2016/07/25

札幌市オンブズマン苦情処理日数の状況(年度別・平成27年度まで)

(※最新の年度別の処理状況は、このエントリーで紹介している)。

札幌市オンブズマンでは、毎年公刊する活動状況報告書において、苦情処理日数の状況を公表している。しかしながら、そこに掲載された処理日数のデータは、「30日以内」「31〜60日」及び「61日以上」の3段階の区分となっており(*1)、刻みの幅が大きすぎることもあり、実際にどれだけの日数がかかったのかは、実にわかりにくい。

たとえば、オンブズマンの調査に要する期間について尋ねた際、30日以内に調査を終了する割合は〇〇パーセントという回答を得たとしても、十分に納得できるであろうか。むしろ、ケースによってばらつきはあるが平均日数としては〇〇日、という説明を受けた方が、尋ねた者にとっては、具体的なイメージが掴みやすいのではなかろうか。

また、札幌市オンブズマン条例には、オンブズマンの職務の一つとして、市の業務に関する苦情を受け付け、簡易迅速に処理すること(同条例第4条第1号)が規定されている。具体的な処理日数を明らかにすることは、調査担当者が迅速な処理を心がけるよう動機づけることになると思われる。

以上のことから、札幌市オンブズマンが、市民から申立てがあった苦情に対し、実際にどれくらいの日数をかけて処理しているのかを確認すべく、同制度の事務局に各年度の個別の案件の処理日数及び担当オンブズマンについての情報提供を求めたところ、先日、その回答があった。この回答をもとに、平均処理日数を算出したのが、以下の表である(*2)(*3)。また、比較のため、30日以内に結果通知を発送した処理率も掲載しておく(*4)。

平成17〜19年度及び24〜25年度は、平均処理日数が30日を切るとともに、平成25年度を除き、30日以内の処理率は70%を上回っている。また、平成20年度は平均処理日数は30日を越えるものの、30日以内の処理率は70%を上回っている。

一方、平成27年度は、4年ぶりに30日以内の処理率が50%を切っている。苦情申立てに対し簡易迅速に処理するという制度目的に照らすと、何らかのテコ入れが必要な状況にあるように思われる。また、オンブズマン自らの処理の遅滞を改善することもなく、市に対する要望・要請を行ったとしても、説得力を欠くおそれがあるだろう。

いずれにせよ、この程度の処理状況は達成しておきたいという目標値を設定することによって、簡易迅速な処理を行う上で、一定の効果が期待できるように思われる。過去の実績も踏まえて、無い物ねだりをすることない値を設定するならば、平均処理日数30日以内または30日以内の処理率70%といったあたりが妥当ではなかろうか。

なお、オンブズマン別の苦情処理日数の状況については、次回のエントリーで紹介したい。

 
苦情申立
件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
30日以内
処理率
平成12年度
49
28
46.64
57.1%
平成13年度
128
92
42.79
51.1%
平成14年度
111
88
31.14
65.9%
平成15年度
113
83
30.07
54.2%
平成16年度
93
74
30.78
63.5%
平成17年度
103
88
24.78
83.0%
平成18年度
115
92
25.32 
92.4%
平成19年度
111
90
24.70
88.9%
平成20年度
117
108
32.45
73.1%
平成21年度
133
109
36.62
44.0%
平成22年度
130
109
34.79
49.5%
平成23年度
125
111
38.94
32.4%
平成24年度
135
110
29.16
71.8%
平成25年度
122
104
29.84
68.3%
平成26年度
129
107
33.45
51.4%
平成27年度
130
109
33.05
47.7%
全期間通算
1844
1502
32.35
61.6%

(*1)平成16年度以前の活動状況報告書においては、当該年度に調査を終了した案件の処理日数の状況について、「30日以内」「31〜60日」、「61日〜90日」及び「91日以上」の4段階の区分で掲載していた。これに対し、平成17年度以降の活動状況報告書においては、当該年度に申立てがあった苦情に関する処理日数の状況を掲載するようになっている。

(*2)札幌市オンブズマンの制度が発足したのは、平成13年3月1日であることから、平成12年度のデータは、平成13年3月の1か月に申立てがあった案件のものである。また、他の年度も当該年度に申立てがあった案件についてのデータであり、案件によっては調査の終了が翌年度になっている場合もある。

(*3)東京都多摩市が設置する「総合オンブズマン」の年次報告書では、各年度の平均処理日数が掲載されている。札幌市も同市に倣い、処理日数の状況について、よりわかりやすい情報提供がなされることを期待している。

(*4)各年度のデータは、いずれも申立ての時点をベースにしており、調査終了が翌年度に及んだケースについても、申立てのなされた年度に計上している。

2016/07/15

平成28年5月に調査を終了したケース

平成28年6月1日、同年5月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、6月13日に一部公開決定がなされた。

決定対象となった調査は11件で、全11件において調査結果が通知されている。

①第27-126号
 申立人が川に架橋するために問い合わせたところ、河川占用許可を受けるとともに占用料の支払いを要すると説明を受けたが、無許可で架橋しているものがいるのは不公平であるとして、苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)

②第27−128号
 生活保護受給者に賃貸をしている申立人が、当該受給者の家賃未納について相談して以後の保護課の対応について苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

③第27−129号
 札幌市から補助を受けて運営がされている障がい者施設販売所の職員の対応について苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:三木正俊)

④ 第27−130号
 町内会において、町内に設置されたゴミ収集所(ゴミステーション)の運営を担当する役職にあった申立人が、市の担当部局の職員が町内会内部の人事に介入したとして苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

⑤第28−1号
 確定申告において扶養状況を申告していたにもかかわらず、配偶者控除の適用がないとして納税通知書等が送られてきたことに納得がいかないとして、苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:三木正俊)

⑥第28−3号
 小学校高学年の児童のプール利用に関し苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:三木正俊)

⑦第28−5号
 図書館職員の採用面接の際に受けた対応について苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

⑧第28−6号
 市税の延滞金納付に関し苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:三木正俊)

⑨第28−7号
 国民健康保険(国保)の加入を取り消したいとして苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

⑩第28−8号
 生活保護受給者が家賃の支払いを証する文書を提出したにもかかわらず、市職員による当該文書の取り扱いに疑念があるとして苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

⑪第28−11号
 水道工事の開札後入札中止となったことに関し、市の担当部局からの説明を求めて苦情申立てがなされたケース。過去に申し立てられたケースと調査内容が重複するとして、調査を実施しない旨が通知された。(担当オンブズマン:岩田雅子)

2016/07/10

平成28年4月に調査を終了したケース

平成28年5月1日、同年4月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、5月16日に一部公開決定がなされた。

決定対象となった調査は14件。このうち13件において調査結果が通知され、1件において苦情について調査しないしない旨が通知されている。

①第27-113号
 学校で子どもがいじめにあっていることに対し、学校の調査が不十分であるとともに、事後の対応に問題があるとして苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:三木正俊)

②第27-114号
 水道工事の際に事故があった件について、市が補償について受託業者任せに無責任な対応に終始するとして苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)

③第27-115号
 消防団員として再任命されなかったことについて苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
④第27-116号
 市の施設に設置された盲導鈴の音が鳴り響くことにより、自宅内において不都合を感じるとして苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

⑤第27−117号
 円山動物園の開園時の職員の対応について苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

⑥第27-118号
 市教委に対する請求書の用紙に関する問い合わせた際の職員の対応について苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:三木正俊)

⑦第27-119号
 申請していたマイナンバーカードについて、転出先で再申請するよう言われたとして苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:三木正俊)

⑧第27-120号
 家屋が「特定空家等」に該当するとして通知を受けたことについて苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:三木正俊)

⑨第27-123号
 水道工事の開札後、入札中止になったことについて苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)

⑩第27-124号
 介護保険事業所の運営に関し内部告発したにもかかわらず、市の対応が不十分であるとして苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

⑪第27-125号
 以前オンブズマンに苦情を申し立てたケースに対する調査における「市の回答」は、申立人の記憶する事実関係と相違しているとして、オンブズマンの調査に誠意を持って対応することを求めて苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)

⑫第27−127号
 すでに死亡している父に対し、おむつサービス事業の決定通知が送られてきたとして苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

⑬第28−2号
 ケースワーカーから受けた説明が理解できないとして、再度、理解できるような説明をすることを求めて苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)

⑭第28−10号
 以前に苦情を申し立てたケースにおいてオンブズマンからの判断が示されたのち、調査対象となった部局から何の音沙汰もないとして苦情申立てがなされたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)

2016/07/09

札幌市オンブズマン観察記はじめます

「札幌市オンブズマン」とは、札幌市が設置した「行政オンブズマン」の制度である。その制度目的は、「市民の権利利益を擁護し、並びに市政を監視し、及び市政の改善を図り、もって開かれた市政の推進、市民の市政に対する理解と信頼の確保及び市民の意向が的確に反映された市政運営に資すること」(札幌市オンブズマン条例第1条)である。

この条例に基づいて、札幌市では「札幌市オンブズマン」という特別職を設け、任期2年(1回のみ再任可)のオンブズマン3名が、市民から寄せられた市政に関する苦情を受け、その苦情について市に対する調査を実施し、市の対応についてその当否、適否を中立な立場で判断し、必要に応じて、市に何らかの対応を求めるという活動を行っている。

また、この札幌市オンブズマンが行った活動については、毎年度ごとに「札幌市オンブズマン活動状況報告書」(以下、「活動状況報告書」という。)を公刊することで、市民に対する周知が図られている(webでも公開されている)。

しかしながら、この活動状況報告書の公刊は年に1度である。オンブズマンに対し申し立てられた苦情と同じような不満を抱える市民にとって、その件に関しオンブズマンが行った調査の内容を知ることは、有益であると思われるが、年に1度の公開では、時宜を失することもあるのではないだろうか。

のみならず、札幌市の活動状況報告書には、市民から申し立てられた苦情の全件が掲載されるわけではない。前述したように、オンブズマンによる調査内容を知ることが市民に有益であるならば、一部の限られた苦情についてのみ掲載するのでは、市民に対する活動状況の公表として不十分と言わざるを得ない。

さらに、市民による苦情申立てに基づいてオンブズマンが調査を実施した場合、その内容は、「苦情等調査結果通知書」(以下、「結果通知書」という。)という文書に取りまとめられ、申立人及び市の担当部局あてに通知されることになる。この文書は、大まかにいって、「苦情申立ての趣旨」、「市の回答」及び「オンブズマンの判断」の三つの部分から構成されるが、現在の活動状況報告書には、苦情の概要とオンブズマン判断(要旨)が掲載されるのみとなっている(平成19年度までは市の回答の要旨についても掲載)。

あくまで私見であるが、結果通知書における市の回答の部分は、日ごろ市民の目につきにくいところで、市がどのような業務を行っているかを知ることができるものであり、資料的価値が高い内容となっている。もちろん、積極的にプラス評価すべき業務や職員の対応のみならず、それではいかにも拙いとマイナス評価せざるをえないものも含まれているが、たとえマイナス評価せざるを得ない業務や職員の対応であっても、少なくとも拙い点を包み隠さず公開し、今後の改善につなげようとするならば、「市民の市政に対する理解と信頼の確保」(札幌市オンブズマン条例第1条)に資することになるであろう。

以上のことから、このブログでは、公文書公開請求手続きにより公開された結果通知書等、札幌市オンブズマンの活動を観察(「監察」ではない点に留意されたい。)した内容を掲載することで、札幌市オンブズマンの活動に興味を持つ人々に対し、その内容を提供することにしたい。その狙いとするところは、要約すると以下の3点である。

(1)オンブズマン「活動状況報告書」に掲載されない案件を紹介する
(2)オンブズマン「活動状況報告書」に掲載されない「市の回答」部分を紹介する
(3)「活動状況報告書」が発行されるよりも早くオンブズマン調査の内容を紹介する

※なお、オンブズマンの制度を設ける他の自治体のうち、熊本市は毎年度公刊される「報告書」に、オンブズマンが行った苦情調査を全件掲載することを原則としている。また、各苦情調査の紹介において、苦情の概要とオンブズマン判断のみならず、市の回答についても掲載している(webでも公開されている)。熊本市にできることが、札幌市にできないことはないように思われる。

※※以下に、結果通知書の実例を掲載する(苦情は、オンブズマン事務局職員の対応について)。オンブズマン事務局は、市職員がオンブズマンを補佐する立場から、オンブズマン制度の調査研究、苦情申し立ての受け付けや事務手続に関することなどを行う部署である。このケースでは、オンブズマン判断において、申立人の態度をたしなめる趣旨の記述がなされているが、オンブズマンが判断すべきは市の対応の当否であって、こうした判断は、読む者にオンブズマンが「身内」に甘い「お手盛り」の調査を行っているとの印象を与える可能性がある。制度としての「札幌市オンブズマン」が市職員及び市民双方からの信頼を得ようとするならば、オンブズマン自身、あえてオンブズマン事務局に対しては、厳しい見解を表明すべきではなかろうか。