2026/07/03

2026年4月に処理を終了した案件

2026年5月1日、同年4月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、2026年6月12日に一部公開決定がなされた。

上記の期間(2026年4月)に処理を完了したのは7件で、このうち3件で調査結果が通知された。また、残る4件については苦情について調査しない旨が通知された。

1.調査しないことには「説明の機会」は生まれない
今回公開を受けた案件でもっとも興味深いのが、生活保護受給者が「損保会社」からの保険金が支払われないために生活保護からの自立ができないとして、ケースワーカーの対応について(も)苦情が申し立てられた第2026₋1号である。

この案件の担当オンブズマン神谷奈保子は、「本件におけるケースワーカーの対応の是非についてオンブズマンが判断するには、損保会社の不払いが不当なものであったかどうかの調査が不可欠で(ある)」ところ、当該事項はオンブズマンの所轄事項に該当しないとして調査を実施しなかった。

ところで、本件苦情においては、申立人は「相談時にスマートフォンの充電すら拒絶され」と主張しており、損保会社の不払いとは別に、ケースワーカーの相談時の対応自体が苦情申立ての趣旨に記載されている。したがって、この点は損保会社の保険金不払いとは別に、オンブズマン調査の対象となるであろう。

また、申立人は「ケースワーカーは損保会社の不当な不払いを放置し」と主張しているところ、「保護の補足性」(生活保護法4条)の下、被保護者が「保険金」請求をしている場合や、請求できる保険金について請求していない場合において、ケースワーカーがどのように職務を遂行するべきかという点は、「市の機関の業務の執行に関する事項及び当該業務に関する職員の行為」というオンブズマンの所轄事項に該当すると思われる(札幌市オンブズマン条例3条)。
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しかしながら、本件の担当オンブズマン神谷奈保子は調査を実施しなかったため、申立人は今回のような事案においてケースワーカーが果たすべき役割についての説明を受けることができなかった。のみならず、他のオンブズマンにとっても知見を深める機会を逃すことになった。

当ブログ開設者としては、申立人が主張するような事実関係の下において、ケースワーカーとしては保険金が支払われた場合には収入申告するよう指導することはあり得るとしても、保険金が支払われるよう保険会社に支払いを求めて働きかけることまでは職務上求められないと考えている。今後、同種の苦情についての調査が実施され、この点に対する市の説明がなされることを期待したい。


2.住民が組織する「任意団体」に対する市の関与のあり方について
次に紹介する2件は、どちらも一定の地域エリアに居住する住民の「任意団体」に対する市の関与のあり方を問う苦情である。ただし、第2025₋99号は、町内会を脱退した申立人が町内会が設置した「ごみステーション」の利用に関する苦情であり、第2025₋125号は、市営住宅の自治会に対する市の関与が不十分であるという苦情である。

どちらの案件も調査を担当したオンブズマンは樋川恒一であるが、ごみステーションの利用に関する苦情である第2025-99号は調査が実施されたものの、自治会に対する市の関与に関する苦情である第2025₋125号は調査しない旨が通知され、対応が分かれることになった。

それにしてもひどいのは、調査担当オンブズマン樋川恒一が第2025-125号の調査を実施しないための「言い草」である。「自治体の運営や【非公開部分】についての問題は、オンブズマンの所轄事項である『市の機関の業務の執行に関する事項及び当該業務に関する職員の行為』に該当せず、調査の対象外」という理由で調査を実施しなかったが、「自治体の運営」がオンブズマンの所轄事項でないならば、いったいどういう事項がオンブズマンの所轄事項になるのであろうか。

また、「申立人は、市営住宅【非公開情報】団地自治会の運営や【非公開情報】についての問題を指摘していますが、同自治体は、市営住宅【非公開情報】団地に居住する者で構成される任意団体であり、市の機関で(ない)」とも論じている。

当ブログ開設者は、調査担当オンブズマン樋川恒一がいう上記の「自治体」は「自治会」の誤字であると考えている。しかし、市営住宅の自治会が地方自治法に定めのない「無名自治体」に該当すると理論構成する等、自治体が誤字でないことも考えられるが、そのような理論構成をする実益は不明である。

そもそも、申立人は「自治会運営をめぐる指導なき決算・総会の在り方とその矛盾性について、苦情を申し立てる」と主張しているのであり、そこでいう「指導」とは、市の自治会への関与のあり方そのものであると当ブログ開設者は考えている。したがって、①市は自治会をどのような組織と認識しているか、②市は自治会に対しどのような関与をしている(していない)のか、③本件における申立人への対応の経緯等について、オンブズマンが市の説明を求めて調査を実施することができたというのが当ブログ開設者の評価である。

これに対し、第2025₋99号は、市の回答において、市の生活ごみ収集の責務や、町内会によるごみステーション設置の態様、町内会脱退者もごみステーションの利用から排除されないことなど、当ブログ開設者にとって興味深い説明がなされている。

もっとも、申立人が「ごみステーション利用料」が高すぎると主張してることに対し、市は「金額の多寡について意見を述べる立場にない」と回答しているものの、この点に関しては、市が町内会に対しごみステーション維持費用等を助成する際、助成に条件を付けることを通じて政策的誘導を行うこともできるかもしれない。

なお、この案件において担当オンブズマンは、ごみステーション利用料に関してあんな裁判例がある、こんな裁判例があると紹介するものの、裁判日や掲載誌といった「基本情報」の記載がなされていない。その事件の前提事実等を確認するためには必要不可欠な情報であると思われる。


3.そのほかの注目案件
このほか、第2025-116号では、申立人が照会した事項に対し十分な回答がなされないまま回答が打ち切られたとして苦情が申し立てられた。

調査担当オンブズマン樋川恒一は、「申立人の照会が個別的紛争に関するものではなく一般的事項に関するものであることから、『苦情申立ての原因となった事実について利害関係が認められ』(ない)」として調査しない旨を通知した。

しかしながら、照会内容が一般的事項であれ、個別具体的な事項であれ、市が「以後は回答しない」という対応をしたケースは、①それまでの回答は適切であったか、②それ以上の回答をするのは困難だというところまで回答したか、といった点について、オンブズマンが調査を実施することはできたと思われる。

また、調査担当オンブズマン樋川恒一は、「マンション管理の適正化」という技術的性格の強い照会に対する回答を理解できないと考えたのかもしれない。しかし、そうであればこそ、非専門家にも理解できるように技術的な説明を工夫することは、担当者の説明力向上という「市政の改善」につながる(可能性がある)と当ブログ開設者は考えている。

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①第2025-99号
 町内会を退会した申立人が、町内会から支払いを求められた「ゴミステーション利用料」の不払を理由に当該ごみステーションの利用を禁じられたため、市に対し改善を求めたものの適切な対応がなされないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:樋川恒一)

②第2025-103号
 保育園の近隣に居住する申立人が、当該保育園の園外活動の安全性や騒音被害に関して監督権限を有する部署に相談したものの、「当事者間の話し合い」を求めるのみで適切な権限行使がなされないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:樋川恒一)

③第2025-113号
 生活保護を受給する申立人が、保護課に医療券の発行を依頼したにもかかわらず医療券が病院に郵送され中経った目に受診できなかったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

④第2025-116号
 マンション管理の適正化に関し住宅課に複数回の照会を行った申立人が、照会への回答が不十分であるにもかかわらず回答が打ち切られたとして苦情が申し立てられたケース。申立人の照会が個別的紛争に関するものではなく一般的事項に関するものであることから、「苦情申立ての原因となった事実について利害関係があるとは認められ(ない)」として調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:樋川恒一)

⑤第2025-124号
 市営住宅入居応募当選者に対する入居予定者審査および入居者登録の会場における個人情報の取り扱いに問題があったことから、札幌市住宅管理公社に照会したが回答に具体性がなく、その後も改善されていないとして苦情が申し立てられたケース。「申立ての原因となった事実のあった日から1年を経過している」として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:樋川恒一)

⑥第2025-125号
 市営住宅の入居者は「自治会」への積極的関与が求められる一方で、住宅課は「自治会」が任意団体であることを理由として積極的関与をしないことは矛盾しているとして苦情が申し立てられたケース。自治体(ママ)が市の機関ではないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:樋川恒一)

⑦第2026-1号
 生活保護を受給している申立人が、損害保険会社の不当な不払を受けており、ケースワーカーも当該不払いを放置したために生活保護から自立できないでいるとして苦情が申し立てられたケース。ケースワーカーの対応の是非について判断するためには保険会社の不払い不当なものであったかどうかの調査が不可欠であるところ、当該事項はオンブズマンの所轄外であるとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

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