2020年9月1日、同年8月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、同年9月30日に一部公開決定がなされた(通常、公文書公開請求がなされた場合、請求の翌日から起算して14日以内に決定がなされるところ、今回も決定期間が延長された)。
上記の期間(2020年8月)に調査を終了したのは8件で、このうち7件で調査結果が通知されている。また、残る1件は調査しない旨が通知され、調査が終了している。
すなわち、札幌市オンブズマン条例は、苦情申立人が「申立ての原因となった事実についての利害を有しないとき」には、調査対象外の事項となることを規定している(同条例16条1項1号)ところ、
第2020-31号では、市税の減免申請がすでに決定ずみであり、「利害を有しない」として、原俊彦オンブズマンはこの点の調査を実施しなかった。
しかしながら、申立人は、「当初、4か月程度かかる」という説明を受けていたにもかかわらず、1か月以内に決定がなされた「理由」についての説明を求めているのであり、適切な説明を受けるという意味での「利害」は、未だ有していると思われる。したがって、原俊彦オンブズマンは、「利害を有しないとき」の該当性をかなり広範に認めることで、調査対象を厳格に絞り込む判断を行ったことになる。
その一方で、
第2020-29号は、芸術の森の駐車場の駐車料金を支払わずに利用している者がいるため、利用料金を支払った者が「不利益」を被ったという苦情について、原俊彦オンブズマンは調査を実施した。
この点、駐車場を利用しているからには駐車料金を支払うことは当然の義務であり、このことは、他に料金を支払わない者がいたからといって、変わることはない。したがって、厳格に考えるならば、ある者が駐車場料金を支払わないとしても、そのことについて、他の利用者は「利害を有しない」ことになるように思われるが、原俊彦オンブズマンは、この案件では「利害を有しないとき」の該当性を絞り込み、調査対象を広範に認め、調査を実施したわけである。
このように、原俊彦オンブズマンの判断は、オンブズマン調査の対象外事項該当性の広狭をめぐって「ゆらぎ」があり、整合性を欠くように思われる。
なお、当ブログ開設者は、オンブズマン制度の役割の一つに、市民が「適切な説明を受ける利益」を実現することがあると考えており、前述のどちらの案件も、調査を実施しない積極的な理由はないと考えている。
また、札幌市オンブズマン制度の発足に際し、当時の桂信雄市長は、オンブズマン制度の運用について、「苦情申し立てに当たっての制約につきましても、市民の権利利益を擁護するというオンブズマン制度の目的に照らして、できる限り広く取り扱うことにしたい」という議会答弁を行っていたことも指摘しておこう(平成12年第4回定例会-12月5日-02号)。
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①第2020−18号
生活保護の受給者から、保護費の支給額の計算方法の説明や、提出するコピーの金銭負担の大きさ、自動車の利用が認められないこと等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
②第2020−21号
生活保護の受給者が、転居した実態がないにもかかわらず、転居に要した費用が一時扶助として支給されたことが不正受給に該当するのではないかとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
③第2020−22号
国民健康保険の医療費の返還について、担当した職員からいい加減な説明を受けたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
④第2020−23号
生活保護の受給者が、再度の転居費用及び転居後に上限額を超える家賃の支給を求めるほか、保護課の職員による個人情報の漏洩があったことをはじめとして市職員の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
⑤第2020−24号
父親が入居していた市営住宅の家賃について、減免の遡及適用を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
⑥第2020-25号 里親に出している娘に関する児童相談所職員の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
全文参照
⑦第2020−29号
札幌市芸術の村の駐車場の駐車料金を支払わずに利用している者がいるため、きちんと支払っているものが不利益を受けたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
⑧第2020−31号
札幌市税の減免申請が却下されたことにつき、市民に公開されていない「事務取扱要領」に基づいていること、また、当初は「結果が出るまで4か月程度かかる」という説明だったのが、実際は1か月程度で決定が出されたとして、苦情が申し立てられたケース。すでに却下決定が出ているために、「申立の原因となった事実に利害を有さない」として、調査しない旨が通知されている。(担当オンブズマン:原俊彦)