これにより、2025年3月1日以降は、2024年3月1日に就任したオンブズマン1期目の梶井祥子氏(大学教授)とあわせ、3名体制で札幌市オンブズマンの職務が遂行されることになる。
ところで、樋川氏は北海道労働委員会公益委員を務めていた経歴がある。「不当労働行為」の審査をするのが労働委員会の役割の一つであるところ、使用者の正当な理由のない団体交渉拒否は「不当労働行為」である。その際、適切な説明を行わない「不誠実交渉」もそれに当たるとされている。
こうした制度において委員を務めていた樋川氏の経歴からすると、オンブズマンの職務を遂行するうえで、「市民が適切な説明を受ける利益」について意を配ることができるのではないかと、当ブログ開設者は期待する。
なお、上記の「市民が適切な説明を受ける利益」とは、適切なタイミングに適切な内容の説明を受けることであると当ブログ開設者は考えている。また、内容の適切さについては、その取扱がどのような法的根拠に基づいているのか(「法律(条例)に基づく行政の原理」)、さらに、その取扱が他の事例と比較しておかしな点はないか(「法の下の平等(憲法14条)」)という観点からチェックしてこそ、法律専門家たる弁護士の肩書を持つオンブズマンの面目躍如と考えている。
この点、前任の田村智幸氏は弁護士としての強みを発揮することができなかったきらいがあるかもしれない。たとえば、児童扶養手当の支払が一時差しとめされたことに対する苦情(第2023-6号)において、「別生計であることを確認する前に職権で直ちに支給停止できることについては、明確な法令上の根拠や規定を見出すことはできませんでした」として、法的根拠を明らかにすることをしなかった。
しかしながら、児童扶養手当法15条は届出義務懈怠時の手当の支払の一時差しとめを規定する。田村智幸氏は、「オンブズマンとしては、職権で直ちに支給停止できることについて、法令上の根拠に基づいて行われていることの説明を得たかった」という泣き言もこぼしているが、このような対応は、「法令に精通しなければならない」(弁護士法2条参照)はずの弁護士の法律専門家としての信用や品位を毀損する(弁護士法56条1項参照)おそれがあると当ブログ開設者は考えている。
もっとも、前々任の房川樹芳氏も、市が管理する街路灯の安全対策についての発意調査(第2020-発1号)では、参照条文等に「法令」を示していない。したがって、弁護士の肩書を有するオンブズマンのうち、田村智幸氏だけがことさらに法令上の根拠を明示していない、というわけではないことは指摘しておくべきであろう。樋川氏が同じ轍を踏まないことを望む次第である。
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