2024/02/13

札幌市オンブズマン苦情処理日数の状況(年度別・最新版)

例年、年度ごとに札幌市オンブズマンの苦情処理日数の状況を紹介してきたところ、2022年度の状況については半年以上も放置してきた。その事情については機会があれば「言い訳」するとして、遅ればせながらとりまとめた処理日数の状況を以下に紹介する。

まず、(表1)の「結果通知処理件数」は、「苦情申立件数」のうち、オンブズマンが「苦情等調査結果通知」を発送して調査を終了した案件の件数である。ここでいう「処理日数」とは、原則として苦情申し立てを受理した日から、「苦情等調査結果通知書」の発送までに要した日数である。申立人に苦情の内容を確認するために要した日数等は算定から除外している。

また、札幌市オンブズマンの制度が発足した初年度の2000年度は、3月に制度がスタートしたため運用期間が1か月間にとどまっている。そのため、この期間は便宜的に2001年度と合算し(13か月間)、以後の各年度は当該年度の12か月間に申し立てられた案件の処理状況を計上している。なお、件数は申立時点が基準である。

さて、2022年度における札幌市オンブズマンの苦情申立件数は、2年ぶりに100件を切り94件となった。このうち、調査を実施し苦情等調査結果通知書を通知したのは71件である。したがって、「苦情申立件数」に対する「結果通知処理件数」の割合は、75.5%となっている。

このパーセンテージは、4年連続で80%を割り込んでいるが、2019年度に77.0%を記録するまでは、2005年度から2018年度にかけては80%台を維持していた。

当ブログ開設者は、オンブズマン調査は市政の一端を可視化するという点において、申立人のみならず市民一般にとっても有益であり、できる限りオンブズマンは調査を実施することが望ましいと考えている。

その反面、たとえオンブズマン調査が実施されたとしても、調査で扱うべき論点を見出す視点が貧弱ならば、実質的に有意義な調査は期待できない。制度の根本的な課題といえるかもしれない。

次に、2022年度の処理日数は、「処理日数中央値」が前年度の42から36に大きく改善しているものの、「平均処理日数」は2年連続で40日を超えており、「30日以内処理率」も2年連続で10%である。「市の業務に関する苦情の申立てを受け付け、簡易迅速に処理する」(札幌市オンブズマン条例4条1号)という制度趣旨に照らすと、大いに改善の余地があると当ブログ開設者は考えている。 

(表1)
 
苦情申立
件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
00/01年度
177
120
43.69
29
52.5%
2002年度
111
88
31.14
28
65.9%
2003年度
113
83
30.07
30
54.2%
2004年度
93
74
30.78
28
63.5%
2005年度
103
88
24.78
26
83.0%
2006年度
115
92
25.32
25.5
92.4%
2007年度
111
90
24.40
23
88.9%
2008年度
117
108
32.45
28
73.1%
2009年度
133
109
36.62
32
44.0%
2010年度
130
109
34.79
32
49.5%
2011年度
125
111
38.94
37
32.4%
2012年度
135
110
29.16
28
71.8%
2013年度
122
104
29.84
28
68.3%
2014年度
129
107
33.45
30
51.4%
2015年度
130
109
33.05
31
47.7%
2016年度
100
88
35.36
31.5
45.5%
2017年度
82
67
35.76
33
38.8%
2018年度
77
66
*40.06
*37
15.2%
2019年度
122
94
38.84
37
23.4%
2020年度
90
60
34.50
34
38.3%
2021年度
112
79
43.71
42
16.5%
2022年度
94
71
44.56
36
12.7%
全期間
通算
2521
2027
*34.08
*30
52.7%
*を付したデータは、2018年度の案件のうち1件について推定値に基づくことを示している。

上記の(表1)のうち、年度別の平均処理日数をグラフにしたのが以下の(グラフ1)である。この2年、苦情処理日数が高止まりしていることがみてとれる。もちろん、時間をかけ丁寧に調査しているならば格別問題視するまでもないのかもしれないが、調査のクオリティについての当ブログ開設者の評価については、過去のエントリーを参照していただきたい。

(グラフ1)

次に、以下の(表2)は、制度発足以来の処理日数の度数分布を取りまとめたものである。2022年度は2年ぶりに処理日数が90日を超える案件こそなかったものの、処理日数が60日を超えた件数は前年度より増えており(8件→9件)、処理の遅滞化傾向に歯止めがかかっていないことがよみとれる。

(表2)
   
20日
以内
 21日〜
30日
 31日〜
45日
46日〜
60日
61日〜
90日
91日
以上
30日
以内
処理率
30日
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
00/01
年度
20
16.7%
43
35.8%
26
21.7%
10
8.3%
9
7.5%
12
10.0%
52.5%
47.5%
2002
年度
20
22.7%
38
43.2%
17
19.3%
5
5.7%
7
8.0%
1
1.1%
65.9%
34.1%
2003
年度
13
15.7%
32
38.6%
33
39.8%
5
6.0%
0
0.0%
0
0.0%
54.2%
45.8%
2004
年度
7
9.5%
40
54.1%
21
28.4%
4
5.4%
2
2.7%
0
0.0%
63.5%
36.5%
2005
年度
20
22.7%
53
60.2%
15
17.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
83.0%
17.0%
2006
年度
21
22.8%
64
69.6%
5
5.4%
1
1.1%
0
0.0%
1
1.1%
92.4%
7.6%
2007
年度
21
23.3%
59
65.6%
7
7.8%
2
2.2%
1
1.1%
0
0.0%
88.9%
11.1%
2008
年度
7
6.5%
72
66.7%
15
13.9%
8
7.4%
4
3.7%
2
1.9%
73.1%
26.9%
2009
年度
7
6.4%
41
37.6%
34
31.2%
20
18.3%
7
6.4%
0
0.0%
44.0%
56.0%
2010
年度
14
12.8%
40
36.7%
35
32.1%
14
12.8%
5
4.6%
1
0.9%
49.5%
50.5%
2011
年度
6
5.4%
30
27.0%
51
45.9%
15
13.5%
8
7.2%
1
0.9%
32.4%
67.6%
2012
年度
20
18.2%
59
53.6%
20
18.2%
10
9.1%
1
0.9%
0
0.0%
71.8%
28.2%
2013
年度
8
7.7%
63
60.6%
28
26.9%
4
3.8%
1
1.0%
0
0.0%
68.3%
31.7%
2014
年度
1
0.9%
54
50.5%
39
36.4%
10
9.3%
3
2.8%
0
0.0%
51.4%
48.6%
2015
年度
8
7.3%
44
40.4%
45
41.3%
12
11.0%
0
0.0%
0
0.0%
47.7%
52.3%
2016
年度
0
0.0%
40
45.5%
33
37.5%
13
14.8%
2
2.3%
0
0.0%
45.5%
54.5%
2017
年度
0
0.0%
26
38.8%
31
46.3%
8
11.9%
2
3.0%
0
0.0%
38.8%
61.2%
2018
年度
0
0.0%
10
15.2%
40
60.6%
14
21.2%
2
3.0%
0
0.0%
15.2%
84.9%
2019
年度
3
3.2%
19
20.2%
46
48.9%
20
21.3%
6
6.4%
0
0.0%
23.4%
76.6%
2020
年度
1
1.7%
22
36.7%
30
50.0%
7
11.7%
0
0.0%
0
0.0%
38.3%
61.7%
2021
年度
1
1.3%
12
15.2%
36
45.6%
22
27.8%
6
7.6%
2
2.5%
16.5%
83.5%
2022
年度
1
1.4%
8
11.3%
32
45.1%
21
29.6%
9
12.7%
0
0.0%
12.7%
87.3%
全期間
通算
199
9.8%
869
42.9%
639
31.5%
225
11.1%
75
3.7%
20
1.0%
52.7%
47.3%

さらに、以下の(グラフ2)は、(表2)よりも度数分布を細かく区分し、度数分布の経年変化を示した。

(グラフ2)

※なお、オンブズマン別の処理日数の状況については、このエントリーで紹介している。

2024/02/08

2023年11月に調査を終了したケース

2023年12月1日、同年11月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期限が延長され、2024年1月12日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2023年11月)に調査を終了したのは6件で、このうち4件で調査結果が通知された。また、残る2件のうち1件は苦情申立てが取り下げられ、もう1件は調査しない旨が通知された。

今回公開された調査結果通知書のうち、市立図書館からはがきで通知を受けた予約図書の取り置き日数についての苦情である第2023-33号が興味深い。電子メールが一般化した今日、かつては迅速かつ簡便な連絡手段であったはずのはがきも、現在では非効率な連絡手段となったようだ。“昭和は遠くなりにけり”、といったところであろうか。

ところで、はがきで予約図書の通知がなされた場合の取り置き日数については、2022 年5月にそれまでの10日から12日に延長されている(当ブログ開設者の照会に対する中央図書館担当者からの回答)。このような対応は、2021年から22年にかけて、普通郵便およびはがきの配達日数が延長されたことにともなうものである。

この点、本件苦情のように、はがきによる通知の場合には他の連絡手段よりも実質的な受取可能日数が短くなる可能性があるとしても、すでに取り置き日数を延長しているという事情は、(さらに)「取り置き日数を延長することは困難である」という市の回答を正当化する根拠の一つとなるであろう。

もっとも、現在のはがきによる通知の運用は、通知ハガキの実物をいったん予約受付館から中央図書館に「庁内メール」で送付し、中央図書館から利用者に発送する場合もあるようだ。しかし、こうした手続きはいかにも効率が悪いといわざるを得ない。

そのため、当ブログ開設者は、予約受付館に予約図書が到着した旨を電子メールで中央図書館に通知し、中央図書館からはがきを発送すれば「庁内メール」の送付にかかる時間を短縮できると考える旨、中央図書館担当者に伝えたところである。

そのほか、今回の苦情を契機とする予約図書取り置き日数に関する利用者に向けた説明の改善内容については、通知書本体の「市の回答」部分で確認していただきたい。

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①第2023-28号
 申立人の子息が何某かの不始末をしでかしたこと(詳細は不明)にともなう学校の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2023-32号
 札幌市外から札幌市に転入した申立人による市の児童相談所の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

③第2023-33号
 市立図書館から予約図書の連絡をハガキで通知された場合における取り置き日数について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

④第2023-34号
 生活保護受給者がこれまで「稼働収入」として取り扱われていた収入が「臨時収入」とする取扱いに変更されたことにより控除額が減額されたことについて(その結果、支給される保護費の額が減少することになると思われる)苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑤第2023-39号
 市営住宅の入居者がさまざまな嫌がらせを受けているとして苦情が申し立てられたケース。嫌がらせの主体が不明であり、調査対象とすべき機関も特定できないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑥第2023-44号
 職員が申立人の就職活動を記録する日付印の日付をボールペンで修正したことについて問い合わせた際の対応が不適切であるとして苦情が申し立てられたケース。当該対応がなされたのは札幌市ではなく、北海道労働局の施設であったとして申し立てが取り下げられた。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

2023/11/24

2023年10月に調査を終了したケース

2023年11月1日、同年10月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、11月14日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2023年10月)に調査を終了したのは3件で、全3件で調査結果が通知された。3名のオンブズマンが各々1件づつの担当である。以下ではそのうち2件について、当ブログ開設者の感じたところを述べる。

まず、第2023-19号である。この案件は、生活保護受給者が親族死亡により未支給の国民年金を受給したことにともなう、保護費の取扱いに関する苦情である。保護課は当初、親族死亡時に資産が発生したとして支給ずみの保護費の返還を求めたものの、その後対応を改め、未支給年金の入金時点で収入認定し保護を廃止した。こうした一連の対応の経緯について苦情が申し立てられたところ、市の保護課は、当初の説明が誤りであったことを認めた。

ところで、この案件における保護課の対応(とりわけ当初の説明が誤りであると認めたこと)について、当ブログ開設者は、対申立人向けの「方便」ではないかという印象を抱いている。

すなわち、保護課は当初、入金された未支給年金の「全額返還」(と保護の継続)というプランAを選択したものの、申立人世帯の納得を得るのが困難であると考え「保護廃止」というプランBの対応に変更したのではないか、ということである。また、そのような事情をそのまま申立人に説明することも、(たとえ事実であったとしても)申立人の気分を害する可能性は高い。

さらに、申立人世帯にとっても、保護を継続した場合には医療扶助が受給できるのに対し、保護廃止になると国民健康保険料および医療機関受診時には一部負担金という負担が生じることになる。そのため保護課としては当初、保護廃止後に入金された年金をやりくりしながら生活するのでは、生活保護受給時よりかえって生活が苦しくなるという点も考慮したのではないか、ということである。

ただし、これはあくまで当ブログ開設者の印象にすぎず、保護課の対応を過大評価しているかもしれない。また、申立人世帯にとっても、保護継続より保護廃止が可能ならばそちらを選択するという判断は、生活保護の受給の「自己決定」として尊重されるべきであると思われる(生活保護法も「申請保護の原則」を規定する・同法7条)。

ところで、案件を担当した原俊彦の判断によると、支給ずみの保護費の取扱いについて、戻入通知書による「返還」と納入通知書による「徴収」がなされたことについて、「これらの取扱いの違いについて文書と口頭で説明を受けましたが、オンブズマンにとっても両者の違いは容易に理解できるものではありませんでした」ということである。この記述からは、最終的にその違いを理解したのか未だ理解できないままなのか不明であるが、「行政に関し優れた識見を有する」(札幌市オンブズマン条例8条2項)オンブズマンにしては、あまりにも理解力が貧弱であろう。

この点、これらの通知書の「名宛人」及び「名目」の違いは、保護金品は世帯主に交付するのが原則であり(生活保護法31条3項本文および同法33条4項)、保護廃止となることで過支給となった保護費については「世帯主」に対し「戻入」の手続きが取られ、「世帯構成員」(当然ながら世帯主とは別人)の口座に未支給年金が入金され資産を保有することになったために返還が必要になった保護費については、当該世帯構成員に対し「徴収」の手続きがとられた(同法63条および77条の2第1項)、というのが当ブログ開設者の理解である。

次に、第2023-27号である。この案件では、札幌プレミア商品券2023の購入手続きについて、発券場所のローソンの数が少なく、発券するための端末操作も煩雑であるとして苦情が申し立てられた。

まず、当ブログ開設者が市の回答を一読し何より驚いたのが、発券機能を備えた端末を備えたローソンが札幌市南区内に5店舗しかないという事実である。申立人の居住区が南区ならば(公開を受けた文書からは不明)、「自宅の周りにはローソンがない」という事態も大いにありそうなことである。

それでは、ローソン以外のコンビニエンスストアはどうであろうか。市内各区の店舗数を調べたのが以下の表である(なお、表はあくまで店舗数であり、発券機能を備えた端末が未設置の店舗を含んでいる可能性がある)。参考のため、各区の人口および公的な性格を有する施設として投票所及び郵便局(簡易局を含む)の数も添えた。

それによると、南区のローソン5店舗というのは、市内の総店舗数がローソンより少ないファミリーマートの8店舗すら下回る惨状である。市は業務委託に際し「販売所は200か所以上を確保する」ことを要件としたそうであるが、購入者の利便性を確保するためにも、各区ごとに最低10か所の販売所を設置する等の要件もあわせて設定すべきであったと当ブログ開設者は考えている(条件を満たす(と思われる)コンビニエンスストアの系列が存することは下表のとおり)。今後、札幌市がコンビニエンスストアの発券機能を利用する事業を実施する機会があるならば、考慮していただきたいものである。

なお、この案件の担当オンブズマン田村智幸によると、「販売方法の選定については市の裁量が尊重されるべき」であり、「販売所について郵便局等を併用できたかについては軽々に判断できることではな(く)」、「ローソンを販売所としたことについて、市の判断に不備はない」そうであるが、販売所へのアクセス保障という視点が完全に欠落している。課題を残す判断であると思われる。


人口
(万人)
投票所
郵便局
ローソン
セイコー
マート
セブン
イレブン
ファミリー
マート
中央区
25 37 48 85 58 78 43
北区
29 48 33 30 47 48 20
東区
26 39 30 31 45 44 19
白石区
21 30 24 23 38 40 19
厚別区
12 22 13 13 15 15 6
豊平区
23 31 18 23 34 30 19
清田区
11 16 14 11 15 12 4
南区
13 33 20 5 28 18 8
西区
22 31 23 24 29 34 7
手稲区
14 24 15 14 22 17 4
全市
197 311 238 259 331 336 149

-------------------------------------------------------------------------------------------------

①第2023-19号
 生活保護受給者が親族死亡により未支給の国民年金を受給したことにともなう保護費の取扱い等について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

②第2023-27号
 札幌プレミア商品券2023の購入手続きについて、発券場所のローソンの数が少なく、発券するための端末操作も煩雑であるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

③第2023-31号
 生活保護受給者に対する市職員の電話での対応や病状調査票に係る対応等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

2023/11/03

オンブズマンが苦情調査をしない条例上の根拠について

前回のエントリーで紹介した第2023-30号は、「苦情について調査しない旨」が通知された案件である。この案件では、職員の行為が「市の機関の業務の執行」(札幌市オンブズマン条例(以下、「条例」という。)3条)に該当しないという説示がなされている。しかしながら、当ブログ開設者はこの案件では、むしろ「申立人の利害の不存在」(条例16条1項1号)を理由とするべきであると考えている。

ところで、この点とは別に、当ブログ開設者はこの案件においてオンブズマンが、「条例16条第1項の規定により、調査をしないことといたしました」という説示に接し疑念を抱いた。それというのも、当ブログ開設者は、この案件では条例3条がオンブズマンが調査を実施しない根拠であり(すなわち苦情申立てに係る事実がオンブズマンの所轄外の事項である)、何故に条例16条を根拠とする旨を説示するのか、と感じたためである。

当ブログ開設者がこのように感じたのは、条例3条がオンブズマンの所轄事項を規定するとともに、条例16条が調査対象外の事項を規定し、苦情申立ての内容がオンブズマンの所轄外の事項である場合には条例3条、苦情申立ての内容が調査対象外の事項である場合には条例16条1項を根拠として、オンブズマンが調査を実施しないと理解していたからである(このほか、調査することが相当でない特別の事情がある場合については条例16条2項)。

しかしながら、今般改めて条例の規定を確認したところ、そうした理解は正鵠を得たものではないことが判明した。そこで以下において、条例の規定内容を確認しておきたい。

まず、札幌市オンブズマン条例17条1項は、オンブズマンが「前条の規定により苦情を調査しないときは、苦情申立人に対し、理由を付してその旨を速やかに通知しなければならない」と規定する。

そして、条例16条1項は、「オンブズマンの所轄事項でないもののほか」、同項各号が規定する「調査対象外の事項」に該当するものであるときには、オンブズマンが申立てに係る苦情について調査しないことを規定するのである。

この点、当ブログ開設者は、条例16条1項の「オンブズマンの所轄事項でないもののほか」という箇所を見落としていた。そのために、条例3条に基づいて調査しない場合と条例16条(1項及び2項)に基づいて苦情について調査しない場合があると誤認する結果となった。しかしながら、条例17条が前条の規定により調査しない場合の通知について規定している以上、条例16条のみが調査しない場合の根拠と考えるのが適切と思われる。

このように、札幌市オンブズマン条例は、オンブズマンが苦情について調査しないのは、①苦情がオンブズマンの所轄事項ではない場合(条例16条1項)、②所轄事項に該当するが調査対象外の事項に該当する場合(条例16条1項)、③所轄事項に該当するが調査することが相当でない特別の事情がある場合(条例16条2項)であることを規定し、苦情について調査しない場合にはその旨を申立人に通知する(条例17条1項)ことを義務づけるのである。

ただし、条例17条を読む限りでは、①条例16条以外を根拠として調査しない場合があるととともに、②その場合には申立人に対する通知は不要である、という反対解釈も成り立たないわけではない。そして、その場合には、条例3条の規定する所轄事項に該当しない苦情については、条例3条を直接の根拠として調査しないと理解するわけである。

しかしながら、前述したように条例16条1項が「オンブズマンの所轄事項でないもの」(同条例3条)についてもオンブズマンが調査しないと規定している以上、あえてこのような反対解釈をする必要性はない。のみならず、条例16条を根拠とせずにオンブズマンが調査を実施しない場合には条例17条に基づく書面通知も義務づけられないという解釈も適切ではないだろう(ただし、申立人が所在不明で通知不能な場合の対応は考えておくべきかもしれない)。

以上の次第で、申し立てられた苦情が条例3条が規定する「所轄外の事項」である場合において、「条例16条第1項の規定により、調査をしない」という第2023-30号のオンブズマンの説示も、理論的に誤りではないことが確認できた次第である。

とはいえ、この点について過去の案件を確認したところ、もう少し丁寧な言い回しがなされた案件も存在する。それらの案件では、①申し立てられた苦情が所轄外の事項であること、②条例16条1項は所轄外の事項については調査しない旨を規定していること、の2点について説示した上で、調査しないという結論を導いている。こうした論理展開が申立人に対してより懇切丁寧であることはいうまでもない。