2024/12/23

2024年10月に調査を終了したケース

 2024年11月1日、同年10月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、同年12月13日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2024年10月)に処理が終了したのは7件で、このうち3件で調査結果が通知された。また、残る4件のうち3件は調査しない旨が通知され、1件は苦情申立てが取り下げられた。

今回、公開を受けた案件のうち、調査しない旨が通知されたのは3件であるが、そのうち2件は課題を残す内容であると当ブログ開設者は考えている。いずれも調査担当オンブズマンは田村智幸である。

まずは第2024-46号である。この案件は、聴覚過敏の申立人がいくつかの生活局面において音の大きさによる被害を受けているとして苦情が申し立てられた案件である。調査担当オンブズマンは申立人の苦情のうち、信号機の音については警察の管轄であり、公園のスピーカーから流れる放送についてはそのような放送をしている事実はなく、利用者の利用者のラジオの音声と思われるとして、「市の機関の業務に関する事項」に該当しないと判断した。

問題は、区役所窓口での呼出番号音声についてである。障害者差別解消法7条2項は行政機関等に「合理的配慮」を義務づけるとともに、札幌市においても同法10条の規定に基づき、「共生社会の実現に向けた札幌市職員の接遇要領」(pdf)を定め、同要領3条は「合理的配慮の不提供をしてはならない」旨を規定する。

このような前提にたてば、本件においては聴覚過敏の申立人に対し、どのような「合理的配慮」が可能であるか、オンブズマンは調査してしかるべきであったと思われる。この点、内閣府障害者施策担当による「障害者差別解消法【合理的配慮の提供等事例集】」においても、聴覚過敏の市民に対する行政対応の事例が紹介されている(54頁(ファイル59頁)・pdf)。当ブログ開設者は、札幌市においてもなんらかの「合理的配慮」が可能なのではないかと考えている。

しかしながら、残念なことに調査担当オンブズマン田村智幸は申立人への「合理的配慮」という発想を欠いたようだ。以下の理由により調査を実施しなかった。長くなるが引用する。

「本件は、申立人個人に対する市の仕事や業務に関わることでなく、■区役所の設備やサービスを問題としています。そして、それは■区役所の設備やサービスのみの問題にとどまらず、市全体の受付業務体制や施設構造に関わる問題です。
 社会には、老若男女、病気や障がいなど様々な事情を抱えて暮らしている方がおり、一般的に、公共の施設やサービスでは、あらゆる人が必要な情報を得られるよう配慮されなければなりません。申立人が提案するように現在の音声案内をなくしてしまうと、一方で困る方もいます。こういった問題をどのように解決していくかは、共生社会を目指す市の施策をもって取り組まれるべきものであると考えます。
 以上を総合すると、この点について、オンブズマンが個別具体的な利害として取り扱うことは適当でないと考えます。」

つづいて、第2024−47号である。この案件は、海外居住を考えている申立人がすでに納付した国民年金の保険料の返還を求めて苦情を申し立てた案件である。

ところで、国民年金の被保険者資格は、原則として「日本国内に住所を有する」ことである(国民年金法7条1号)。しかし、「日本国内に住所を有しない」場合も「任意加入」が認められているほか(同法5条1項3号)、海外からも年金が請求できるとされている(日本年金機構のサイト)。したがって、申立人が主張するように「海外へ移住するなら(国民年金の)保険料を払う意義がない」ことにはならないと思われる。

また、申立人は「市に年金の受給資格を譲渡する代わりに、市が掛金分の支給をしてくれてもいい」と主張する。しかしながら、年金受給権は譲渡が禁止されている(国民年金法24条)。そのため、たとえ申立人が望んでも、市に年金受給資格を譲渡することは法的に許容されないであろう。

オンブズマンが調査を実施していれば、あるいはオンブズマン自身が制度を熟知していれば、申立人は上記のような説明を受けることができたと思われるのだが、残念ながら申立人が説明を受けることはなかった。

なお、調査担当オンブズマンの田村智幸が調査を実施しなかった理由は、(年金保険料の)「返戻の可否そのものについては制度上の問題であり、オンブズマンの所轄事項として条例に規定する「市の機関の業務の執行に関する事項及び当該業務に関する職員の行為」には当たらないと考えられ」(る)、というものである。

しかしながら、上記の理由は、「制度上の問題」であれば、なぜ「市の機関の業務の執行に関する事項及び当該業務に関する職員の行為」に当たらないのかという説明になっていないと思われる。

すなわち、国民年金法は、国民年金事業は政府が管掌することを規定するものの(国民年金法3条1項)、たとえば、被保険者は資格の喪失について市町村長に届け出るとされているように(国民年金法12条1項)、手続きに関しては市町村が処理するとされている事務がある(前記・国民年金法12条1項に定める事務は「法定受託事務」とされている・国民年金法6条)。

したがって、国民年金を任意に脱退したいと考えた被保険者が納付ずみの保険料の返還を求めて市町村長に資格喪失を届出しようとした場合、受付の担当者は任意脱退は認められないとして、届出を受理できない理由を説明することになるであろう。

このような事実を前提として札幌市オンブズマンに苦情が申し立てられた場合はどうなるか。当該苦情は届出が受理されないという「制度上の問題」ではあるものの、「届出の受理」という「市の機関の業務の執行に関する事項」についての苦情として、オンブズマン調査の対象となるのではないか。

そうすると本件では、本件苦情が「制度上の問題」であることは「市の機関の業務の執行に当たらない」という調査を実施しない理由になるものではなく、むしろ調査を実施しない理由としては、申立人は年金事務所に問い合わせるのみで市(区)の保険年金課等に問い合わせた事実はない以上、「申立ての原因となった事実についての利害を有しない」(札幌市オンブズマン条例16条1項1号)とするべきであったと思われる。

また、このような理由づけの方が、苦情申し立てに「具体的利害」を求める近時の札幌市オンブズマンの制度運用とも整合的であろう(ただし、当ブログ開設者は苦情申立の「利害」を限定的に解する運用に批判的である)。

以上の次第で、今回「調査しない旨」が通知された案件のうち、田村智幸担当の上記2件は、いずれも調査担当オンブズマンが前提となる制度に関する知識が貧弱であった結果、申立人にとっての権利や利益が実現されるチャンスが失われたと当ブログ開設者は考えている。

ただし、田村智幸オンブズマンに過大な期待は禁物である(このエントリーも参照)。田村智幸オンブズマンの調査への取り組みが「平常営業」であることは、札幌市オンブズマンの制度としての安定ぶりを示しているかもしれない。

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①第2024-40号
 グループホームに入居していた申立人が転居に際しグループホームから支給された立退料を収入認定する際の取り扱いや転居費用の支給等について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

②第2024-42号
 生活保護の受給開始時に面談した職員の対応及び面談を実施した場所の設定等が不適切であるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)


③第2024-46号
 聴覚過敏の申立人が信号機の音、公園のスピーカー、区役所の窓口の音声による番号案内等の音等が非常にうるさいとしてオンブズマンによる調査を求めて苦情が申し立てられたケース。信号機音及び公園のスピーカーは「市の機関の業務の執行」に該当せず、区役所窓口の音声案内には「個別具体的利害がない」として調査しない旨が通知されった。(担当オンブズマン:田村智幸)

④第2024-47号
 海外へ移住するなら国民年金の保険料を納付する意味がないとして、たとえば市に年金の受給資格を譲渡する代わりに、市が納付ずみの保険料相当額を支払う当の対応を求めて苦情が申し立てられたケース。「市の機関の業務の執行」に該当しないとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑤第2024-49号
 生活保護受給者が担当ケースワーカーが配慮に欠ける対応をするとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑥第2024-53号
 第2024-38号の申立人が当該調査における「市の回答」には事実と異なる記述があるとして再調査を求めて苦情が申し立てられたケース。再調査の申立ては「オンブズマンの行為に関する事項」に該当するとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑦第2024-55号
 公園でゲートボールをする利用者たちがわがもの顔な態度で公園を専有しているとして苦情が申し立てられたケース。オンブズマンが担当課に申立人が連絡を希望している旨を伝えることでオンブズマンによる調査を行わないことになった模様。なお、申立人が明示的に「苦情申立てを取り下げた」かは公開された文書からは不明。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

2024/12/11

2024年9月に調査を終了したケース

 2024年10月1日、同年9月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、同年11月14日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2024年9月)に処理を終了したのは5件で、このうち3件で調査結果が通知された。また、残る2件は調査しない旨が通知された。

今回調査結果が通知された3件のうち、2件の前提となる事実関係が興味深い。まず第2024-34号は、2度にわたり救急搬送が受けられなかったという苦情である。申立人が119番通報したが、在宅療養中の搬送対象者は同居の「キーパーソン」と主治医の間で「自宅で看取る」方針が決まっていた模様である。申立人と「キーパーソン」間の意向が一致せず、救急隊が振り回される格好になった。救急通報された他の事案の対応に影響を及ぼさなかったか懸念される。

つづいて第2024-41号は、長期にわたり国外に住所を有する人物から「所得証明書」の取得を委任された申立人が、取得窓口における「本人確認」の方法について苦情を申し立てた事案である。苦情の論点からずれるのだが、国外に住所を有し国内に住民登録をしていない人物がいかなる事情で「所得証明書」を必要としたのかということや、札幌市が取得窓口となった事情、さらにはそもそも国外に住所を有する人物の「所得」を日本国内で把捉できるのか等、苦情の前提となる事実に当ブログ開設者は興味を抱いた(ただし、残念ながら調査結果通知書からはそれらの事情は不明である)。

その一方で、今回「調査しない旨」が通知された2件は、札幌市オンブズマンのあり方を考えるうえで課題を残したように思われる。すなわち「調査しない」旨を通知するにしても、申立人にとって有益と思われる情報提供をする余地があったのではないか、と当ブログ開設者は考えるからである。その意味では、札幌市オンブズマンの「アカウンタビリティ」軽視の傾向が現れているのかもしれない。

まず、担当課が適切な権限行使をしなかったために会社乗っ取りにあったと申立人が主張する第2024-43号である。この案件の事実関係は不明であるが、調査を行うことで、①申立人から「担当課」に対する要望や問い合わせはなされたか、②「担当課」が権限行使するような事実関係にあるか、③今後「担当課」が何らかの対応をする余地はあるか等、申立人の不満に対する市の見解を明らかにすることができたと思われる。

もっとも、本件においては、申立人が「市はやるべきことをやっていない」と主張するのみで、オンブズマンが調査対象とすべき「担当課」自体が明らかでなかった可能性もある。

そうした場合、本件で調査担当オンブズマンは申立人に面談したようであるから、申立人の考える「担当課」を尋ねるなり、「通知書」で申立人に対し「担当課」に問い合わせるよう助言してもバチは当たらないと思われるのだが、調査担当のオンブズマンとしては調査しない理由を考えるのが精いっぱいだったのかもしれない。

続いて、第2024-45号は、生活保護を受給する申立人が利用する介護事業所や受けるサービスの見直しが急務であると考え、生活保護の担当課と他の課が同席しての面談を求めているにも関わらず実現しないことから、札幌市の行政の組織性、体制、姿勢等の問題点を適切に調査することを求めて苦情を申し立てた案件である。

申立人もずいぶん大きく出たものだが、調査担当オンブズマンは申立人に「申し立ての原因となった事実に利害がない」ことを理由として調査しない旨を通知した。しかし、である。オンブズマンが調査をしなかったため、「介護事業所やサービスの見直しをしたい」という申立人のそもそもの要望は手つかずのままになった。

このような場合、調査担当のオンブズマンはどのような苦情であれば調査が可能か、たとえば「介護事業所やサービスの見直し」という申立人の要望の実現可能性を調査対象部局に問い合わせる形ならば調査可能である(と当該オンブズマンが考えるならば、ではあるが)といった形で、通知書で申立人に情報提供するのが適切ではないかと当ブログ開設者は考えている。

以上の次第で、当ブログ開設者は、オンブズマンによる申立人(を含む市民)に対する「説明」や「情報提供」は、申立人自身の行動を喚起するという観点から「市民の意向が的確に反映された市政運営に資する」(札幌市オンブズマン条例1条)と考えている。換言すると、オンブズマン自身に求められる「アカウンタビリティ」ということができるかもしれない。

こうした前提に立つならば、今回調査しない旨が通知された案件においては、オンブズマンは調査「できない」あるいは調査「しない」理由を説示するよりも、どのような「苦情」であればオンブズマン制度ですくい上げることが「できる」のか申立人に対し情報提供したり、場合によってはオンブズマンが適切に調査を行えるように申立人に協力を要請するといった対応が期待されるのではなかろうか。

もっとも、現在の札幌市オンブズマンは調査に取り組む際、申立人の「利害」について、実体的な「利害」に重きを置き、適切な説明を受けるという「利害」については軽視する傾向にある。まずはこうした対応を改め、適切な説明を受けることの意義を捉え直すことが必要であると当ブログ開設者は考える。

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①第2024-34号
 申立人が2度にわたり(おそらく親族の)傷病者の救急搬送を求めて119番通報をしたが2度とも受け入れ先が見つからずに救急搬送されなかったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

②第2024-38号
 札幌市から中島公園テニスコートの管理の許可を受けた札幌テニス協会がテニスコートを適切に整備・管理していないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

③第2024-41号
 本人から所得証明書の取得を受任した申立人が、対応した窓口の職員が申立人の意に反して「本人確認書類」のコピーを取ったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

④第2024-43号
 市の担当課が「会社乗っ取り」を是認して適切な権限行使をしなかったとして苦情が申し立てられたケース。「調査することが相当でない特別の事情がある」と認められるときに該当するとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑤第2024-45号
 生活保護受給者が利用する事業所や受けるサービスの見直しが急務と考え、保護課による自宅訪問日に各担当部局も同席することを求めたが同席を拒否されたとして、本件の原因となった事柄ではなく、札幌市の組織性、体制、姿勢等の問題点を適切に調査してほしいとして苦情が申し立てられたケース。市政全販に対する苦情は申立人が「申立ての原因となった事実についての利害を有しない」として調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:梶井祥子)

2024/11/09

2024年8月に調査を終了したケース

 2024年9月1日、同年8月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、同年10月15日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2024年8月)に処理を終了したのは9件で、このうち7件で調査結果が通知された。また、残る2件は調査しない旨が通知された。

今回調査結果が通知された7件は、いずれも「生活保護」に関する案件である。生活保護申請時の窓口対応をはじめとして、札幌市における生活保護の運用実態が垣間見え興味深い。他の案件も含め指摘すべき論点はいくつもあるが、そのなかでも、第2024-35号における市の回答のうち、職員の懲戒に関し「公文書公開請求」がなされた場合の市の対応について言及する部分は看過できないと考えている(第2024-36号も同旨の回答)。

この案件では、職員に懲戒事由に該当する行為があるとして担当部署に情報提供を行ったにもかかわらず、その後の対応について教えてもらえないことを不服として苦情が申し立てられた。これに対し、市は「懲戒処分の公表基準」に基づいてその概要を公表しているところ、特定の職員が処分を受けた事実は、公表基準に該当しない限り公にされることはないと回答している。

また、公文書公開請求がなされたとしても、「本件処分の有無等」および「処分のみならず調査の有無や内容」は、札幌市情報公開条例(以下、「条例」という。)第7条第1号(個人に関する情報)の本文に規定する非公開情報に該当し、その内容が公開されることはない、という回答も行っている(その際、「非公開情報」を公開しないとする決定ではなく、条例第10条に基づく「公開請求の拒否」として扱う模様である)。

しかしながら、上記回答の後者、すなわち、職員の懲戒に関し「公文書公開請求」がなされた場合の市の対応について、当ブログ開設者は以下の3点について疑問を抱いている(これに対し、調査担当オンブズマン田村智幸は市の回答に格別の疑問を抱かなかったようである。制度の枠組みについて基本的な理解を欠いているのかもしれない)。

まず、第1の点である。すなわち、市職員の懲戒処分に関する公文書公開請求がなされた場合、「非公開情報」に該当しないとして公開される部分はあるのか、もしあるならば、それはどのような文書のどのような部分なのか、という点である。

続いて第2の点である。市の回答では、条例第7条第1号「ウ」が定める「公務員の職務遂行情報」についての言及がないが、その理由である。

最後に第3の点である。市の回答では、条例第7条第4号が定める「事務事業情報」についての言及がないが、市が市職員の懲戒に関する情報を「事務事業情報」として取り扱うことなく、「個人に関する情報」の枠組みで処理する理由である。

それでは、第1の点から順に見ていこう。市の回答によると、申立人に対応した職員は、「本件を処分した後、情報公開請求があった場合は、処分に関する情報は非公開又は一部公開になると思われること」を説明したということである。したがって、「処分に関する情報」ならばそのすべてが非公開になるわけではなく、「一部公開」になる余地はある模様である。

この点、市の回答によると、「処分に関する情報」のうち、「本件処分の有無等」および「処分のみならず調査の有無および内容」については、条例第7条第1号の本文に規定する非公開情報に該当する「非公開情報」だということである。

そうすると、「処分に関する情報」であっても、「本件処分の有無等」および「処分のみならず調査の有無および内容」を除く部分については「非公開情報」に該当しない余地が残されることになる。しかし、それが具体的にどのような情報であるかについては、市の回答は必ずしも明確ではない。

続いて第2の点である。条例第7条第1号本文は、「非公開情報」たる「個人に関する情報」について規定する。しかしながら、同号本文が規定する「個人に関する情報」であっても、「当該個人が公務員等(中略)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び氏名並びに当該職務遂行の内容に係る部分」(同号ウ)は「非公開情報」から除外される。

したがって、条例第7条第1号本文が規定する「個人に関する情報」であっても、公務員等の「職務の遂行に係る情報」については、条例7条1号が規定する「非公開情報」に該当しない余地があるわけである。そうすると、上記第1の点については、少なくともこの公務員等の「職務の遂行に係る情報」については、条例第7条第1号が規定する「非公開情報」に該当しない部分があると思われる。

この点、当ブログ開設者は、公務員の職務遂行上の「法令違反」(地方公務員法第29条第1項第1号)や「職務上の義務違反および職務懈怠」(同項第2号)を理由とする懲戒処分の場合には、当該懲戒の事由とされた「職務遂行の内容」に関しては条例第7条第1号が規定する「非公開情報」には該当しない一方で、私生活上の非行による「信用失墜行為」(地方公務員法第29条第1項第3号)を理由とする懲戒処分の場合には「職務の遂行に係る情報」に該当せず、なお条例第7条第1号が規定する「非公開情報」に該当する、といった整理が可能ではないかと考えている。

最後に第3の点である。確認しておくべきは、条例第7条が規定する「非公開情報」は、「個人に関する情報」(同条1号)に限定されないことである。したがって、同号が規定する「非公開情報」に該当しないとしても、他の号が規定する「非公開情報」に該当することは考えられる。実際、条例第7条は「事務事業情報」(同条4号)として、「人事管理に係る事務に関する情報であって、公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるもの」(同号カ)を非公開情報として定めている。

ところで、市が職員に懲戒を課すことは、職場規律を維持する人事管理上の措置にほかならない。したがって、公務員等の「職務の遂行にかかる情報」として「非公開情報」たる「個人に関する情報」に該当しない情報であっても、なお、市が行う「事務又は事業に関する情報」であって、「公にすることによって、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある」ならば「非公開情報」に該当することになると思われる(条例第7条第4号カ)。

ところが、本件調査において、調査対象部局はそうした回答を行っていない。市としては、これらの文書に記載される内容を公にしても、「公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」はないため、条例第7条第4号カが定める「非公開情報」には該当しない、と考えているのであろうか。

このように、「公文書公開請求」がなされた場合の市の対応に関する市の回答ついて、当ブログ開設者は疑問を抱いたわけである。いずれも公文書に記載された内容の「非公開情報」該当性の問題であるが、実際に職員の懲戒に関する公文書の公開請求を行う場合を想定すると(市にとっては請求された場合)、どのような「公文書」に記載された情報の「非公開情報」該当性が問われるかも考えておく必要があるかもしれない。

当ブログ開設者は、ア.事実関係の調査に関する文書、イ.処分内容およびその決定過程等を記録する文書、ウ.被処分者に通知する文書、等を想定するが、上述したように、これらの文書に記載される内容は、「人事管理にかかる事務に関する情報」(条例第7条第4号カ)として「非公開情報」に該当すると考えている。

以上の次第で、当ブログ開設者が抱いた「非公開情報」該当性に関する市の回答の疑問を解消するには、市が①どのような文書の②どのような部分を③どのような根拠に基づいて非公開にするのか、実際に「公文書公開請求」を行ってみるのが案外手っ取り早いかもしれない。

このほか、2024年度の介護保険料の段階算定が前年度より2段階引き上げられとして申し立てられた苦情(第2024-44号)では、世帯分離について相談したのが1年以上前のことであるとして調査しない旨が通知された。しかしながら、申立人は決定された介護保険料に不満を抱いて苦情を申し立てたものである。当ブログ開設者は、介護保険料の決定通知を受けた日を「申立の原因となった事実のあった日」と解すべきと考えている。

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①第2024-29号
 生活保護申請時をはじめとする一連の担当職員の対応および保護開始後に受給額が減額されることについて事前に適切な説明を受けていないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2024-30号
 生活保護を従前受給していた申立人が改めて生活保護を申請するために保護課を訪れた際の職員の対応が不適切であるとして苦情が申し立てられたケース。なお、本件の申立人は保護申請後の職員の対応について別件の苦情申し立て(第2024-32号)を行っているが、当該案件はすでに調査しない旨が通知されている。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

③第2024-31号
 生活保護受給者が入金された保護費の金額が当初聞いていた金額が違ったことをはじめとして保護下の担当職員の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

④第2024-33号
 生活保護受給者が意に反してジェネリック医薬品の使用を強制されることや、夜間の家庭訪問に応じてもらえないことについて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑤第2024-35号
 生活保護を担当する職員による物品授受行為が懲戒事由に該当するとして担当部局に情報提供したにもかかわらず、当該職員に対する処分内容等について教えてもらえないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑥第2024-36号
 生活保護を受給している申立人が職員による物品受領行為や窓口での対応に不満を覚えるとともに、その旨を上司に伝えても適切な対応がなされないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑦第2024-37号
 生活保護を受給している申立人がエアコンの設置を申請が却下されたとして、設置申請を認めるよう求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑧第2024-39号
 札幌市立の小学校ではお盆期間が平日であるにもかかわらず完全休校になることが疑問であるとして苦情が申し立てられたケース。申立人が「申立の原因となった事実についての利害を有さない」(札幌市オンブズマン条例16条1項1号)として調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑨第2024-44号
 2023年7月に介護保険料の段階算定のための世帯分離ついて窓口に相談したところ、世帯分離をしなくても2024年の段階算定に影響はないという説明を受けていたにも関わらず、2024年6月の通知では段階が2段階上昇していたとして苦情が申し立てられたケース。説明を受けたのが1年以上前の出来事であり、「申立の原因となった事実のあった日から1年を経過している」(札幌市オンブズマン条例16条1項2号)として調査をしない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

2024/09/19

2024年7月に調査を終了したケース

 2024年8月1日、同年7月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、同年9月13日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2024年7月)に処理を終了したのは5件で、このうち4件で調査結果が通知された。また、残る1件は調査しない旨が通知された。

さて、今回公開された案件のうち、市税を指定期限内にキャッシュレス決済で納付しているにも関わらず、「分納催告書」が送付されてくるとして苦情が申し立てられた第2024-24号が興味深い。

このような苦情には既視感がある。それもそのはず、2023年度には、「PayPayを利用して市税を納付したにも関わらず、自宅及び職場あてに賃金を差し押さえる旨の通知が送付された」という苦情が申し立てられている(第2023-42号)。

ところで、上記2023年度に申し立てられた案件(第2023-42号)の苦情等調査結果通知書によると、①その当時、滞納整理事務の担当者が業務に使用する「滞納整理システム」には「速報データ」が連携していなかった、②そのため、別途、「『速報データ』の情報の有無を確認する」作業が必要であるにもかかわらず、当該作業を行わなかったという業務上の過誤があった、③現在はシステム改修が完了し、「滞納整理システム」に「速報データ」が連携した、ということである。

しかるに、今回の案件(第2024-24号)では、「滞納整理システムに連携している速報データの確認をしない」という業務上の過誤が発生した。せっかくシステム改修が完了したのに「速報データ」の確認を怠るとは、「起こる可能性のあることはいつか実際に起こる」、あるいは、「何事であれ失敗する可能性のあるものはいずれ失敗する」といった、マーフィーの法則を地で行くような職員の業務遂行である。

もっとも、「システム改修が完了した」とはいうものの、不完全な点も残されたままだったようだ。今回の案件の市の回答によると、システムにおいて、分納催告の滞納明細には「速報データ」が反映されておらず、滞納明細の画面から「速報データ」を確認できない仕様になっているということである。「滞納整理システム」に「速報データ」が連携したというには、いかにも中途半端な印象を受けるものの、なにゆえにこうした不完全なシステムとなったのか、その事情は不明である。

ところで、今回この案件を担当したオンブズマン田村智幸は「(差押等の強制処分の可能性について通知する)内容の文書を送付する以上は、誤送付が生じないよう複数人の目でチェックができる何らかの方法や工夫を取り入れて誤送付が生じないような方策を取り入れるべき」という見解を披瀝する。

「複数人のチェック」がいかにも効果的な手段であるかのようだが、職員相互が「誰かがチェックしているはず」と思い込み、過誤を見落とすような事態が生じないとも限らない。実際、前述の第2023-48号も、係長及び課長のチェックが機能せずに過誤が生じることになった。

こうした事態を防ぐには、限られた人間の注意力を効果的に配分できるように、どのような点で過誤が生じやすいかを明確化し、職員間で情報を共有することが求められると思われる。いわゆる、職場における「暗黙知」の共有というやつである。

マニュアルにより作業を標準化する場合にも、標準化すること以上に、なぜその作業を行うのかということや、どのような過誤を避けるための標準化であるか、といった背景事情についての情報の共有は、過誤を回避するうえで有効な手段であると思われる。

以上の次第で、非常の後味の悪い案件ではあるが、今回の第2024-24号の調査を通じて、どこに落とし穴が待ち構えているか職員に注意を喚起する効果を期待する。今後、職員が同じ轍を踏み、「2度あることは3度ある」とならぬことを願ってやまない。

次に、申立人に対し調査しない旨が通知された第2024-32号である。この案件では、生活保護申請時及びその後の家庭訪問時の職員の対応について苦情が申し立てられたが、申請時の対応については、すでに別件の苦情(第2024-30号)が申し立てられているようである。

こうした場合、新たに別件として調査を実施するのが非効率であることは当然であり、「申請時の職員対応」についての苦情が同一の内容であるならば、その部分についての調査を実施しないことは適切であると思われる(ただし、理由づけは別途考える必要がある)。

しかし、「申請時の職員対応」について、当初の苦情で主張されていない内容が新たな苦情申し立てに含まれていたり、当初の苦情が申し立てられた後、職員が家庭訪問した際の対応について新たに苦情が申し立てられた場合には、なお、申立人には「(苦情)申立ての原因となった事実についての利害」が認められると当ブログ開設者は考えている。したがって、本件苦情について、「具体的利害の不存在」を理由として調査を実施しないという調査担当オンブズマン神谷奈保子の理由づけには賛成できない。

それでは、このような場合、調査担当オンブズマンはどのように対応すべきか。当ブログ開設者は、申立人に対し「すでに申し立てられている案件で新たな内容も取り込んで調査する」旨説明し、申し立ての取り下げを要請するか、それが叶わぬ場合には新たな案件としてすでに申し立てられている案件と並行して調査を実施するのが適切であろうと考えている。

この点、調査担当オンブズマンとしても、すでに申し立てられた案件において、新たに申し立てられた案件の趣旨を取り込んで調査を実施しているのかもしれない。調査担当オンブズマンが「申立人の苦情を適切に拾い上げたか」についての評価は、別件の苦情調査の結果を待つ必要がある。

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①第2024-24号
 市税を指定納付期限内にキャッシュレシュ決済で分割納付しているにもかかわらず、再三にわたり「分納催告書」が送付されてくるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2024-25号
 札幌市平岸霊園内の道路にコンクリート製台座が放置されていたために衝突した車が破損したとして、修理代金の弁償を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

③第2024-27号
 生活保護受給者が資産調査の資料提出のため担当係を訪問した際の担当ケースワーカーの対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

④第2024-28号
 生活保護を受給している申立人が長期にわたり家庭訪問がなされず、訪問された際にも極めて短時間で不十分であったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑤第2024-32号
 生活保護申請時及びその後の家庭訪問時の職員の言動が保護を申請した申立人の不安を煽るものであったとして苦情が申し立てられたケース。保護費の支給が遅れるのではないか等の不安を申立人が抱いたからといって、「現在、申立人に具体的な利害が発生していると、直ちにオンブズマンは判断することはでき(ない)」として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

2024/08/27

2024年6月に調査を終了したケース

 2024年7月1日、同年6月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、同年8月15日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2024年6月)に処理を終了したのは13件で、このうち12件で調査結果が通知された。また、残る1件は調査しない旨が通知された。

さて、今回もまた、当ブログ開設者の興味関心を喚起する案件が目白押しである。そのうち、「火葬場予約システム」が導入されたことを契機として申し立てられた第2024-13号は、「ゆりかごから墓場まで」、札幌市の業務がいかに広範にわたるかを示していると思われた。以下では、当ブログ開設者の関心を引いたポイントをできるだけ簡潔に紹介する。

まずは、道路を通行する自動車により振動の被害を受けている旨の苦情が申し立てられた第2024-12号である。この案件の担当オンブズマン梶井祥子は、「本件道路の舗装は法定基準を満たしており、舗装構成には問題がない」と判断した。

しかしながら、道路交通振動については、振動規制法16条が「測定に基づく要請」について規定している。札幌市においても、道路交通振動の状況についてwebサイトで公開しており、環境局が当該業務を所管している。

本件調査の「市の回答」においても、申立人が「環境局に言っても対応してくれない」と主張していることや、環境局都市環境推進部環境対策課にも匿名の意見が寄せられていることなど、申立人による(と思われる)「環境局」への働きかけについての言及があるほか、調査対象部局自体も、「限度を超えた振動も確認できなかった」旨、言及している。

この点、市の回答にいう「限度を超えた振動」とは、上記の振動規制法に基づく限度基準を指すと思われるのだが、調査担当オンブズマン梶井祥子は、本件苦情に係る道路の舗装が法定基準を満たしている、ということ以上の説明を調査対象部局に求めることはしなかった。

以上の次第で、本件調査の実質的意義をより高めようとうするならば、上記の回答にある「限度」とはどのような根拠に基づき、具合的にどのような基準であるかということや、限度を超える振動が確認できた場合に市がどのような対応をするかについて、市に説明を求める必要があったと当ブログ開設者は考えている(考えられる論点は、舗装の法定基準は満たすものの振動の限度基準を超えるケースの取扱いである)

ところで、調査担当のオンブズマンは、担当案件にどれだけ心血を注ぐべきであろうか。とりわけ、今回公開された案件のうち、第2024-3号第2024-4号第2024-5号および第2024-14号のように(いずれも申立人の子が通う学校の教員の対応に関わる苦情である)、申立人が情緒の安定を欠くという印象を抱かせる苦情については、第2024-21号の担当オンブズマン梶井祥子がそうしたように、「冷酷非道」に徹することも求められる場合もあるのではないか。むしろ、プロならばそうすることもまた、一つの識見たりうるのではないか。

しかしながら、残念なことに、上記4件の調査担当オンブズマンである梶井祥子は「冷酷非道」に徹することはなかった。その結果、当ブログ開設者は同オンブズマンの調査への取り組みは一貫性を欠くという印象を抱くことになった。それとも、調査担当オンブズマンの梶井祥子は、今回公開分の4件の調査に手を焼いているなか、新たに申し立てられた第2024-21号については「冷酷非道」に徹するように方針転換した、ということであろうか

次に紹介するのは、札幌プレミアム商品券の申し込みを受け付けた旨の返信メールがこない旨の苦情が申し立てられた第2024-15号である。プレミアム商品券に関しては、2023年度にも発券場所が少ない等の苦情(第2023-27号)が申し立てられており、当ブログ開設者も南区内に発券場所のローソンが5店舗しかないというのはさすがに少なすぎると指摘したところである(このエントリー)。

そして、2024年度のプレミアム商品券である。2024年度は2023年度と同様の紙商品券に加えて、スマホ商品券が
追加された。また、紙商品券もコンビニ端末での発券手続を不要とする「改善」が図られたはずだったのだが、本件苦情が申し立てられる事態となった。その経緯は結果通知書本体で確認していただきたい。

ところで、当ブログ開設者は、本件における市の対応は、「返信メールが来ない」という申立人からの問い合わせに適切に対応できておらず、大いに問題があったと考えている。しかし、市の対応は頑なで、その旨の謝罪一つするつもりもないようだ。

調査担当オンブズマンも、「想定外の事態に対し、担当課及び事務局の方々は混乱の中で、尽力されたものとオンブズマンは思います」などと、市の対応を持ち上げている。その一方で、申立人への個別的対応の適否については、申立人が主張する「業務不履行」は認められないと判断したが、問い合わせに適切に対応できていない点で、「業務の履行は適切さを欠いた」と当ブログ開設者は考えている。

最後に、第2024-26号である。この案件は、不動産を所有する会社が入居者である生活保護受給者に退去を求めたところ、当該入居者から提訴され多大な迷惑と損害を被ったとして苦情が申し立てられた案件である。調査担当オンブズマンは、本件苦情がすでに調査を終了した第2023-17号と一連のものであるとして調査を実施しなかった。

当ブログ開設者は、調査ずみの案件において、調査担当オンブズマンが申立人の稚拙な主張を咀嚼せずに調査を実施した結果、調査対象部局から必要な説明を受けることができず、本件調査担当オンブズマンも、そうした調査対象部局の説明のブランク(その限りで「調査は未実施」というのが当ブログ開設者の評価である。)を埋めるつもりもなかったものと受け止めている。

この点、調査ずみの案件では、生活保護受給者が転居する場合に保護課はどの程度関与するか、とりわけ、保護費の支給の可否を判断する際、①ペットを飼育する保護受給者の転居先におけるペット飼育の可否を確認することの要否や、②保護受給者が入居する住居から退去を求められた場合の転居費用の支給の可否といった一般論が、市の回答で示されるように「問い」の建て方が工夫されてしかるべきであったと当ブログ開設者は考えている。

おそらく、苦情ベースでものを考えるのと、制度ベースでものを考えるかで苦情の見え方が異なってくるのであろう。その結果、調査を実施する際の「問い」の建て方も異なってくるというのが当ブログ開設者の理解である。当ブログ開設者としては、こうしたギャップが埋まることを願っている。

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①第2024-3号
 申立人の子が通う学校において他の児童に対し教員による不適切な指導が行われており、申立人の子も心理的に負担に感じているようであるとして、そうした教員の指導の改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

②第2024-4号
 申立人の子が通っていた学校において、申立人の子を含む子どもたちに対し複数の教員から不適切な指導が行われていたとして、そうした教員たちの指導の改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

③第2024-5号
 申立人の子どもたちが通っていた学校では他の子どもに対し教員から不適切な指導がなされ、申立人自身も教員から嫌がらせを受け体調を崩すこともあるなど、当該学校では教員による不適切な指導がなされているとして改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

④第2024-10号
 生活保護を受給している申立人が長期にわたり家庭訪問がなされず、訪問された際にも極めて短時間で不十分であったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)


⑤第2024-12号
 自宅前を大型車が通行するたびに自宅が振動するため土木センターに苦情を伝えても「道路に問題はない」として対応してもらえないとして、道路を直すなどの対策をとることを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)


⑥第2024-13号
 札幌市の火葬場では2024年3月から「火葬場予約システム」を導入したが、予約時間の枠にずれて到着した場合の案内が不十分である等、霊柩車の運行会社から改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)


⑦第2024-14号
 申立人の子が通う学校において、担任が子の性格や特性に対応した適切な指導をしていないことに不満を覚え教育委員会に対応を求めたにもかかわらず、教育委員会が十分な調査を実施しないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)


⑧第2024-15号
 札幌プレミアム商品券をwebから申し込んだが来るはずの返信メールが来ず、そのことについて問い合わせのメールを送っても満足な対応がなされないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)


⑨第2024-18号
 市営住宅に入居する申立人が階下から犬の鳴き声がして騒々しいことを住宅管理公社および市住宅課に相談しても解決しないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)


⑩第2024-19号
 市営住宅に住む申立人が同じ棟に住む他の住民の一連の迷惑行為について市住宅課に対応を求めても十分対応がなされないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)


⑪第2024-20号
 法律事務所に勤務する申立人が不動産競売申立書に添付する「公課証明書」を取得する際に市役所を訪問いた際の市職員の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)


⑫第2024-22号
 地下鉄駅でエスカレーターを利用していたところ突然停止したため歩いて登っていた際に転倒し負傷したが、一連の駅職員の対応が不十分であるとして苦情が申し立てられたケース。申(担当オンブズマン:神谷奈保子)


⑬第2024-26号
 生活保護受給者が入居していた賃貸物件を所有する会社が当該受給者から提訴され多大な迷惑と損害が生じたとして、保護課が当該受給者の提訴のため法テラスを紹介した経緯等についての説明を求めて苦情が申し立てられたケース。すでに調査を終了した第2023-17号と一連の苦情申し立て内容であるとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)