2026/03/19

2025年11月に処理を終了した案件

 2025年12月1日、同年11月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、2026年1月14日に一部公開決定がなされた。

上記の期間(2025年11月)に処理を完了したのは11件で、このうち4件で調査結果が通知された。また、残る7件のうち、6件については苦情について調査しない旨が通知され、1件については苦情申立ての取下げという取り扱いがなされている。

1.梶井祥子にオンブズマンの職務は「荷が重い」(その1)
今回の公開分、写しの交付を受けてからこのエントリーを公開するまでにいつも以上時間がかかることになったのは、論ずべき点が盛りだくさんになったためである。そのうち、まず第一に指摘しておくべきことは、この3月からオンブズマン2期目に入った梶井祥子にとって、オンブズマンの職務は「荷が重い」のであろうことである。論より証拠、「苦情について調査しない旨の通知書(第2025-66号)において、梶井祥子は「オンブズマンの負担が荷重になる」旨の見解を示している。

この「荷重」という文字、業務が過重であるがゆえ梶井祥子が誤字に気づかなかったものと思われる。おそらく「オンブズマンの負担が過重になる」と書きたかったのであろうが、些細な誤字に気づかないオンブズマンがより重大だが難解、本質的だが複雑な市政の課題をそれと認識できるのか、疑問を抱かざるを得ない。

実際、この案件において、梶井祥子は札幌市オンブズマン条例が定める調査対象外の事項について、「本来の利害関係人の意思にそぐわない申立てがなされる事態を避けるために設けられている」という見解を示している。

しかしながら、条例が定める調査対象外の事項は、当該事項に該当する苦情が申し立てられた場合においてオンブズマンが当該苦情を調査しない根拠となるに過ぎない。したがって、「調査対象外の事項」を定めることが申立てを抑止することができるものではなく、抑止効果があるとすれば、それは「調査対象外の事項」を周知した結果であろう。

この点、札幌市オンブズマン条例は、「何人も、オンブズマンに対し、市の業務について苦情を申し立てることができる」(札幌市オンブズマン条例14条)ことを規定している。したがって、ひとたび苦情が申し立てられた場合、オンブズマンは条例が定める権限の範囲内で対応していくことになる。

また、梶井祥子のいう「本来の利害関係人」という記述もその趣旨は不明である。前述のように、何人もオンブズマンに対し苦情申立てができるのである。その苦情がオンブズマン所轄事項でない場合を含めて、「調査対象外の事項」である場合、オンブズマンは当該苦情に関する調査を実施しないことになる。

なお、この案件の苦情申立人は、過去に苦情を申し立てた(第2022-12号)「その後」の市の対応について、苦情を申し立てている。こうした場合において、「オンブズマンが一度調査して結果を通知している」ことは、そのこと自体が調査をしない理由とはならないと思われる。それは、調査を終了した後の「新たな事実」に基づいて苦情が申し立てられたと評価することができるからである。

以上のように、梶井祥子による札幌市オンブズマン制度の理解ははなはだ心もとない。「梶井祥子にオンブズマンの職務は『荷が重い』」と論ずるゆえんである(なお、今回公開分は2025年11月に処理を終了した案件であるが、梶井祥子は翌2025年12月終了分においても、「オンブズマンの負担が荷重になる」という見解を披歴している)。

2.梶井祥子にオンブズマンの職務は「荷が重い」(その2)
のみならず、今回公開分のうち、梶井祥子が調査を実施した別の案件(第2025-50号)も、梶井祥子にオンブズマンの職務は「荷が重い」と感じさせるものである。

この案件は、サービス付き高齢者住宅に入居していた申立人が施設で提供される食事を取らなかったにもかかわらず施設が当該サービス利用料の返金に応じないことを苦情申立ての前提とする案件である。そして、申立人は市が施設に返金を指導することを求めたにもかかわらず適切な対応がなされないとして、オンブズマンに苦情を申し立てた。

このような場合、市は施設に対し、法令等が定める基準が順守されているかを監督する権限を有する。その一方で、契約上のサービスが適切に提供されているか否かという問題については、基本的に関与できないことになる。

それは、事業者による法令順守と契約上の義務の履行はその実現を図るためのシステムが異なり、市の権限は前者を監督することであり、後者の契約上の義務の履行については、市の権限の範囲外になるからである。したがって、市が申立人が望むような対応をしなかったとしても、市の権限行使という観点からは、やむを得ないことになる。

ただし、このような場合にも、都道府県社会福祉協議会の「運営適正化委員会」による「苦情解決」の制度は、施設とサービス利用者間の紛争解決のために利用可能である(社会福祉法85条)。オンブズマンも「その職務の遂行に当たり、市民の権利利益を擁護し、並びに市政を監視し、及び市政の改善を図る他の諸制度と有機的な連携を図ることなどにより、その役割を効果的に果たすよう努めなければならない」(札幌市オンブズマン条例5条2項)ことからすると、オンブズマンは「運営適正化委員会」による「苦情解決」の制度を申立人に紹介することが期待されると当ブログ開設者は考えている。

しかし、残念ながら梶井祥子が上記の「紛争解決」の制度について言及することはなかったが(「事業の経営者による紛争解決」(社会福祉法82条)について言及するのみである)、梶井祥子は「札幌市社会福祉協議会会長」の肩書も有するようである。

「札幌市」社協の会長の肩書を有するにもかかわらず、「北海道」社協が設置する制度については知見を欠いていたということであろうか。仮にそうならば、当ブログ開設者は、梶井祥子にオンブズマンの職は「荷が重い」という思いを抱かざるを得ない(なお、オンブズマンと市社協会長の兼職は、「オンブズマンは、市と特別の利害関係を有する法人その他の団体の役員を兼ねることができない」と規定する札幌市オンブズマン条例9条2項との関係でも議論の余地がある)。

3.「フリーペーパー」の扱いはどうなる?
次は、市が管理する公園内で写真撮影をする際に「利用料」の支払いを求められたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられた案件である(第2025-39号)。この案件では、他の自治体における取り扱いを丹念に調査している点が興味深い。担当オンブズマン樋川恒一の「ファインプレー」かもしれない。

ただし、当ブログ開設者は、市条例が「業として写真を撮影する場合」には許可を得るとともに使用料の支払いを要することを規定している点について、市の回答への疑念を抱いている。それは、「有料刊行物に掲載するための撮影もこれに該当する」という記述があるからである。こうした記述は、広告収入に基づいて発行される「フリーペーパー」の取り扱いがあいまいになるきらいがあるのではなかろうか。

この点、調査担当オンブズマン樋川恒一も、どのような場合が「業として写真撮影をする場合」となるのか基準が明確でないとして、市に基準の明確化を求めている。このようなオンブズマン判断は、市の主張を鵜呑みにすることなく、オンブズマンの果たすべき役割を適切に果たしていると評価できると思われる。

惜しむらくは、苦情申し立てから調査結果通知書の発送まで、3か月以上かかっていることである。さすがに時間がかかりすぎという印象をぬぐえないが(調査実施通知書の発送からも2か月半程度要している)、オンブズマンが調査に習熟するにしたがい、迅速化が図られることを期待したい。

4.「会計年度任用職員」の任用手続きについて
さきほどの案件では樋川恒一オンブズマンの「ファインプレー」を紹介したが、こちらの「会計年度任用職員」の任用手続きに関する案件(第2025-71号)は、樋川恒一オンブズマンの「凡プレー」といえるかもしれない。

申立人は、会計年度任用職員の選考を一括で行わないことに対し苦情を申し立てた。現状、札幌市における会計年度任用職員の選考は、部署ごとの個別の対応になっているようだ。

この点、調査担当オンブズマン樋川恒一は、「本件申立ては、他の応募希望者も同様の取り扱いを受ける会計年度任用職員の『選考』という採用方法を問題としていることに鑑みると、他の応募希望者とは異なる申立人自身の利益にかかる事案とは認められません」という見解を示し、調査を実施しなかった。

しかし、である。申立人の調べたところによると、他の自治体では会計年度任用職員の選考を一括で行っているところもあるそうだ。このような運用がなされている場合、応募者は一度の応募で手続きを完了することができるのに対し、札幌市のように部署ごとの対応であれば、応募者は選考に漏れるたび、再度の応募を余儀なくされることになる。

調査担当オンブズマンの樋川恒一は、他の応募者も同様の取り扱いになるために申立人がことさら他の応募者より不利益な取り扱いを受けているわけではない、という見解のようである。しかしながら、当ブログ開設者は、「一括選考」しない理由の説明を受けること自体に「申立人の利害」が認められるべきだと考えている。

むしろ、調査担当オンブズマンの樋川恒一が従来の札幌市オンブズマン制度の運用と平仄をあわせるならば、「申立人が実際に複数回の応募を余儀なくされた事実は存在しない」ため「具体的利害」がない、という理由で調査しないほうが適切であったかもしれない(ただし、前述したように当ブログ開設者は、「説明を受けること」自体に「利害」があると考えている)。

5.行政内部文書と「保有個人情報の訂正請求権」
今回公開分にはもう1件、樋川恒一オンブズマンの「凡プレー」を疑われる案件がある。それは、市職員が申立人に対応した際の記録(公文書)に誤字があることを申立人が指摘した際の職員の対応について、苦情が申し立てられた案件である(第2025-73号)。

調査担当オンブズマンの樋川恒一は、当該公文書が「対外文書ではなく、対内文書であり、あくまで担当課での内部報告のため作成された文書である」として、「当該対応記録に誤字があったからといって、申立人に不利益が発生しているとは認められず、この点について申立人は利害を有しない」と判断した。

しかし、である。「個人情報保護法」は、行政機関の「保有個人情報」(同法60条1項)について、本人の「訂正請求権」を規定している(同法90条1項)。したがって、行政内部文書の記載が「保有個人情報」に該当する限り、当該文書に誤字があったとしても「申立人に不利益が発生してい(ない)」というオンブズマンの判断は、この「訂正請求権」の意義を没却すると思われる。

むしろ論ずべきは、申立人が本件苦情で申し立てた内容がオンブズマン制度を通じて実現すべき「利害」として適切か、という点ではなかったか。「誤字に対しての詫び、第三者(承認)を交えての面会を求める」等の申立人の主張は、いささか過大だという印象を禁じ得ないからである(ただし、当ブログ開設者の制度理解に基づくと、オンブズマンは「申立人の主張」の当否ではなく、「行政対応の適否」を判断すべきである。したがって、こうした印象論の適否については別途、議論の余地がある)。

6.複数回の申立てをする「超上客」をいかに「おもてなし」すべきか
今回のエントリーは、公開対象公文書の写しの交付を受けてからエントリーを公開するまで、およそ2か月の時間を要した。これから紹介する第2025-69号第2025-74号の2件をどのように紹介するのが適切か、頭を悩ませたこともその理由の一つである。この2件はいずれも、2025年10月に処理を終了した案件を紹介するエントリーで、「札幌市オンブズマン制度にとっては『超上客』であろう」と論じた申立人による苦情である(いずれの案件も、「苦情について調査しない旨」が通知されている)。

ところで、同一の申立人による複数回の苦情申立てがなされた場合、オンブズマンの取扱件数がかさ上げされたため、対外的にはオンブズマンが活発に活動を行っているような外観を呈することになる。しかし、同一の申立人による繰り返しの苦情申し立ては、オンブズマンの負担が過重になることは否定できないであろう(ただし、オンブズマンによるその旨の泣き言の適否については、別途論じる必要がある)。

その一方で、同一の申立人が繰り返しオンブズマンに苦情を申し立てることは、オンブズマンに対する「信頼」の証明であるという評価もできるかもしれない。なぜなら、オンブズマンをまったく信頼できないならば、苦情を申し立てることすらしないであろうからである。そうでなくても、改善は期待できないとしても、せめてひとこと、文句を言っておきたいというはけ口としてオンブズマンが選択される可能性はあるかもしれない。

それでは、具体的な検討である。上記2件の申立人は、過去に複数回の苦情を申し立てているが、まず第2025-69号では、調査時の担当部局によるオンブズマンへの回答が事実に反するものであるとして、再度担当部局から市社協に照会するようオンブズマンが担当部局に対する指導を求めて苦情が申し立てられた。

この案件で興味深い点は、申立人が「ケースワーカーに対し、個別具体的な貸付制度の確認を依頼した事実はありません」と主張していることである。これに対し、担当部局は先行案件(第2025-57号)で、「社協へ申立人の名前及び困窮している理由を説明したうえで問い合わせました」と回答し、調査担当オンブズマンもこの点を問題視することはなかった。

しかし、当ブログ開設者は、先行案件について、「本件のように申立人からの依頼があったような場合においても、ケースワーカーは申立人に対し、①社協に対する問い合わせは一般論としての問い合わせか、それとも申立人の具体的な事情に基づく問い合わせか、②申立人の具体的な事情に基づく問い合わせの場合には、申立人の個人情報を社協に説明することは差し支えないか、確認するのが適切であった」と当該案件を紹介するエントリーで論じたところである。

上記の指摘は申立人の不満にも通じると思われる。すなわち、先行案件でオンブズマンがこの点の指摘をしていれば、本件苦情申し立てはなされていなかったかもしれないからである。「超上客」のおもてなしとして、不十分だったのではあるまいか。

続いて、第2025-74号である。この案件では、申立人が「札幌市が組織全体として改善に取り組むよう、オンブズマンが助言や指導をいただければと強く希望している」として、申立人から「意見書を提出する」という名目で苦情が申し立てられた。申立人のオンブズマンに対する「信頼」が垣間見えるといえるかもしれない。なお、担当オンブズマンは、申立人に具体的な利害が発生していないという理由で調査をしない旨を通知した。

さて、この案件で興味深いのは、申立人が「現状の問題点」として、「私はこれまで4~5件の苦情申し立てを行ってきたが、市の担当課からの回答は、すべて『双方の主張に違いがあり、当時の記録が存在していないため判断できない』というものだった」と主張している点である。

ここでいう「苦情申し立て」とはオンブズマンに対する苦情であると思われる。しかしながら、申立人の苦情と当ブログ開設者が特定できた範囲では、「市の担当課からの回答」が「双方の主張に違いがあ(る)」という記述のある案件は見当たらなかった。むしろ、「双方の見解が異なっており、事実関係を確認できない」旨の言及は、オンブズマン判断の常套句かもしれない。たとえば、前述の第2025⁻69号にも、「その場にいないオンブズマンには事実を確認することができず、本件ケースワーカーの行為が(中略)不適切であるかどうかを判断することができません」という記述がある。

そこで、当ブログ開設者は、申立人が「市の担当課」と「オンブズマン」を混同しているのではないかと疑ったが、どうやらそうではなかったようだ。それというのも、今回の2025年11月終了分のエントリーの公開が遅々として進まない一方で、同年12月分の写しの交付を受けたところ、この案件の申立人による別件の苦情(第2025-79号)の存在が判明したからである。その案件において、申立人は市の職員課の対応にも苦情を申し立てている(この案件は、また次回のエントリーで紹介することにしたい)。したがって、申立人は「市の担当課」と「オンブズマン」の区分はできているようであった。

もっとも、、自らの不満が適切に対処されない不満を抱く市民がその不満を拡散させ、複数の部局に不満を伝えるのは、典型的な行動パターンの一つといえるかもしれない。ただし、あくまで当ブログ開設者が抱いた印象である(その典型的な受け皿が「市民の声を聞く課」である)。

なお、複数回の苦情を申し立てる「超上客」へのおもてなしのあり方については、次回のエントリーでも取り扱うことにしたい。ただし、オンブズマンには荷が重いかもしれない。そして、当ブログ開設者は気が重い。

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①第2025-39号
 市が管理する公園内での写真撮影について、当該撮影が小冊子に掲載する公園紹介記事に利用するためのものであったとしても「使用料」の支払いが必要であること等について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:樋川恒一)

②第2025-50号
 サービス付き高齢者住宅の入居者が食事提供を断ったにもかかわらず事業者に支払った食事代の返還がなされないとして市の担当課に対応を求めたが、「役所には仲介する権限はない」として担当課による事業者への対応がなされないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

③第2025-51号
 札幌市電を定期券で利用している申立人が、イベントが開催されるたびに一部区間が運休されることを不服として苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

④第2025-58号
 生活保護を受給する申立人が、入居する居宅の修繕のために一時的に転居するための費用を保護費として支給することをを求める申請が妨害されたり、所持する金銭を保護課に申告するよう求める文書が送付されてくる等、一連の保護課の対応に納得がいかないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑤第2025-66号
 月寒体育館の利用状況に関して過去にオンブズマンに苦情を申し立て、調査結果を踏まえて担当課と協議したが、その際に決定された対応が徹底されていないとして苦情が申し立てられたケース。「オンブズマンが一度調査して結果を通知した事項」は「オンブズマンの行為に関する事項」(札幌市オンブズマン条例3条6号)に該当するとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑥第2025-67号
 生活保護受給者が現在居住する住居から退去を求められる可能性があるとして転居費用の支給を求めたが断られたとして苦情が申し立てられたケース。担当課に確認したところ転居費用が支給ずみであるとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑦第2025-69号
 オンブズマンの調査結果通知書を受領したが(おそらく第2025-57号)、オンブズマン調査に対する市の回答は事実と異なる点があるとして、市が事実関係を(申立人が訪問した際に対応に不信感を抱いた)社会福祉協議会に確認するようオンブズマンが市に対し助言または勧告することを求めて苦情が申し立てられたケース。「オンブズマンの行為に関する事項」はオンブズマンの所轄外であるとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑧第2025-70号
 生活保護受給者の生活品の移送を請け負ったがその対価が支払われていないとして、担当者から受給者に支払うよう伝えてほしいとして苦情が申し立てられたケース。オンブズマンから担当課と話し合うよう伝えたところ、苦情申立てが取り下げられた。(担当オンブズマン:樋川恒一)

⑨第2025-71号
 札幌市においては会計年度任用職員を各部署で個別に任用しているが、他の都市では一括で採用しているところもあるとして、一括募集ではない理由の説明を求めて苦情が申し立てられたケース。会計年度任用職員の「選考」という採用方法は、他の応募者とは異なる申立人自身の利益にかかる事案とは認められないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:樋川恒一)

⑩第2025-73号
 市職員と申立人の対応記録に誤字があったことに関し、その後の市の対応が不十分であるとして苦情が申し立てられてケース。対応記録は申立人のために作成された文書でなく内部報告のために作成された文書であり、対応記録に誤字があったからといって申立人に不利益が発生しているとは認められないとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:樋川恒一)

⑪第2025-74号
 申立人が市職員の対応について担当課に苦情を申し立てた際(人事課の模様)、「双方の主張が食い違い、記録がないため判断できない」旨の対処がなされることに改善を求めるため、オンブズマンから市に対し指導や助言をすることを求めて「意見書」が提出されたケース。オンブズマンへの意見書として生活保護行政に関する「指導」を求める本件は、個別具体的な利害が発生しているとは言えないとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

2026/02/28

オンブズマン再任(2026年)

2026年2月27日、以下の議案が札幌市議会に提出され、同日、議会の同意を得た。これにより、梶井祥子氏(NPO法人理事、元大学教授)がオンブズマンとして2期目の委嘱がなされた(任期は2028年2月29日まで)。

2026年3月1日以降も引き続き1年間、神谷奈保子氏(オンブズマン2期目2年目・民事調停委員)、樋川恒一氏(オンブズマン1期目2年目・弁護士)との3名の体制で、札幌市オンブズマンの職務が遂行される。

 


2026/01/07

「札幌市オンブズマン」を過大評価する朝日新聞

 2026年1月6日、朝日新聞朝刊に「札幌市、重大事態認定せず」という記事が掲載された(北海道支社版のみならず、東京本社版・名古屋本社版・大阪本社版・西部本社版も同様。web版は1月5日付)。

記事の内容は、8年前(2018年)に市立高校1年生の女子生徒が下校中に同学年の男子生徒から体を触られ不登校になり、3か月後にPTSDと診断されたところ、その案件について札幌市が2025年に「いじめ重大事態」と認め調査を始めたというものである(以下、この調査を便宜的に「調査A」という。)。また、記事では事案発生の翌年(2019年)に「第三者機関に重大事態に当たる可能性を指摘」されていたことも紹介されている。

以上が「有料会員」登録しなくても読める記事の内容であるが、この「第三者機関」こそ、札幌市オンブズマンである。そして、上記の「重大事態に当たる可能性」を指摘しているのが、苦情等調査結果通知書第30-55号である(2019年3月22日付・担当オンブズマン:杉岡直人。以下、当該苦情等調査結果通知書を「通知書」、実施された調査を「調査B」という。なお、調査Bは調査Aよりも時間的に先行する)。当ブログでは、このエントリーで当該案件を紹介している。

この調査Bの通知書は、A4用紙55枚におよぶ「超大作」であるが、現時点で再読すると、調査担当オンブズマン杉岡直人の指摘は捉えるべきポイントがややずれているように思われる。それと同時に、当ブログ開設者がその点について無自覚であったことが、今さらながら悔やまれる。おそらく、当ブログ開設者は公開を受けた当時に通知書が「超大作」であるがゆえ、「流し読み」したものと思われる。この点については恥じ入るばかりである。

とはいえ、当ブログ開設者に公開された調査Bの通知書は「非公開」とされた箇所が多く、前提となる事実関係が十分に把握できなかったのも事実である。こうした観点からは、今回の朝日新聞の記事は、被害者の高校生が受けた加害行為が明らかになった点に意義がある。そのことによって、当該オンブズマンによる調査Bのあり方を考える際、「いじめ防止対策推進法」の規定が手がかりになることが明らかになったからである(なお、調査Bの通知書において、同法は参照されていない)。

この点、上記の記事の有料部分は、「いじめ防止対策推進法は、いじめにより子どもが不登校を余儀なくされたり、深刻な被害を受けたりした疑いがあれば『重大事態』だと定義。被害に遭った子どもの心のケアといった対策に役立てるため、学校側に『速やかに、事実関係を明確にする調査を行う』ことを義務づけている」ことを紹介している。そして、札幌市は今般、同法に基づく調査に着手したというのが記事の内容である(なお、根拠条項は同法28条1項である)。

また、当該オンブズマンによる調査B(第30-55号)においても、「今回の事案は(中略)いじめにおける重大事態に相当する内容であると考えます」という判断が示されていた

しかしながら、同法が規定する「重大事態」においてなされる調査は、「当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため」になされるものである(同法28条1項)。したがって、被害者を救済したり、加害者に行為を止めさせることを目的としているわけではない。それでもなお、今回の事案において「重大事態」においてなされる調査に意義があるとすれば、「当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供する」(同条2項)とされていることが指摘できるであろう(したがって、今回の朝日新聞の記事は「調査」の目的についての説明が不正確である)。

ところで、オンブズマンによる調査Bがなされたのは、被害者に対する学校および教育委員会の対応が不十分であるとして苦情が申し立てられたからである。この点、「いじめ防止対策推進法」は、第四章において「いじめ防止等に関する措置」を規定している点が重要である(「重大事態への対処」が規定されているのは第五章である)。なかでも同法23条3項は、「いじめがあったことが確認された場合」において、「いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援」、「いじめを行った児童等に対する指導」および「その保護者に対する助言」を「継続的に行う」ことを規定している。

この点、調査Bの契機となった苦情申立てにおいては、学校の対応が不十分な点として「加害者に対する懲戒」が適切になされていないという点についても主張されている。しかしながら、「いじめ防止対策推進法」23条3項の規定を前提にするならば、たとえ上記苦情の申立人が学校に対し「加害生徒に対する懲戒」を求めたとしても、より優先されるのは「いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援」であり、「いじめを行った児童等に対する指導」になるといえるだろう。

ところが、残念なことに「いじめを受けた児童又はその保護者に対する支援」が不十分だった結果として、上記苦情の申立人は「加害生徒に対する懲戒」を求めることになったのであろうと、現時点において当ブログ開設者は考えている。また、オンブズマンによる調査Bにおいても、被害生徒および家族に対する支援が不十分であったことが厳しく指摘されている。

また、学校の対応の適切さという観点からは、「いじめ防止対策推進法」23条5項についても考慮しておく必要があると思われる。同項は、「いじめを受けた児童等の保護者といじめを行った児童等の保護者との間で争いが起きることのないよう」に学校が必要な措置を講ずることを規定しているからである。

実際、上記苦情の申立人は、学校の対応により加害行為をした生徒の家族との直接交渉の開始が大幅に遅れた、という主張をしている。しかしながら、通知書の以下の記載は、学校と教育委員会は、いじめ被害者と加害者の保護者間で「争いが起きることがないよう」に、直接交渉の場をお膳立てすべく尽力していたと評価することができるようにも思われる(ただし、こうした評価が「甘い」という批判は甘受する)。

「同月26日、当該高校にて、子の代理人、Aの代理人、学校、教育委員会の四者が話し合いを行い、子の登校の実現に向けて協議しました。学校からは、両者が顔を合わせないための校内での動線について配慮案を複数提示しました。また、登校時のルートについても配慮したいため、子の代理人に対し、子の登校(車での送迎)ルートを教えてほしいと依頼しました。」(※ここに記されたAとは加害生徒である。通知書16頁)

以上の次第で、当該オンブズマンによる調査Bにおいては、学校および教育委員会が「いじめ防止対策推進法」23条が規定する一連の措置を適切に講じたか、という点を中心的な論点とする必要があったと当ブログ開設者は考えている。ところが、調査担当オンブズマン杉岡直人はこうした発想を欠き、当ブロブ開設者も通知書の公開を受けた当時は、そのような発想を欠いていた。痛恨の極みである。

ここでようやく、冒頭に挙げた朝日新聞の記事についてである。この記事は、「弁護士らからなる第三者機関に重大事態に当たる可能性を指摘され」ていたにもかかわらず、長期間経過後に被害者側から疑問を呈されたことを契機として、「いじめ防止対策推進法」が規定する重大事案についての調査を開始した札幌市の対応に批判的である。

また、有料会員登録することで読める箇所(以下に指摘する記事の記述も同様に、有料会員登録することで読める箇所である)においても、「市が設置し、弁護士ら有識者でつくる市オンブズマン」という記載があるように、この記事を執筆した記者の古畑航希は、札幌市オンブズマンに弁護士が携わっていることに一定の意義を見出しているようである。

ところが、上記調査Bの担当オンブズマンの杉岡直人は、その当時、北星学園大学社会福祉学部教授であって弁護士ではない。したがって、札幌市オンブズマンによる調査を権威づけるする理由として弁護士が携わっていることを強調することは、ミスリーディングであるという印象である。

さらに、記事には「弁護士ら有識者でつくる市オンブズマン」という記述もあるが、札幌市オンブズマンは、議会の同意を得て市長が委嘱するのであって(札幌市オンブズマン条例8条2項)、有識者が市オンブズマンをつくっているわけではない。

この点、記事には「同市のオンブズマンは市条例にもとづく第三者機関」という記述もあるが、前記の「有識者でつくる市オンブズマン」という記述が併存していることからすると、この記者は行政オンブズマンである札幌市オンブズマンと、民間のいわゆる「市民オンブズマン」との区別がついていないのかもしれない(ちなみに、「札幌市民オンブズマン」の代表は島田度弁護士で、現在「札幌市オンブズマン」に任用されている3人のうちの1人が樋川恒一弁護士である)。

このほか、記事は「市が19年11月にまとめたオンブズマンへの報告書」が、「重大事態や検証には言及しなかった」という記述がある。この「報告書」とは、調査を実施したオンブズマンが通知書に記載した「意見」をふまえ、調査対象部局がその後どのような対応をしたか、さらには現在の状況について、オンブズマン事務局長名での照会に対する回答内容が記載された文書のことである。

したがって、照会内容に対する回答文書という性格上、「重大事態に相当する」旨の指摘をするのみで「重大事態として取り扱う」ことを求めているわけではないオンブズマンの意見に対し報告書が「重大事態」に言及しないことも、「本格的な検証」を行った上で「被害生徒の学習環境の確保について、十分な検討を求める」オンブズマンの意見に対し報告書が「検証」について言及しないことも、照会に対する回答文書という上記「報告書」の性格からすると、やむを得ないように思われる(ただし、照会事項を明確に特定している場合にはこの限りでない)。

・・・いかがであろうか。当ブログはここ最近の傾向として、札幌市オンブズマンが行う調査が積み残した課題を指摘することに注力してきた。そのため、このエントリーにおいても、冒頭に挙げた朝日新聞の記事を契機として、オンブズマンが実施した調査Bについて同様の指摘を行うこととしたものである。

これに対し、冒頭の記事は札幌市オンブズマンの判断を当然視、あるいは神聖視し、疑問を差し挟むことをしていない。当ブログ開設者が、朝日新聞が札幌市オンブズマンを過大評価していると感じる所以である。1月6日付「素粒子」も参照されたい。

【参照条文】
◯いじめ防止対策推進法
第四章 
(いじめの防止等に関する措置)
第23条
1〜2 (略)
3 学校は、前項の規定による事実の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該学校の複数の教職員によって、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行うものとする。
4 学校は、前項の場合において必要があると認めるときは、いじめを行った児童等についていじめを受けた児童等が使用する教室以外の場所において学習を行わせる等いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにするために必要な措置を講ずるものとする。
5 学校は、当該学校の教職員が第3項の規定による支援又は指導若しくは助言を行うに当たっては、いじめを受けた児童等の保護者といじめを行った児童等の保護者との間で争いが起きることのないよう、いじめの事案に係る情報をこれらの保護者と共有するための措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
(以下略)

第五章 重大事態への対処
(学校の設置者又はその設置する学校による対処)
第28条 学校の設置者又はその設置する学校は、次に掲げる場合には、その事態(以下「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。
一 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
二 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
2 学校の設置者又はその設置する学校は、前項の規定による調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供するものとする。
(以下略)

2025/12/28

2025年10月に処理を終了した案件

 2025年11月2日、同年10月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、同年12月17日に一部公開決定がなされた。

上記の期間(2025年10月)に処理を完了したのは7件で、このうち4件で調査結果が通知された。また、残る3件のうち、1件については苦情について調査しない旨が通知され、2件については苦情申立ての取下げという取り扱いがなされている。

ところで、今回の公開分に限らないのだが、オンブズマン調査における市の回答は、「できない理由」についての説明が展開される傾向にある。しかし、そうした回答は苦情を申し立てた市民にとっては、自らの要望が拒絶されたという印象を残すことになると思われる。むしろ市は「できること」を説明したほうが苦情を申し立てた市民に対して好印象を与えると思うのだが、いかがであろうか。

しかしながら、市の回答がそのような内容にならないのは、いったん市が「できること」についての説明することで、そうした対応をする責任が生じるのを避けたいという意向が働く、あるいは、職務遂行にあたって前例踏襲をよしとする組織文化がある場合には、「できること」を考える、という発想にそもそもならないのかもしれない。

仮にそうだとすると、調査を担当したオンブズマンが改善提案をすることは、前例踏襲をよしとしない組織内部の職員に対する精神的支援(理論的支援ならばさらによし)になり、市政改善の可能性を広げると当ブログ開設者は考えているのだが、残念ながら現在(過去においても)任用されているオンブズマンにはそうした発想が欠けているようである。

今回公開分の第2025-43号もそのような案件である。この案件では、自宅前の歩道が隆起したために補修を要請し、その際、家族が身体障がい者になり歩くこともままならないことを伝えたにもかかわらず、修復内容が依頼したとおりではなかったとして苦情が申し立てられた。

この案件における市の回答は、市が道路を補修する際の原理原則について説明している点で興味深いものの、当ブログ開設者は「身体障がい者がいることを理由に特別な対応はとれないことについてご理解いただけるようにお願いしました」という記述に驚いた(なお、このような説明は、補修工事後に申立人から再度の工事の要望を受けてなされたものである)。障害者差別解消法7条2項は行政機関に「合理的配慮」を義務づけているのではなかったか。上記の市の回答は、この規定の趣旨に抵触する疑いがあるのではなかろうか。

また、調査担当オンブズマン樋川恒一の判断においても「合理的配慮」についての言及はない。しかしながら、当ブログ開設者は、市としては実際の補修工事に先だち、どのような工事を行うかという説明を申立人に行うことが適切だったのではないかと考えている。もちろん、補修工事の内容が申立人の要望に沿ったものである必要はないにせよ、事前の説明は市にできる「配慮」であろうと考えている(ただし、こうした配慮が障害者差別解消法が規定する「合理的配慮」とイコールであるかは、別途検討する必要がある)。

次に紹介する2件(第2025-57号,第2025-60号)は、いずれも生活保護を受給する同一の申立人による苦情で、調査担当オンブズマンは神谷奈保子である。

ところで、この2件の案件には既視感がある。それは、苦情の内容が前回のエントリー(2025年9月に処理を終了した案件)で紹介した案件と重複しているからである。

まず、今回公開された第2025-57号は、担当ケースワーカーが申立人の同意を得ることなく申立人の個人情報を社会福祉協議会に提供したとして、担当ケースワーカーの対応についての苦情が申し立てられた案件である(苦情申立日は9月19日)。

これに対し、前回公開した第2025-56号では、社会福祉協議会の対応について苦情が申し立てられ、市の機関の業務ではないとして調査しない旨が通知された(苦情申立日は2025年9月19日)。

また、今回公開された第2025-60号は、入院・通院のために必要な交通費の支給を求めるとともに、担当ケースワーカー等の対応が保護受給者の尊厳を毀損するものであるとして苦情が申し立てられた案件である(苦情申立日は9月20日)。

これに対し、前回公開した第2025-59号では、保護課から提示された「食材支給」の内容が栄養バランスを欠き健康を害する恐れがあるとして苦情が申し立てられ(「不利益を受けているとはいえない」として調査しない旨が通知された。苦情申立日は9月19日)、同じく前回公開した第2025-61号では、「食材支給」で提示された内容では栄養が不足すること、さらに、担当ケースワーカーおよび係長の対応が保護受給者の尊厳を損なうものであるとして苦情が申し立てられている(食材支給は第2025-59号で調査しない旨、ケースワーカーの対応は第2025-60号で調査を行うとして調査しない旨が通知された。苦情申立日は9月21日)。

このように、同一の申立人から3日間にわたり、立て続けに5件の苦情が申し立てられたわけである。オンブズマンの取扱件数がかさ上げされ、活発な活動を行っていると対外的にアピールすることができるという点で、札幌市オンブズマン制度にとっては「超上客」であろう。

しかしながら、オンブズマンの対応が「超上客」へのおもてなしとして適切であったかどうかは、なお、検討の必要があると思われる。それは、この申立人が立て続けに苦情を申し立てたのは、苦情を申し立てることで、かえって自らの不安を募らせたのであろうと推測できるからである。

この5件の申立てに対し(ただし、この申立人はほかにも苦情を申し立てている可能性がある)は、オンブズマンは9月29日付で3件について「調査しない旨」を通知し、10月31日付で2件の「調査結果」を通知した。しかし、このような対応は、調査結果よりも調査しない旨の通知を受けた申立人が「自らがオンブズマンから拒絶された」という不安を募らせる要因となるのではなかろうか。

もちろん、こうした懸念は当ブログ開設者の杞憂かもしれないが、たとえ申立人を待たせたとしても、5件まとめて通知を発送したほうが、「超上客」への「おもてなし」として適切ではないかと感じている(「ブルシット・ジョブ」を増やさないための配慮の余地があるのではないか、という趣旨である)。

さて、それでは具体的に調査の内容を確認していこう。第2025-57号は、担当ケースワーカーが社会福祉協議会に個人情報を提供したという苦情であるが、事実の経緯としては、申立人からケースワーカーに社協に問い合わせをしてほしいという申し出があったということである。

この点、市の回答には、「氏名等の個人情報の提示を伴った問い合わせの場合などには、本人への再確認・・・など、徹底してまいります」という記述はあるものの、「ケースワーカーは、申立人から事前に社協に相談していることを聞き取っていた」のみで、社協に問い合わせる際に申立人の個人情報を提供することについて「再確認」した旨の記述はない。

また、調査担当オンブズマン神谷奈保子も、「相談者は、社協から保護受給者の場合はケースワーカーを通して相談するようにと言われた時点で、社協がケースワーカーを通して相談者の名前や最低限の現況を確認するものと想定できるのではないかと考えます。そのため、相談者が自分の担当ケースワーカーへ社協への連絡を依頼した時点で、同意がないとは言い切れないように思います」という見解を示している。

しかしながら、行政機関による個人情報の提供は、法令に基づく場合や利用目的の範囲内の提供であれば必ずしも本人同意を要しないものの、一般論としては本人の同意を得ることが原則である。また、オンブズマンによる「同意がないとは言い切れない」という判断も、いかにも粗雑であろう。

したがって、本件のように申立人からの依頼があったような場合においても、ケースワーカーは申立人に対し、①社協に対する問い合わせは一般論としての問い合わせか、それとも申立人の具体的な事情に基づく問い合わせか、②申立人の具体的な事情に基づく問い合わせの場合には、申立人の個人情報を社協に説明することは差し支えないか、確認するのが適切であったと当ブログ開設者は考えている。

次に、第2025-60号では、入院・通院のために必要な交通費の支給を求めるとともに、担当ケースワーカー等の対応が保護受給者の尊厳を毀損するものであるとして苦情が申し立てられた。

まず、市の回答によると、担当ケースワーカーは申立人が通院する際の交通費について「どうしても9月中の通院を希望するということであれば、売却などにより活用できる資産を確認し、交通費に充てようと考える必要がある旨を説明」するとともに、「この説明の際に、室内にあった申立人のパソコンやコーヒーメーカーなどを示し」たのだそうである。

その一方で、「現実的にはこれらの資産を今すぐ売却するなどの対応が難しいことは一定の理解ができることから、そこまで求めることはしないことを併せて伝えた」というのであるが、結局のところ、伝えるべきことは「早急な通院の必要性が確認できない現時点では、・・・通院移送費の支給の検討は難しい」ということだけだったと当ブログ開設者は考えている。

また、担当ケースワーカーならば、申立人が「仮定」の話を理解できるのか、考慮する必要があると思われる。そして、実際に資産を売却しても収入申告する必要があるのみならず、収入から交通費相当額が費用として控除されない限り交通費を捻出することはできないのである。したがって、「(資産を売却すること)までは求めることはしない」のであるならば、担当ケースワーカによる資産売却を検討する必要性の説明は不要であり、その説明は申立人が不満を募らせる効果しかなかったと思われる。

この点、調査担当オンブズマン神谷奈保子は、「申立人が『人権を軽視した発言だ』と感じたことは事実であり、発言の意図が正しく伝わっていなかったと思われ、残念に思います」という見解を示している。すなわち、資産を売却を例示したこと自体は問題視していないのであるが、オンブズマン判断としては不十分であると思われる。

ところで、この2件の調査担当オンブズマン神谷奈保子は、2024年度に、「アサーティブコミュニケーション」のスキルを持った市職員を育成する視点から、市職員の対人コミュニケーションの現状について、発意調査を実施している(第2024-発1号)。

この「アサーティブコミュニケーション」とは、調査担当オンブズマンに神谷奈保子によると「自己主張しながらも他人を尊重するコミュニケーション」である。そして、神谷奈保子はライフワークとして、アサーティブコミュニケーションの在り方を研究しているのだそうである。

そうであるならば、市職員が市民に対応する際にどのような点にコミュニケーションギャップがあるのか、さらに、そのギャップを埋めるためにはどのような工夫が考えられるのかなどなど、個別の調査案件において積極的に提案してもよさそうなものであるが、担当オンブズマン神谷奈保子は市の回答を鵜呑みにするだけであった。実に残念なことである。

最後に、苦情申立ての取り下げがされた案件である。このうち、第2025-64号は、「取下げの経緯」と題する文書に「申立て取り下げの意向」が記載されている一方で、第2025-68号についてはその旨の記載がない。申立人に「通知書」が発送されておらず、申立人の苦情申立てを取り下げる意向が文書に記載されていない案件において、「申立て」はどこへ行ったのであろうか。この点について、現在、オンブズマン事務局に照会中である。回答については、当ブログで紹介する予定である。

以上でこのエントリーを完結させるつもりであったが、今回公開された調査結果のうち、言及していないもう1件についてもふれることにする。webから図書館の図書を予約したにも関わらず、その図書が別の人物に貸し出しされてしまったという苦情である(第2025-49号)。

市の回答によると、webから予約を入れても、職員が当該図書を確保し「予約を確定」するまでは、貸出時に予約が入っていることがわからないのだそうである。おそらく、予約システムと貸出システムが連携していないということなのであろう。

しかし、「予約を確定」する前に実際に図書館を訪問して貸し出しを受けようとした者を優先するにしても、「確定前予約」の存在がわかれば、「貸し出しの延長はできません」という注意を喚起することができるし、延滞防止につながると思われた。

それにしても、「予約」後に職員が図書を確保する前に、別の人物がその図書の貸し出しを受けるとは。まるで「奇跡の瞬間」に立ち会ったような気分である。

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①第2025-43号
 自宅前の歩道が隆起したために補修を要請し、その際、家族が身体障がい者になり歩くこともままならないことを伝えたにも関わらず、修復内容が依頼したとおりではなかったとして苦情が申し立てられた(担当オンブズマン:樋川恒一)

②第2025-49号
 図書館蔵書予約・検索システムで検索した際には「貸出中」ではなかった図書を予約したにもかかわらず、当該図書が別の人物に貸し出されたとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:樋川恒一)

③第2025-57号
 生活保護を受給する申立人が、担当ケースワーカーが申立人の同意を得ることなく申立人の個人情報を社会福祉協議会に提供したことは不適切であるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

④第2025-60号
 生活保護を受給する申立人が、入院・通院のために必要な交通費の支給を求めるとともに、担当ケースワーカー等の対応が保護受給者の尊厳を毀損するものであるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑤第2025-63号
 申立人に関係する人物が緊急搬送されたことをきっかけに施設に入所し現在に至るが、当該施設職員の対応等に不満を抱いており、病院や施設を変えるように区役所職員に働きかけているものの、十分な対応がなされないとして苦情が申し立てられたケース。本件においては専門的知見に基づく対応がなされており、オンブズマンが調査・判断することは相当でないとして、「調査することが相当でない特別の事情」(札幌市オンブズマン条例16条2項)を理由に調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑥第2025-64号
 生活保護受給者の生活品の移送を請け負ったが、その対価がいまだに支払われていないとして苦情が申し立てられたケース。(保護受給者に対する)少額訴訟の利用手続き等について無料法律相談の利用を提案したところ、苦情申し立ての意向が取り下げられた。(担当オンブズマン:樋川恒一)

⑦第2025-68号
 市税事務所職員に高圧的な対応をされる一方で、後日、別の職員は穏やかで丁寧な口調で対応したことから、職員間の接遇の差が大きいので、適切な接遇がなされることを求めて苦情が申し立てられたケース。苦情内容及び申立人の要望を市税事務所に伝達する旨を申立人に伝達した(と文書に記載されるのみで、申立人の苦情申し立てを取り下げる意向を確認した旨は記載されていない)。(担当オンブズマン:樋川恒一)

2025/12/17

2025年9月に処理を終了した案件

 2025年10月1日、同年9月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、同年11月14日に一部公開決定がなされた。

上記の期間(2025年9月)に処理を完了したのは17件で、このうち5件で調査結果が通知された。また、残る12件のうち、8件については苦情について調査しない旨が通知され、4件については苦情申立てが取り下げられた。

今回公開を受けた案件も、調査担当オンブズマンの調査能力の貧弱さが目につく案件が散見される。そこで、以下では調査結果が通知された5件について、ごくごく簡単に指摘を行うことにする。

まずは、第2025-33号である。この案件は、生活保護受給者の親族が過支給になった保護費の返還を求められことを契機として苦情が申し立てられた案件である。

生活保護費が過支給になった場合、返還義務を負うのは被保護者であるところ(生活保護法63条参照)、この案件では当初、被保護者の財産管理を行っていた団体に対し返還決定通知書及び納入通知書が送付されている。

その後、当該団体から財産管理契約を解除したために納入通知書を申立人に送付してほしい旨の申し出がなされるに至った。当該団体がその旨の申し出をした理由は不明であるが、保護課は申立人と当該団体との間で「納入について話し合いがなされ、申立人も納入にご協力いただけることについて了承されたと考えた」ということである。

前述のように、保護費の返還義務を負うのはあくまで申立人であり、被保護者の親族である申立人が返還義務を負うわけではない。したがって、財産管理契約を締結していた団体からの申し出がなされただけで保護課が「申立人も納入にご協力いただけることについて了承されたと考えた」ことの当否こそが、この案件で問われる必要があったと当ブログ開設者は考えている(申立人が被保護者である親族の財産管理契約の当事者だったということであろうか)。

加えて、「申立人に対し納入通知書を送付するに当たり、保護課から申立人に対し、支払いは任意である旨の説明を行っておりませんでした」というのである。これらはすべて、「申立人も納入に協力してただけることについて了承された」という思い込み(あるいは、了承していないことをわかっていてあえて連絡しなかった)に由来すると思われる。

しかしながら、調査担当オンブズマン梶井祥子がこうした点について指摘することはなかった。保護課の言い訳がましい説明に「幻惑」されたのであろう。梶井祥子が制度を前提に市職員の対応の当否を論ずる力量を欠くことを示していると思われる。

続いて第2025-34号である。この案件では、申立人が相続した空き家を譲渡した際の譲渡所得から所得額の「特別控除」を受けるため「被相続人居住用家屋等確認申請」をしたが、申請確認ができないという説明を受けたとして苦情が申し立てられた。これに対する市の回答は、被相続人が当該家屋→施設B→施設Cと住所が移っているところ、施設Bが申請確認ができない施設である、というものである。

ところで、租税特別措置法は31条及び32条において、個人が所有する土地や建物を譲渡した場合の譲渡所得の税率についての特例を規定している。また、同法35条1項は、個人の有する資産である「居住用財産」を譲渡した場合の「特別控除」について規定している。

すなわち、個人が所有する土地や建物を譲渡した場合には税率の特例が適用されるほか(同法31条及び32条)、当該資産が「居住用財産」に該当するとともに譲渡所得が法の定める要件を満たす場合には、「特別控除」が受けられることになる(同法35条1項)。要するに、納税額がその分だけ減額されるのである。

また、この「居住用財産」には、譲渡所得を得た本人が居住していた場合だけでなく、被相続人が居住していた家屋等の場合にも、「被相続人居住用家屋」として相続または遺贈により取得した相続人が法の定める譲渡をしたときには同法35条1項が定める「特別控除」が受けられる(同条3項)。

そして、「被相続人居住用家屋」とは、「当該相続の開始の直前において当該相続又は遺贈に係る被相続人・・・の居住の用に供されていた家屋・・・で政令で定めるもの」であるが、相続の開始の直前において被相続人が居住していなくても、「居住の用に供することができない事由として政令で定める事由(以下・・・「特定事由」という)により当該相続の開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていなかつた場合・・・における当該特定事由により居住の用に供されなくなる直前の当該被相続人の居住の用・・・を含む」とされている(同条4項)。

つまり、「被相続人居住用家屋」の譲渡所得の特別控除を受けるためには、①「特定事由」により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていないという要件と、②「特定事由」により居住の用に供されなくなる直前の当該被相続人の当該被相続人居住の用に供されているという要件の2つの要件を満たす必要があるわけである。

そして、被相続人の施設への入所(入居)が「特定事由」に該当する施設については、租税特別措置法施行令23条8項が規定している。したがって、同項が規定していない施設への入居(入所)するために「居住用家屋」が被相続人の居住の用に供されなくなった場合や、被相続人が相続の開始の直前に同項が規定していない施設へ入居(入所)している場合には、特別控除の対象外になるのである。

この点、市の回答は、「特別控除の対象となる被相続人居住用家屋とは、被相続人が相続開始の直前まで居住していた家屋をいいますが、例外的に相続開始の直前に老人ホーム等に居住していた場合は、「居住の用に供することができない事由(特定事由)として対象となります(租税特別措置法第35条第5項)」という説明をする(※なお、同法35条5項は、現行の規定では同条「4項」になっている模様)。

しかしながら、この説明は「特定事由」が前述の二重の要件になっていることについての説明を欠いており、説明としては十分ではないと思われる(なお、同法35条4項は「特定事由により居住の用に供されなくなる直前の当該被相続人の居住の用」について「対象従前居住の用」という定義を与えている)。

すなわち、市の回答のいうように「相続開始の直前に老人ホーム等に居住していた」場合であっても、本件申立人のケースのように「被相続人居住用家屋」が「特定事由」によらずに居住の用に供されなくなった場合(同法施行令が規定しない施設への入所するために居住の用に供されなくなった場合)には特別控除の対象とはならないからである。

なお、本件の調査担当オンブズマン神谷奈保子は、市の回答を鵜吞みにするのみで前述の市の回答の問題点を指摘していない。オンブズマンの調査能力の貧弱さを示していると思われる。

次は、第2025-35号である。この案件は、生活保護受給者が担当職員から嫌味をいわれたとして苦情が申し立てられた案件である。担当職員が積極的に嫌味を言うとは考えにくいものの、相手方が発言をどのように受け止めるかは予想しにくいこともあり、人間関係の難しさを物語る苦情であると思われる。

ところで、本件苦情申し立てを受け、保護課は今後の対応として「申立人の同意を得た場合は、ICレコーダー等により面接内容を記録保存し、両者の認識に齟齬が生じた場合に相違点の解消を図ることとします」ということである。また、調査担当オンブズマンの梶井祥子も、録音記録を残すことに特に異を唱えていない。

しかしながら、このような対応には疑念を抱かざるを得ない。まず、録音記録を残すことは、「あなたの言葉は信用できない(から録音記録を残す)」と伝えることにほかならない。それで担当職員は生活保護受給者からの信頼を得ることができるのだろうか(すでに信頼回復は困難であると判断しているのかもしれない)。

また、録音記録を残した場合、後日、「あの時の録音記録を確認したい」といわれたときにどのような対応をするのであろうか(個人情報の開示請求の対象になることはいうまでもない)。担当職員のブルシット・ジョブを増やすだけの結果に終わるのではないかと思うのだが、調査担当オンブズマンの梶井祥子はこうした発想も欠くようである。

さらに、第2025-38号である。この案件は、生活保護法78条に基づく徴収金相当額を保護費から減額されている申立人が、保護申請時に提出した資産調査に関する同意書で同意した範囲を超える調査により不快感を抱いているとして苦情が申し立てられた案件である。

市の回答の要旨は、①本件における資産調査は同法29条に基づき実施しているのであり同意書は使用していない、②同意書は(資産調査時に)一部の金融機関から添付を求められているために要保護者に提出を求めている、③同法78条に基づく徴収をする場合には申立人が不快感を抱くとしても事実関係の確認や徴収に至る経緯の説明を(申立人に)しなければならない、というものである。

このような申立人の苦情と市の回答を前提に、調査担当オンブズマンの神谷奈保子は「申立人が当該同意書が本件調査の実施要件と考えておられるのだと推測」する。ただし、申立人がそのように考えるに至ったのは、市が申立人から同意書を取る際に「法に基づく調査権権限を行使する際に同意書の添付を求める金融機関がある」という説明をしていないためではないか、ということには思いが至らなかったようである。

また、当ブログ開設者は、保護の実施機関は同意書を添付せずとも調査に任意に協力するように金融機関を説得する職務上の責任を負うと考えるが、調査担当オンブズマンの神谷奈保子はこのような考えも抱かなかったようである。

なお、生活保護法は保護の実施機関の調査を妨げたり調査を忌避した場合の罰則を規定しているが(同法86条)、同法29条1項の調査については罰則の規定がない。一般論としては罰則が調査の実効性を担保すると考えられることからすると、保護の実施機関にとっては「泣きどころ」かもしれない。

また、被保護者の報告懈怠や調査への協力忌避についても罰則の規定はなく、保護の実施機関は保護の変更または停廃止ができるにとどまる(同法28条5項)。罰則の定めがあるのは「不実の申請その他不正な手段により保護を受け」ることである(同法85条1項)。

残るは第2025-45号である。この案件も生活保護受給者が申し立てた案件である。保護費過払いによる保護変更決定通知書が保護費支給日の前日に(郵便受けに?)投函されていたが、保護費の減額により急遽生活設計の変更を余儀なくされたため、こうしたケースは前もって連絡すべきであるとして苦情が申し立てられた(申立人は第2025-38号と同一かもしれない)。

市の回答は、保護変更決定通知書を7月28日に発送し、申立人宅にも支給日の前に到達しており市の業務に不備はない、というものである。しかしながら、行政処分の効力は処分が相手方に到達することである(最判昭29.8.24、最判平11.10.22)。郵便事情により支給日前に到達しなかった場合には、どのような扱いになるのであろうか(なお、生活保護は不服申立て前置主義をとるが(生活保護法69条)、審査請求の除斥期間の起算点は「処分があったことを知った日の翌日」である(行政不服審査法18条1項))。

また、市の回答は、7月18日に申立人の8月分の保護費の変更処理を行ったこと及び同月28日に委託業者から保護変更決定通知書が納品されたことについての言及はあるものの、業者に委託した日時についての言及はない。したがって、業者への委託を前倒しにすることで通知書の発送も前倒しにできる可能性がある。

この点、調査担当オンブズマンの神谷奈保子は、申立人が生活保護法61条の届出義務を怠ったという市の回答を鵜呑みにして、「本人が予期しない内容の変更通知が届いたとしても、オンブズマンは市の業務に不備があるとは言えません」と判断した。どうやら、市(の保護課)が内部で変更決定をした時点と通知書が申立人に到達した時点のタイムラグは、調査担当オンブズマンの神谷奈保子の眼中にないようである。

なお、当ブログ開設者は、この案件は行政処分の効力発生時期という法的観点からは問題がないとしても、申立人の生活を適切に支援するというケースワークの観点からは改善の余地があると考えている(そしておそらく、通知書の発送を支給日直前にしているのは、いったん決定された支給額を変更すべき事由が発生した場合に直近の支給に反映させる必要性を考慮してのことと思われる)。

以上、今回公開決定された案件のうち、調査結果が通知された案件についてごくごく簡単に指摘した。それ以外の調査結果が通知されなかった案件については、申立ての取り下げがなされた案件において、「申立人の苦情申し立てを取り下げる意図を確認した」旨が記録文書に記載がない事例があることを指摘しておきたい(第2025-53号第2025-54号第2025-55号)。オンブズマンは申立人の意思確認をせずに苦情申し立てが取り下げられたという扱いをしたということだろうか(この点、札幌市オンブズマン条例は、オンブズマンが苦情調査をしない場合には、理由を付してその旨を申立人に通知することを規定している(同条例17条1項)こともあわせて指摘しておく)。

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①第2025-33号
 生活保護受給者の親族である申立人が過支給となった保護費の返還を保護課から求められるだけでなく、納付機関を銀行から郵便局へ変更することを保護課が承諾していたにもかかわらず郵便局では使えない納付書を送付してくるなど、保護課の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

②第2025-34号
 相続した空き家を売却した際の譲渡所得について特別控除を受けるために「被相続人居住用家屋等確認申請」をしたところ、担当課から申請確認できない旨の連絡を受けたとに納得がいかないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

③第2025-35号
 生活保護受給者が、担当職員との会話の中で「立派な考えのことで」とイヤミを言われたとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

④第2025-38号
 生活保護法78条に基づく徴収金相当額を保護費から減額されている申立人が、保護申請時に提出した資産調査に関する同意書で同意した範囲を超える調査により不快感を抱いているとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑤第2025-44号
 過支給となった保護費の返還を口座引き落としにしてほしい旨を主張したものの、担当職員が聞き入れることはなかったとして苦情が申し立てられたケース。申立人がすでに別件で同趣旨の苦情を申し立てているとして、調査しない旨が通知された。なお、当該別件はおそらく第2025-33号。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑥第2025-45号
 保護費過払いによる保護変更決定通知書が保護費支給日の前日に投函されていたが、減額により急遽生活設計の変更を余儀なくされたことから、こうしたケースは前もって連絡すべきであるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑦第2025-46号
 申立人の部下が札幌市保健所に免許取得の申請をしたにもかかわらず、保健所が厚生労働省に届け出をしていなかったとしてが苦情を申し立てられたケース。本件においてた直接の利害があるのは申立人の部下であるとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑧第2025-47号
 生活保護を受給していた申立人が就労開始後3か月で保護を廃止され、再申請する際にも不快な思いをしたとして苦情が申し立てられたケース。本件保護課の対応についてはすでにオンブズマンが調査を実施している(第2024-30号)として調査しない旨が通知された。なお、保護の再申請についても、すでに1年以上経過しているため調査対象とならないことを当然の前提としている模様である。(担当オンブズマン:樋川恒一)

⑨第2025-48号
 札幌市が職員に対し実施する「ストレスチェック」が業務仕様書に記載された内容を履行できない業者が選定されとして、選定されたなかった業者の利害関係人から苦情が申し立てられたケース。本件事業(ストレスチェック)の履行状況や利便性について申立人には利害がないとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑩第2025-52号
 第2025-48号の苦情申し立てに対しオンブズマンは「申立人には利害がない」旨の判断をしたが、(市職員のストレスチェックを行う業務において)不適切な業者が選定されたことにより選定されたなかった業者の協力会社である申立人は仕事を失ったのであり「利害」があるとして、調査を実施するよう求めて苦情が申し立てられたケース。本件苦情はオンブズマンの調査しないという判断に対する苦情申し立てであることを前提に、「オンブズマンの行為」はオンブズマンの所轄外の事項であるとして調査しない旨が通知された(のであると当ブログ開設者は理解した)。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑪第2025-53号
 申立人の自宅裏で行われている杭打ち工事により自宅の土地の土砂が崩れているため施工業者に連絡を入れているがなしのつぶてで、監督や発注者も不明であり、この場合どうしたらよいか「苦情」が申し立てられたケース。オンブズマンの調査対象ではないと思われることを説明し、相談先として市の対象部署や民間窓口を案内した模様(公開された文書に申立人の苦情申立てを取り下げる意思を確認した旨の記載はない)(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑫第2025-54号
 保護受給者の現状と今後について担当課に電話相談した際の職員の対応があまりにひどいとして苦情が申し立てられたケース。申立人に対し苦情の内容及び改善要望事項を保健福祉部に伝達する旨メールで報告した模様(公開された文書に申立人の苦情申立てを取り下げる意思を確認した旨の記載はない)。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑬第2025-55号
 札幌スポーツ協会から配布されたパンプレットに「熱中病予防のための教室」が休講された場合の連絡の案内が記載されていたが、その際の連絡方法に不備があるとして苦情が申し立てられたケース。申立人宛にオンブズマン事務局から担当課あてに意見を回送し、担当課から申立人にあてに連絡するよう依頼する対応とすることを申立人から了承を得た模様(公開された文書に申立人の苦情申立てを取り下げる意思を確認した旨の記載はない)(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑭第2025-56号
 生活保護を受給する申立人が社会福祉協議会に緊急援護資金の制度概要を聞きに行った際、相談開始から制度説明に入るまでに時間がかかったのは担当ケースワーカーから説明を控えるように社会福祉協議会に申し入れをしていたためではないかとして苦情が申し立てられたケース。本件苦情は社会福祉協議会における対応についてのものであり、オンブズマンの所轄外の事項であるとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑮第2025-59号
 生活保護を受給する申立人が、保護課から提示された「食材支給」の内容が栄養バランスを欠き健康を害する恐れがあるとして苦情が申し立てられたケース。申立人は所持する食材を自ら調理することができる状況にあり、保護課から提示された「食材」の支給も辞退しているとして、「市の業務の執行により不利益を受けていると捉えることはできない」として調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑯第2025-61号
 生活保護受給者が、「食材支給」で提示された内容では栄養が不足すること、さらに、担当ケースワーカーおよび係長の対応が保護受給者の尊厳を損なうものであるとして苦情が申し立てられたケース。食材支給については第2025-59号で調査しない旨が通知され、担当ケースワーカーおよび係長の対応については第2025-60号で調査を行うとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

⑰第2025-62号
 車いすで地下鉄を利用する際、開閉する扉の方向が乗車駅と降車駅で異なる場合は車内で180℃方向を変更する必要があるにも関わらず、乗車直後に安全に方向を変更するには停車時間が短いとして苦情が申し立てられたケース。本件苦情の内容と改善要望を交通局高速電車部に伝える旨を申立人に連絡するとともに、同部から文書回答がもらえるのであれば苦情申立てを取り下げる旨の申立人の意向が確認されている。(担当オンブズマン:樋川恒一)