2020年5月に調査を終了したケースについては、別途エントリーを立てて案件を紹介しているが、当初は、6月15日付で(一部)公開決定がなされた案件のみ掲載していた。その後、6月30日付で案件が追加されたことから、上記のエントリーにも当該案件を追加したが、改めて、公開決定が追加された案件を紹介しておく。
〇第2019−119号
〇第2019−119号
市道を車で走行中、道路にできた穴が原因で左後輪がパンクしたが、市の担当部署から補償はできないという説明を受けたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
このような道路管理に関する案件としては、房川樹芳オンブズマンが担当した第30−1号が思い出される。この案件で房川樹芳オンブズマンは、「道路に「瑕疵」があった場合の道路を管理する市の責任については、国家賠償法第2条第1項に規定されています」と論じている。
しかしながら、こうした論理は、市の道路管理責任と賠償責任の違いを十分に把握してないきらいがある(平成30年6月に調査を終了したケース)。市は、道路法に基づいて道路を維持管理する責任を負うのであり、国賠法に基づくわけではない、ということである。
この点、上記・第2019−119号において、市の回答は、道路法に基づく道路の維持管理と国賠法に基づく賠償責任とを区分して論じており、少なくとも市は道路を維持管理する責任の根拠について、房川樹芳オンブズマンが第30−1号で論じたような理解はしていないようである。
ところで、当ブログはこれまで、房川樹芳オンブズマンについて、「文章表現の稚拙さが特に際立つオンブズマンである」(2019年10月に調査を終了したケース)とか、「論理的な判断を期待するのは、無い物ねだりかもしれない。」(2020年3月に調査を終了したケース)といった論評をしてきた。そこで、せっかくの機会なので、前述した案件以外にも、当ブログで房川樹芳オンブズマンの判断に疑義を呈した他の事例についても、紹介しておこう。
まず、房川樹芳オンブズマンが、調査を実施した案件である。房川樹芳オンブズマンが調査を実施した案件では、上記・道路管理に関する案件のほかにも、福祉サービスの利用者が市の事業者に対する対応が不十分であるとして苦情を申し立てた案件(第2019-41号)がある。
この案件において、房川樹芳オンブズマンの判断に対する疑問は多岐にわたるが(2019年10月に調査を終了したケース)、福祉サービスの利用者とサービス事業者の関係に、市がどのように関与する権限があり、また、これら三者の関係にオンブズマンがどのように関わることができるかを適切に把握していない限り、調査は見当はずれのものとなるように思われる。この点、こうした三者が関わるオンブズマン調査のあり方については、「札幌市オンブズマンは単なるお飾り?~その苦情申し立て、ちょっと待った!part 2」と題するエントリーにおいて、当ブログ開設者の見解を展開している。
次に、房川樹芳オンブズマンが、調査を実施しない旨の判断を行った案件にも、判断の妥当性が疑わしい案件が存在する。その典型例が、札幌市オンブズマン条例が「オンブズマンの行為に関する事項」を所轄外の事項として定めている(同条例3条6号)ことを受け、房川樹芳オンブズマンが行った、「オンブズマンの行為」についての判断である。
この点、房川樹芳オンブズマンは、第29-71号において、オンブズマンによる調査の進め方を調査の対象としているが、このような調査は「オンブズマンの行為」についての調査にほかならない。したがって、仮にこの案件の調査を実施するのであれば、「オンブズマン事務局」による調査への関与という、「職員の行為」を調査対象とする必要があったと思われる(平成30年3月に調査を終了したケース)。
また、オンブズマンの「活動状況報告書」の内容に関する苦情(第2019-85号)において、房川樹芳オンブズマンは、「活動状況報告書の作成及び公表は、オンブズマンの行為に含まれる」として、調査を実施しなかった。
しかしながら、第29-42号では、「オンブズマン事務局を対象とする苦情調査」等を市民向けに公表してほしいという苦情をオンブズマン調査の対象としているのであり、房川樹芳オンブズマンが第2019-85号の調査を実施しないと判断するのは一貫性に欠けるように思われる(「オンブズマンの行為」とは?)。
たしかに、房川樹芳オンブズマンが、その肩書である弁護士の業務として、依頼人の利益を最大化する必要上、担当する事案の依頼人の立場によって、事案ごとに相互に対立する主張を行うことは当然ありうるであろう。しかしながら、オンブズマンの業務として調査を行う以上、「公正かつ適正」な職務の遂行(札幌市オンブズマン条例5条1項)が求められるのであり、判断の一貫性を欠くことは、オンブズマン制度への信頼(があればだが)を大きく棄損すると思われる。
なお、上記・「オンブズマンの行為」とは?のエントリーでは、房川樹芳オンブズマンが、申立人の苦情内容について、申立人へ知らせることもなく、割愛・改竄していることも紹介しているが、その詳細については、当該エントリーにアクセスして確認していただきたい。
このほか、房川樹芳オンブズマンが調査をしない旨の判断を行った事案のうち、専門的知見に基づく判断が行われているとして調査を行わなかった事案(第2019-13号)については、過去に房川樹芳オンブズマンが示した判断と整合性を欠くこと(2019年5月に調査を終了したケース)、「直接」の利害がないとして調査を行わなかった事案(第2019-106号,第2019-114号)については、理論的妥当性を欠くこと(むしろ、調査を行わないのであれば「市の業務」該当性を理由とすべきではないか)(2020年3月に調査を終了したケース)、さらに、調査を実施しない旨の判断(第2020-2号,第2020-5号)の結果として、市の業務の実情が明らかになる機会が失われたこと(2020年4月調査を終了したケース)などを指摘してきた。
以上、房川樹芳オンブズマンが調査を担当した案件のうち、その判断内容の正当性・妥当性が疑わしい案件を見てきた。
その判断を見る限り、札幌市オンブズマン条例が、「オンブズマンは、人格高潔で、行政に関し優れた識見を有する者のうち」から、市長が委嘱する(同条例8条2項)旨規定しているにもかかわらず、条例の建前とは、かけ離れた現実があるように思われる。
このようなギャップは、それだけの人材を得ることが実際のところ困難であり、適任者がいないため、やむを得ずオンブズマンを委嘱するケースもある、ということを示しているのかもしれない。
したがって、オンブズマンに過度の期待は禁物である。オンブズマンに苦情を申し立てる場合には、オンブズマンにも理解できるように、苦情内容を精査する必要があるだろう。
(追記)
房川樹芳オンブズマンが調査を実施した案件では、第30-23号も、判断内容に疑義がある案件である。ただし、公開された当時、当ブログにおいてその旨の指摘は行っていない(平成30年8月に調査を終了したケース)。
この案件は、児童扶養手当を一部期間不支給とされたことを不服とする苦情であるが、房川樹芳オンブズマンは、(児童扶養手当の受給資格の充足を証明する)「「確実な証拠」については事案に応じて、基準を明確にしておく必要がある」と述べている。その一方で、「オンブズマンは「確実な証拠」についての判断ができる立場にありませんので、一部の期間の手当が不支給になったことについては、意見を述べることはできません」という見解を示している。「確実な証拠」について判断ができる立場にないのなら、なにゆえに、「確実な証拠」についての「基準の明確化」を求めることができるのか、よくわからないところである。
この点、当ブログ開設者は、房川樹芳オンブズマンは、①児童扶養手当の受給資格充足を判断する際には市に裁量が認められるところ、②市が当該判断をする際にいかなる「確実な証拠」を基準として用いるかを明確化することが望ましいが、③いかなる基準を定めるかは市の裁量に委ねられる(ため、オンブズマンは市が適切な基準を明確化することを期待して、今回の事案では具体的な基準について言及しない)ということを述べたかったのではないかと推察する。当ブログ開設者が、房川樹芳オンブズマンをして、「文章表現の稚拙さが特に際立つ」と評する理由がおわかり頂けるであろうか。
なお、この案件で苦情の対象となった児童扶養手当を一部期間不支給とする処分については、苦情の申立人が当該不支給を不服として審査請求したところ、裁決によって取り消されている(審査庁北海道知事高橋はるみ・平成30年12月25日付・子ども第2147号)。
裁決は、「処分庁が請求人に要求した…(中略)…挙証の程度は、法及び課長通知において求められる程度を超えた過度なものといわざるを得ない」として、原処分庁の調査の過程及び判断には裁量権の逸脱又は濫用があったと判断している。
この裁決の判断に従うならば、市に「確実な証拠」についての「基準の明確化」を求める房川樹芳オンブズマンの判断は、「法及び課長通知において求められる程度を超えた過度の」挙証を求めることになりはしないか、懸念されるところである。
もっとも、市の担当部局はその後、上記裁決をふまえ、マニュアルを改定する際、「挙証は法及び課長通知に示されている内容を記載」し、各区担当課に周知を行ったということである。房川樹芳オンブズマンが考えるような市の裁量は、否定されたといえようか(そして、当ブログ開設者がこうした経緯を指摘する内容を含む苦情申立て(第2019-85号)を行ったところ、房川樹芳オンブズマンが当該箇所を改竄したことは上述)。
ところで、当ブログはこれまで、房川樹芳オンブズマンについて、「文章表現の稚拙さが特に際立つオンブズマンである」(2019年10月に調査を終了したケース)とか、「論理的な判断を期待するのは、無い物ねだりかもしれない。」(2020年3月に調査を終了したケース)といった論評をしてきた。そこで、せっかくの機会なので、前述した案件以外にも、当ブログで房川樹芳オンブズマンの判断に疑義を呈した他の事例についても、紹介しておこう。
まず、房川樹芳オンブズマンが、調査を実施した案件である。房川樹芳オンブズマンが調査を実施した案件では、上記・道路管理に関する案件のほかにも、福祉サービスの利用者が市の事業者に対する対応が不十分であるとして苦情を申し立てた案件(第2019-41号)がある。
この案件において、房川樹芳オンブズマンの判断に対する疑問は多岐にわたるが(2019年10月に調査を終了したケース)、福祉サービスの利用者とサービス事業者の関係に、市がどのように関与する権限があり、また、これら三者の関係にオンブズマンがどのように関わることができるかを適切に把握していない限り、調査は見当はずれのものとなるように思われる。この点、こうした三者が関わるオンブズマン調査のあり方については、「札幌市オンブズマンは単なるお飾り?~その苦情申し立て、ちょっと待った!part 2」と題するエントリーにおいて、当ブログ開設者の見解を展開している。
次に、房川樹芳オンブズマンが、調査を実施しない旨の判断を行った案件にも、判断の妥当性が疑わしい案件が存在する。その典型例が、札幌市オンブズマン条例が「オンブズマンの行為に関する事項」を所轄外の事項として定めている(同条例3条6号)ことを受け、房川樹芳オンブズマンが行った、「オンブズマンの行為」についての判断である。
この点、房川樹芳オンブズマンは、第29-71号において、オンブズマンによる調査の進め方を調査の対象としているが、このような調査は「オンブズマンの行為」についての調査にほかならない。したがって、仮にこの案件の調査を実施するのであれば、「オンブズマン事務局」による調査への関与という、「職員の行為」を調査対象とする必要があったと思われる(平成30年3月に調査を終了したケース)。
また、オンブズマンの「活動状況報告書」の内容に関する苦情(第2019-85号)において、房川樹芳オンブズマンは、「活動状況報告書の作成及び公表は、オンブズマンの行為に含まれる」として、調査を実施しなかった。
しかしながら、第29-42号では、「オンブズマン事務局を対象とする苦情調査」等を市民向けに公表してほしいという苦情をオンブズマン調査の対象としているのであり、房川樹芳オンブズマンが第2019-85号の調査を実施しないと判断するのは一貫性に欠けるように思われる(「オンブズマンの行為」とは?)。
たしかに、房川樹芳オンブズマンが、その肩書である弁護士の業務として、依頼人の利益を最大化する必要上、担当する事案の依頼人の立場によって、事案ごとに相互に対立する主張を行うことは当然ありうるであろう。しかしながら、オンブズマンの業務として調査を行う以上、「公正かつ適正」な職務の遂行(札幌市オンブズマン条例5条1項)が求められるのであり、判断の一貫性を欠くことは、オンブズマン制度への信頼(があればだが)を大きく棄損すると思われる。
なお、上記・「オンブズマンの行為」とは?のエントリーでは、房川樹芳オンブズマンが、申立人の苦情内容について、申立人へ知らせることもなく、割愛・改竄していることも紹介しているが、その詳細については、当該エントリーにアクセスして確認していただきたい。
このほか、房川樹芳オンブズマンが調査をしない旨の判断を行った事案のうち、専門的知見に基づく判断が行われているとして調査を行わなかった事案(第2019-13号)については、過去に房川樹芳オンブズマンが示した判断と整合性を欠くこと(2019年5月に調査を終了したケース)、「直接」の利害がないとして調査を行わなかった事案(第2019-106号,第2019-114号)については、理論的妥当性を欠くこと(むしろ、調査を行わないのであれば「市の業務」該当性を理由とすべきではないか)(2020年3月に調査を終了したケース)、さらに、調査を実施しない旨の判断(第2020-2号,第2020-5号)の結果として、市の業務の実情が明らかになる機会が失われたこと(2020年4月調査を終了したケース)などを指摘してきた。
以上、房川樹芳オンブズマンが調査を担当した案件のうち、その判断内容の正当性・妥当性が疑わしい案件を見てきた。
その判断を見る限り、札幌市オンブズマン条例が、「オンブズマンは、人格高潔で、行政に関し優れた識見を有する者のうち」から、市長が委嘱する(同条例8条2項)旨規定しているにもかかわらず、条例の建前とは、かけ離れた現実があるように思われる。
このようなギャップは、それだけの人材を得ることが実際のところ困難であり、適任者がいないため、やむを得ずオンブズマンを委嘱するケースもある、ということを示しているのかもしれない。
したがって、オンブズマンに過度の期待は禁物である。オンブズマンに苦情を申し立てる場合には、オンブズマンにも理解できるように、苦情内容を精査する必要があるだろう。
(追記)
房川樹芳オンブズマンが調査を実施した案件では、第30-23号も、判断内容に疑義がある案件である。ただし、公開された当時、当ブログにおいてその旨の指摘は行っていない(平成30年8月に調査を終了したケース)。
この案件は、児童扶養手当を一部期間不支給とされたことを不服とする苦情であるが、房川樹芳オンブズマンは、(児童扶養手当の受給資格の充足を証明する)「「確実な証拠」については事案に応じて、基準を明確にしておく必要がある」と述べている。その一方で、「オンブズマンは「確実な証拠」についての判断ができる立場にありませんので、一部の期間の手当が不支給になったことについては、意見を述べることはできません」という見解を示している。「確実な証拠」について判断ができる立場にないのなら、なにゆえに、「確実な証拠」についての「基準の明確化」を求めることができるのか、よくわからないところである。
この点、当ブログ開設者は、房川樹芳オンブズマンは、①児童扶養手当の受給資格充足を判断する際には市に裁量が認められるところ、②市が当該判断をする際にいかなる「確実な証拠」を基準として用いるかを明確化することが望ましいが、③いかなる基準を定めるかは市の裁量に委ねられる(ため、オンブズマンは市が適切な基準を明確化することを期待して、今回の事案では具体的な基準について言及しない)ということを述べたかったのではないかと推察する。当ブログ開設者が、房川樹芳オンブズマンをして、「文章表現の稚拙さが特に際立つ」と評する理由がおわかり頂けるであろうか。
なお、この案件で苦情の対象となった児童扶養手当を一部期間不支給とする処分については、苦情の申立人が当該不支給を不服として審査請求したところ、裁決によって取り消されている(審査庁北海道知事高橋はるみ・平成30年12月25日付・子ども第2147号)。
裁決は、「処分庁が請求人に要求した…(中略)…挙証の程度は、法及び課長通知において求められる程度を超えた過度なものといわざるを得ない」として、原処分庁の調査の過程及び判断には裁量権の逸脱又は濫用があったと判断している。
この裁決の判断に従うならば、市に「確実な証拠」についての「基準の明確化」を求める房川樹芳オンブズマンの判断は、「法及び課長通知において求められる程度を超えた過度の」挙証を求めることになりはしないか、懸念されるところである。
もっとも、市の担当部局はその後、上記裁決をふまえ、マニュアルを改定する際、「挙証は法及び課長通知に示されている内容を記載」し、各区担当課に周知を行ったということである。房川樹芳オンブズマンが考えるような市の裁量は、否定されたといえようか(そして、当ブログ開設者がこうした経緯を指摘する内容を含む苦情申立て(第2019-85号)を行ったところ、房川樹芳オンブズマンが当該箇所を改竄したことは上述)。