2023/01/25

2022年11月に調査を終了したケース

 2022年12月2日、同年11月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、公開決定期限延長のうえ、2023年1月13日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年11月)に調査を終了したのは11件で、このうち9件で調査結果が通知され、残る2件は調査をしない旨が通知されている。

さて、今回公開された案件のうち最も興味深い案件は、ネットカフェを住所とする転入届の受付を拒否されたとする第2022-49である。市の回答では、どのような場合にネットカフェを住所とすることが認められるかという要件が示されているが、札幌市中央区において実際に認められ事例は存在しない模様である。

また、「路面電車無料デー」の実施にともなう定期券の取り扱いについて苦情が申し立てられた第2022-44号も興味深い。市の回答では「定期券は特定の区間を繰り返し乗車する利用者に対して、一定の割引率を適用した乗車券」であると説明がなされているが、札幌市電の定期券は利用区間が特定されることなく、全区間が利用できる取り扱いとなっている。

そのため、定期券利用者が「路面電車無料デー」に乗車する場合、実質的には定期券の日割額を負担していることになるのみならず、「路面電車無料デー」が含まれないように定期券を購入することも不可能である。したがって、当ブログ開設者は申立人の主張にも一理あると考えるのだが、いかがであろうか(ただし、どのように定期券利用者の不利益を解消するかは、考慮を要するところである)。

このほか、第2022-52号第2022-54号および第2022-58号は、いずれも当ブログ開設者の申し立てた苦情である。このうち、第2022-52号は、公文書公開請求に関する苦情であるが、①いわゆる「個人情報」として非公開になる情報がどのようなカテゴリーのものがあるか、②当該情報を非公開とする際、決定通知書にどのような記載がなされるべきか、といった点について、市の対応に不備があるとして苦情を申し立てたのであるが、調査担当のオンブズマンにも申立ての趣旨が理解できるように文章化するには、まだまだ当ブログ開設者の力量が不足していた模様である(あえて言うまでもないが、「皮肉」である。)。

次に、第2022-54号及び第2022-58号は、苦情申立てを受理したオンブズマン事務局の対応等についての苦情である。いずれも「調査しない旨」が通知されているが、第2022-54号のオンブズマン判断の問題点は、第2022-58号の申し立てにおいて指摘した。

また、第2022-58号については、その趣旨は実質的にみて第2022-54号においてオンブズマンが「調査しない」と判断したことに対する苦情であるとして、「オンブズマンの行為」についての苦情は調査対象とならないというのであれば当ブログ開設者も理解できる。

しかしながら、「オンブズマンが既に調査を実施した苦情については、オンブズマンは調査を行うことができません。オンブズマンが調査を行わないと判断した苦情についても同様です」というのでは、苦情の実体的な中身(については調査を実施していない)と、調査しないというオンブズマン判断とを混同している点で、オンブズマン判断は言葉足らずであると言わざるを得ないだろう。

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①第2022-43号
 市の保育施設が建設されるに際し地域住民に対する説明を欠いたり、建物の高さについての説明が一貫性を欠いたこと、騒音や眺望が妨げられる等の支障があること及び情報公開請求に際し職員からやめてほしいと言われたことなどについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2022-44号
 定期券を購入して路面電車を利用している申立人が、「路面電車無料デー」が設けられたことを理由として、日割りでの払い戻しまたは定期券の期限の延長を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

③第2022-45号
 申立人の自宅裏の市有地に散在する単管パイプ等の取り扱いについて、市に真摯な対応を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

④第2022-47号
 生活保護を受給する申立人が担当ケースワーカーの対応に不満があるとして、上司による対応等を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑤第2022-48号
 申立人がかつて勤務していた介護保険事業所が報酬を不正に請求しているという申し出をきっかけとして、市が事業所から提供を受けた資料について申立人が個人情報開示請求をしたところ、すでに廃棄済みであることを理由として非開示決定がなされたことを不服として、再度調査を実施することを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
⑥第2022-49号
 札幌市外からの転入手続きの際、ネットカフェを新しい住所とする転入届の受付を拒否されたとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
⑦第2022-50号
 生活保護を受給する申立人が、生活扶助が1万円ほど少なくなったのは誰かが着服したためではないかとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
⑧第2022-52号
 札幌市オンブズマンの調査に関する文書について公文書公開請求を行った申立人が、非公開部分の特定をするとともに当該箇所を非公開とする理由を明確に記載した通知書の交付を求め、あわせて決定通知書記載の非公開理由のひな形について、非公開情報該当性についての記載の明確にすることを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
⑨第2022-53号
 申立人が区保健センターで子どもの乳幼児健康診断を受けた際、45分以上も待機することになったとして、待機時間の改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
⑩第2022-54号
 オンブズマンに苦情を申し立てたところ、調査が開始される前に調査対象となる部局の職員が申立人に接触を図ることはオンブズマン調査の公正・中立性に疑義を生じさせるとして、苦情が申し立てられたケース。申立人が「利害」を有さないとして、苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)
⑪第2022-58号
 オンブズマンが調査を実施する要件たる「申立人の利害」について市民に周知を図ること、オンブズマン事務局がオンブズマンの公正・中立性に疑義を生じさせる行為を慎むこと及び苦情申立がなされた場合にはオンブズマンが調査を実施する・しないに関わらず「受理通知」を送付することを求めて、苦情が申し立てられたケース。いずれも「オンブズマンの行為」に対する苦情であるとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

2022/12/14

2022年10月に調査を終了したケース

 2022年11月2日、同年10月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、公開決定期限延長のうえ、11月30日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年10月)に調査を終了した全5件で、調査結果が通知されている。

さて、今回公開された案件のうち最も興味深い案件は、眠れるオンブズマンこと原俊彦担当の第2022-41号である。この案件では、介護保険給付を受けてショートステイを利用した際、当該事業所で何らかのアクシデントがあったことを契機として、当該事業所に対する市の権限行使及び申立人への市職員の対応について苦情が申し立てられている。

ところで、この調査を担当した眠れるオンブズマンこと原俊彦は、かつて介護保険制度の住宅改修費に関する苦情において、「ケア・マネージャー」の対応について縷々見解を開陳したことがある(第2021-17号)。そのため、当ブログ開設者はこのエントリーにおいて、「居宅介護支援事業所に所属するケア・マネージャーの行為は、オンブズマンの所轄事項たる「市の機関の業務の執行に関する事項及び当該業務に関する職員の行為」(札幌市オンブズマン条例3条)に該当せず、その判断はオンブズマンの所轄事項を逸脱していると思われる」旨指摘した

これに対し、今回公開を受けた第2022-41号では、調査担当オンブズマンは「事業所や担当ケアマネに対する市の監督責任という観点から検討」を行っている。このような観点は、札幌市オンブズマンの調査権限に即し適切であると当ブログ開設者は考えている。眠れるオンブズマンこと原俊彦がようやく目覚めの時を迎えたのならば、大いに歓迎すべきことである。

なお、当ブログ開設者は、介護保険の住宅改修費に関する第2021-42号が公開された際(上記の第2021-17号が公開された翌月である)、「(札幌市オンブズマンは)今後、介護保険に関する苦情が申し立てられた場合に備え、「市の機関の業務の執行」という観点から、介護保険法に定められた市の権限を把握しておく必要があると思われる」と論じたことがある(このエントリー)。今後も札幌市オンブズマンには、何がオンブズマンの調査対象事項であるかを適切に把握したうえで、「市民の意向が的確に反映された市政運営に資する」(札幌市オンブズマン条例1条)べく、職務を遂行されることを期待したい。

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①第2022-26号
 生活保護を受給する申立人が、大学進学の際に世帯分離していた子が卒業したことにより世帯分離が解除されるとともに、保護が廃止されたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

②第2022-36号
 申立人が納税のために市税事務所を訪問した際に同行した者がいることについて、日常的に市税事務所と連絡を取っている同行者とは別の人物に市職員が伝えたのは個人情報の漏洩であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

③第2022-38号
 自宅裏の空き家の屋根から自宅敷地内に落雪があることについて、市が適切な対応をしないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

④第2022-41号
 申立人の母がショートステイを利用した際、事業所で何某かのアクシデントがあったことに関し、市の当該事業所に対する権限行使及び申立人への市職員の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑤第2022-42号
 申立人が通所する就労継続支援B型事業所が営む軽食喫茶店について情報提供した際の市職員の申立人の対応及び当該事業所に対する市の権限行使のあり方について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

2022/11/19

2022年9月に調査を終了したケース

 2022年10月2日、同年9月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、公開決定期限延長のうえ、10月31日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年9月)に調査を終了したのは9件で、このうち7件で調査結果が通知されている。また、残る2件は苦情について調査をしない旨が通知されている。

さて、今回公開された案件のうち、最も興味深い案件が、第2022-18号である。非公開部分が多く苦情申立ての趣旨は必ずしも明確ではないが、苦情申立人が札幌市立学校に在学していた当時に教諭から性的暴力を受けたことについて、平成28年に札幌市教育委員会が行った調査が適切ではなかったことや、その後の教育委員会による申立人への対応について苦情が申し立てられた模様である。

ところで、この件に関しては、その当時の札幌市教育委員会が行った対応について、令和4年1月11日付の検証報告書が公開されている。また、申立人がオンブマンに苦情を申し立てた旨は実名記載で報道されているが、当該報道によると申立人は、この報告書が公表された経緯にも不満を抱いているようである。

なお、札幌市では、「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律等を踏まえた市教委の対応について」というページをwebに開設している。上記報告書も、このページからpdfファイルを入手したものである。

次に、制度についての理解を深めるという観点からは、国保料の滞納による差し押さえと納付書による納付が並行してなされた第2022-32号も興味深い事例である。

この案件では、差し押さえ口座への入金を求める申立人と、指定された口座でなければ入金できないという市の主張が平行線をたどっている。当ブログ開設者は、市の回答又はオンブズマン判断において、「申立人としては不本意かもしれないが、差し押さえされた口座を入金口座として指定すれば実質的解決がはかられる」、といったリップサービスをしてもいいのではないか、と感じたものの、そうした言及はなされていない。余計なことに言及して申立人の気分を害することは避けたいと考えたとすれば一つの見識ではあるが、やや親切さに欠けるように思われる。

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①第2022-18号
 申立人が札幌市立学校に在学していた当時に教諭から性暴力を受けたことについて、札幌市教育委員会のその後の一連の対応が適切ではなかったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2022-21号
 申立人が救急搬送を受けられなかったこと及びその後の消防局の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

③第2022-27号
 児童相談所に一時保護された児童について、児童相談所が申立人の意向に添った対応をしないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

④第2022-29号
 市税証明書を取得するために定額小為替証書を同封したにもかかわらず担当職員に過誤があり、その対応のために追加的な負担を余儀なくされたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑤第2022-32号
 (国保料の滞納による差し押さえと納付書による納付が並行してなされたという前提事実のもと)当該金額を差し押さえ口座に返金してほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑥第2022-35号
 生活保護を受給する申立人が市営住宅に転居しようと考え保護課に相談したところ転居に要する費用は支給できないといわれたが、他の受給者には転居費用も支給された者がいるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑦第2022-37号
 居住する市営住宅の出入り口の幅の歩道の縁石を撤去して、歩道をバリアフリー化してほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)


⑧第2022-39号
 学校でいじめを受けているにもかかわらず、学校が十分な対応をしないとして、苦情が申し立てられたケース。すでに実施した調査(第2022-11号)と同旨の申立てであるとして、苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑨第2022−40号
 申立人の子が学校でいじめを受けているにもかかわらず、学校が十分な対応をしないとして苦情が申し立てられたケース。すでに実施した調査(第2022-11号)と同旨の申立てであるとして、苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

2022/10/14

2022年8月に調査を終了したケース

 2022年9月1日、同年8月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、公開決定期限延長のうえ、9月27日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年8月)に調査を終了したのは11件で、このうち7件で調査結果が通知されている。また、残る4件は調査をしない旨が通知されている。

さて、今回公開された案件のうち、最も興味深い案件が、第2022-22号である。この案件は、札幌市は敬老パスのチャージ業務を日本郵便北海道支社に委託しているところ、申立人がチャージのために郵便局を訪れた際の郵便局職員の対応について市に改善を求めたが適切な対応がなされないとして、苦情が申し立てられた事案である。

残念ながら、事実関係の詳細は非公開とされていて不明である。のみならず、業務委託契約に関する業務マニュアルの記載内容についても非公開とされている。当ブログ開設者は、当該箇所を非公開とすることについて、公文書一部公開決定通知書における非公開部分の記載及び非公開とする理由の記載が適切ではないように思われたことから、札幌市オンブズマンに苦情を申し立てたところである。調査終了の時期がいつになるかは不明であるが、調査について公文書公開を受けて以降、当ブログで紹介したい(追記:当該苦情の調査結果通知書(第2022-52号)は、このエントリーで紹介している。また、オンブズマン調査終了後に行った審査請求が認容されたことから、第2022-22号のファイルを差し替えた)。

次に、第2022-28号、当ブログ開設者が申し立てた苦情である。公文書公開請求に対する公開対象公文書の特定が適切ではなく(公開対象とされた「一覧表」のみの公開では不十分であるという趣旨である)、文書の追加がなされたことを不服として申し立てた苦情である。すなわち、追加に要する間待つことを余儀なくされる、ということである。この点、調査対象のオンブズマン事務局は、対象公文書の追加をしておきながら、当初の対象公文書の特定が適切であったと「二枚舌」の説明をおこなっている。しかしながら、当初の決定が適切ならば、公開対象公文書を追加する必要もなかったはずである。

そして、調査担当のオンブズマンも、こうした市の「二枚舌」の説明を疑問視することなく是認した。こうした判断は、苦情申立人が何を問題視しているかを理解できない、あるいは曲解したまま調査を実施したためであると思われる。すなわち、調査担当オンブズマンには、オンブズマンが調査結果通知書において調査対象部局に要請した内容と、フォローアップ調査でオンブズマン事務局が調査対象部局に照会した内容の違いが認識できなかった、ということのようである。もっとも、そうした調査であっても、調査担当のオンブズマンが何を理解できなかったかが理解できたという点においては、有益だったという評価も可能かもしれない。

とはいえ、「オンブズマン事務局が実施したフォローアップ調査の内容が確認できる文書」という公文書公開請求に対し、「一覧表を全体としてみれば、容易に内容を把握できるものが公開され」というオンブズマン判断はいかにもひどい。他に適切な文書がなかったのならば話は別であるが、追加で公開された文書には、オンブズマン事務局が調査対象部局に対し、「①前回のフォローアップ調査後の対応、②その他、本件を受けて実施又は検討している事項」について回答を求める旨が記載されていた。こうした記載は、公開請求の対象とした「オンブズマン事務局が実施したフォローアップ調査の内容」そのものであるが、当初公開された「一覧表」には、全く記載されていない。

さらに、調査担当のオンブズマンは、担当職員が情報提供により知る権利が損なわれないよう配慮したとも言及しているが、公文書公開決定に対しては審査請求が行える。それに対し、情報提供に対しては不服申し立ては制度化されていない。したがって、公文書公開請求に対し情報提供で対応したからそれでよい、という話にはならないと当ブログ開設者は考えている。

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①第2022-13号
 除雪が迅速になされなかったことや、その際の業者が受注した道路工事において安全が十分に確保されていなかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2022-17号
 住民基本台帳カードを紛失し再発行を依頼したところ、当該カードが有効期限内であるにもかかわらずマイナンバーカードの発行しかできないという対応をされたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2022-19号
 自営業を営む申立人が新型コロナに伴う各種給付金を受給することで生活保護が廃止されることになったが、当初説明を受けていた金額よりも納入通知書記載の返還金の額が大きかったことや、納入通知書記載の金額にも誤りがあったこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

④第2022-20号
 非公開とされた部分が多く詳細は不明であるが、申立人が児童相談所に虐待の通報をしたことについて、児童相談所が当該児童の世帯に情報を漏洩したとして苦情が申し立てられたと思われるケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑤第2022-22号
 敬老優待乗車証のチャージのために郵便局を訪れた際の職員の対応(詳細不明)等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
*追記:2022年3月3日付の裁決により、当初の決定では非公開とされていた箇所が追加で公開されている。

⑥第2022-24号
 生活保護受給者が保護課から適切な支援を受けていないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑦第2022-28号
 公文書公開請求をしたところ、当初なされた一部公開決定では対象公文書の特定に漏れがあり、追加決定がなされることになったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)


⑧第2022-30号
 生活保護受給中の申立人が入居中の住宅の大家から退去するよう命じられたが借地借家法に違反しているとして苦情が申し立てられたケース。住居の貸主・借主間の関係は「市の業務」に該当せず、市の対応に関してはすでに調査を実施している(第2022-15号)として、申立人に対し苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑨第2022−31号
 過去に2度、居宅に滞在していた際に保健師が訪問してきて病院に救急搬送されることがあったとして、苦情が申し立てられたケース。苦情申し立ての原因となった事実のあった日から1年が経過しているとして、申立人に苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑩第2022−33号
 介護施設内で生じた窃盗事件を施設がもみ消しをするのに市職員が加担する等の行為があったとして、苦情が申し立てられたケース。申立人が現に施設と係争中であるとともに、苦情申し立ての原因となった事実のあった日から1年が経過しているとして、申立人に苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑪第2022−34号
 生活保護を受給している申立人が、過去に年金を受給した際に返還の通知を受けるまで3年近くかかったことの理由を調査することを求め、苦情が申し立てられたケース。申立ての原因となった事実からすでに10年以上経過しているとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)

2022/09/05

2022年7月に調査を終了したケース

 2022年8月1日、同年7月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、公開決定期限延長のうえ、8月29日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年7月)に調査を終了したのは8件で、このうち6件で調査結果が通知されている。また、残る2件のうち1件は調査をしない旨が通知され、1件は申し立ての取り下げにより調査は実施されなかった。

さて、今回公開された案件のうち最も興味深いのは、水道料金および下水道利用料の減免に関する案件(第2022-10号)である。ただし、興味深いといっても、調査対象部局の説明が言葉足らずであるとともに、調査対象オンブズマンの判断も適切さに欠けるように思われる点においてである。

まず、この苦情の申立人は、水道料金・下水道利用料ともに市条例に減免についての規定が置かれているところ(札幌市水道事業給水条例35条および札幌市下水道条例17条)、これらの規定を根拠として減免「申請」を行ったにもかかわらず、「申請」として扱われなかったとして苦情が申し立てられた。

これに対し、水道事業管理者は、「管理者は、公益上その他特別の事情がある場合は、料金、加入金、手数料、その他の費用を減額し、又は免除することができる」という給水条例35条の規定について、「(水道事業)管理者に関するものであり、水道使用者が申請するような条文構成になっていないため、水道使用者からの申請に基づき免除することを想定していない」と回答している。

しかし、このような回答は、必ずしも適切ではないだろう。それは、当該条項は、給水条例本則に条例に減免の規定が設けられていない場合であっても、別途、管理者に減免制度を設ける権限を付与する趣旨の規定だと考えられるからである。したがって、この権限に基づいて設けられた減免制度において、水道使用者からの申請に基づいて減免の適用を判断する制度設計にすることは、十分に考えられる。減免制度において、一切の申請を排除するかのような誤解を招くおそれのある表現は、適切とはいえないと思われる。

以上の次第で、給水条例35条は、「水道使用者からの申請に基づき免除することを想定していない」のではなく、この条項は管理者に減免制度を設ける権限を付与する規定であり、この規定から直ちに水道使用者に減免の「申請権」が導かれるわけではない、といった回答がなされるべきであったと考える(なお、事案の処理としては、水道料金については減免制度が設けられておらず減免「申請」の余地はなく、下水道利用料については減免制度の存在を前提に申請が受理する、という対応がなされている)。

ところで、この案件の調査担当オンブズマンは、「給水条例第35条が、(水道事業)管理者に関するものであり、水道使用者からの申請を想定したものではないという法的解釈について、その是非を判断する立場にありません」という、なんとも無責任な判断を行っている。この点、当ブログ開設者は、調査担当のオンブズマンの「判断する立場にない」という判断は、調査に積極的に取り組む意思を欠くとともに、適切に調査を遂行する能力にも欠けるという意味であると考えている。

次に、この案件において、水道事業管理者は、生活困窮者に対する水道料金の減免は独立採算制の水道事業としてではなく、「一般会計による経費負担を前提として検討されるべきもの」と回答する。しかし、この点も論理必然的な回答ではなく、どのような制度設計をするかによって、経費負担の構造が決まってくると思われる。

そして、この点につき調査担当のオンブズマンは、「水道料金の減免については、基本的に一般会計等他の財源による予算的裏付けがある場合に限られる」と推察する。しかしながら、このような「推察」は、水道事業管理者が生活困窮者に対する水道料金の減免について行った説明を過度に一般化するものであり、妥当とはいい難いだろう。

このほか、この案件において当ブログ開設者の関心を惹いたのは、「札幌市行政手続条例」が参照されている点である。すなわち、「行政手続法」が定められいるところ、市条例と法がどのように棲み分けられているのか、という論点である(ただし、この点が苦情化しているわけではない)。

この点、行政手続法3条3項は、次のような適用除外を定めている。すなわち、「地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定は、適用しない。」

また、市条例も、申請について、条例等に基づき、自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為(2条5号)と定義し、不利益処分について、条例等に基づき、特定の者(に)直接義務を課し、又は権利を制限する処分(2条6号)と定義している。

したがって、法令に基づく処分であるか、条例等に基づく処分であるかにより、行政手続法と市条例の棲み分けがなされることになる。また、地方公共団体が行う行政指導には行政手続法の適用はなく、市条例の規定が適用されることになる。この点、総務省のサイトには、以下の表が掲載されているので、あわせて参照していただきたい。

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①第2022-6号
 滞納している市税の取扱い及び担当職員の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2022-7号
 市から業務を受託している企業で就労している者が行った通報について、市が正式の「公益通報」として取り扱わなかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2022-10号
 水道料金・下水道料金を滞納している者がそれぞれの料金の「減免」を申請したが、申請に対する市の対応が札幌市行政手続条例に違反しているとして、苦情が申し立てられたケース。
 なお、札幌市においては、下水道料金は利用者による「減免申請」の手続が設けられている一方で、水道料金は手続が設けられていない模様である。(担当オンブズマン:原俊彦)

④第2022-11号
 不登校の状態にある中学生が、学校や教育委員会の対応では自らの学ぶ権利や安心して登校し学習する権利が侵害されたままであるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑤第2022-14号
 申立人がグループホーム入所に際して障害福祉サービスの利用もあわせて申請したが、入所後3か月経過しても未だ障害福祉サービスの利用について手続きが進められていないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑥第2022-15号
 生活保護受給者が入居している住居の管理会社から退去させられたこと関し、保護課が十分な説明してくれず、所持品の取扱いも不適切であったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑦第2022-23号
 市が道路工事を委託した事業者によるずさんな工事により自宅が被害を受けたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人による苦情申立ての取り下げにより、調査は実施されなかった。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)


⑧第2022-25号
 市が検討中の「町内会支えあい条例」、パートナーシップ排雪はいずれも不要であり、冬季五輪も実施すべきではないとして、苦情が申し立てられたケース。苦情はいずれも市の政策への意見であり、申立人自身に利害があるといえないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)