っているにもかかわらず、保護費返還の納入催告がなされたことについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 生活保護受給者から、担当のケースワーカーや係長の対応がひどいとして、苦情が申し立てられたケース。申し立ての取り下げにより、調査は終了した。(担当オンブズマン:原俊彦)
 市が生活保護受給者に対し「通院移送費」が支給されるように適切な対応をしていないことや、保護変更申請に対し30日経過しても未だ決定がなされていないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 生活保護が廃止されことに対し、苦情が申し立てられたケース。申立人がオンブズマンと面談した際、新たな情報を提供するとともに、新たな苦情申立てとする旨の申し出があったために調査は中止された。(担当オンブズマン:原俊彦)
 生活保護を廃止されたことや自動車を処分するよう指示されたこと等が不満であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 申立人と別居し生活保護を受給している申立人の娘の転居に際し、移送費が支給されるに至るまでの市の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 生活保護の受給者が、厳しい就労支援をやめてほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
〇第三者からの苦情
 申立人の債権者には収入があるにもかかわらず生活保護を受給している旨通報したが、生活保護の審査がずさんであるとしてあるとして苦情が申し立てられたケース。申立人の債権者が生活保護を受給することに申立人は利害関係がないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 申立人が所有するアパートから退去した生活保護受給者の荷物が車庫に残されたままであるとして、市に撤去を求めたが対応してもらえないとして、苦情が申し立てられたケース。苦情申立ての取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:原俊彦)
 生活保護受給者に賃貸していたアパートの所有者が、当該保護受給者の退去後に残された荷物を市が処分することを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 生活保護受給者が入居する住宅の家主が入居者の家賃を市から代理納付を受けていたところ、退去日が延期されために市に家賃を請求したが本人に請求するようにという回答を受けたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人の苦情取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:房川樹芳)

◎幼稚園・学校教育に関する苦情
 子どもが市立中学校に新入生として入学することになったが、補助教材として購入を求められた情報機器が高額であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 申立人の子どもが市立幼稚園に入園するに際し「特別支援枠」で入園したことや、退園するに際しての園の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 申立人の自宅隣の幼稚園が幼保連携型認定こども園へ移行するに際し、地域住民の意向が十分に反映されていないとして、市が事業者に対しどのような指導をしているのか明らかにすることを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 市立幼稚園の担任の教諭の言動に関する幼稚園の対応及び市幼児教育センターが文書による対応に応じてくれないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 市立高校に通学する高校生が、道路交通法に違反する危険な自転車運転をしているとして高校に改善を求めてきたにもかかわらず改善がなされないとして、指導の改善と徹底を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

◎社会教育施設・イベントに関する苦情
 札幌市芸術の森の木工房が、「準備日」「メンテナンス日」等の虚偽の理由で休館しているとして、苦情が申し立てられたケース。住民監査請求がなされているとして、調査は中止された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 2020年に実施された第71回さっぽろ雪まつりにおいて「アイヌ文化魅力発信イベント」が開催されたが、札幌アイヌ協会に所属するアイヌ民族の方々が「このイベントから外された」という不満を抱いているとして、このイベントの経緯や市の見解についての説明を求めて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 札幌市芸術の村の駐車場の駐車料金を支払わずに利用している者がいるため、きちんと支払っているものが不利益を受けたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 芸術の森職員の対応について、苦情が申し立てられたケース。「正当な理由がない」及び申立人が「利害を有しない」として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 市がイベントに際し選定した業者が、イベントを再委託した団体を選定した経緯や理由が不明であるとして、市がイベントの実施責任者かつ監督義務を有する者として全容を解明することを求め、苦情が申し立てられたケース。申立人が「利害を有しない」として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)
 札幌文化芸術劇場hitaruから、媒体に掲載する記事の内容について「校正」を求められたことが、憲法21条1項及び2項(検閲及び事前抑制の禁止)に抵触するおそれがあるほか、校正を断って以来、取材を拒否されるようになった等の苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎体育施設・イベントに関する苦情
 札幌市ほかの団体が主催する「北海道を歩こう」というイベントの申込規約の内容及び規約に同意しない限り参加できない取扱い等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎公共施設に関する苦情
 公園内のテニスコート内の雪処理に関し、以前、オンブズマンに苦情申立をした際に、市は対応を約したにもかかわらず(第30-72号)、2020年3月になり、散歩道の雪が掘り返されていることから、市の対応についての説明を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 住居の隣接地の公園の騒音に悩まされているとして、サッカーボールの使用禁止や利用時間を制限すること等を求めて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 不動産業者が取扱物件に隣接する公園のフェンスが倒れそうであるとして、市に対応を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 区役所の駐車場を利用した際に2時間無料になると説明を受けたにもかかわらず料金の支払いを求められたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人の申立て取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)

◎保健・衛生に関する苦情
 体調不良が新型コロナウイルスり患に由来する可能性があると考え、札幌市新型コロナウイルス一般電話相談窓口に電話連絡したところ、国の基準では検査の必要はないので、保健所から検査不要といわれた旨伝えて一般外来を受診するよう説明されたが、このような対応は感染を拡大するものであるとして、対応を改めることを求めて苦情が申し立てられたケース。医学的知見を持たないオンブズマンが検査の必要性について調査・判断をすることは相当でないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:房川樹芳)

◎除雪・道路管理に関する苦情
 市道を車で走行中、道路にできた穴が原因で左後輪がパンクしたが、市の担当部署から補償はできないという説明を受けたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 車で市道を走行中、段差があったために車の前部が損傷したが、対応した職員の説明は到底納得できるものではないとして、車の修理代の支払いを求めるとともに、職員の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 隣家が街路樹を申立人の自宅との境界側に移植したことに関し、市が承認したことや申立人の問い合わせに対する市の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 市道のロードヒーティングが十分稼働していなかった結果事故が生じたとして、今後の事故防止対策をとることや金銭補償等を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

◎戸籍・住民票等に関する苦情
 戸籍謄本等を請求した際、必要部数の交付が受けられなかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 国外滞在した期間について住民票を海外転出しないままであったところ、その後、国内の住民票を移動させたために過去の住民票を訂正することができないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 マイナンバーカードの発行手続き住所変更を同時に行った際、電子証明書暗証番号を変更する必要がある旨の説明を受けなかったことから、確定申告に不備が生じたとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

◎都市・環境問題に関する苦情
 建築基準法が定める指定道路上に建築物が建築されるとともに、駐車場が設置されているという違法状態が是正されるよう市に対応を求めているにもかかわらず、十分な対応がなされていれないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 ごみ収集員が左右の安全を確認せずに道路を横断しようとして、ぶつかりそうになるのみならず、舌打ちしたことについて、苦情が申し立てられたケース。申し立ての取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:原俊彦)
 札幌駅北口で行われている再開発事業に対し、市の補助金の支出を一時停止することを求めて苦情が申し立てられたケース。申立人が利害を有さないとして、調査しない旨が通知されている。(担当オンブズマン:房川樹芳)

◎市民生活に関する苦情
〇DV被害者支援関連
 DV加害者にでっち上げられている件で男女共同参画室職員に面談したが、その際の職員の対応や言動について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 苦情等踏査結果通知書第2019-113号には「B係長及びC係長が私に謝罪した」とあるが事実に反しているため、札幌市オンブズマンが、虚偽DVを作出した札幌市職員の責任を認めて誠意ある対応を行うよう勧告することを求めて、苦情が申し立てられたケース。申立て内容についてはすでに調査ずみであり、「オンブズマンの行為」はオンブズマンの所轄外の行為であるとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:房川樹芳)
〇震災被害関連
 2018年9月の北海道胆振東部地震の災害義援金を申請したところ、申請期限を過ぎていたとして受付を拒否されたとして、受付拒否や申請期限設定の理由の説明等を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 2019年2月に北海道胆振東部地震の災害義援金を申請しようとしたところ、受付を終了しているという説明を受けたが、受付の終了期日を変更して義援金を受け取れるようにしてほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 北海道胆振東部地震災害義援金の申請をしたにもかかわらず、市には受付をしていないと言われたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 2018年9月にあった北海道胆振東部地震の災害義援金について、2019年9月1日以降の申請受理分を減額したことについて、苦情が申し立てられたケース。申立人自身が災害義援金の申請を行っていないことから、申立人に直接の利害関係がないとして、調査しない旨が通知されている。(担当オンブズマン:房川樹芳)
〇特別定額給付金関連
 特別定額給付金の振込先口座確認書類についての説明が総務省の説明と食い違っていること、申請書が届くのが遅いことのほか、申請書の配送業務を民間に委託したこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 特別定額給付金が2週間たっても振り込まれないという苦情について、振込に当初の見込み以上に時間がかかっていること及び苦情申立てをすることで振り込みが早まることはないこと等を説明したところ、申立てが取り下げられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 特別定額給付金の振込に時間がかかっていること等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 特別定額給付金の振込に時間がかかっていること等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 特別定額給付金をオンライン申請してから1か月経過しても未だ入金がなされないとして、苦情が申し立てられたケース。申立人の取り下げにより、調査は終了した。(担当オンブズマン:房川樹芳)
〇アイヌ施策関連
 「アイヌ施策推進委員会傍聴要領」が、傍聴者の写真撮影及び録画を禁止していることについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 市民文化局市民生活部アイヌ施策課の会議室で行われた札幌アイヌ協会の関係者が出席した話し合いの模様を録音したテープの提供を求めるとともに、申立人が市議と接触したことについて市職員から論難されたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

◎まちづくり・市民参加に関する苦情
 地域協議会の委員の選定方法、協議会の実施方法等について、苦情が申し立てられたケース。申立人が「利害を有しない」として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 市教委が後援する講習のチラシの配布・配架を市の施設に要請したところ、配架を拒否されたとして、その根拠の説明と謝罪を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 真駒内駅前地区の土地利用再編について、地域の代表者等が意見を表明する「地域協議会」のメンバーの選出方法について、市に納得のできる説明を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 市民活動サポートセンターで利用しようとしたスキャナーが不調であったが、職員の誰もが利用方法がわからなかったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

◎情報公開・個人情報保護に関する苦情
 公文書一部公開決定に対する審査請求の裁決の内容に疑義があるとして、その内容について明確な説明を求めて苦情が申し立てられたケース。調査しない旨が通知され、調査が終了している。 (担当オンブズマン:房川樹芳) 
 公文書公開決定等に対する審査請求を行った場合において、審査請求手続きの教示が十分ではないとして、苦情が申し立てられたケース。申立人が受けた具体的な不利益が確認できないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎広報・広聴に関する苦情
 市民の声を聞く課で、スキャナー付きコピー機を利用させてほしいと要望したところ断られたとして、苦情が申し立てられたケース。申し立ての取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:原俊彦)
 区役所広聴課の職員の対応が横柄かつ高圧的であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

◎市営住宅に関する苦情
 父親が入居していた市営住宅の家賃について、減免の遡及適用を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦) ・第2020-42号  市営住宅入居に先立つ説明において、「家賃減免」の説明がなかったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 市営住宅の駐車場使用料の減免対象を拡大することを求めて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 市営住宅の家賃減免を受けられることになったが、実際の申請日と「減免通知書」記載の申請日が異なっているとして、事実を記載した通知書の作成と今後の対処についての説明を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 市営住宅の入居者が家賃の減免決定を受けたことから、敷金についても減免前の金額で納付がなされるべきであり、実際に道営住宅には敷金減免の制度があるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 市営住宅入居者の代理人が、滞納していた賃料を支払っているにもかかわらず、市の担当職員から納付を求められるとともに、その際の対応がひどいものであったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 市営住宅の敷金減免について、市民に広く周知することを求めて苦情が申し立てられたケース。申立人が「申立ての原因となった事実についての利害を有さない」として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

◎経済施策に関する苦情
 新型コロナウイルス感染症の集中対策期間に飲食店の時短営業を行ったが、支援金について問い合わせ、回答を待っているうちに申請期間を過ぎたところ、申請期間の経過を理由に申請が受け付けてもらえなかったとして、苦情が申し立てられたケース。その後、担当課から申請期限を過ぎた場合の申請の受け付けについて検討するという回答があったとして、申立人が苦情申立てを取り下げたことにより、調査は終了した。(担当オンブズマン:田村智幸

◎交通事業に関する苦情
 市交通局から賃借していた施設を返還する際に原状回復を求められたことが、他の施設を返却した際の取扱いと異なるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎上下水道に関する苦情
 水道局営業所の駐車場で複数の職員が喫煙しているが、このような対応をどうにかしてほしいとして、苦情が申し立てられたケース。勤務時間外の喫煙は市の機関の業務の執行に関するものではないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 水道工事に際しての歩道の誘導が不十分であるとともに、その後の市の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 自宅前の道路で下水道工事がなされた際の振動でブロック塀にクラック(ひび割れ)が生じたとして、市に補償することを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎職員対応に関する苦情
 DV加害者にでっち上げられている件で男女共同参画室職員に面談したが、その際の職員の対応や言動について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 車で市道を走行中、段差があったために車の前部が損傷したが、対応した職員の説明は到底納得できるものではないとして、車の修理代の支払いを求めるとともに、職員の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 水道局営業所の駐車場で複数の職員が喫煙しているが、このような対応をどうにかしてほしいとして、苦情が申し立てられたケース。勤務時間外の喫煙は市の機関の業務の執行に関するものではないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 生活保護受給者から、担当のケースワーカーや係長の対応がひどいとして、苦情が申し立てられたケース。申し立ての取り下げにより、調査は終了した。(担当オンブズマン:原俊彦)
 障害者であることを示す手帳の交付及び交通費助成をSAPICAへチャージする際の職員の対応等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 市民の声を聞く課で、スキャナー付きコピー機を利用させてほしいと要望したところ断られたとして、苦情が申し立てられたケース。申し立ての取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:原俊彦)
 申立人が障害を有する娘の通学のため「移動支援事業」を利用しようとした際の市職員の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳) ・第2020-54号  申立人がかつて通所していた就労支援A型事業所に対し市が指導を行うことに要望したにもかかわらず指導がなされないばかりか、対応した市職員の一連の対応も納得できるものではないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 区役所広聴課の職員の対応が横柄かつ高圧的であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 市営住宅入居者の代理人が、滞納していた賃料を支払っているにもかかわらず、市の担当職員から納付を求められるとともに、その際の対応がひどいものであったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 市立幼稚園の担任の教諭の言動に関する幼稚園の対応及び市幼児教育センターが文書による対応に応じてくれないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 市民活動サポートセンターで利用しようとしたスキャナーが不調であったが、職員の誰もが利用方法がわからなかったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 区役所窓口でSAPICAへのチャージを依頼した際(敬老者優待乗車証か障がい者交通費助成のいずれかと思われる)、職員からつじつまの合わない説明を受けたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人の苦情取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

◎その他の苦情
 市の臨時職員として勤務した際、窓口業務が過重な負担であったとして、その改善等を求めて苦情が申し立てられたケース。「職員の自己の勤務内容に関する事項」に該当するとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 市の事業の受託事業者の元従業員が、当該事業者が違法な行為を行っているにもかかわらず事業を委託した理由の説明や、市が当該事業者に対し必要な調査を行わなかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。申し立ての原因となった事実から1年以上経過しているとともに、申立ての内容がすでにオンブズマンが調査を行った事項についての再調査を求めるものであるとして、調査をしない旨が通知された。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 申立人が何らかの通報を行ったにもかかわらず、十分な対応がしてもらえないとして苦情が申し立てられたと思しきケース。なお、通報の内容は不明。申立人に対し調査をしない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 市の会計年度任用職員だった申立人が、在職中に受けたパワハラや不当な人事評価等について、苦情が申し立てられたケース。本件苦情が「職員の自己の勤務内容に関する事項」に該当するとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 札幌市の関係者による違法・悪質な行為が継続しているとして、苦情が申し立てられたケース。申立人の主張する行為が誰の行為であるのか特定できず、市の職員の行為であるか判然としないため、「市の機関の業務の執行に関する事項及び当該業務に関する職員の行為」に該当するとは判断できないないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎オンブズマンの自己の発意による調査
 札幌市における街路灯の安全対策について(担当オンブズマン:房川樹芳)

2021/04/27

2021年3月に調査を終了したケース

2021年4月1日、同年3月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、同年4月15日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2021年3月)に調査を終了したのは12件で、このうち9件で調査結果が通知されている。また、残る3件中1件で調査しない旨が通知され、2件は申立人による苦情取り下げにより、調査は終了している。


ところで、今回公開を受けた案件は、”眠れるオンブズマン”こと原俊彦オンブズマン(「眠れるオンブズマン」の愛称の由来は、このエントリー及びこのエントリーを参照されたい)が、申立人の苦情の内容や市の調査対象部局による説明を理解する能力に乏しいことが顕著に現れている点で、きわめて興味深い。

まず、オンブズマンが申立人の苦情の内容をどの程度理解しているかについてである。第2020-66号は、紙媒体(及びweb)による一般向けの情報提供に関与している(と思われる)申立人が、札幌芸術文化劇場の職員から、記事の「校正」を申し入れられたことに端を発する苦情である。

調査を担当した原俊彦オンブズマンは、「本件における『校正』の依頼が、憲法21条第1項及び第2項に抵触する事前検閲を意図したものであるという申立人の主張について、その事実を確認できませんでした。」と判断している。

しかしながら、そもそもの申立人の主張は、校正の申し出が「事前抑制の禁止」に抵触しかねない、あるいは、「検閲及び事前抑制の禁止に抵触するおそれがある」というものである。したがって、申立人は、オンブズマンがいうような「事前検閲を意図したものである」という主張を行っているわけではないことからすると、オンブズマンが、申立人の苦情を正確に理解しているとは言い難いように思われる。

もっとも、憲法21条2項が禁ずる「検閲」が何を意味するかについては、論者の間でも見解の対立が存する。また、申立人の主張に揺らぎがあるのも事実であり、申立人は、市の担当部局に対し、憲法21条2項が「事前抑制」を禁じているという主張が記載されたメールを送信する一方で、苦情申立ての趣旨には、憲法21条1項及び2項が「検閲及び事前抑制の禁止」を規定するという主張が記載されている。したがって、申立人が「検閲」と「事前抑制」の関係をどのように考えているのかは、必ずしも明らかではない(「検閲」を禁ずる旨の憲法の規定は21条2項である)。

これに対し、オンブズマンは、申立人が「事前抑制」という用語を使用しているにもかかわらず、何故にか「事前検閲」という用語を使用している。オンブズマンが「事前検閲」という用語を使用した理由は不明であるとともに(「事前抑制」と取り違えたのであろうか?)、オンブズマンがいう「事前検閲」の意味するところも不明である。

また、オンブズマンは、「写真のクレジット表記やトリミングの有無を確認する」ことは、憲法21条1項及び2項に抵触しないと判断するが、公的機関が「著作権保護」の目的であれ、表現活動について事前に確認することは、なお「事前抑制の原則禁止」との関係が問われることになると思われる(たとえば、「著作権権侵害」を理由として出版差し止めを求める訴訟であればどうか)。したがって、オンブズマンの判断は、申立人が苦情を申し立てた、「地方公共団体やそれに準ずる団体」が事前に「校正」を求めることへの疑義に対する回答としては、不十分であるといわざるを得ない。

なお、当ブログ開設者は、本件において札幌文化芸術劇場は、公的機関としての立場で確認を求めたのではなく、著作権者に代理して事前に著作権が侵害されていないことの確認を求めたと解する余地があると考えている。

次に、市の説明の理解についてである。第2020-75号は、保育所入所選考に際する「利用調整基準」についての苦情である。

調査を担当した原俊彦オンブズマンは、「市の説明によれば、保育所等の申込児童数が、利用の要請を行った施設の利用定員を上回る場合には、国の通知(※当ブログ開設者注・いわゆる「留意事項通知」を指すと思わる。)に従い、保育の必要性の高い順に利用調整を行うこととされており、さらに、国による基準の他に、詳細な利用調整基準については、各自治体に一定の裁量があるということです。」と述べるが、苦情等調査結果通知書の「市の回答」には、このような説明は記載されていない。

すなわち、市の回答は、①保育所入所選考に際する優先事項の対象事項が「留意事項通知」に例示されていること、②札幌市の「利用調整基準」は、原則として「留意事項通知」に基づいて作成した上で、適宜、優先利用の項目や指数、利用調整基準表の構成等を制定及び改正している、というものである。このような説明が、何故に、オンブズマンのいうような、「国の通知に従い、保育の必要性の高い順に利用調整を行うこととされて」いる、となるのであろうか(また、市町村が保育の必要性の高い児童が優先的に利用できるよう調整する旨を規定するのは児童福祉法施行規則であって、「国の通知」ではない)。

この点、上記のようなオンブズマンの説明では、「留意事項通知」には法的拘束力があり、各自治体はこの通知に従う義務があるかのような印象を与えるが、「留意事項通知」には、当該通知が地方自治法245条の4第1項が規定する「技術的助言」であることが明記されており、法的拘束力がないことは明らかである(それに従うか否かは、各自治体の判断に委ねられる)。

のみならず、「留意事項通知」記載の優先事項の対象事項が「例示」であることは、市の回答においても言及されている以上、市が「利用調整基準」を作成するにあたって、「留意事項通知」とは異なる事項を優先事項の対象事項とすることが許容されるのは、理の当然である。

そして、本件苦情の申立人は、「留意事項通知」と札幌市の「利用調整基準」の齟齬を主張しているのであるから、それぞれがどのような法的性格のものであるかを踏まえておけば、オンブズマンが陥った「国の基準に従って利用調整を行う」という誤解を避けることができたと思われる。この点、「留意事項通知」は、前述したように「技術的助言」であることは前述した。そして、市の「利用調整基準」が行政手続法2条8号ロに定める「審査基準」である(この点は、市こども未来局の担当課に確認ずみ)。

したがって、当ブログ開設者の理解では、札幌市における保育所入所選考に際する利用調整は、札幌市が行政庁として定める「審査基準」(行政手続法5条1項)である「利用調整基準」に基づいてなされるものである(「国の基準に従って利用調整を行う」わけではない)。また、札幌市が「審査基準」たる「利用調整基準」を定めるに際しては、「技術的助言」(地方自治法245条の4第1項)である「留意事項通知」を活用した、ということになる。しかしながら、非常に残念なことなのだが、原俊彦オンブズマンには、こうした構造が理解できなかったのであろう。

以上の次第で、2件の結果通知書におけるオンブズマン判断を見てきたが、オンブズマン調査が原俊彦オンブズマンの手にかかると、どういうわけか、申立人はそんな主張はしていないという主張を行ったことになり、市もそんな説明は行っていないという説明を行ったことになったわけである。

もっとも、こうした原俊彦オンブズマンの判断も、申立人の苦情や市の説明について、市民が主体的・自律的に考え、理解するための格好の材料を提供しているという評価も可能であるかもしれない。札幌市オンブズマンの「無用の用」である。

このほか、原俊彦オンブズマンが担当した案件では、前述の第2020-66号において、通知書に「著作権」や「著作権法」についての言及があるにもかかわらず、【参照条文】には著作権法の規定が記されていない。どうやらオンブズマンは、条文を参照することもなく、著作権や著作権法について言及している模様である。

また、第2020-69号では、申立人が主張する所得証明書の提出日が1年以上前のことであるとして、オンブズマンは、「これ以上の事実関係を調査することができ」ない旨の判断を行っている。

しかしながら、「申立ての原因となった事実から1年を経過しているとき」(札幌市オンブズマン条例16条1項2号)には、その事項はオンブズマンによる「調査の対象外」となるのであり、「これ以上の事実関係」に至るまでの程度であっても、当該事項を調査することはこの規定に抵触することになる。

どうやらオンブズマンは、調査を実施する・しないという判断と、どの程度まで詳細な調査を実施するかという判断の区別がついていない模様である。この点、同条例同号後段は、「正当な理由があるときは、この限りでない」(同号後段)と規定している。たとえ詳細さを欠く調査であるとしても、すでに1年を経過している事実を調査するのであれば、オンブズマンは、その事実を調査する「正当な理由」を説明する必要があると思われる。

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①第2020−66号
 札幌文化芸術劇場hitaruから、媒体に掲載する記事の内容について「校正」を求められたことが、憲法21条1項及び2項(検閲及び事前抑制の禁止)に抵触するおそれがあるほか、校正を断って以来、取材を拒否されるようになった等の苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

②第2020−69号
 申請したはずの児童手当が支給されていなかったこと及び申請時に提出した所得証明書がその後どのように使われたか教えてほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2020−70号
 市立幼稚園の担任の教諭の言動に関する幼稚園の対応及び市幼児教育センターが文書による対応に応じてくれないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

④第2020−71号
 生活保護の受給者が、厳しい就労支援をやめてほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑤第2020−72号
 市民活動サポートセンターで利用しようとしたスキャナーが不調であったが、職員の誰もが利用方法がわからなかったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑥第2020−74号
 市道のロードヒーティングが十分稼働していなかった結果事故が生じたとして、今後の事故防止対策をとることや金銭補償等を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑦第2020−75号
 次女が認可保育所に入所できない旨の通知を受けたが、札幌市における認可保育所の選考及び利用調整の基準は正当性及び平等性に欠けるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑧第2020−78号
 マイナンバーカードの発行手続き住所変更を同時に行った際、電子証明書暗証番号を変更する必要がある旨の説明を受けなかったことから、確定申告に不備が生じたとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑨第2020−81号
 市立高校に通学する高校生が、道路交通法に違反する危険な自転車運転をしているとして高校に改善を求めてきたにもかかわらず改善がなされないとして、指導の改善と徹底を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
⑩第2020−82号
 区役所の駐車場を利用した際に2時間無料になると説明を受けたにもかかわらず料金の支払いを求められたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人の申立て取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)
⑪第2020−85号
 札幌市の関係者による違法・悪質な行為が継続しているとして、苦情が申し立てられたケース。申立人の主張する行為が誰の行為であるのか特定できず、市の職員の行為であるか判然としないため、「市の機関の業務の執行に関する事項及び当該業務に関する職員の行為」に該当するとは判断できないないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑫第2020−86号
 新型コロナウイルス感染症の集中対策期間に飲食店の時短営業を行ったが、支援金について問い合わせ、回答を待っているうちに申請期間を過ぎたところ、申請期間の経過を理由に申請が受け付けてもらえなかったとして、苦情が申し立てられたケース。その後、担当課から申請期限を過ぎた場合の申請の受け付けについて検討するという回答があったとして、申立人が苦情申立てを取り下げたことにより、調査は終了した。(担当オンブズマン:田村智幸)

2021/04/07

2021年2月に調査を終了したケース(案件追加・第2020-発1号)

2021年3月1日、同年2月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、同年3月31日付で一部公開決定がなされた。

また、この一部公開決定に際し、オンブズマンが自己の発意により実施した調査に関する文書が公開対象に含まれていなかったことから、同年6月15日付で公開請求を行い、同月23日付で、全部公開決定がなされた。

上記の期間(2021年2月)に調査を終了した案件は、苦情申立てに基づく調査は8件で、このうち5件で調査結果が通知されている。また、残る3件中2件で調査しない旨が通知され、1件は申立人による苦情取り下げにより、調査は終了し
ている。このほか、オンブズマンの自己の発意に基づく調査が1件終了している。

さて、この2021年2月末をもって、房川樹芳オンブズマンの2期4年にわたる任期が満了した。このブログでは、房川樹芳オンブズマンが担当した案件に疑義を呈したこともあるが(たとえばこのエントリー)、そんな房川樹芳オンブズマンが、苦情調査として最後に調査結果を通知した案件が、第2020-67号である(発意調査の第2020-発1号も房川樹芳オンブズマンが担当)。

この案件は、申立人が市職員の対応について苦情を申し立てたケースであるが、「市の回答」及び「オンブズマン判断」によると、申立人による数々のカスタマーハラスメントというべき言動があった模様である。市職員が対応に苦慮した模様がうかがえるほか、こうしたケースにおいて、市がどのように組織的な対応を行っているかが可視化されており興味深い。

ところで、今回の公開分の写しの交付を受けた際、市の担当者に確認したところ、2021年4月からは、札幌市総務局オンブズマン事務局に配置されていた次長(課長職)が異動した後、そのポストに人員が補充されていないということであった(ポストが廃止されたのか空席となっているのかは不明)。

また、2020年度中も、オンブズマン事務局に2名配置されている係長職の1名が保健所での業務を担当していたということであり、コロナ禍の渦中にある現在、オンブズマン事務局は従来よりも手薄な人員での業務を余儀なくされている模様である。

2020年度のオンブズマン調査は2021年2月末の時点において、調査結果を通知せずに調査を終了した案件が全体の37.1%という高率となっているが(この割合は、2018年度は2月終了分までで16.9%、2019年度は2月終了分までで27.6%と、近年上昇傾向を示している)、オンブズマン事務局の人員体制が手薄になったため、オンブズマンが調査を実施しない案件の割合が高まったといった疑念を生じさせないような制度運用が期待されるところである。

この点、札幌市オンブズマン条例は、調査対象外の事項として、苦情申立人が「申立ての原因となった事実についての利害を有しないとき」と規定しているが(同条例16条1項1号)、制度の発足に際し当時の桂信夫市長は、「苦情申し立てに当たっての制約につきましても、市民の権利利益を擁護するというオンブズマン制度の目的に照らして、できる限り広く取り扱うことにしたい」という議会答弁を行っている(平成12年第4回定例会12月5日-02号)。

のみならず、当ブログ開設者が照会したところ、オンブズマン事務局から「札幌市オンブズマン室においては、オンブズマン制度に関し、現在も平成12年第4回定例議会における市長答弁と同様の運用を行っております。」という、オンブズマン事務局長名の文書回答を受けた(2020年10月9日付・札オ第10071号)。

札幌市オンブズマン条例は、市民の権利利益を擁護することを目的の一つとして掲げているところ(札幌市オンブズマン条例1条)、当ブログ開設者は、市民が適切な説明を受けることもまた、「市民の利益」の一つであると考えている。オンブズマンが調査の過程において市の担当部局から説明を受けることは、申立人にとって「適切な説明を受ける」利益をもたらすことはもちろん、ひいては、市民全般が「適切な説明を受ける」ことにつながっていくと思われる。

なお、当ブログ開設者が苦情を申し立てるため担当の原俊彦オンブズマンと面談した際(2020年7月22日)、「オンブズマンの申し合わせにより、『申立人の利害』は限定的に解することになった」という趣旨の説明を受けた(記憶がある)。そこで、申し合わせの内容等についてオンブズマン事務局に照会したところ、オンブズマン事務局長名の文章回答(2020年10月26日付・札オ10075号)には、「原オンブズマン確認したところ、『お問い合わせいただいた内容の説明はしておらず、そのような申し合わせをした事実もない』という回答を受けた」旨記されていたことも、指摘しておきたい(申し立てた苦情は、「調査しない旨」の通知を受け調査が終了している・第2020-20号)。

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①第2020−62号
 自宅前の道路で下水道工事がなされた際の振動でブロック塀にクラック(ひび割れ)が生じたとして、市に補償することを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)


②第2020−64号
 市交通局から賃借していた施設を返還する際に原状回復を求められたことが、他の施設を返却した際の取扱いと異なるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2020−65号
 国民健康保険に加入する以前の期間について保険料の納付を求められたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

④第2020−67号
 区役所広聴課の職員の対応が横柄かつ高圧的であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑤第2020−68号
 市営住宅入居者の代理人が、滞納していた賃料を支払っているにもかかわらず、市の担当職員から納付を求められるとともに、その際の対応がひどいものであったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑥第2020−73号
 市の会計年度任用職員だった申立人が、在職中に受けたパワハラや不当な人事評価等について、苦情が申し立てられたケース。本件苦情が「職員の自己の勤務内容に関する事項」に該当するとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑦第2020−76号
 区役所窓口でSAPICAへのチャージを依頼した際(敬老者優待乗車証か障がい者交通費助成のいずれかと思われる)、職員からつじつまの合わない説明を受けたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人の苦情取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑧第2020−77号
 市営住宅の敷金減免について、市民に広く周知することを求めて苦情が申し立てられたケース。申立人が「申立ての原因となった事実についての利害を有さない」として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑨第2020ー発1号(追加案件)
 札幌市における街路灯の安全対策について(担当オンブズマン:房川樹芳)