2019/07/21

札幌市オンブズマン苦情処理日数の状況(年度別・2018年度まで)

2019年7月に入り、札幌市オンブズマンの平成30年度活動状況報告書が公表された。そこで、オンブズマン事務局に各案件の処理日数のデータ提供を依頼し、以下の表及びグラフを作成した(ただし、1件のデータ提供が受けられなかったことから、その案件については、他の情報と合わせて推定される最小の日数を計上した)。また、今回は、処理日数の平均に加え、処理日数の中央値も掲載することにした。

なお、以下の(表1)の「結果通知処理件数」とは、「苦情申立件数」のうち、オンブズマンが「苦情等調査結果通知」を発送し、調査を終了した案件の件数である。したがって、「処理日数」は原則として、苦情申し立てから「苦情等調査結果通知書」の発送までに要した日数である(申立人に苦情の内容を確認するために要した日数は算定から除外されている)。

このほか、札幌市オンブズマンの制度が発足した初年度の2000年度は、制度が運用されたのがわずか1か月間にとどまっていることから、この期間の処理状況は便宜的に2001年度と合算している。そのため、制度が発足した当初の2000/01年度に限り、13か月間に申し立てられた案件の処理状況を計上している。これに対し、以後の各年度は、当該年度の12か月間に申し立てられた案件の処理状況を計上している(調査終了が翌年度となった案件は、申立時点を基準として処理状況を計上している)。

ところで、2018年度における処理状況をみる限り、札幌市オンブズマン制度史上最低の1年であったといえるだろう。すなわち、第1に、取扱件数が制度発足来の最少を更新している。第2に、結果通知発送に要した日数は、①平均の処理日数が制度が発足した2000/01年度以来の40日台、②平均処理日数の中央値が2011年度以来の37日という最長の日数、③30日以内に結果通知を発送した割合が過去最低(32.4%)を大幅に下回る15.2%、と3点において最低(又は最低タイ)になっている。

もっとも、それはあくまで、処理件数及び日数に限られた話であり、オンブズマン調査の「質」については別論である。すなわち、オンブズマン調査に時間がかかったり、件数が少なかったとしても、1件1件の調査に手間をかけ、調査の「質」の向上につながるのであれば、件数の少なさや処理日数の長さについて、否定的に評価すべきではないのかものしれない。

ただし、この「質」の評価は、処理日数や処理件数のように、数値として客観化されるものではないことから、2018年度のオンブズマン調査について、過去にオンブズマンが行ってきた調査の質と比較することは、実際のところ困難である。この点、当ブログ開設者としては、2018年度に示されたオンブズマン判断は、興味深い案件もある一方で、全体としては、その「質」が十分確保されていたとは言い難いと考えている。そのことの一端を示すべく、当ブログ開設者がオンブズマン判断に抱いた疑問(の一部)を論じたエントリーを示しておく(6月調査終了分3月調査終了分)。

(表1)
 
苦情申立
件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2000/01年度
177
120
43.69
29
52.5%
2002年度
111
88
31.14
28
65.9%
2003年度
113
83
30.07
30
54.2%
2004年度
93
74
30.78
28
63.5%
2005年度
103
88
24.78
26
83.0%
2006年度
115
92
25.32
25.5
92.4%
2007年度
111
90
24.40
23
88.9%
2008年度
117
108
32.45
28
73.1%
2009年度
133
109
36.62
32
44.0%
2010年度
130
109
34.79
32
49.5%
2011年度
125
111
38.94
37
32.4%
2012年度
135
110
29.16
28
71.8%
2013年度
122
104
29.84
28
68.3%
2014年度
129
107
33.45
30
51.4%
2015年度
130
109
33.05
31
47.7%
2016年度
100
88
35.36
31.5
45.5%
2017年度
82
67
35.76
33
38.8%
2018年度
77
66
*40.06
*37
15.2%
全期間
通算
2103
1723
*32.93
*29
58.1%

*を付したデータは、2018年度の案件のうち1件について推定値に基づくことを示している。

また、以下の(表2)は、制度発足以来の処理日数の度数分布を取りまとめたものである。2017年度とくらべ、2018年度における「21日~30日」の減少と、「31日~45日」及び「46日~60日」の割合の増加が顕著である。

(表2)
   
20日
以内
 21日〜
30日
 31日〜
45日
46日〜
60日
61日〜
90日
91日
以上
30日
以内
処理率
30日
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
2000/01
年度
20
16.7%
43
35.8%
26
21.7%
10
8.3%
9
7.5%
12
10.0%
52.5%
47.5%
2002
年度
20
22.7%
38
43.2%
17
19.3%
5
5.7%
7
8.0%
1
1.1%
65.9%
34.1%
2003
年度
13
15.7%
32
38.6%
33
39.8%
5
6.0%
0
0.0%
0
0.0%
54.2%
45.8%
2004
年度
7
9.5%
40
54.1%
21
28.4%
4
5.4%
2
2.7%
0
0.0%
63.5%
36.5%
2005
年度
20
22.7%
53
60.2%
15
17.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
83.0%
17.0%
2006
年度
21
22.8%
64
69.6%
5
5.4%
1
1.1%
0
0.0%
1
1.1%
92.4%
7.6%
2007
年度
21
23.3%
59
65.6%
7
7.8%
2
2.2%
1
1.1%
0
0.0%
88.9%
11.1%
2008
年度
7
6.5%
72
66.7%
15
13.9%
8
7.4%
4
3.7%
2
1.9%
73.1%
26.9%
2009
年度
7
6.4%
41
37.6%
34
31.2%
20
18.3%
7
6.4%
0
0.0%
44.0%
56.0%
2010
年度
14
12.8%
40
36.7%
35
32.1%
14
12.8%
5
4.6%
1
0.9%
49.5%
50.5%
2011
年度
6
5.4%
30
27.0%
51
45.9%
15
13.5%
8
7.2%
1
0.9%
32.4%
67.6%
2012
年度
20
18.2%
59
53.6%
20
18.2%
10
9.1%
1
0.9%
0
0.0%
71.8%
28.2%
2013
年度
8
7.7%
63
60.6%
28
26.9%
4
3.8%
1
1.0%
0
0.0%
68.3%
31.7%
2014
年度
1
0.9%
54
50.5%
39
36.4%
10
9.3%
3
2.8%
0
0.0%
51.4%
48.6%
2015
年度
8
7.3%
44
40.4%
45
41.3%
12
11.0%
0
0.0%
0
0.0%
47.7%
52.3%
2016
年度
0
0.0%
40
45.5%
33
37.5%
13
14.8%
2
2.3%
0
0.0%
45.5%
54.5%
2017
年度
0
0.0%
26
38.8%
31
46.3%
8
11.9%
2
3.0%
0
0.0%
38.8%
61.2%
2018
年度
0
0.0%
10
15.2%
40
60.6%
14
21.2%
2
3.0%
0
0.0%
15.2%
84.9%
全期間
通算
193
11.2%
808
46.9%
495
28.7%
155
8.2%
54
3.0%
18
1.0%
58.1%
41.9%

さらに、以下の(グラフ1)は、(表2)よりも度数分布を細かく区分し、度数分布の経年変化を示したものである。2018年度は、ついに25日以内に調査を終了した案件もなくなっている。

(グラフ1)

札幌市オンブズマンの調査が遅滞することは、今に始まったことではない。過去を振りかえってみると、処理日数に関しては、2011年度が札幌市オンブズマン制度史上最低の1年であった。しかし、この時は、翌2012年度の処理日数の状況は、大幅に改善している。

2018年度の経験を踏まえ、2019年度の札幌市オンブズマンは、何某かの改善に取り組むのか、それとも、漫然と処理日数の減少と処理の遅滞化傾向に身を委ねるままにするのか。その活動に注目である。

なお、オンブズマン別の処理日数の状況については、このエントリーで紹介している。

2019/07/08

平成30年度活動状況報告書・非掲載案件リスト

札幌市オンブズマンは、毎年、活動状況を公表することが義務付けられている(札幌市オンブズマン条例27条1項)ところ、先日、平成30年度札幌市オンブズマン活動状況報告書が公表された。

当該活動状況報告書によると、平成30年度に市民から札幌市オンブズマンに申し立てられた苦情は77件で、このうち調査結果が通知されたものが66件、調査結果が通知されることなく調査が終了したものが11件となっている。また、調査結果が通知された事例のうち38件については、調査内容の要約が掲載されている(ほかにオンブズマンの発意に基づく調査2件の要約も掲載)(注1)。

このように、活動状況報告書には、市民の苦情についてオンブズマンが調査した事例のすべてが掲載されているわけではなく、調査結果が通知された事例のうち残る28件と、調査結果が通知されることなく調査が終了した全11件が非掲載となっている。

そこで、このエントリーでは、平成29年度に引き続き、活動状況報告書の掲載から漏れたあわれな事例を紹介する(注2)。以下に紹介する案件が、いかなる事情により活動状況報告書の掲載から漏れたのか、その理由を想像するのも一興であろう。

注1 )なお、平成29年度は、苦情申立件数全82件中、調査結果を通知した67件のうち40件が活動状況報告書に掲載されていた(非掲載27件)。したがって、活動状況報告書に掲載された案件の件数及び掲載される割合は、特に大きく変化していない(平成29年度・30年度とも、全苦情申立件数のうち約半数、調査結果を通知した件数の6割弱が、活動状況報告書に掲載されている)。

注2 )当ブログ開設者は、オンブズマン調査は、全件公表を原則とするべきであると考えている。それは、活動状況報告書への掲載事例が恣意的に選択されないようにするとともに、全件公表がオンブズマン調査の質を確保するためには必要不可欠であると考えているためである。この点、札幌市よりも遅れて自治体オンブズマン制度を設けた熊本市では、全件・全文の公開を原則とした運用がなされており、札幌市ができない理由はないように思われる。

(1)調査結果を通知したもの(28件)
 児童相談所の職員の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
 児童相談所が子どもを一時保護したことに関し苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
第30−10号
 申立人が考える水道使用量増加の原因は水抜栓の漏水であるところ、水抜栓の構造を知るために市から提供を受けた図面は水抜栓が「閉」の状態のみ記載されたものであったことから、「開」の状態の図面も提供してほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 生活保護の受給者が居宅から立ち退きを余儀なくされるとともに、保護を廃止されたとして、保護廃止された日付の決定理由、立ち退きに際し保護課職員が立ち会わなかった理由についての説明及び退去した居宅の私財の現状についての調査を求め、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
 生活保護の受給者が、交付された文書の交付方法や内容、担当ケースワーカーの家庭訪問時の対応等、市職員の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
 生活保護を受給する申立人が、担当ケースワーカーに質問しても十分な回答を得られない一方で、医療機関の受診に関して質問攻めにされたり、医療機関の受診に関し受信先医療機関への連絡もれがあるなど、その対応に不信感を抱いており、担当ケースワーカーの交代を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
 新年度から改定となった市営住宅の賃料について疑問があり、7月以降、適正な金額に訂正されたが、4月から6月分については訂正されないままであることに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
 消防署が防火査察を実施する基準が不明瞭であるとともに、消防訓練の実施を依頼した際の職員の対応が不躾なものであったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
 インターネットからの公文書公開請求について、請求を受理した旨の返信メールが送られてくるように改善を求め、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
 市営住宅の居住者が、他の居住者から迷惑行為を受けているとして、改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
 ・第30−38号
 マンションの管理組合は「消費者」に該当しないとして、消費者センターが十分な相談対応を行わないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 申立人が公文書公開請求を行ったっところ、請求した文書(の一部)は作成しておらず保有していないとのことであったが、そうであるならば、「公開しないという事実を公文書で明らかにすべきである」として、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
 生活保護を受給している申立人が、旧担当ケースワーカーが自身の個人情報を主治医に漏洩したことを契機として、旧担当ケースワーカーの姓だけではなく名も明らかにすること等を求めて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
 生活保護の受給を開始した申立人が、当初居住していたウィークリーマンションの滞在費が保護費として認められなかったことや、所持金が収入として認定されたこと等を不服として、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
第30-52号
  滞納していた水道料金を納付するために出向いたにもかかわらず、納付金額が少なすぎるとして受け取りを拒否されたこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
 申立人の子が通う高校から下校時に同校の生徒から何某かの加害行為を受けたことについて、その後の高校及び市教委の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
 ・第30−59号
  札幌市オンブズマンの苦情等調査結果通知書(第30-46号)について一部公開決定を受けたが、当該公文書における非公開部分の取り扱いが不当であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
 市民の声を聞く課で実施している法律相談を受けた際の記録について、市として相談内容の記録を残していなことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
 申立人の両親に対し、高齢者虐待防止法に基づく分離措置が行われたこと関し、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 ・第30−66号
 生活保護受給者が、担当ケースワーカーの家庭訪問を受けた際の対応について、担当ケースワーカーの上司から事実に反する発言をされたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
 児童扶養手当の申請に際し、過去に提示したのと同様の資料の提示を求められたことについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 障がい者の交通費助成で交付を受けた物(詳細は不明)の再発行手続きの際の説明を含む、市職員の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 他の公園利用者によるテニスコートの雪割り作業によって、公園内を散歩することに支障が生じているとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 自宅近隣の建物の建築確認に関し、建築計画概要書と実際の建築物の違いや、完了検査が未実施であること等について、納得のいく回答が得られていないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 統一地方選の開票事務のアルバイトに不採用になったがその理由に疑問があるとして、今後の選考方法の改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
 市民税・住民税の差押予告書が届いたが、差押予告書には「再三にわたり納付催告をしてきました」と記載されているものの納付催告を受けた事実はないとして、延滞金支払いの免除等を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
 DV被害を理由とする住民票等の閲覧制限の支援措置を受けているにもかかわらず、担当職員が電話での問い合わせに回答したこと及び転居を急かす保護課の担当職員の対応等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 香料や化学物質の被害に苦しむ申立人が(※化学物質過敏症と思われる。)、これらの物質の利用の自粛を求めるポスターの掲示や被害に苦しむ者への合理的配慮を求めて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

(2)調査結果を通知しなかったもの(11件) 
第30-6号
 申立人の苦情が、「職員の自己の勤務内容に関する事項」に該当するとして、調査しない旨が通知されたケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
 障害程度区分認定に関し、区保健福祉課の職員の対応について苦情が申し立てられたケース。苦情申し立ての原因となった事実が1年以上前のことであるとして、苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:杉岡直人)
 保健所に設置された医療安全支援センターの対応等について苦情が申し立てられたケース。苦情申し立ての原因となった事実が1年以上前のことであるとして、苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:杉岡直人、なお、第30-56号は、この案件の申立人が後日、改めて苦情を申し立てた案件と思われる。)
 障害児相談支援費の不正受給に関し、返還の意思があるにもかかわらず行政処分を言い渡されたとして苦情が申し立てられたケース。申立人が苦情申し立てを取り下げたことで、調査が終了している。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 生活保護受給者が、現在の担当ケースワーカーと十分に連絡をとることができないとして、苦情が申し立てられたケース。申立人が苦情を取り下げたことにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:杉岡直人)
 家の前の道路とマンホールの間の段差について土木センターに相談しても取り合ってもらえないという苦情について、申立人の取り下げにより調査が終了したケース。(担当オンブズマン:岩田雅子)
 市が管理する緑地帯にごみステーションが設置されていることにつき、市に解決を求めているものの未だ解決が図られていないとして、苦情が申し立てられたケース。申立人には直接の利害関係がないとして、調査しない旨が通知されている。(担当オンブズマン:杉岡直人)
 特別児童手当の支給が遅れているとして、早期の支給を求めて苦情が申し立てられてケース。申立人が苦情を取り下げたことにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:杉岡直人)
 インフルエンザに罹患した子が保育園に再登園するにあたり、治癒証明書の提出を求められたところ、保育園の説明によれば市が提出を義務づけているということであったので、そうした取扱いの是正を求めて苦情が申し立てられたケース。申立人が苦情を取り下げたことにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:岩田雅子)
 子どもが一時保護を受けたことに関し、児童福祉総合センターの対応に時間がかかりすぎるとして、苦情が申し立てられたケース。申立人が苦情を取り下げたことにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:房川樹芳)
 滞納している市税を積極的に納付する前提として、市が20年前に行った福祉サービスに関する処分に違法行為があったことを認め、謝罪するなどの解決策を行うことを求め、苦情が申し立てられたケース。「申立人の原因となった事実があった日」が調査対象外の事項に該当するとして、苦情申立人に調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:杉岡直人)

2019/06/22

2019年5月に調査を終了したケース

2019年6月1日、同年5月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、6月17日に一部公開決定がなされた。 

上記の期間(2019年5月)に調査を終了したのは12件で、このうち10件で調査結果が通知されている。また、残る2件のうち1件は申立人による苦情申し立ての取り下げ、1件は申立人に調査をしない旨が通知され、調査が終了している。

このうち、特に注目されるのが、高齢者虐待防止法及び老人福祉法に基づく分離措置が解除されないとして苦情が申し立てられた、第2019-13号である。この案件でオンブズマンは、「虐待の認定や養護者との分離は、・・・(中略)・・・高度な専門的知見に基づいて、各関係者等による検討会議等で判断の結果、最終的になされるもので」あり、「オンブズマンが調査・判断をすることは、高齢者虐待防止法等の目的にそぐわず、相当ではない」として、調査を行わないと判断した。

しかしながら、この案件を担当した房川樹芳オンブズマンは、2019年3月13日付・苦情調査結果通知書・第30-65号の調査において、高齢者虐待防止法に基づく分離措置に関する苦情調査を実施し、オンブズマンとしての判断を行っている。したがって、この案件について調査を実施しないことと、整合性を欠くと思われる。

また、房川樹芳オンブズマンは、児童相談所が申立人の子を一時保護したことに対する苦情調査を実施し、オンブズマンとしての判断を行っている(第30-5号)。いうまでもなく、児童相談所は児童福祉の専門機関である。オンブズマンが専門機関の判断の当否についての判断を行っている事例がある以上、この案件において、高齢者の分離措置が「高度な専門的知見に基づいて・・・なされる」ことが、オンブズマン調査の対象外とする根拠になるとは思われない。

さらに、房川樹芳オンブズマンは、「虐待の認定や養護者との分離は、・・・(中略)・・・最終的になされるもの」とも言及する。ここでいう「最終的」という文言が具体的に何を意味するか、判然としないが、一般論として、利害関係人は行政庁の処分に対する不服申し立てをする等、係争することは可能である。

したがって、オンブズマンが実体的な中身に立ち入った調査を実施しないのであれば、申立人に対し他に利用可能な制度について情報提供する等、「市政の改善を図る他の諸制度と有機的な連携を図ること」(札幌市オンブズマン条例5条2項)が、「市民の権利利益を擁護」する(同項)ことにつながると思われる。

以上の次第で、当ブログ開設者は、本件調査において申立人の苦情を門前払いし、調査を実施しないとした房川樹芳オンブズマンの判断は、実体的にも手続的にも「適切な説明を受ける」という申立人の利益に対する配慮が欠けており、妥当性を欠くと考えている。

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①第30−72号
 他の公園利用者によるテニスコートの雪割り作業によって、公園内を散歩することに支障が生じているとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)


②第30−74号
 統一地方選の開票事務のアルバイトに不採用になったがその理由に疑問があるとして、今後の選考方法の改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

③第30−75号
 市民税・住民税の差押予告書が届いたが、差押予告書には「再三にわたり納付催告をしてきました」と記載されているものの納付催告を受けた事実はないとして、延滞金支払いの免除等を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

④第30−76号
 DV被害を理由とする住民票等の閲覧制限の支援措置を受けているにもかかわらず、担当職員が電話での問い合わせに回答したこと及び転居を急かす保護課の担当職員の対応等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑤第30−77号
 香料や化学物質の被害に苦しむ申立人が(※化学物質過敏症と思われる。)、これらの物質の利用の自粛を求めるポスターの掲示や被害に苦しむ者への合理的配慮を求めて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑥第2019−1号
 区役所の戸籍住民課の職員が他者の転出証明書と取り違えて交付したこと及び区役所職員の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑦第2019−2号
 申立人自宅の隣接地に土砂が搬入されている件で、市は宅地造成規制法に違反しないとして十分な対応を行わないほか、職員の一連の対応にも問題があるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑧第2019−3号
 申立人の自宅に面した道路の補修を依頼しても補修がなされないほか、雪が降るようになってからは、市が除雪する際、申立人が除雪した自宅や歩道に大量の雪を置いていくようになったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

⑨第2019−4号
 保護課が申立人の娘に対し扶養照会を行ったことに関し(※親類縁者に生活保護受給者がいる模様)、申立人が保護課の担当者に手紙を書いたにもかかわらず、5か月経過しても未だ返事がないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑩第2019−6号
 札幌市社会福祉協議会で行っている法律相談を利用した際に対応した弁護士の態度があまりにもひどいものであったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑪第2019−7号
 (仮称)町内会条例に関するパブリックコメントについて、市が公表した概要の取扱いに疑義がある等の苦情が申し立てられたケース。申立人が苦情を取り下げたことにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑫第2019−13号
 申立人の妻が高齢者虐待防止法及び老人福祉法に基づく分離措置を受けたが、3か月たっても解除されないため会うことができずにいるとして、苦情が申し立てられたケース。申立人に調査をしない旨が通知され、調査を終了している。(担当オンブズマン:房川樹芳)

2019/05/21

2019年4月に調査を終了したケース

2019年5月1日、2019年4月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、5月15日に一部公開決定がなされた。 

上記の期間(2019年4月)に調査を終了した全3件で、調査結果が通知されている。

このうち、第30−71号は、札幌駅前通地下歩行空間・北2条広場(Sapporo*north2)に設置された、ワイド横置きディスプレイで放送する番組の取り扱いに関する苦情(第30−71号)である。札幌市が、情報通信技術を活用した市民の創造的活動を発表・アピールする場を設けるという取り組みを行っていることが、大変興味深い。なお、放送される番組の内容やスケジュール等の詳細は、Sapporo*north2のオフィシャルサイトで確認できる。

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①第30-70号
 障がい者の交通費助成で交付を受けた物(詳細は不明)の再発行手続きの際の説明を含む、市職員の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

②第30-71号
 札幌駅前通地下歩行空間・北2条広場(Sapporo*north2)のデジタルサイネージ空間で放送される番組の取り扱い等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)


③第30-73号
 自宅近隣の建物の建築確認に関し、建築計画概要書と実際の建築物の違いや、完了検査が未実施であること等について、納得のいく回答が得られていないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)