2023/10/01

2023年8月に調査を終了したケース

2023年9月1日、同年8月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、9月15日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2023年8月)に調査を終了したのは8件で、このうち7件で調査結果が通知され、残る1件で調査しない旨が通知されて調査を終了している。

さて、今回もまた興味深い案件が公開されているが、ここでは介護保険制度の利用者からの苦情である第2023-26号に注目したい。それというのも、介護保険給付を受けてサービスを利用する市民からの苦情について、札幌市オンブズマンは自らの権限に基づく適切な調査を実施していないように思われるからである。

まず、この案件は、申立人がデイサービスを体験利用した際の苦情について、居宅介護支援事業所、ケアマネージャーおよび区の担当部局が適切に対応しないとして、さらなる対応を求めた「介護保険課から納得のいく明快な説明をしてもらえなかった」というものである。

一般に介護保険給付を受けて介護サービスを利用しようという場合、要介護認定を受けた上で、ケアマネージャーが作成するケアプランに基づいて介護サービスを利用することになる、その際、費用の大部分が介護保険から支給されることになる。

そして、介護サービスのうち居宅サービスを利用する場合には、指定居宅介護支援事業所のケアマネージャー(法令上の用語は「介護支援専門員」)が作成したケアプラン(法令上の用語は「居宅サービス計画」)に基づいて、指定居宅サービス事業者の介護サービスを利用することになる。

ところで、指定居宅サービス事業者(介護サービスを提供する事業者のことである)は、利用者及びその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応することが義務づけられている(たとえば通所介護については札幌市指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等の事業の人員、設備及び運営の基準等に関する条例113条が準用する条例38条)。そして介護保険法は、保険給付に関して必要があると認めるとき(同法23条)および居宅介護サービス費の支給に関して必要があると認めるとき(同法76条1項)における行政の調査権限を規定する。

また、指定居宅介護支援事業者(当該事業者の事業所に所属するケアマネージャーがケアプランを作成する)も、自ら提供した指定居宅介護支援および自らが居宅サービス計画に位置付けた指定居宅サービスに対する利用者及びその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応することが義務づけられている(札幌市指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営の基準等に関する条例29条1項)。そして介護保険法は、前述の同法23条のほか、同法83条1項が指定居宅介護支援事業者に対する行政の調査権限を規定する。

さらに、介護支援専門員(ケアマネージャー)は、厚生労働省令で定める基準に従って業務を行う義務があるところ(介護保険法69条の34第2項)、居宅サービス計画の作成後も居宅サービス計画の実施状況の把握が義務づけられている(札幌市指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営の基準等に関する条例16条13号)。そして都道府県知事は、介護支援専門員の業務の適正な遂行を確保するため必要があると認めるときは、介護支援専門員に対し必要な報告を求めることができる(介護保険法69条の38第1項)とされている(なお、この都道府県知事の権限を定めた規定は指定都市に適用される・地方自治法施行令174条の31の4第1項)。

このように、申立人が事業者等の苦情対応に不満をいだいたようなケースでは、そもそも事業者等が利用者等の苦情対応をすることは法令上の義務とされている点に留意する必要があるだろう。また、行政の調査権限についても法令の定めがあるのであり、①申立人の苦情は市が介護サービスの事業者等に対し調査権限を行使すべき事例であるかということ、さらに、②そうである場合に市が調査権限を適切に行使したかということ、それに加えて、③申立人の苦情に対応した市の担当部局の対応の適否などは、まさに「市の機関の業務の執行」として、札幌市オンブズマンの調査対象となるというが当ブログ開設者の制度理解である。

この点、過去にさかのぼると、札幌市オンブズマンは2021年度の8月(このエントリー)および9月(このエントリー)に2か月連続で介護保険の住宅改修費に関する苦情調査を終了しているが、いずれの案件も調査担当のオンブズマンが「市の機関の業務の執行」という観点から調査を実施するという視点が致命的に欠けていると思われた。そのため、当ブログ開設者は、介護保険法には「第4章 保険給付」および「第5章 介護支援専門員並びに事業者及び施設」のそれぞれに行政の権限が定められていることを指摘した(2021年9月に調査を終了したケース)。

さて、それから2年が経過しようとしているが、今回、第2023-26号の調査を担当したオンブズマン(2021年8月に調査を終了した第2021-17号を担当したオンブズマンでもある)は「苦情について調査しない旨」を通知した。そのため、申立人の苦情に対し、市の対応の適否についてオンブズマンの判断が示されることはなかった。

調査担当のオンブズマンは、①居宅介護支援事業所と申立人の関係は「市の機関の業務の執行」ではないこと、さらに、②ケアマネージャーの対応についてはすでに介護保険課から介護支援事業所への指導がなされているということを理由として調査を実施しなかったが、このような判断は、調査担当のオンブズマンが申立人の苦情を適切に把握しているのかということのみならず、オンブズマンの調査権限についての適切な理解を欠くのではないかという疑念を抱かせるものである。

もっとも、この第2023-26号では、申立人から全35枚におよぶ苦情申立書が提出されている(当ブログ開設者は当該文書の写しを交付されたものの、その内容は非公開とされた)。市から申立人に交付された「回答文書」がその中に含まれており、オンブズマンとしてはそれ以上の回答の必要はないと判断し、調査を実施しなかった可能性がある。

しかしながら、それでもなお、市が「文書回答」を行った一連の経緯(および当該回答文書の記載内容)の適否については、「市の機関の業務の執行」としてオンブズマン調査の対象となると思われる。また、市の一連の対応についてその根拠を明確にすることにも、申立人の「利害」が認められるであろう。

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①第2023-12号
 市営住宅の入居者が他の入居者の問題行動を理由として新たな入居者を入居させない結果空室が増え、既入居者にとっては入居者による役割分担の負担が大きいとして、新たな入居者を入居させることを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

②第2023-13号
 申立人が生活保護の担当職員から「妄想」という発言を再三にわたりされたことで精神的苦痛を受けたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

③第2023-14号
 市民自治推進課に対する問い合わせの回答に時間を要するとともに、オンブズマンに対し苦情を申し立てると伝えるや否や回答が寄せられたとして、回答に時間を要する対応の改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智之)
④第2023-15号
 配偶者と2人で年金収入のみの苦しい生活をしているにもかかわらず、国民健康保険の保険料の減免申請を受け付けてもらえないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智之)

⑤第2023-17号
 申立人企業が所有する賃貸物件はペット禁止であるにもかかわらず生活保護受給者がペット連れで入居したことについて、保護課が転居費用を保護費として支給することができないと説明することや、ペット禁止の物件であることを認識しながら転居を認めたこと等に納得がいかないとして、市に納得のいく説明を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
⑥第2023-18号
 住民税非課税世帯支援給付金の申請手続きについてコールセンターに問い合わせた際、銀行の都合で変更になった銀行名の証明書類を添付するよう説明を受けたことに納得がいかないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑦第2023-21号
 生活保護受給者が、これまでケースワーカーの家庭訪問は事前に約束をして行われてきたにもかかわらず、今回事前の約束なしに家庭訪問がなされたことを不服として苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智之

⑧第2023-26号
 デイサービスを体験利用した際の利用報告書に事実に反する記載がなされていたことについて、居宅介護支援事業所、ケアマネージャーおよび区の担当課に苦情を申し立てても対応してもらえなかったことから、保健福祉局介護保険課に調査および指導を求めたものの、介護保険課からも納得のいく明快な説明が受けられなかったとして苦情が申し立てられたケース。事業所と申立人の関係は「市の機関の業務の執行」に該当せず、ケアマネの対応についてはすでに市から事業所に指導がなされているとして「調査することが相当でない特別の事情がある」として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)

2023/08/28

2023年7月に調査を終了したケース

 2023年8月1日、同年7月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、8月14日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2023年7月)に調査を終了したのは6件で、このうち5件で調査結果が通知され、残る1件で調査しない旨が通知されて調査を終了している。

さて、今回もまた、いろいろ興味深い案件が公開されている。まず第2023-8号は、保健所に開設された「医療安全相談窓口」の職員の対応について、苦情が申し立てられた案件である。

ところで、当ブログ開設者が、以前当ブログで紹介した「無料低額診療」に関する第2022-74号のオンブズマン判断の疑義について市に照会したところ(疑義の内容はこのエントリーに記載した)、この「医療安全相談窓口」の担当者からの回答を得た。やや手間がかかったものの、結論としては当ブログ開設者の考える条文理解に誤りはないことが確認できた。対応していただいた担当者に改めてお礼申し上げる次第である。

このような経緯もあり、この第2023-8号の「市の回答」における以下の記述、すなわち、「相談を受ける職員は、・・・(中略)・・・関係法令や法令所管の窓口など的確に把握した上で相談者に伝え、あるいは助言することを常に念頭において対応することが肝要」という箇所が、実に味わい深く感じられた。「医療安全相談窓口」には、対応に苦慮する内容の相談も寄せられるであろうことは容易に想像できる。対応する市職員には、適切な相談対応がなされることを期待したい。

次に、第2023-11号は、地下鉄に由来する「振動」に関する苦情である。周知のように、札幌の地下鉄はゴムタイヤを履いており、一般的には騒音や振動が鉄の車輪より少ないといわれている(一例として、札幌市青少年科学館の科学の質問箱)。そのため、その地下鉄の「振動」についての苦情は、当ブログ開設者には「科学的常識」に反するように思われた。

また、法令等による振動の規制も、新幹線(新幹線の振動対策)とは異なり、在来鉄道(札幌の地下鉄はこれに該当)については実施されていない。もちろん、名古屋市川崎市のように、在来鉄道の騒音・振動の測定を実施している自治体は存在するものの、測定対象としているのは地上部分に限られるようである。

以上のことから、当ブログ開設者は、地下鉄の振動がトンネル外の建築物に対し影響を及ぼすものなのか、疑念を抱いている。本件苦情の申立人は「地下鉄が■■駅を発車するタイミングで振動が起こることが判明した」と主張するが、どのような手法でその事実を確認したのか、公開を受けた文書からは確認できない。そうである以上、当ブログ開設者としては、市には申立人が主張する事実の存否について確認してほしいと感じた次第であるが、これはいささかないものねだりかもしれない。

ところで、この案件の調査担当のオンブズマンは、「市には、市民の声に耳を傾けていただき、法的義務に有無にこだわらず、市として何かできることはないかという姿勢をもって、可能な限り市民に寄り添った対応をしていただきたい」という判断を示している。

ここでいう「市民に寄り添った対応」がどのような対応なのか不明であるが、社会福祉の分野であれば格別、それ以外の分野でのこうした言いまわしは、ともすれば「市はすべからく市民の求めるままの対応をすべきである」という一般論であるとの誤解を招きかねず、適切ではないように思われる。

こうした誤解を回避するためにも、オンブズマンは、①市が申立人の苦情内容を適切に把握しているか、②市としてできることの説明あるいは対応できない理由の説明が適切になされているか、③可能な範囲での対応が適切になされているか、という各段階で、職員対応の改善の余地について、具体的な指摘をするべきであろう。

「市として何かできることはないかという姿勢」を市職員に期待するのは、百年河清を俟つがごとし。むしろオンブズマンが「あんなことはできないか」「こんなことはできないか」、積極的に市の対応可能性を問い合わせることで、受け身の対応になりがちな市職員が積極性な対応をする後押しとなるならば、「市民の意向が的確に反映された市政運営に資する」(札幌市オンブズマン条例1条)ことになると思われる。

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①第2023-7号
 市立札幌病院に入院した際、病室を出て建物外で電子タバコを吸ったところ強制的に退院させられたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2023-8号
 福祉施設の職員が風疹ワクチンの予防接種について医療機関に問い合わせた際の医師の対応に不満を覚え保健所に相談したところ、保健所職員の対応が適切さを欠くものであったとして、保健所職員の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

③第2023-9号
 市立体育館の正面玄関前の階段に自転車用スロープの設置を要望したところ、当初設置されたスロープが狭く幅を広げる修正が必要となったことや、申立人の問い合わせに対する市の回答が不誠実であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

④第2023-10号
 札幌市に転入した申立人がUIJターン就職移住支援事業の移住支援金を申請しようとしたが、「予備申請」が必要であることが十分周知されていないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑤第2023-11号
 不動産を所有する法人である申立人が、地下鉄が駅を発車するタイミングで建物が振動することが判明したとして、振動についての調査もしくは修繕を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑥第2023-16号
 申立人が通所していた事業所でいじめを受け体調を崩したこと等について市の担当課に調査・指導等の権限行使を要望した際の職員の対応及びそれ以後に市が何らの対応をしないことについて苦情が申し立てられたケース。担当課職員の対応についてはすでにオンブズマンが調査を実施している(第2022-42号)として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

2023/07/23

2023年6月に調査を終了したケース

 2023年7月2日、同年6月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、7月13日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2023年6月)に調査を終了したのは2件で、全2件で調査結果が通知された。

さて、今回公開された2件は、いずれも田村智幸オンブズマンが担当した案件である。まず、第2023-4号である。この案件は、市税を滞納したことで「差押通知書」の送付を受けた申立人が差押えを待ってほしいと求めたが受け入れられず、説明を求めた職員から十分な説明も受けられなかったとして苦情が申し立てられた案件である。

この案件で当ブログ開設者の目を引いたのは、市の回答における「申立人に納付誠意がないと判断」したという箇所である。市税の納付という法律上の義務の履行に際し、「誠意」というフレーズはそぐわないように感じられたからである。

しかし、である。どうやら納税義務者が「差し押さえを待ってほしい」と泣きを入れるケースでは、この「誠意」が意味を持つ場合もあるようだ。

この点、まず出発点となるのは、市町村民税の滞納者が督促を受けたにもかかわらず完納しない場合、市町村の徴税吏員は滞納者の財産を差し押さえしなければならないという原則である(地方税法331条1項1号)。

しかしながら、地方税法は「職権による換価の猶予」を規定する(同法15条の5)。ここにいう「換価」とは、財産の差し押さえを含む概念であるが、滞納者の財産の換価を直ちにすることにより「その生活の維持を困難にするおそれ」があり、その者が徴収金の納付・納入について「誠実な意思」を有すると認めるときは、滞納処分による財産の換価の猶予をすることができるとされている。ここにいう「誠実な意思」がおそらく、市の回答にいう「誠意」であろう。

また、地方税法は「申請による換価の猶予」も規定する(同法15条の6)。この場合も、滞納者が徴収金を一時に納付・納入することにより「その生活の維持を困難にするおそれ」があり、その者が徴収金の納付・納入に「誠実な意思」を有すると認められるときは、滞納処分による換価の猶予をすることができるとされている。

このように、「その生活の維持を困難にするおそれ」があることが前提だが、徴収金の納付・納入に「誠実な意思」がある場合、地方団体の長が慈悲深い対応をする根拠となる規定は、実にしみじみと味わい深い。ただし、恣意的な運用とならないように、具体的な運用の適否について別途論ずる余地はあると思われる。

次に、第2023-6号である。この案件は、児童扶養手当を受給する申立人が実家(二世帯住宅)に転居したところ、事実婚をしたとして「資格喪失届」が送付されてくるとともに、調査が終了するまで手当が支給されないことについて苦情が申し立てられたものである。

ところで、児童扶養手当法施行規則6条は、児童扶養手当の受給者に「住所変更の届出」を義務づけているが、この申立人は転居した際、児童扶養手当に関する「住所変更の届出」を失念した模様である(児童扶養手当法施行規則は同法28条1項(及び33条)に基づいて定められたものである。ただし、法28条は届出義務につき「内閣府令」の定めるところによる旨を規定する一方で、児童扶養手当法施行規則そのものは「厚生労働省令」である理由は不明)。

そして、法15条には、手当の支給を受けている者が正当な理由なく法28条1項の規定による届出(上述した「住所変更の届出」はこれに該当)をしないときは、「手当の支払を一時差しとめることができる」ことが規定されている。そのため、本件の申立人が「住所変更の届出」を怠ったことは、手当の支給を一時的に差し止める理由となりえるというのが当ブログ開設者の理解である。

これに対し、田村智幸オンブズマンの判断によると、「別生計であることを確認する前に職権で直ちに支給停止できることについては、明確な法令上の根拠や規定を見出すことはできませんでした」というのである。おそらく、「届出の懈怠」という手続的理由による児童扶養手当の支給の一時に差しとめを可能とする法15条の規定を見落とすとともに、本件における児童扶養手当の「支給停止」が手続的理由ではなく、実体的理由によると考えたためと思われる。

この点、市の回答によると、①受給者の住所変更はシステムで把握している、②住所変更を把握したが「住所変更届」の提出がない場合には提出を依頼する文書を送付する、③変更先の住所に同居の扶養義務者等が確認された場合は、その内容に応じて「支給停止関係変更届」や「資格喪失届」を送付しているということである。

田村智幸オンブズマンとしては、こうした事務手続きの間、児童扶養手当の支給がどのような取扱いになるのか、また、それはどのような根拠に基づくのか調査対象部局に説明を求めておけば、法15条の規定を見落ことはなかったと当ブログ開設者は考えているのだが、いかがであろうか。

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①第2023-4号
 市税を滞納したことで「差押通知書」の送付を受けた申立人が差押えを待ってほしいと求めたが受け入れられず、説明を求めた職員から十分な説明も受けられなかったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2023-6号
 児童扶養手当を受給する申立人が実家(二世帯住宅)に転居したところ、事実婚をしたとして「資格喪失届」が送付されてくるとともに、調査が終了するまで手当が支給されないことについて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

2023/07/17

2023年5月に調査を終了したケース

 2023年6月1日、同年5月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、6月28日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2023年5月)に調査を終了したのは8件で、このうち5件で調査結果が通知された。また、残る3件のうち1件は調査しない旨が通知され、2件は苦情申し立ての取り下げにより調査が終了している。

さて、今回公開された案件のうち第2022-92号及び第2023-2号の2件において、申立人が苦情を申し立てたものの当初のオンブズマンとの面談予定日に面談できず、日程の再調整も困難であるとして、いったん苦情申立てが取り下げられている点が興味深い。

このような、苦情申立てをいったん取り下げ(必要に応じて再度申し立て)るという取扱いは、第2022-1号の処理をふまえ、運用面の強化を図ったことを示しているのではないかと、当ブログ開設者は考えている。

すなわち、苦情申立日が2022年4月1日付とされた第2022-1号では、オンブズマンが2022年11月24日付で調査を実施するに至るまで(調査実施通知書記載の日付による)、半年以上にわたり調査が塩漬けにされた。その結果、苦情申立てから調査終了までの日数がいたずらに長期化することになったが、こうした事態は、「簡易迅速」を旨とする札幌市オンブズマンの制度趣旨に照らすと、望ましいことではないように思われる。

また、札幌市オンブズマン条例は「申立ての原因となった事実のあった日から1年を経過しているとき」(同条例16条1項2号)を「調査対象外事項」と規定するところ、第2022-1号の調査にオンブズマンが着手した時点では、申し立ての前提となった事実のあった日からすでに1年以上が経過することになった。

この点、1年以上経過した事実を「調査対象外事項」として規定するのは、時間が経過するほどに事実関係を確認するのが困難になるためである。いったん申し立てがなされたとしても、調査に着手するまでに時間が経過したケースについても事情は同様であろう。

こうした事情をふまえ、札幌市オンブズマン制度の運用として、直ちに調査に着手できない場合はいったん苦情申立ての取り下げを要請するという運用を強化した結果、今回公開分の2件において苦情申し立てが取り下げられたのではないかと、当ブログ開設者は考えている(なお、第2022-1号自体、第2021-83号の苦情申し立てがいったん取り下げられた後、再度、苦情申し立てがなされたという取り扱いがなされた案件である)。

今後は、直ちに調査に着手できないにもかかわらず申立人が任意の取り下げに応じない場合、そのまま調査を塩漬けにするのか、それとも、「調査しない旨」を通知することで調査を終了させるのか、予め検討しておく必要があると思われる。

その際、「調査しない旨」を通知した後に再度の申立てがなされた場合の取扱いについて、「『調査しない旨』を通知した事実関係については、再度の申し立てがなされてもオンブズマンは調査をしない」とした判断(第2022-58号)の妥当性も検討する必要があるだろう(第2022-58号におけるオンブズマン判断の問題点は、このエントリーで指摘した)。

次に、苦情等調査結果通知書の「市の回答」部分において、申立人の市職員への対応について「激昂」というフレーズが5回にわたり用いられている第2023-1号も興味深い(調査担当は原俊彦オンブズマン)。

この案件は、地下鉄出入口の周辺部にある駐輪場の除雪に際し、誘導員の案内が適切ではなかったために転倒して負傷した、と主張する申立人が申し立てた苦情である。当ブログ開設者の語感としては、「激昂」といった場合の当事者は、感情のコントロールを失って理不尽に声を荒らげたというイメージである。そのため、市の回答における複数回にわたる「激昂」という記述により、申立人の対応が「激昂」とは何事かと、申立人を文字どおり激昂させる事態が生じることを当ブログ開設者は懸念する(思い過ごしであってほしい)。

のみならず、市の回答において「激昂」のフレーズが用いられているのは、転倒事故の後日に市職員が申立人に対応した際のことである(したがって、事故当日については「激昂」のフレーズは用いられていない)。それにもかかわらず、オンブズマン判断においては、「事故直後の申立人の激昂した様子」という記述が見られる。調査担当のオンブズマンは、いかにして申立人の「激昂した様子」を確認したのであろうか。この記述が「事実に反する」として、申立人を文字どおり激昂させる事態が生じることを当ブログ開設者は懸念する(思い過ごしであってほしい)。

このほか、原俊彦オンブズマン担当の第2023-5号では、「北海道社会福祉サービス運営適正化委員会」は市の機関ではないため、オンブズマンの調査対象外であるとされた。

しかしながら、申立人は運営適正化委員会の対応について苦情を申し立てたのではない。自己の勤務先である福祉サービス事業所に対し、市職員の担当者が影響力を行使していたということについて、苦情を申し立てたものである。

したがって、調査担当のオンブズマンは、市の機関の業務の執行として、当該職員が当該事業所に対し影響力を行使した事実があったのか、について調査するのが札幌市オンブズマンの制度運用における筋であると思われる。

とはいえ、申立人による「市職員が事業所に影響力を行使した」という主張が奇異であることは否定できない。調査担当のオンブズマンも、そうした主張が申立人の妄想世界のことであると考え、調査をしないための理屈をひねり出したのかもしれないが、当ブログ開設者に対しては、原俊彦オンブズマンは申立人の主張を理解することもままならないと印象づける結果となった。

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①第2022-85号
 申請手続きの際に保健福祉課に提出した診断書が医療機関と保健福祉課の間で行方不明になったこと及びその後の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

②第2022-89号
 生活保護を受給する申立人が、ケースワーカーから収入を増やすよう指導を受けたこと等を不服として苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

③第2022-92号
 子どもが通う小学校でいじめのようなことがあり、学校及び教育委員会に対応を求めているが十分ではないとして苦情が申し立てられたケース。オンブズマンとの面談の日程が決まらないとして、苦情申し立てが取り下げられた。(担当オンブズマン:田村智幸)

④第2022-93号
 勤務先を退職することにともない、国民健康保険に加入した場合の保険料について相談した際に「非自発的失業軽減制度」の説明を受けなかったことから健康保険の任意継続を選択したとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑤第2022-94号
 住民税非課税世帯を対象とした特別給付金の申請書類が届かなかったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑥第2023-1号
 地下鉄出入口周辺部にある駐輪場除雪の際の誘導が不適切で負傷したとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑦第2023-2号
 入居する市営住宅に空き室が多いのは税金の無駄づかいであり、入居者にとっても班長役が短い周期で回るために負担が大きいとして、苦情が申し立てられたケース。オンブズマンとの面談日の調整が難しいとして、申し立てが取り下げられた。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑧第2023-5
 申立人が勤務していた福祉サービス事業所で虐待やパワハラを受けたが、北海道社会福祉サービス運営適正化委員会から得た回答によると当該事業所を所轄する市の担当職員が事業所の運営に関与しているとして、苦情が申し立てられたケース。「北海道社会福祉サービス運営適正化委員会」は市の機関ではないためにオンブズマンの調査対象外であるとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)

2023/06/21

2023年4月に調査を終了したケース

 2023年5月1日、同年4月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、6月2日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2023年4月)に調査を終了したのは8件で、このうち苦情申し立てに基づくものが7件、オンブズマンの自己の発意に基づくもの(いわゆる「発意調査」)が1件となっている。また、苦情申立に基づく調査のうち、6件で調査結果が通知され、残る1件で調査しない旨が通知されている。

さて、今回公開された案件のうち、第2022-87号は当ブログ開設者が申し立てた苦情である。この苦情は、2022年11月に調査を終了した「路面電車無料デー」に関する苦情(第2022-44号)に触発されて申し立てたものである。路面電車と地下鉄の乗継割引において、ルールと運用実態にギャップがあることからその解消を求めて苦情を申し立てた。

この案件では、調査を担当した田村智幸オンブズマンの見解、特に以下の2点が興味深いと当ブログ開設者は考えている。まず第1の点が、路面電車利用者に対する「約款」の適用関係である。田村智幸オンブズマンはICカード利用の場合、約款に定めのない停留場と地下鉄駅との乗り継ぎにも乗継割引が適用になることについて、「不合理とまでは言えない」と結論づけた。

しかしながら、約款は誰に対しても等しく適用されるものである。そのため、利用者に対し、約款に定めのない取扱いをすることが許容される余地はないのではないか。田村智幸オンブズマンも、前述の「路面電車無料デー」に関する苦情において、約款に定めがないことを根拠として「無料デーの実施を理由にした日割り返金を求めたり、定期券の有効期限の延長を求めることは困難である」と結論づけていた(第2022-44号)。それにもかかわらず、この案件では一転、ICカード利用時には、約款に定めのない乗継割引が適用されることを是認した。

このように、田村智幸オンブズマンは約款に定めのない取扱いについて、一貫性を欠く判断をしているように思われる。制度屋でなければ理論屋でもない、紛争処理屋の面目躍如といえようか。このような田村智幸オンブズマンの見解は、長く記憶にとどめたい。

第2の点が、路面電車における「2リーダー方式」(ICカードを利用する際は中ドアからの乗車時に乗車停留場の情報を記録し、降車時に料金を支払う方式)の採用についてである。市の回答によると、札幌市電が同方式を採用しなかった理由の一つが「路面電車の受電容量が少なく機器設置が困難なこと」である。田村智幸オンブズマンも、この点について「やむを得ないこと」だとして是認した。

しかしながら、札幌市電には導入時期の異なる車両が混在する(電車博物館/札幌市交通事業振興公社)。1950〜60年代に製造された車両と2010年代に製造された車両の受電容量が等しいとは、当ブログ開設者にはにわかに信じ難かった。そこで、担当部局に照会した回答(の一部)を引用する。

「各世代の車両によって受電容量に差がある状況であり、200型以外の車両においてはICカードリーダーの設置は可能でありましたが、設置・未設置が混在すると、制度上・運用上の統一性が担保できないことから、200型車両以外にのみICカードリーダーを設置することは困難であります。」

やはり、である。上記の200型とは、1958年から1961年にかけて製造された車両である。実際に行うかは別にして、これらの車両が引退した以降であれば、「2リーダー」方式を採用する技術的な障害は存在しないわけである。当ブログ開設者としては、わが意を得たりの回答であるが、田村智幸オンブズマンは同様の疑問を抱かなかったのであろうか。

実のところ、当ブログ開設者は、まさかオンブズマンがこの案件の調査を実施するとは考えていなかった。はたして申立人に「利害」があるのか、疑わしいためである。それでも、改善のために自説を展開することに意義があると考え、苦情を申し立てた。

ところが、結果的に田村智幸オンブズマンからは、実に興味深い見解が披瀝された。また、調査対象部局からは、「費用対効果の点からも、現時点では喫緊の課題としての検討は行っていない」ものの、「今後の運賃制度の検討と併せて、乗継指定停留場のあり方を検討していく必要もあると考えて」(いる)という回答を得た。以上の次第で、当ブログ開設者としては、苦情を申し立てたことには一定の成果があったと考えている。

なお、約款に定めのないケースにまで「乗継割引」を適用することの当否に関しては、「住民監査請求」を行うことも考えた。しかしながら、約款の定めどおりの運用が徹底されると、現在よりも乗り継ぎ割引の適用ケースが縮小することになり、それは必ずしも当ブログ開設者の意図するところではない。今後、具体的な行動を起こすか否かについては、慎重に検討したい。

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①第2022-81号
 介護保険施設に勤務する申立人が、勤務先が人員基準を満たしていないとして市が調査及び是正のための権限を行使することを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

②第2022-83号
 申立人と関係のある「本人」が生活保護を受給しているところ、申立人が依頼しても「本人」の安否確認をしない等、保護課の対応に問題があるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2022-84号
 身体障害者手帳を取得した申立人が、医療費助成について当該助成の申請日より遡って疾病の発生日とすることを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

④第2022-86号
 就学指定先が変更される前に申立人の関係者が通っていた小学校における「いじめ」に関し、一連の学校の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑤第2022-87号
 ICカードを利用して路面電車と地下鉄を乗り継いだ際、利用者に周知している内容と実態に齟齬があるとして、その是正を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑥第2022-88号
 札幌市内に事務所を開設する士業者が、市が所有する建物を利用する顧問先法人の解散に関し市からの問合せに再三にわたり対応を余儀なくされたり、荷物の保管を要求される等、過大な負担を負わされているとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑦第2022-発2号
 札幌市における児童手当の支給状況と認定請求手続きについて、オンブズマンが自己の発意により調査を実施したケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑧第2023-3
 町内会が実施する除雪の騒音及び費用徴収について、苦情が申し立てられたケース。「市の機関の業務の執行」(札幌市オンブズマン条例16条1項)に該当しないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)