2022/05/14

オンブズマン調査の分野別分類(2021年度終了分・全件)

このブログでは、読者の利便性を高めるべく、過去の各年度に調査を終了した案件について、大まかな行政区分後のエントリーを作成してきた(平成28年度平成29年度平成30年度2019年度及び2020年度)。それにならい、2021年度も、オンブズマン調査を大まかな行政分野ごとに区分することにした。 

 とはいえ、分類は必ずしも厳格なものではなく、あくまで便宜的なものである。また、従来は職員対応に関する苦情という項目を設けてきたが、今回は、独自にこの項目を設ける必要なしと判断した。また、区分が困難な案件は、「その他の苦情」という項目に掲載する扱いは従来と同様である。

 なお、各案件番号には、pdfファイルへのリンクが張り付けてある。より詳しい内容が知りたい場合には、pdfファイルを開いて確認していただきたい。 

 この1年は、新型コロナから市民の生活全般が復調傾向にあるのか、苦情申立件数は前年よりも増加傾向にある。しかしながら、1か月間しかなかった制度発足初年度をのぞき、札幌市オンブズマン制度史上はじめて、2021年度にはオンブズマンの自己の発意による調査が実施されていない。

これは、オンブズマン事務局の説明によると、コロナ対応への負担が増しているなか、調査対象部局への負担増を考慮したということである。しかし、調査対象部局の事情を忖度するオンブズマンのこうした対応は、将来へ向けて、オンブズマンの「やる気」に疑念を生じさせるという禍根を残す可能性がある。

<苦情分野の一覧>
◎市税に関する苦情
◎国民健康保険・介護保険等に関する苦情
 〇国民健康保険関連
 〇介護保険関連
 〇後期高齢者医療関連
◎社会福祉に関する苦情
 〇高齢者福祉関連
 〇障がい者福祉関連
 〇児童福祉関連
◎生活保護に関する苦情
 〇受給者からの苦情
 〇第三者からの苦情
◎幼稚園・学校教育に関する苦情
◎社会教育施設・イベントに関する苦情
◎体育施設・イベントに関する苦情
◎その他の施設・財産管理に関する苦情
◎保健・衛生に関する苦情
◎消防・救急に関する苦情
◎除雪・道路管理等に関する苦情
◎戸籍・住民票・印鑑登録等関する苦情
◎都市・環境問題に関する苦情
◎市民生活に関する苦情
◎まちづくり・市民参加に関する苦情
◎情報公開・個人情報保護に関する苦情
◎市営住宅に関する苦情
◎経済施策に関する苦情
◎病院事業に関する苦情
◎選挙事務に関する苦情
◎その他の苦情

<苦情分野別の案件一覧>
◎市税に関する苦情
 飲食店を経営する企業が、道及び市が飲食店に時短要請をする一方で、市民税を滞納しているとして差押通知書を送付してくることは理不尽であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 差押通知書が送付されてきたため、再度納付書を送付するよう求めたところ、送付を求めた納期分とは異なる納期の納付書が送られてきたことや、対応した職員間で引継ぎが十分認されていない等の一連の職員の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 住民税課税に際して過誤が補正されたこと伴い、国民健康保険及び介護保険の保険料も補正されたが、納付ずみの納期分の保険料は補正前の金額を納付したために過払いになっているとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎国民健康保険・介護保険等に関する苦情
〇国民健康保険関連
 滞納していた国民健康保険の保険料について、就職したことにより毎月の賃金から天引きされると思っていたが、その後、滞納分の保険料について一括納付を求められたことを契機として、滞納分の取扱いについて職員から適切な説明がなされたなかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。その後、申立人の苦情取り下げにより、調査は中止されている。(担当オンブズマン:田村智幸)
 滞納している国民健康保険の保険料を一括で納付するように納付催告書が届いたが、①就職により国保を脱退した際に滞納分の保険料の取扱いについての説明がなかったこと(申立人は健保の保険料と合算して賃金から控除されると誤認していた)、②納付催告書が送付されるまで滞納についての知らせがなかったこと、③市が取得した申立人の財産データが削除されないこと、④保険料の延滞金についての説明がなかったことについて、苦情が申し立てられたケース。なお、この苦情は、第2021-88号の申立てが取り下げられた後、改めて申し立てられた案件と思われる。(担当オンブズマン:田村智幸)
 国民健康保険の保険料を過払いしたが返還されなかったり、返還されるにしても返還まで時間がかかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
〇介護保険関連
 介護保険から住宅改修費が支給されないことのほか、どのような場合に支給されないかについてケアマネから事前に説明を受けなかったことや市の担当部局の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 介護保険を利用して住宅改修を行った際、工事を実施した事業者が住宅の一部を損傷させ、その修理に費用がかかったことから、修理費用の全額を弁償してほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
〇後期高齢者医療関連
 日本年金機構から送付された年金振込通知書に記載された後期高齢者医療保険料の特別徴収額と、札幌市から通知された後期高齢者医療保険料の特別徴収額に違いがあることや、同一年度の各期で特別徴収される保険料額に差があることに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎社会福祉に関する苦情
〇高齢者福祉関連
 長年介護してきた夫が退院した後の入院先を教えてもらえないとして、苦情が申し立てられたケース。夫の退院後の処遇については高齢者介護の専門家の知見に基づいて決定されたと思われ、オンブズマンが調査・判断をすることは適当でないとして、「調査することが相当でない特別の事情がある」(札幌市オンブズマン条例16条2項)として、調査が実施されなかったケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
〇障がい者福祉関連
 障がいのある娘が短期入所を利用するに際し、利用日数や利用の仕方等について聴き取りが行われないまま利用量が決定されたことをはじめとして、職員の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 札幌市が独自に実施しているパーソナルアシスタンス制度において、障がい者のヘルパーとして仕事をしているが、契約先の障がい者から不当な取り扱いをされているとして、制度を利用する際のルールの確立を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 申立人は、自らが利用する就労継続支援A型事業所が適切ではない行為をしているとして、指導権限のある市の担当部局に相談したが、その際の職員の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 親が通所する就労支援事業所に子も通うことの希望して区の保健福祉課を訪問したものの、その際の説明や手続き時時間がかかること等を不服として苦情が申し立てられたケース。この苦情が申立人自身のが当事者でないこと等から調査対象とならない可能性が高い旨を説明したところ、申し立てが取り下げられ調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)
 自立支援医療の指定医療機関による診療報酬の取扱いが適正ではないとして市の担当部局に対応を求めているにもかかわらず、指定医療機関に対し適切な権限行使がなされていないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 有料道路障害者割引の適用を受けるために必要な車載器番号が変更されたにもかかわらず、割引申請の更新の都度、市の担当者が旧番号を申請書類に記載したために長らく割引を受けてこられなかったとして、この間の経緯の説明を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 特別障害者手当の返還を求められたが、当初の返還額から返還額が減額されるならば初めから減額後の金額の返還を求めるべきであるし、支給開始から2年間は何も連絡がなかったのに今になって返還を求めることにも納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 通所している作業所の職員が申立人にとって知られたくない個人情報を当該作業所を訪問した申立人の友人に漏洩したことについて、市の障がい福祉課による当該作業所に対する指導が不十分であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
〇児童福祉関連
 札幌市の保育所等の利用調整基準が、国の通知に「基づいたうえで」制定されるという説明のうち、「基づいたうえで」の具体的に意味するところの説明を求めて苦情が申し立てられたケース。調査しない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 かつて札幌市に居住していたが現在は市外に転居した申立人が、申立人の子について札幌市の児童相談所がケース移管しないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 児童手当の支給申請の期限について説明がなかったにもかかわらず、申請が期限に遅れたことを理由に10月分の児童手当が支給されなかったとして、苦情が申し立てられたケース。苦情申立ての取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 シルバー人材センターの派遣事業として児童館に派遣された申立人が館長からパワハラを受け、そのことについて市の担当課に対処を求めたにもかかわらず、引き続き就労できるよう働きかける等の十分な対応がなされないとして、苦情が申し立てられたケース。その後、申立人による苦情申立ての取り下げにより、調査は中止されている。(担当オンブズマン:原俊彦)
 申立人の息子が通うデイサービスの事業者に対し指導を行うよう市に求めた際、対応した職員の対応が高圧的であったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎生活保護に関する苦情
〇受給者からの苦情
 生活保護受給者が、振込から手渡しになった生活保護費の支払いを再度振込にすることを求めるとともに、職員の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 生活保護の受給者から、転居費用、職業訓練校への交通費及び同校へ通学することで支給される給付金に関する説明等、市職員の一連の対応について苦情が申し立てられたケース(担当オンブズマン:原俊彦)
 生活保護の受給者が、ケースワーカーによる家庭訪問がない理由についての市の説明が矛盾していること等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 生活保護受給者が、課長からひどい対応を受けたとして部長への電話の取り次ぎを求めても十分な対応がなされない等、市職員の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 生活保護受給者が、ケースワーカーが交代した理由について問い合わせても適切な回答がなされない等、保護課の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 生活保護の受給者が、担当ケースワーカーが交代すると聞いて新担当ケースワーカーに電話したが、その際の対応に納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。オンブズマンとの面談を希望していたが、体調が回復しないとして、いったん苦情申し立てが取り下げられた。(担当オンブズマン:田村智幸)
 生活保護受給者が、年金が減額されたことにともない保護費が増額されたにもかかわらず保護変更決定通知書が送付されていないこと及び担当ケースワーカーによる家庭訪問が適切に実施されていないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 生活保護受給者が通所していた就労継続支援B型の事業所から支給される工賃に未払いの残額があったことが判明した後、収入申告がなされないまま保護費から控除されたことや、事業所から工賃についての説明がなされなかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 生活保護の受給者が、保護課への相談回数が多いことを理由として相談回数が制限されたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 生活保護受給者が、保護費返還決定書が届いたものの、自分だけが返還を求められることに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 生活保護の受給者が、住環境が悪いため転居したいが転居費用が支給されないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 生活保護受給者が、市営住宅の駐車場を解約した際の還付金、子どもが部活動で使用する物品の購入代金、過去に保護を受給していた際の過払い金の返還、交通事故の事故報告書の提出等、担当ケースワーカーの対応がきついとして、ケースワーカーの交代を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 生活保護受給者が、療養上の理由による転居について保護費の支給が受けられることになったが、保護費の支給日が実際の転居手続に間に合わないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 生活保護の受給者が、通院のための自動車の利用を認めないという判断およびそのことに伴う市職員の一連の対応に納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 生活保護受給者が、担当ケースワーカーが保護停止の事例を挙げて不安をあおる等の対応をすることが不満であり、担当者の交代を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 生活保護受給者が、障害者手帳が郵送されたために適切な障害者加算が受けられなかったとして、苦情が申し立てられたケース。調査開始後申し立てが取り下げられたため、調査中止が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 保護課の担当者が訪問日を一方的に決めて変更予定を聞き入れず、その際、ケースワーカー以外の職員まで入室してきたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人が申し立てを取り下げたため、調査は実施されなかった。(担当オンブズマン:田村智幸)
 生活保護の受給者が自動車使用禁止の指示書の交付を受けたことや、職員が対応した際の発言内容等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 通院時のタクシー代の支給が1週間単位の事後支給であることについて生活保護受給者からの苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
〇第三者からの苦情
 生活保護受給者から委任を受けて市に対応を求めているにもかかわらず、市は文書、メール以外では対応をしないと主張することをはじめとする、市職員の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 死亡した生活保護受給者が入居していたアパートの大家が、保護課が受給者に対する支援が不十分だったこと及び受給者が滞納していた家賃の支払いを求めて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 賃貸不動産の管理をしている会社が、当該会社の管理物件に入居する生活保護受給者の部屋の明け渡しや家賃の未納に関し保護課に対応を依頼しても十分な対応がなされないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 生活保護を受給する伯母が入院した際、その旨を担当ケースワーカーに連絡したところ、伯母が死亡した場合の対応について問い合わせを受けたが、こうした問い合わせは配慮に欠けるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 生活保護を受給していた叔母が交通事故に遭ったが、加害者が加入していた保険会社から保険金が支払われるまで生活保護の支給が継続したことについて、高額な治療費が税金が財源の生活保護費から支払われてよいものか真実が知りたいとして、苦情が申し立てられたケース。申立の原因となった事実から1年以上の期間が経過しているとして、調査しない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)
 申立人の兄が生活保護を不正に受給している旨を再三保護課に知らせているにもかかわらず、兄に対する生活保護が支給され続けたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人の兄に対する生活保護支給について申立人には利害がないとして、調査しない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)

◎幼稚園・学校教育に関する苦情
 市立小学校に導入された見守りシステムの監視カメラによる撮影は、通学する子どもの個人情報保護に欠けるとともに肖像権を侵害しているとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 教育委員会の職員から送付されてきたメールの内容に虚偽がある等、教育委員会職員の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 オンブズマンによる苦情調査(第2021-15号)において、市教育委員会が札幌市の小学校で防犯カメラの運用を取りやめるという回答をして以後の対応について、苦情が申し立てられたケース。苦情申立ての内容が申立人に直接的・具体的な利害関係がないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)
 申立人の中学生の息子に対するスクールカウンセラー、校長及び児童相談所の対応に不満があるため、オンブズマンの調査で息子の気持ちを明らかにしてほしいとして苦情が申し立てられたケース。苦情申立ての取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)

◎社会教育施設・イベントに関する苦情
 芸術の森の木工房をグループで利用する際に危険な行為があったとして、後日、代表者に対する注意がなされたが、注意をするのであればその場で行うべきであるし、安全管理は施設の側の責任であり利用者に責任を負わせるのは適切ではないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

◎体育施設・イベントに関する苦情
 体育館で開催された〇〇教室が新型コロナ感染拡大により、全6回のうち2回を実施したのみで中止されたが、残り4回の受講料は返金されることになったものの道具のレンタル料が返金されないことは納得いかないとして、苦情が申し立てられたケース。苦情申立後、返金されることになったとして、申し立ての取り下げにより調査は終了している。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎その他の施設・財産管理に関する苦情
 バレーボール大会を開催するために地区センターを予約していたが、新型コロナ感染拡大のため大会を中止し地区センターのキャンセルしたところ、キャンセル料がかかることになったことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 マンションに隣接する市の管理地の土圧により、マンションのブロック塀にひびが入ったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 市の雨水貯留池に投雪する市民がいるために市の担当課に対応を求めているが十分な対応がなされないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 市の指定管理施設で嘱託職員として勤務していた申立人は他の職員から嫌がらせを受けてきたところ、指定管理施設の職場環境が劣悪なことについて、市が指定管理者に対する指導を行うなど適切な対応をとることを求め、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎保健・衛生に関する苦情
 事業者である申立人の施設に保健所が2度にわたり立ち入り調査を実施したことについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 新型コロナワクチンの接種券を申し込んだにもかかわらず届かないため、再三にわたり問い合わせをしたにもかかわらず、未だに届いていないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

◎消防・救急に関する苦情
 自宅に隣接する建物の消防法令違反について、消防局に対応を求めているにもかかわらず、違反状態が是正されないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 申立人の娘が救急搬送を依頼した際の搬送先病院の選定に疑問があるとして、苦情が申し立てられたケース(娘は搬送先で受診した当日に帰宅したが、その翌々日に死亡した模様)。衣裳機関選定の適否判断には高度の専門的知見を要するとして、「調査することが相当でない特別の事情があるとき」に該当するとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)

◎除雪・道路管理等に関する苦情
 パートナーシップ除雪の際の誘導が適切ではなかったこと及びその件についての問い合わせを2週間以上放置されたことについて、苦情が申してられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 自宅前の除雪について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 狸小路3丁目の歩行者専用道路にコンテナが2基設置されているが、通行に支障があるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 自宅前の道路で拡幅工事が開始されて以来、車両騒音及び振とう(音)が増したとして、対策を講じることを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 道路工事や維持管理作業を受託している(と思われる)事業者から、市の担当課の職員の発言をはじめとする一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。苦情申し立ての取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:原俊彦)
 パートナーシップ除雪制度による除雪作業は危険であり、無駄な制度であるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 マンション出入り口前に設置されていたカーブミラーが撤去されたことにつき、納得のいく説明をしてほしいとして苦情が申し立てられたケース。苦情申立ての取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)
 まとまった降雪直後ではなく、しばらく時間がたってから不要を除雪を行ったために自宅前に雪塊が山積みになったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 自宅マンション前の除雪がなされた後、1階居室の窓が雪で埋まり換気ができなくなったため市に排雪を求めたが対応されず、その後の一連の対応にも問題があるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 今年は降雪が多いが、市は「捨て場所がない」、「トラックが足りない」等の理由で除排雪が十分なされていないために生活に支障が生じているとして、自衛隊に災害派遣を要請し、除排雪を進めてはどうかという申立てがなされたケース。オンブズマンによる調査を要望するものではないとして、申立ての取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)

◎戸籍・住民票・印鑑登録等に関する苦情
 新たに戸籍を作成した際に名前の漢字を間違えられたが、2年ほど前に札幌市に転入した際には住民票の住所の表記を間違えられたこともあることから、入力ミスが発生した原因の説明と、再発防止を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 戸籍訂正の手続きについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 申立人に無断で印鑑登録証が偽造されるという犯罪について、犯罪に加担した区役所の責任を札幌市オンブズマンが追及してほしいとして、苦情が申し立てられたケース。印鑑登録がなされたのが1年以上前の出来事であるとして、調査しない旨が通知され調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 マイナンバーカードコールセンターに健康保険証としての利用について問い合わせたが、説明内容が高齢者に対する配慮が欠けているとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

◎都市・環境問題に関する苦情
 産業廃棄物処分業の許可に関する北海道の対応について、苦情が申し立てられたケース。「市の機関の業務の執行」に該当しないとして、調査しない旨が通知されている。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 申立人が居住する地区で始まった宅地造成工事が市の許可の対象ではないということであるが、今後、雨水処理や冬季の除雪等で問題で生じる不安があるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 歩行中にカラスに襲われ負傷したことから市に駆除を求めたにもかかわらず、市が駆除しないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 違法建築物が長年にわたり放置されている件で、市に対応の方針についての回答を求め、苦情が申し立てられたケース。過去に同趣旨の苦情が申し立てられているところ、オンブズマンの行為はオンブズマンの所轄外であるとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)
 事業から発生する生ごみを清掃工場に搬入する際、ダンプ式の軽トラックをダンプさせず(ここでいう「ダンプ」とは荷台を傾けるという趣旨だと思われる)、手でごみを投入するという取り扱いについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 市が行った違法建築物の調査について、調査結果及び調査内容について報告してほしいとして、苦情が申し立てられたケース。苦情について調査しない旨が通知され、調査は終了しているた。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎市民生活に関する苦情
 インターネットを通じた取り引きから生じた「消費者トラブル」について、市の消費者センター及び市の担当部局の対応が適切ではなかったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 2018年の北海道胆振東部地震の際、家屋が一次調査で「一部損壊」と判定されたことにその際は納得したが、改めて二次調査の実施を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎まちづくり・市民参加に関する苦情
 NPO法人が法人事務所の住所変更を市に届け出ようとした際の職員の対応について、苦情が申し立てられたケース。申し立ての取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:原俊彦)
 NPO法人が市の担当課からかどの圧迫、行政指導を受けたとして苦情が申し立てられたケース。当該法人の代理人を称する者が申立書が提出されたが、法人の苦情申立ての意思が確認できないとしてい、オンブズマンは「取り扱いを中止」した。(担当オンブズマン:原俊彦)
 北海道新幹線のトンネル工事により発生する汚染土の処理について、市が実施した地域住民に対する住民説明会では対象とする地域が狭すぎるとして、地域を拡大して住民説明会を実施することを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 NPO法人が市の担当課から過度な圧迫、行政指導を受けたことから、NPO法人の理事長や職員が体調を害したとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 市民動物園会議の市民委員に応募したが応募結果の連絡がなく、その旨問い合わせたところ応募を受け付けていないという回答を受けた申立人が、現行の書類の郵送及び持参という応募方法の改善を求め、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 市が道路の拡幅を検討するに際し、地域住民の意向を無視したまま計画が進められているとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 さる団体が発行する広報誌について、市の経済観光局が印刷・発送にかかる経費を負担しているところ、内容に問題がある広報紙が発行されたことについて市の対応が十分ではなかったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 さる団体が発行する広報誌において名誉を傷つける内容が記載されたにもかかわらず、当該広報誌の発行に関与する市の経済観光局の対応が十分ではないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

◎情報公開・個人情報保護に関する苦情
・第2021-24号(訂正前訂正後
 札幌市オンブズマンが実施した調査に関する文書の公文書公開請求において、公開対象公文書に漏れがあったことから、漏れが生じた理由の説明と、再発防止を求めて苦情が申し立てられた例。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 札幌市オンブズマンが実施した調査に関する文書の公文書公開請求において、公開対象公文書に漏れがあったことから、漏れが生じた理由の説明と、再発防止を求めて苦情が申し立てられた例。第2021-24号の苦情等調査結果通知書が訂正されたことにより、本件苦情が第2021-24号と同一の苦情であるとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)
 金融機関、警察、裁判所等が、申立人個人に関する事項について、申立人の承諾もなく取り扱っているとして、苦情が申し立てられたケース。苦情申し立て内容がオンブズマンの所轄事項に該当しないとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸) 

◎市営住宅に関する苦情
 市営住宅の入居者が、連日怒鳴り声が聞こえるとして相談していることについて、管理人、住宅管理公社及び市の担当課の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 所有するアパートが隣接する市営住宅の長期にわたる工事により外壁の損傷被害を受けたとして、苦情が申し立てられたケース。建築や工事に関する専門的知識を有しないオンブズマンが工事の影響の有無について判断を述べることは適当ではなく、「調査することが相当でない特別の事情があると認めるとき」に該当するとして、調査しない旨が通知されている。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 市営住宅の入居に当選したが、民生委員からの圧力で辞退に追いやられたとして苦情が申し立てられたケース。申し立てられた事実が1年以上前のことであり、調査しないという結論になる可能性が高い旨を説明したところ、申立てが取り下げられたため調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 2年ほど前に市営住宅の自治会が管理する駐車場の防犯灯などを自治会負担でLED電球に変更し、現在もリース料を払っているところ、最近になって、市が防犯灯のポールを交換するということであったことから、交換したLED電球を引き続き使用することや、対応した職員の対応等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 市営住宅の駐車場で隣のスペースに駐車する車の駐車位置を改善することを求め、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 札幌市の市営住宅の通年募集について、電子申請を可能にすること等を求めて苦情が申し立てられたケース。札幌市外に居住し、市営住宅への入居希望者でもない申立人は「申立の原因となった事実について利害を有さない」として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

◎経済施策に関する苦情
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う飲食店への営業時間の短縮要請を受け、第五次対策協力支援金の申請をしようとしたものの、申請期限を過ぎているとして申請を受け付けてもらえなかったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 コンサートの実施に当たり、札幌市文化芸術活動再開支援事業の支援金を申請し、いったんは交付決定通知を受けたが、コンサート実施後に他の助成金を受給していることを理由として支援金が支給されなかったことについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎病院事業に関する苦情
 申立人の妻が市立病院で出産したところ、申立人のみならず、出産した妻も出産した子に会えずにいるところ、納得のいく説明をお願いしても全く返事がないとして、苦情が申し立てられたケース。「感染対策の当否が判断できない」ために調査することが適当でない特別の事情があるとして、調査しない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)
 市立札幌病院で妻が出産したが、新型コロナ感染症対策を理由として生まれた子どもへの面会が制限されているとして、苦情が申し立てられたケース。調査することが相当でない特別の事情がある等を理由として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)

◎選挙事務に関する苦情
 投票事務の不採用通知を受けたが、欠員が生じた場合の追加募集について問い合わせた際の職員の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 衆議院議員選挙の期日前投票の際にヘルパーとして同伴したが、家族ではないことを理由として投票所への入場を断られたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

◎その他の苦情
 札幌市が現業職の採用に際し、試験により採用された者に特定の企業の4名が含まれていた結果、当該企業は事業の遂行に支障が生じたことから、今後、職員を採用する際には、特定の企業の事業の遂行に支障が生じないような対策と配慮をお願いしたいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
 札幌市オンブズマンに苦情を申し立てようとする際、市職員が申立てに介入してくるためにオンブズマン制度の中立性が確保されていないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
 札幌市オンブズマンに苦情を申し立てた際、オンブズマンと面談したいと要望したにもかかわらずオンブズマン事務局の職員により面談希望を拒否されたことから、面談が実施されないまま苦情等調査結果通知書(第2021-35号)が送られてきたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 2022年2月末をもって1期目の任期を満了するオンブズマンについて2期目の任用予定の有無を照会したところ、任用予定をブラックボックス化した回答しかなされなかったとして、手続きをブラックボックス化する理由の説明を求めて苦情が申し立てられたケース。苦情について調査しない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
 2022年2月末で任期を満了するオンブズマンについて、2期目の任用予定の存否及び委嘱過程をブラックボックス化する理由の説明を求めて苦情が申し立てられたケース。苦情について調査しない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)

2022/04/28

2022年3月に調査を終了したケース

 2022年4月1日、同年3月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、2022年4月15日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年3月)に調査を終了したのは12件で、このうち10件で調査結果が通知されている。また、残る2件のうち1件は調査をしない旨が通知され、1件は申立人の取り下げによる調査中止により、調査は実施されなかった。

さて、今回交付分の案件で最も興味深いのは、札幌市の指定管理施設の元職員が、当該施設においてハラスメント受けていたことを市に訴えても十分な対応がなされなかった、という苦情が申し立てられた第2021-106号である。

この案件において特に興味深いのは、以下の2点である。第1の点が、指定管理者に対する市の権限についての市の回答の内容であり、第2の点が、調査担当の原俊彦オンブズマンによる判断の視点の狭隘さである。

まず、第1の点である。市の回答によると、地方自治法244条の2第10項は、地方公共団体の長又は委員会による、指定管理者の「管理の業務」についての調査・報告・指示の権限を規定している。また、当該指定管理者における「管理業務仕様書」には、「労働関係法令の順守」が規定されている、ということである。

このことを前提に、市は申立人からのハラスメントの申出を受け、当該指定管理者に対し、ハラスメントの事実関係及び関係法令及び就業規則等に基づいた対応ができているかについて、調査・報告を行うよう指示している。これは要するに、札幌市は、指定管理者の内部的な労務管理も、当該指定管理者の「管理の業務」として、市の調査等の権限行使の対象になると考えているということである。

この点、今回の苦情の事実関係からすると、ハラスメントの時点における当該指定管理者は、未だ労働施策総合推進法が定める事業主の「措置義務」は適用となっていない模様である(中小事業主については2022年4月1日から適用)。しかしながら、市は当該指定管理者に対し、同法が規定する「措置義務」の内容に準じた調査を実施しており、このような市の対応は、かなり積極的なものであると評価することが可能であろう。

その一方で、労働関係の専門機関ではない市にとっては、法令違反について公表がなされたような事例であればともかく(たとえば、労働施策総合推進法33条2項参照)、「労働関係法令の遵守」についての判断は、困難が伴うと予想される。

で、あるならば、仕様書記載の「労働関係法理の順守」とは、指定管理者が使用者として法令遵守の義務を負う当然のことを記載したに過ぎず、将来的に市が指定管理者を選定する際、「労働関係法令の順守」の状況が考慮要素の一つとなるに過ぎない、と位置づけるのが適切という評価も可能であると思われる。

また、「指定管理者による管理を継続することが適当でないと認めるとき」には、指定の取り消しや、業務の全部または一部の停止を命じる権限も規定されているものの(地方自治法244条の2第11項)、労働関係法令の順守の状況を理由としてこれらの処分がなされるのは、よほど悪質なケースに限定されるであろう。

そして、このような理解をするならば、今回の申立人のようなケースでは、市の対応としては、指定管理者に対する調査権限を行使するよりも(※調査を実施してはいけないという趣旨ではない)、申立人に対し、労働関係法令に基づく権限を有する機関についての情報提供を行うことで当該機関への対応を促す、あるいは、個別的な労使紛争の解決機関についての情報提供を行い、労働契約の一方当事者である申立人の次の行動を促すことが、「法令順守」の実効性を高めるとともに、申立人のニーズにも沿った対応になると思われる。

続いて、第2の点である。まず、原俊彦オンブズマンは、「市は、独自の責任において事実調査を行い、必要に応じて指定管理者」を指導すべきであると述べる。その上で、「本件調査のポイントは、市が指定管理者に対して法令などの規定に従って適切に対応したかどうかにある」と論ずる。この見解によれば、「法令などの規定に従って適切に対応したか」が問われるのは「指定管理者」ではなく、「市」であることになる(※市の調査権限が適切に行使されたかを問う趣旨に読めるが、オンブズマンがどこまで自覚的であるかは不明)。そのためであろうか、指定管理者が順守すべき「労働関係法令」については、全く引用・参照されていない。

また、原俊彦オンブズマンの判断は、当該指定管理者が本件の申立人の「使用者」として労働関係法規に基づく責任を負う主体であることや、当該法令を遵守させるためのメカニズム、さらには、個別労働者が利用可能な紛争処理システムといった、諸々のしくみに対する視点が一切欠けている。おそらく、今回のようなケースにおいて、申立人が市に対応を求めるのはスジがあまりよろしくない、という問題意識も希薄なのだと思われる。

結局、原俊彦オンブズマンは、「申立人が訴えている窮状は労働関係法令の順守や雇用環境の維持向上に関わることであり、さらにもう一歩踏み込んだ、秘匿性を考慮した工夫のある調査や指示を検討し実施する余地はあった」と判断するものの、このような判断は、本件において指定管理者が順守すべき労働関係法令が具体的に何を指すのかが不明であるばかりか、指定管理者が労働関係法令を遵守することについて、市に過大な期待を寄せる無いものねだりであると、いわざるを得ないであろう。

以上が今回公開された案件のうち、最も興味深い事案についての当ブログ開設者の考えるところであるが、原俊彦オンブズマンが調査を担当した案件としては、雨水貯留池への投雪に関する苦情が申し立てられた第2021-96号の判断において言及している内容も、その妥当性は疑わしい。

すなわち、原俊彦オンブズマンは、「安全管理上、許可されるかどうかはわかりませんが」という留保の下、雨水貯留池を児童公園などと同様に周辺住宅の雪捨て場とする可能性について言及する。

しかしながら、こうした言及をするならば、本件調査において安全管理上の問題についても市に説明を求めた上で行うか、別途、オンブズマンが自己の発意による調査を実施すべきであろう。こうしたオンブズマンの要望は、調査対象部局に対する不意打ち以外の何物でもないと思われる。

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①第2021-83号
 保護課の担当者が訪問日を一方的に決めて変更予定を聞き入れず、その際、ケースワーカー以外の職員まで入室してきたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人が申し立てを取り下げたため、調査は実施されなかった。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2021-94号
 国民健康保険の保険料を過払いしたが返還されなかったり、返還されるにしても返還まで時間がかかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

③第2021-95号
 自宅マンション前の除雪がなされた後、1階居室の窓が雪で埋まり換気ができなくなったため市に排雪を求めたが対応されず、その後の一連の対応にも問題があるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

④第2021-96号
 市の雨水貯留池に投雪する市民がいるために市の担当課に対応を求めているが十分な対応がなされないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑤第2021-97号
 生活保護の受給者が自動車使用禁止の指示書の交付を受けたことや、職員が対応した際の発言内容等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑥第2021-100号
 通院時のタクシー代の支給が1週間単位の事後支給であることについて生活保護受給者からの苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑦第2021-101号
 通所している作業所の職員が申立人にとって知られたくない個人情報を当該作業所を訪問した申立人の友人に漏洩したことについて、市の障がい福祉課による当該作業所に対する指導が不十分であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑧第2021-102号
 さる団体が発行する広報誌について、市の経済観光局が印刷・発送にかかる経費を負担しているところ、内容に問題がある広報紙が発行されたことについて市の対応が十分ではなかったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑨第2021-103号
 さる団体が発行する広報誌において名誉を傷つける内容が記載されたにもかかわらず、当該広報誌の発行に関与する市の経済観光局の対応が十分ではないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

➉第2021-106号
 市の指定管理施設で嘱託職員として勤務していた申立人は他の職員から嫌がらせを受けてきたところ、指定管理施設の職場環境が劣悪なことについて、市が指定管理者に対する指導を行うなど適切な対応をとることを求め、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

第2021-107号
 申立人の息子が通うデイサービスの事業者に対し指導を行うよう市に求めた際、対応した職員の対応が高圧的であったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑫第2021-109号
 札幌市の市営住宅の通年募集について、電子申請を可能にすること等を求めて苦情が申し立てられたケース。札幌市外に居住し、市営住宅への入居希望者でもない申立人は「申立の原因となった事実について利害を有さない」として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

2022/03/17

2022年2月に調査を終了したケース

 2022年3月1日、同年2月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、2022年3月14日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年2月)に調査を終了したのは7件で、このうち5件で調査結果が通知されている。また、残る2件のうち1件は調査をしない旨が通知され、1件は申立人の取り下げによる調査中止により、調査が終了している。

さて、当ブログ開設者は、長引くコロナ禍の影響なのか、札幌市職員の士気が全体的に低下傾向にあるという印象を抱いている(今回公開分では、第2021-84号における提出書類の記載内容の見落としや、第2021-89号における情報の保存年限に関する説明の誤りがその典型例)。ただし、これはあくまで、当ブログ開設者の印象論である。

そんな中、市の回答において、新型コロナ感染症対策として業務を縮小した旨、言及する事例が現れた。国保料を延滞した市民が申し立てた、第2021-89号の案件がそれである。すなわち、この案件の市の回答では、新型コロナ対策として、感染拡大防止及び保健所応援業務のため、滞納整理業務を縮小した旨の説明がなされている。こうした事情は、職員の士気に大きく影響するであろう。

ところで、この案件の申立人は、「滞納した国保料は、新たな就職先で健保の保険料と合算して賃金から控除されていると誤解した」旨の主張をしている。そもそも、申立人のこうした誤解がなければ、国保料の滞納を解消すべく分割納付が継続されていたと思われるものの、この点はさておき、滞納整理業務の縮小がなければ、適時に納付督促を受けた申立人が国保料の滞納を早期に解消し、その結果として、延滞金が発生しない、あるいはより少額で済んだ可能性があると思われる。

また、申立人は郵送で国保の脱退手続きを行っているが、直接窓口を訪れていれば、①国保の被保険者資格を喪失しても、滞納している保険料の納付義務は引き続き残ること、②滞納している国保料の納付方法はこれまで同様であること、③国保料を滞納していると延滞金が発生する(場合がある)こと等の説明を受けていた可能性がある(窓口職員を過大評価しているであろうか?)。そして、こうした説明を受けていれば、申立人が上記のような「誤解」をすることは避けられたのであり、当ブログ開設者は、郵送で国保の脱退手続きした場合の市の対応には、なお工夫の余地があると考えている(申立人に対しては、「資格喪失についての文書」が送付された模様であるが、文書の記載内容の詳細は不明)。

以上の次第で、この案件の申立人は、新型コロナの感染拡大という「不運」に直面するとともに、市の対応にも工夫の余地があるのではないか、という2点について、この事例に特有の事情があったと思われる。しかしながら、調査担当のオンブズマンによる判断は、指摘内容に具体性を欠き、抽象論に傾いたきらいがある。これもまた、新型コロナ感染拡大による(オンブズマン自身の)士気低下の影響なのかもしれない。

このほか、第2021-91号では、オンブズマンが「専門的知見」を欠くことを理由として、「調査することが相当でない特別の事情がある」として調査しない旨が通知されている。しかしながら、当ブログ開設者は、あくまで一般論としてではあるが、こうした理由により調査しないという結論を導くことには疑問を抱いている。

ただし、この案件では、申立人がすでに市から受けた説明内容を確認した上で上記の結論を導いている。そのため、こうした具体的事情の下にあっては、同じオンブズマンが担当した第2021-72号にくらべると、結論が正当化される余地はあるかもしれない。

【追記】(2022.3.28)
第2021-89号の不明点を解消すべく、市の保健福祉局保健医療部保険企画課に問い合わせたところ、以下の趣旨の回答を得たので追記する(趣旨を明確にするため、適宜、当ブログ開設者が補足・修正している)。

①郵送で国保の脱退手続きをとった申立人に送付した「資格喪失についての文書」には、「国保の資格を喪失しても、滞納保険料がある場合には、引き続き当該保険料の納付義務は残る」といった説明の記載はなされていない。今後、今回の苦情が申し立てられた区では、同文書に「加入期間中の保険料についてご不明な点はお問い合わせください。」という文言を新たに付け加える。

②区役所窓口で国民健康保険の脱退手続きを行った場合、滞納保険料の有無を確認し、一括での納付が困難なときは、納付相談の窓口に引き継ぐことにしている。

③令和2年12月22日付けの通知では、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う保健所等への応援業務のため、各区の裁量で催告業務を休止できることとしている。したがって、通常の状況であれば、納付催告書をより早期に発送していた。

以上の次第で、国保の脱退手続きを郵送で行うのと窓口で行う場合では対応に差があり(①②)、新型コロナの感染拡大がなければ、より早期に納付催告書を送付していた(③)、ということである。やはり、申立人には「不運」な側面があったわけである。

なお、「資格喪失についての文書」に付け加える説明は、申立人のような「誤解」を避けるには必ずしも十分ではないと思われるものの、詳しい説明はかえって読む者の理解を妨げることもある。今後、必要に応じて、適宜、改善を図ることを期待したい。

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①第2021-82号
 事業から発生する生ごみを清掃工場に搬入する際、ダンプ式の軽トラックをダンプさせず(ここでいう「ダンプ」とは荷台を傾けるという趣旨だと思われる)、手でごみを投入するという取り扱いについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

②第2021-84号
 特別障害者手当の返還を求められたが、当初の返還額から返還額が減額されるならば初めから減額後の金額の返還を求めるべきであるし、支給開始から2年間は何も連絡がなかったのに今になって返還を求めることにも納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

③第2021-86号
 まとまった降雪直後ではなく、しばらく時間がたってから不要を除雪を行ったために自宅前に雪塊が山積みになったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

④第2021-89号
 滞納している国民健康保険の保険料を一括で納付するように納付催告書が届いたが、①就職により国保を脱退した際に滞納分の保険料の取扱いについての説明がなかったこと(申立人は健保の保険料と合算して賃金から控除されると誤認していた)、②納付催告書が送付されるまで滞納についての知らせがなかったこと、③市が取得した申立人の財産データが削除されないこと、④保険料の延滞金についての説明がなかったことについて、苦情が申し立てられたケース。なお、この苦情は、第2021-88号の申立てが取り下げられた後、改めて申し立てられた案件と思われる。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑤第2021-90号
 市が道路の拡幅を検討するに際し、地域住民の意向を無視したまま計画が進められているとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑥第2021-91号
 申立人の娘が救急搬送を依頼した際の搬送先病院の選定に疑問があるとして、苦情が申し立てられたケース(娘は搬送先で受診した当日に帰宅したが、その翌々日に死亡した模様)。医療機関選定の適否判断には高度の専門的知見を要するとして、「調査することが相当でない特別の事情があるとき」に該当するとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑦第2021-105号
 今年は降雪が多いが、市は「捨て場所がない」、「トラックが足りない」等の理由で除排雪が十分なされていないために生活に支障が生じているとして、自衛隊に災害派遣を要請し、除排雪を進めてはどうかという申立てがなされたケース。オンブズマンによる調査を要望するものではないとして、申立ての取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)

2022/02/21

オンブズマン再任(2022年)

2022年2月21日、以下の議案が札幌市議会に提出され、同日、議会の同意を得た。これにより、原俊彦氏(大学名誉教授)がオンブズマンとして2期目の委嘱がなされ(任期は2024年2月29日まで)、2022年3月1日以降も引き続き1年間、八木橋真紀子氏(オンブズマン2期目2年目・民事調停委員)、田村智幸氏(オンブズマン1期目2年目・弁護士)と3名の体制で、札幌市オンブズマンの職務が遂行される。


ところで、当ブログ開設者は、原俊彦氏のオンブズマン1期目の「功績」は、オンブズマンは安易に調査に着手せず、市民自ら対応できることは自ら行動するという、市民の自律性・主体性の確立を促す一方で、満足に文章を書くこともままならない市民の苦情(※1)については、オンブズマンが調査を実施して手厚く支援するという、新たな札幌市オンブズマン像を打ち出した点にあると考えている。


また、原俊彦氏が調査を実施した案件についても、判断が明らかに間違っていたり、見当が外れている案件が数多ある。そのため、原俊彦氏にオンブズマンを委嘱するのが適切か疑問なしとしないものの(※2)、結果として、市民に対し、安易にオンブズマンを頼ることなく、市民自らの主体的な行動を促すことにつながっている可能性がある。

さらに、市民にとっては、原俊彦氏が何を理解していないかを探求することによって、制度への理解を深めることが期待できるとともに、調査対象となる市の担当部局にとっても、原俊彦氏にも理解できるような説明を心がけることは、市民一般に向けた説明能力の向上をもたらすことが期待できる。

このように、原俊彦氏のオンブズマン1期目の「功績」は、満足な調査をすることままならぬ人物(※3)がオンブズマンに委嘱されると、かえって、市民の主体的な行動を促すのみならず、市民が制度への理解を深めたり、市の担当部局が市民に向けた説明を改善する等の効果をもたらす可能性が浮き彫りになったことである。

もっとも、このような原俊彦氏の「功績」は、オンブズマンに期待される役割が適切に果たされた成果といえるのかということや、原俊彦氏の「功績」が支払われたオンブズマン報酬・月額55万円×24か月の総額1,320万円(税引前)に釣り合っているかについては、別途検討の必要性がある。ただし、他の人物にオンブズマンに委嘱していたならばより多くの成果がえられたという保障はなく、市民としては、札幌市が上記の額を負担することについては、甘受せざるをえないように思われる。

当ブログ開設者はこれまで、原俊彦氏を”眠れるオンブズマン”と呼んできた。オンブズマン2期目の原俊彦氏が、これまで同様に眠り続けたとしても、そのことで市民や市の担当部局への効果が期待できるならば、(やむを得ないが)それでよし。三年寝太郎よろしく突然目覚めるや否や、市民のための力仕事に尽力するならば、それもまたよし、である。オンブズマン原俊彦氏の2期目から、目を離すことができない。

(※1)
「文章を書くこともままならない市民」というのは、2020年7月28日に当ブログ開設者が苦情申立てのためオンブズマンと面談した際(その案件が、第2020-20号である)、担当の原俊彦オンブズマンが行った発言である。曰く、「オンブズマンとは、ろくに文章を書くこともままならない市民が利用する制度」であるそうだ。
 ただし、後日オンブズマン事務局に照会した回答によると、「そのような発言をした事実は確認できなかった」との由。原俊彦オンブズマンが自己の発言を記憶する能力を欠くか、適切さを欠く発言であることがあまりにも明らかであるため、発言した事実を否定せざるを得なかったかのいずれかであろう。

(※2)
各月の公開分を紹介する際、原俊彦氏の担当案件を含めて、各案件の看過できない問題点を指摘してきた。このほか、原俊彦氏のオンブズマンとしての適格性については、第2021-87号及び第2021-92号の「苦情申立ての趣旨」も参照されたい。

(※3)「満足な調査をすることままならぬ人物」とは、いうまでもないことだが、「文章を書くこともままならない市民」という原俊彦氏の発言に対する当てこすりである。こうしたオンブズマンでも適切な調査が実施できるように、場合によっては、苦情申立人自らオンブズマンに対し、噛んで含めるような説明をすることが必要かもしれない。

2022/02/19

2022年1月に調査を終了したケース

 2022年2月1日、同年1月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、2022年2月14日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年1月)に調査を終了したのは9件で、このうち4件で調査結果が通知されている。また、残る5件のうち3件は調査をしない旨が通知され、2件は申立人の取り下げによる調査中止により、調査が終了している。

さて、今回の公開された案件のうち、最も興味深いのは、札幌市文化芸術活動再開支援事業の支援金についての苦情(第2021-75号)である。事業の詳細は、札幌市の担当部局(市民文化局文化部文化振興課)のサイト及び同事業の事務局のサイトで確認して頂くとして、
札幌市がこのような「文化芸術活動の復興」を目的とする事業を実施していることに驚いた。

ところで、この案件では、支援金の交付決定通知を受けているにもかかわらず、事後的に決定が誤りであったとして、支援金が支給されなかったことについて苦情が申し立てられた。その後、オンブズマンによる調査の過程で、支援金の支払いがなされるに至っており、その限りでは、めでたし、めでたしである。

しかしながら、この調査では、①支援金の支払い先が実演や展示のイベントが開催される施設であること(したがって、本件の苦情申立てを行ったのはイベントの主催者であると思われるが、支援金の直接の支払先ではない)、②申請から支払いに至るプロセスが、申請→支援金交付決定→イベント終了後の実績報告→支援金の支払い、となること、③イベントの主催者が手続きを行う相手方は施設であること、④施設が市(実際は委託先の事務局)に申請を行うとともに、前述したように支援金の支払い先となること等、支援金支払いの制度枠組みについての説明が必ずしも十分ではない。

そのためでもあるのか、オンブズマン判断は、支援金交付決定が適切になされたかについて論ずる一方で、いったん交付決定を行った支援金を事後的に支給しないことの当否については、全く論じられていない。すなわち、交付決定に問題があったとしても、そのことが直ちに交付決定後の支援金不支給を正当化することにはならない、という視点が完全に欠落しているということである。

つまり、交付決定後に交付金を支給しないならば、交付決定自体を取り消したり、実績報告後になされる実際の交付金の支給額を0円として決定する等、次のステップの手続きが必要になるはずである。したがって、この案件では、すでに交付決定がなされている以上、もともとの交付決定が適切でなかったとすれば、その後始末をどのようにつけるのが適切であるかが論じられる必要がある。この点が論じられてはじめて、将来的な改善策として、そもそもの交付決定が適切になされるための方策が論じられるべきであろう。

もっとも、この案件を担当したのは、原俊彦オンブズマンである。今回紹介する別件の苦情(いずれも当ブログ開設者が申し立てた案件)、第2021-87号及び第2021-92号では、いずれも具体的なオンブズマン名は記されていないものの、原俊彦オンブズマンがいかにオンブズマンとしての適格性を欠くのか、申立人の主張が苦情申立ての趣旨において滾々と繰り広げられている。この第2021-75号も、オンブズマンとしての適格性に疑問を抱かせるエピソードの一つに位置づけることができるもしれない.

このほか、第2021-92号における「調査しない」という判断の理由づけが適切ではない旨、このエントリーで論じている。あわせて参照していただけると幸いである。

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①第2021-73号
 生活保護の受給者が、通院のための自動車の利用を認めないという判断およびそのことに伴う市職員の一連の対応に納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

②第2021-75号
 コンサートの実施に当たり、札幌市文化芸術活動再開支援事業の支援金を申請し、いったんは交付決定通知を受けたが、コンサート実施後に他の助成金を受給していることを理由として支援金が支給されなかったことについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2021-76号
 生活保護受給者が、担当ケースワーカーが保護停止の事例を挙げて不安をあおる等の対応をすることが不満であり、担当者の交代を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

④第2021-78号
 有料道路障害者割引の適用を受けるために必要な車載器番号が変更されたにもかかわらず、割引申請の更新の都度、市の担当者が旧番号を申請書類に記載したために長らく割引を受けてこられなかったとして、この間の経緯の説明を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑤第2021-80号
 シルバー人材センターの派遣事業として児童館に派遣された申立人が館長からパワハラを受け、そのことについて市の担当課に対処を求めたにもかかわらず、引き続き就労できるよう働きかける等の十分な対応がなされないとして、苦情が申し立てられたケース。その後、申立人による苦情申立ての取り下げにより、調査は中止されている。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑥第2021-87号
 2022年2月末をもって1期目の任期を満了するオンブズマンについて2期目の任用予定の有無を照会したところ、任用予定をブラックボックス化した回答しかなされなかったとして、手続きをブラックボックス化する理由の説明を求めて苦情が申し立てられたケース。苦情について調査しない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑦第2021-88号
 滞納していた国民健康保険の保険料について、就職したことにより毎月の賃金から天引きされると思っていたが、その後、滞納分の保険料について一括納付を求められたことを契機として、滞納分の取扱いについて職員から適切な説明がなされたなかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。その後、申立人の苦情取り下げにより、調査は中止されている。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑧第2021-92号
 2022年2月末で任期を満了するオンブズマンについて、2期目の任用予定の存否及び委嘱過程をブラックボックス化する理由の説明を求めて苦情が申し立てられたケース。苦情について調査しない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑨第2021-93号
 市が行った違法建築物の調査について、調査結果及び調査内容について報告してほしいとして、苦情が申し立てられたケース。苦情について調査しない旨が通知され、調査は終了しているた。(担当オンブズマン:原俊彦)