2022年7月に調査を終了した案件については、公開決定期限が2週間延長され8月29日となっている。未だ公開決定を受けていないため、当ブログで紹介するまで今しばらくお待ちいただきたい。
ところで、2021年度(令和3年度)の『札幌市オンブズマン活動状況報告書』について、以下の4点をオンブズマン事務局に問い合わせるメッセージを送った。
①奥付の「編集・発行」に「札幌市総務局オンブズマン事務局」と記載されているが、オンブズマン事務局は具体的にどのような作業を行っているのか。
②掲載された苦情申立て事例はどのように選択しているのか。
③札幌市オンブズマンが過去に実施した発意調査のリストが掲載されていないのはなぜか。
④15頁記載の事例の「オンブズマン判断」の第2段落には、以下のような記述がある。すなわち、「介護保険制度の適用に当たり、このような契約上の重要事項を一般市民向けに明示せずに運用していること自体に問題があると考えます。」ここでいう「契約」とは、誰を当事者として、どのような権利義務を発生させる契約か。
このうち①は、活動状況報告書の内容について札幌市オンブズマンに苦情を申し立てようとした場合、「オンブズマンの行為」は所轄外の事項とされることから、オンブズマン事務局の「職員の行為」をピックアップする可能性を探るためである。
次に②は、掲載事例よりも興味深い事例があると思われるためである(たとえば、市道の除雪により敷地内にシカが侵入するという苦情・第2021-111号)。
さらに③は、例年、活動状況報告書に掲載される過去に実施した発意調査のリストが、2021年度版には掲載されていないためである。そのため、2021年度に発意調査が実施されなかったことを隠蔽するためであるとか、前年度の「制度発足20周年特集号」では、発意調査のリストは特集部分に掲載されていたところ、特集の掲載がない平年の編集に戻す際、発意調査のリストを記載するのを失念したためであるとか、あらぬ疑念を生じさせる。
最後に④は、この案件(第2021-17号)で調査を担当した原俊彦オンブズマンが、「住宅改修費」の支給決定という「行政処分」を「契約」と誤認しているのではないかと思われるためである。
なお、照会事項②についてであるが、掲載事例は「オンブズマンの活動状況を知っていただく上で参考になると思われる事例の一部」を掲載している模様である。なるほど、照会事項④の事例は、制度理解が不十分なオンブズマンもいるという事実は、制度を利用しようとする市民にとって、参考になる有益な情報である。苦情申立てに際して申立人は、オンブズマンにも理解できるように、懇切丁寧な制度説明が必要となる場合もある、というわけである。
この点、2020年度(令和2年度)の活動状況報告書(76頁)では、苦情等調査結果通知書(第2020-75号)におけるオンブズマン判断の明らかな誤りは、活動状況報告書段階では隠蔽されていた。
すなわち、この案件において調査を担当した原俊彦オンブズマンは、保育所の利用調整基準について、「保育所等の申込児童数が、利用の要請を行った施設の利用定員を上回る場合には、国の通知に従い、保育の必要性の高い順に利用調整を行う」という判断をしていた。
しかしながら、札幌市における保育所入所の利用調整は、札幌市が行政庁として定める「審査基準」(行政手続法5条1項)たる「利用調整基準」に基づいてなされるのであり、「国の通知に従い」というオンブズマン判断は誤りである。
このように、原俊彦オンブズマンは、この案件を担当した時点において、地方自治の制度枠組みや行政手続についての理解を欠いていたわけである。こうした事情が隠蔽された場合、市民としては、オンブズマンが制度理解を欠くことをふまえた上で苦情申立てをすることができなくなる。札幌市オンブズマン制度の適切な運用のためには、由々しき事態ではなかろうか。
【追記】(2022.8.30)
照会事項について、オンブズマン事務局から回答があったので紹介する。
まず、①についてである。活動状況報告書の編集・発行に際し、「オンブズマン事務局は、オンブズマンとの協議に基づき原稿を作成するとともに、印刷契約関係事務も担っています」ということである。
この回答は、「オンブズマンからの指示を受け」ではなく、「オンブズマンとの協議に基づき」、という点がポイントであろう。オンブズマン事務局として独自に活動する余地があるからである。
次に、②についてである。活動状況報告書への掲載事例の選択については、「オンブズマンが調査を行った苦情の中から、オンブズマンとオンブズマン事務局が協議し、オンブズマンの活動状況を知っていただく上で参考になると思われる事例を選択しております。」
「また、掲載することにより個人情報が明らかになるおそれがあるかどうかや、同一年度中の類似事例があるかどうかなど、その時々の様々な要素も考慮し、総合的に判断しています」ということである。
当ブログ開設者は全件公表を原則とすべきと考えているが、この点は措くとして、事前に「この案件を掲載すべきだ」という見解を伝える対応はありえるかもしれない。
さらに、③の過去に実施した発意調査のリストについては、「例年活動状況報告書に掲載される」というのは、当ブログ開設者の思い違いであった。「令和2年度の活動状況報告書については「制度発足20 周年特集」として、平成22 年度の活動状況報告書については「制度発足10 周年特集」として、それまでの発意調査のリストを掲載しております」ということである。
最後に、④についてである。個別の案件についての照会であるが、「契約上の重要事項を一般市民向けに明示せずに運用していること自体に問題がある」という記述における「契約」とは、いかなる契約であるかについての照会である。
この点、当ブログ開設者は、「契約上の重要事項」ではなく「住宅改修費が不支給となる場合」と表現するのが適切であったと考えている。しかしながら、調査担当の原俊彦オンブズマンは、当ブログ開設者が想定していないような事情を考慮しているのかもしれないと考えて、照会した次第である。
オンブズマン事務局からの回答は、「ここでいう『契約』とは、申立人と工事業者を当事者とした、住宅改修工事についての契約のことです。介護保険の住宅改修費の支給可否は、こうした契約を締結するかを判断する上で重要な事項であり、『工事完了前に入院した場合は、退院して改修したものを使用しないと住宅改修費は支給されない。』ことを一般市民向けに明示せずに運用していること自体に問題がある、という内容であると御理解ください。」というものである。
この回答によると、「契約上の重要事項」とは、契約を締結するか否かを判断する際の重要な事項を指すようだ。しかしながら、「契約上の重要事項」といった場合、当該契約における権利義務の具体的内容を指すのが一般的である。調査担当の原俊彦オンブズマンの用語法があまりにも特異であるため、オンブズマン事務局としても(適切かつ親切なことに)補足説明せざるを得なかったと思われる。
とはいえ、この事例を「活動状況報告書」に掲載することは、原俊彦オンブズマンは特異な判断をすることが稀ではないという意味において、「オンブズマンの活動状況を知っていただく上で参考になる」ことは間違いない。
以上、当ブログ開設者が行った照会に対するオンブズマン事務局の回答を紹介した。今回は、この回答で了としたい。
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