2022/11/19

2022年9月に調査を終了したケース

 2022年10月2日、同年9月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、公開決定期限延長のうえ、10月31日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年9月)に調査を終了したのは9件で、このうち7件で調査結果が通知されている。また、残る2件は苦情について調査をしない旨が通知されている。

さて、今回公開された案件のうち、最も興味深い案件が、第2022-18号である。非公開部分が多く苦情申立ての趣旨は必ずしも明確ではないが、苦情申立人が札幌市立学校に在学していた当時に教諭から性的暴力を受けたことについて、平成28年に札幌市教育委員会が行った調査が適切ではなかったことや、その後の教育委員会による申立人への対応について苦情が申し立てられた模様である。

ところで、この件に関しては、その当時の札幌市教育委員会が行った対応について、令和4年1月11日付の検証報告書が公開されている。また、申立人がオンブマンに苦情を申し立てた旨は実名記載で報道されているが、当該報道によると申立人は、この報告書が公表された経緯にも不満を抱いているようである。

なお、札幌市では、「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律等を踏まえた市教委の対応について」というページをwebに開設している。上記報告書も、このページからpdfファイルを入手したものである。

次に、制度についての理解を深めるという観点からは、国保料の滞納による差し押さえと納付書による納付が並行してなされた第2022-32号も興味深い事例である。

この案件では、差し押さえ口座への入金を求める申立人と、指定された口座でなければ入金できないという市の主張が平行線をたどっている。当ブログ開設者は、市の回答又はオンブズマン判断において、「申立人としては不本意かもしれないが、差し押さえされた口座を入金口座として指定すれば実質的解決がはかられる」、といったリップサービスをしてもいいのではないか、と感じたものの、そうした言及はなされていない。余計なことに言及して申立人の気分を害することは避けたいと考えたとすれば一つの見識ではあるが、やや親切さに欠けるように思われる。

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①第2022-18号
 申立人が札幌市立学校に在学していた当時に教諭から性暴力を受けたことについて、札幌市教育委員会のその後の一連の対応が適切ではなかったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2022-21号
 申立人が救急搬送を受けられなかったこと及びその後の消防局の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

③第2022-27号
 児童相談所に一時保護された児童について、児童相談所が申立人の意向に添った対応をしないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

④第2022-29号
 市税証明書を取得するために定額小為替証書を同封したにもかかわらず担当職員に過誤があり、その対応のために追加的な負担を余儀なくされたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑤第2022-32号
 (国保料の滞納による差し押さえと納付書による納付が並行してなされたという前提事実のもと)当該金額を差し押さえ口座に返金してほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑥第2022-35号
 生活保護を受給する申立人が市営住宅に転居しようと考え保護課に相談したところ転居に要する費用は支給できないといわれたが、他の受給者には転居費用も支給された者がいるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑦第2022-37号
 居住する市営住宅の出入り口の幅の歩道の縁石を撤去して、歩道をバリアフリー化してほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)


⑧第2022-39号
 学校でいじめを受けているにもかかわらず、学校が十分な対応をしないとして、苦情が申し立てられたケース。すでに実施した調査(第2022-11号)と同旨の申立てであるとして、苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑨第2022−40号
 申立人の子が学校でいじめを受けているにもかかわらず、学校が十分な対応をしないとして苦情が申し立てられたケース。すでに実施した調査(第2022-11号)と同旨の申立てであるとして、苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

2022/10/14

2022年8月に調査を終了したケース

 2022年9月1日、同年8月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、公開決定期限延長のうえ、9月27日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年8月)に調査を終了したのは11件で、このうち7件で調査結果が通知されている。また、残る4件は調査をしない旨が通知されている。

さて、今回公開された案件のうち、最も興味深い案件が、第2022-22号である。この案件は、札幌市は敬老パスのチャージ業務を日本郵便北海道支社に委託しているところ、申立人がチャージのために郵便局を訪れた際の郵便局職員の対応について市に改善を求めたが適切な対応がなされないとして、苦情が申し立てられた事案である。

残念ながら、事実関係の詳細は非公開とされていて不明である。のみならず、業務委託契約に関する業務マニュアルの記載内容についても非公開とされている。当ブログ開設者は、当該箇所を非公開とすることについて、公文書一部公開決定通知書における非公開部分の記載及び非公開とする理由の記載が適切ではないように思われたことから、札幌市オンブズマンに苦情を申し立てたところである。調査終了の時期がいつになるかは不明であるが、調査について公文書公開を受けて以降、当ブログで紹介したい(追記:当該苦情の調査結果通知書(第2022-52号)は、このエントリーで紹介している。また、オンブズマン調査終了後に行った審査請求が認容されたことから、第2022-22号のファイルを差し替えた)。

次に、第2022-28号、当ブログ開設者が申し立てた苦情である。公文書公開請求に対する公開対象公文書の特定が適切ではなく(公開対象とされた「一覧表」のみの公開では不十分であるという趣旨である)、文書の追加がなされたことを不服として申し立てた苦情である。すなわち、追加に要する間待つことを余儀なくされる、ということである。この点、調査対象のオンブズマン事務局は、対象公文書の追加をしておきながら、当初の対象公文書の特定が適切であったと「二枚舌」の説明をおこなっている。しかしながら、当初の決定が適切ならば、公開対象公文書を追加する必要もなかったはずである。

そして、調査担当のオンブズマンも、こうした市の「二枚舌」の説明を疑問視することなく是認した。こうした判断は、苦情申立人が何を問題視しているかを理解できない、あるいは曲解したまま調査を実施したためであると思われる。すなわち、調査担当オンブズマンには、オンブズマンが調査結果通知書において調査対象部局に要請した内容と、フォローアップ調査でオンブズマン事務局が調査対象部局に照会した内容の違いが認識できなかった、ということのようである。もっとも、そうした調査であっても、調査担当のオンブズマンが何を理解できなかったかが理解できたという点においては、有益だったという評価も可能かもしれない。

とはいえ、「オンブズマン事務局が実施したフォローアップ調査の内容が確認できる文書」という公文書公開請求に対し、「一覧表を全体としてみれば、容易に内容を把握できるものが公開され」というオンブズマン判断はいかにもひどい。他に適切な文書がなかったのならば話は別であるが、追加で公開された文書には、オンブズマン事務局が調査対象部局に対し、「①前回のフォローアップ調査後の対応、②その他、本件を受けて実施又は検討している事項」について回答を求める旨が記載されていた。こうした記載は、公開請求の対象とした「オンブズマン事務局が実施したフォローアップ調査の内容」そのものであるが、当初公開された「一覧表」には、全く記載されていない。

さらに、調査担当のオンブズマンは、担当職員が情報提供により知る権利が損なわれないよう配慮したとも言及しているが、公文書公開決定に対しては審査請求が行える。それに対し、情報提供に対しては不服申し立ては制度化されていない。したがって、公文書公開請求に対し情報提供で対応したからそれでよい、という話にはならないと当ブログ開設者は考えている。

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①第2022-13号
 除雪が迅速になされなかったことや、その際の業者が受注した道路工事において安全が十分に確保されていなかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2022-17号
 住民基本台帳カードを紛失し再発行を依頼したところ、当該カードが有効期限内であるにもかかわらずマイナンバーカードの発行しかできないという対応をされたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2022-19号
 自営業を営む申立人が新型コロナに伴う各種給付金を受給することで生活保護が廃止されることになったが、当初説明を受けていた金額よりも納入通知書記載の返還金の額が大きかったことや、納入通知書記載の金額にも誤りがあったこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

④第2022-20号
 非公開とされた部分が多く詳細は不明であるが、申立人が児童相談所に虐待の通報をしたことについて、児童相談所が当該児童の世帯に情報を漏洩したとして苦情が申し立てられたと思われるケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑤第2022-22号
 敬老優待乗車証のチャージのために郵便局を訪れた際の職員の対応(詳細不明)等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
*追記:2022年3月3日付の裁決により、当初の決定では非公開とされていた箇所が追加で公開されている。

⑥第2022-24号
 生活保護受給者が保護課から適切な支援を受けていないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑦第2022-28号
 公文書公開請求をしたところ、当初なされた一部公開決定では対象公文書の特定に漏れがあり、追加決定がなされることになったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)


⑧第2022-30号
 生活保護受給中の申立人が入居中の住宅の大家から退去するよう命じられたが借地借家法に違反しているとして苦情が申し立てられたケース。住居の貸主・借主間の関係は「市の業務」に該当せず、市の対応に関してはすでに調査を実施している(第2022-15号)として、申立人に対し苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑨第2022−31号
 過去に2度、居宅に滞在していた際に保健師が訪問してきて病院に救急搬送されることがあったとして、苦情が申し立てられたケース。苦情申し立ての原因となった事実のあった日から1年が経過しているとして、申立人に苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑩第2022−33号
 介護施設内で生じた窃盗事件を施設がもみ消しをするのに市職員が加担する等の行為があったとして、苦情が申し立てられたケース。申立人が現に施設と係争中であるとともに、苦情申し立ての原因となった事実のあった日から1年が経過しているとして、申立人に苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑪第2022−34号
 生活保護を受給している申立人が、過去に年金を受給した際に返還の通知を受けるまで3年近くかかったことの理由を調査することを求め、苦情が申し立てられたケース。申立ての原因となった事実からすでに10年以上経過しているとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)

2022/09/05

2022年7月に調査を終了したケース

 2022年8月1日、同年7月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、公開決定期限延長のうえ、8月29日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年7月)に調査を終了したのは8件で、このうち6件で調査結果が通知されている。また、残る2件のうち1件は調査をしない旨が通知され、1件は申し立ての取り下げにより調査は実施されなかった。

さて、今回公開された案件のうち最も興味深いのは、水道料金および下水道利用料の減免に関する案件(第2022-10号)である。ただし、興味深いといっても、調査対象部局の説明が言葉足らずであるとともに、調査対象オンブズマンの判断も適切さに欠けるように思われる点においてである。

まず、この苦情の申立人は、水道料金・下水道利用料ともに市条例に減免についての規定が置かれているところ(札幌市水道事業給水条例35条および札幌市下水道条例17条)、これらの規定を根拠として減免「申請」を行ったにもかかわらず、「申請」として扱われなかったとして苦情が申し立てられた。

これに対し、水道事業管理者は、「管理者は、公益上その他特別の事情がある場合は、料金、加入金、手数料、その他の費用を減額し、又は免除することができる」という給水条例35条の規定について、「(水道事業)管理者に関するものであり、水道使用者が申請するような条文構成になっていないため、水道使用者からの申請に基づき免除することを想定していない」と回答している。

しかし、このような回答は、必ずしも適切ではないだろう。それは、当該条項は、給水条例本則に条例に減免の規定が設けられていない場合であっても、別途、管理者に減免制度を設ける権限を付与する趣旨の規定だと考えられるからである。したがって、この権限に基づいて設けられた減免制度において、水道使用者からの申請に基づいて減免の適用を判断する制度設計にすることは、十分に考えられる。減免制度において、一切の申請を排除するかのような誤解を招くおそれのある表現は、適切とはいえないと思われる。

以上の次第で、給水条例35条は、「水道使用者からの申請に基づき免除することを想定していない」のではなく、この条項は管理者に減免制度を設ける権限を付与する規定であり、この規定から直ちに水道使用者に減免の「申請権」が導かれるわけではない、といった回答がなされるべきであったと考える(なお、事案の処理としては、水道料金については減免制度が設けられておらず減免「申請」の余地はなく、下水道利用料については減免制度の存在を前提に申請が受理する、という対応がなされている)。

ところで、この案件の調査担当オンブズマンは、「給水条例第35条が、(水道事業)管理者に関するものであり、水道使用者からの申請を想定したものではないという法的解釈について、その是非を判断する立場にありません」という、なんとも無責任な判断を行っている。この点、当ブログ開設者は、調査担当のオンブズマンの「判断する立場にない」という判断は、調査に積極的に取り組む意思を欠くとともに、適切に調査を遂行する能力にも欠けるという意味であると考えている。

次に、この案件において、水道事業管理者は、生活困窮者に対する水道料金の減免は独立採算制の水道事業としてではなく、「一般会計による経費負担を前提として検討されるべきもの」と回答する。しかし、この点も論理必然的な回答ではなく、どのような制度設計をするかによって、経費負担の構造が決まってくると思われる。

そして、この点につき調査担当のオンブズマンは、「水道料金の減免については、基本的に一般会計等他の財源による予算的裏付けがある場合に限られる」と推察する。しかしながら、このような「推察」は、水道事業管理者が生活困窮者に対する水道料金の減免について行った説明を過度に一般化するものであり、妥当とはいい難いだろう。

このほか、この案件において当ブログ開設者の関心を惹いたのは、「札幌市行政手続条例」が参照されている点である。すなわち、「行政手続法」が定められいるところ、市条例と法がどのように棲み分けられているのか、という論点である(ただし、この点が苦情化しているわけではない)。

この点、行政手続法3条3項は、次のような適用除外を定めている。すなわち、「地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定は、適用しない。」

また、市条例も、申請について、条例等に基づき、自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為(2条5号)と定義し、不利益処分について、条例等に基づき、特定の者(に)直接義務を課し、又は権利を制限する処分(2条6号)と定義している。

したがって、法令に基づく処分であるか、条例等に基づく処分であるかにより、行政手続法と市条例の棲み分けがなされることになる。また、地方公共団体が行う行政指導には行政手続法の適用はなく、市条例の規定が適用されることになる。この点、総務省のサイトには、以下の表が掲載されているので、あわせて参照していただきたい。

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①第2022-6号
 滞納している市税の取扱い及び担当職員の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2022-7号
 市から業務を受託している企業で就労している者が行った通報について、市が正式の「公益通報」として取り扱わなかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2022-10号
 水道料金・下水道料金を滞納している者がそれぞれの料金の「減免」を申請したが、申請に対する市の対応が札幌市行政手続条例に違反しているとして、苦情が申し立てられたケース。
 なお、札幌市においては、下水道料金は利用者による「減免申請」の手続が設けられている一方で、水道料金は手続が設けられていない模様である。(担当オンブズマン:原俊彦)

④第2022-11号
 不登校の状態にある中学生が、学校や教育委員会の対応では自らの学ぶ権利や安心して登校し学習する権利が侵害されたままであるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑤第2022-14号
 申立人がグループホーム入所に際して障害福祉サービスの利用もあわせて申請したが、入所後3か月経過しても未だ障害福祉サービスの利用について手続きが進められていないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑥第2022-15号
 生活保護受給者が入居している住居の管理会社から退去させられたこと関し、保護課が十分な説明してくれず、所持品の取扱いも不適切であったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑦第2022-23号
 市が道路工事を委託した事業者によるずさんな工事により自宅が被害を受けたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人による苦情申立ての取り下げにより、調査は実施されなかった。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)


⑧第2022-25号
 市が検討中の「町内会支えあい条例」、パートナーシップ排雪はいずれも不要であり、冬季五輪も実施すべきではないとして、苦情が申し立てられたケース。苦情はいずれも市の政策への意見であり、申立人自身に利害があるといえないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)

2022/08/25

2021年度(令和3年度)の活動状況報告書について照会した(回答あり)

2022年7月に調査を終了した案件については、公開決定期限が2週間延長され8月29日となっている。未だ公開決定を受けていないため、当ブログで紹介するまで今しばらくお待ちいただきたい。

ところで、2021年度(令和3年度)の『札幌市オンブズマン活動状況報告書』について、以下の4点をオンブズマン事務局に問い合わせるメッセージを送った。

①奥付の「編集・発行」に「札幌市総務局オンブズマン事務局」と記載されているが、オンブズマン事務局は具体的にどのような作業を行っているのか。

②掲載された苦情申立て事例はどのように選択しているのか。

③札幌市オンブズマンが過去に実施した発意調査のリストが掲載されていないのはなぜか。

④15頁記載の事例の「オンブズマン判断」の第2段落には、以下のような記述がある。すなわち、「介護保険制度の適用に当たり、このような契約上の重要事項を一般市民向けに明示せずに運用していること自体に問題があると考えます。」ここでいう「契約」とは、誰を当事者として、どのような権利義務を発生させる契約か。

このうち①は、活動状況報告書の内容について札幌市オンブズマンに苦情を申し立てようとした場合、「オンブズマンの行為」は所轄外の事項とされることから、オンブズマン事務局の「職員の行為」をピックアップする可能性を探るためである。

次に②は、掲載事例よりも興味深い事例があると思われるためである(たとえば、市道の除雪により敷地内にシカが侵入するという苦情・第2021-111号)。

さらに③は、例年、活動状況報告書に掲載される過去に実施した発意調査のリストが、2021年度版には掲載されていないためである。そのため、2021年度に発意調査が実施されなかったことを隠蔽するためであるとか、前年度の「制度発足20周年特集号」では、発意調査のリストは特集部分に掲載されていたところ、特集の掲載がない平年の編集に戻す際、発意調査のリストを記載するのを失念したためであるとか、あらぬ疑念を生じさせる。

最後に④は、この案件(第2021-17号)で調査を担当した原俊彦オンブズマンが、「住宅改修費」の支給決定という「行政処分」を「契約」と誤認しているのではないかと思われるためである。

なお、照会事項②についてであるが、掲載事例は「オンブズマンの活動状況を知っていただく上で参考になると思われる事例の一部」を掲載している模様である。なるほど、照会事項④の事例は、制度理解が不十分なオンブズマンもいるという事実は、制度を利用しようとする市民にとって、参考になる有益な情報である。苦情申立てに際して申立人は、オンブズマンにも理解できるように、懇切丁寧な制度説明が必要となる場合もある、というわけである。

この点、2020年度(令和2年度)の活動状況報告書(76頁)では、苦情等調査結果通知書(第2020-75号)におけるオンブズマン判断の明らかな誤りは、活動状況報告書段階では隠蔽されていた。

すなわち、この案件において調査を担当した原俊彦オンブズマンは、保育所の利用調整基準について、「保育所等の申込児童数が、利用の要請を行った施設の利用定員を上回る場合には、国の通知に従い、保育の必要性の高い順に利用調整を行う」という判断をしていた。

しかしながら、札幌市における保育所入所の利用調整は、札幌市が行政庁として定める「審査基準」(行政手続法5条1項)たる「利用調整基準」に基づいてなされるのであり、「国の通知に従い」というオンブズマン判断は誤りである。

このように、原俊彦オンブズマンは、この案件を担当した時点において、地方自治の制度枠組みや行政手続についての理解を欠いていたわけである。こうした事情が隠蔽された場合、市民としては、オンブズマンが制度理解を欠くことをふまえた上で苦情申立てをすることができなくなる。札幌市オンブズマン制度の適切な運用のためには、由々しき事態ではなかろうか。


【追記】(2022.8.30)

照会事項について、オンブズマン事務局から回答があったので紹介する。

まず、①についてである。活動状況報告書の編集・発行に際し、「オンブズマン事務局は、オンブズマンとの協議に基づき原稿を作成するとともに、印刷契約関係事務も担っています」ということである。

この回答は、「オンブズマンからの指示を受け」ではなく、「オンブズマンとの協議に基づき」、という点がポイントであろう。オンブズマン事務局として独自に活動する余地があるからである。

次に、②についてである。活動状況報告書への掲載事例の選択については、「オンブズマンが調査を行った苦情の中から、オンブズマンとオンブズマン事務局が協議し、オンブズマンの活動状況を知っていただく上で参考になると思われる事例を選択しております。」

「また、掲載することにより個人情報が明らかになるおそれがあるかどうかや、同一年度中の類似事例があるかどうかなど、その時々の様々な要素も考慮し、総合的に判断しています」ということである。

当ブログ開設者は全件公表を原則とすべきと考えているが、この点は措くとして、事前に「この案件を掲載すべきだ」という見解を伝える対応はありえるかもしれない。

さらに、③の過去に実施した発意調査のリストについては、「例年活動状況報告書に掲載される」というのは、当ブログ開設者の思い違いであった。「令和2年度の活動状況報告書については「制度発足20 周年特集」として、平成22 年度の活動状況報告書については「制度発足10 周年特集」として、それまでの発意調査のリストを掲載しております」ということである。

最後に、④についてである。個別の案件についての照会であるが、「契約上の重要事項を一般市民向けに明示せずに運用していること自体に問題がある」という記述における「契約」とは、いかなる契約であるかについての照会である。

この点、当ブログ開設者は、「契約上の重要事項」ではなく「住宅改修費が不支給となる場合」と表現するのが適切であったと考えている。しかしながら、調査担当の原俊彦オンブズマンは、当ブログ開設者が想定していないような事情を考慮しているのかもしれないと考えて、照会した次第である。

オンブズマン事務局からの回答は、「ここでいう『契約』とは、申立人と工事業者を当事者とした、住宅改修工事についての契約のことです。介護保険の住宅改修費の支給可否は、こうした契約を締結するかを判断する上で重要な事項であり、『工事完了前に入院した場合は、退院して改修したものを使用しないと住宅改修費は支給されない。』ことを一般市民向けに明示せずに運用していること自体に問題がある、という内容であると御理解ください。」というものである。

この回答によると、「契約上の重要事項」とは、契約を締結するか否かを判断する際の重要な事項を指すようだ。しかしながら、「契約上の重要事項」といった場合、当該契約における権利義務の具体的内容を指すのが一般的である。調査担当の原俊彦オンブズマンの用語法があまりにも特異であるため、オンブズマン事務局としても(適切かつ親切なことに)補足説明せざるを得なかったと思われる。

とはいえ、この事例を「活動状況報告書」に掲載することは、原俊彦オンブズマンは特異な判断をすることが稀ではないという意味において、「オンブズマンの活動状況を知っていただく上で参考になる」ことは間違いない。

以上、当ブログ開設者が行った照会に対するオンブズマン事務局の回答を紹介した。今回は、この回答で了としたい。

2022/07/20

2022年6月に調査を終了したケース

 2022年7月1日、同年6月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、2022年7月15日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年6月)に調査を終了したのは5件で、3件で調査結果が通知されている。また、残る2件のうち1件は調査をしない旨が通知され調査が終了し、1件は申し立ての取り下げにより調査は実施されなかった(別の論点を追加し、再度申し立てがなされる模様である)。

さて、調査結果が通知された3件は、3人のオンブズマンが1件づつと、きれいに担当が分かれている。そのうち、コロナ禍ならではの苦情としては、原俊彦オンブズマンが担当した案件(第2022-8号)が興味深い。この案件は生活保護受給者が申し立てた苦情であるが、「長期にわたって家庭訪問が行われていない」こともその内容となっている。ケースワーカーによる家庭訪問を嫌悪する受給者がいるなか、こうした苦情が申し立てられたことは、当ブログ開設者には、コロナ禍で孤立したり、疎外感を強めている受給者がいることを示唆しているように感じられた。

そうすると、調査担当のオンブズマンとしては、この苦情の申立人の世帯の他にも、長期にわたり家庭訪問が行われていない世帯の存否について、担当部局に確認することを求めてもよさそうなものである。しかし、調査を担当した原俊彦オンブズマンは、札幌市オンブズマンの制度は申立人の個別的な利害の実現を目的としていると理解しているためであろうか、そうした発想を欠いたようである(申立人に親身な姿勢をみせる八木橋オンブズマンなら、また違った判断を示したであろうか・・・)。

また、調査しない旨が通知された案件(第2022-9号)は、当ブログ開設者が申し立てた苦情である。当ブログ開設者が特定のオンブズマンの担当案件数が少ない事情について照会したところ、実質的に意味のある回答を受けるまで複数回の照会を要したとして、適切な内容をできる限り速やかに回答することを求めて苦情を申し立てた。一連の対応の経過については、通知書の「苦情申立ての趣旨」で確認して頂きたい(照会における表現が辛辣だとすれば、それは当ブログ開設者のオンブズマン制度への期待の現れであろう)。

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①第2022-5号
 地下鉄駅で福祉割引SAPICAを利用して地下鉄からバスへの乗継割引券を購入しようとした際、駅職員から現金で購入するよう言われたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

②第2022-8号
 生活保護受給者の担当ケースワーカーが交代したにもかかわらず交代前のケースワーカー名の押印された封筒が送付されてきたり、架電した際に交代前のケースワーカーが電話を受けることがあるなど本当に交代したか疑わしく、長期にわたって家庭訪問も行われていないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2022-9号
 特定のオンブズマンの担当案件数が他のオンブズマンより少ない事情について問い合わせたことについて、実質的に意義のある回答がなされるまで照会を繰り返すことになったのはいかにも煩わしいとして、市民からの照会にはできる限り速やかに適切な回答をすることを求めて苦情が申し立てられたケース。申立人の直接の不利益が存在しないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

④第2022-12号
 月寒体育館のスケートリンクで接触事故に遭遇したが、以前から改善を要求しているにもかかわらず未だ実現されていないとして、改めて改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)


⑤第2022-16号
 住基カードを紛失したので区役所の戸籍住民課に再発行を依頼したが再発行を受けられなかったとして苦情が申し立てられたケース。苦情内容を追加して新たな苦情を申し立てるとして、いったん申立てが取り下げられた。(担当オンブズマン:原俊彦)