2025/03/27

このブログの読み方

札幌市オンブズマンによる調査内容を紹介するこのブログ、平成28年(2016年)4月以降に調査を終了した案件を紹介しているが、本ブログの開設者としては、このような作業には、主として以下の3つの意義があると考えている。

(1)オンブズマン「活動状況報告書」に掲載されない案件を紹介する
(2)オンブズマン「活動状況報告書」に掲載されない「市の回答」部分を紹介する
(3)「活動状況報告書」が発行されるよりも早くオンブズマン調査の内容を紹介する

以上を目的として、各月ごとに、調査を終了した案件を紹介するエントリーを作成してきた(なお、ブログ開設の意図については、「札幌市オンブズマン観察記はじめます」において、より詳しく説明している)。

しかしながら、このような紹介方法ではインデックス機能が弱く、同種の内容の苦情調査であっても、その終了月が異なる場合には両者を比較するのは困難であった。そこで、各年度に終了した調査を分野別に分類するエントリーを作成したものの、こうしたエントリーもまた、各月ごとのエントリーに埋没することが懸念されるところである。

以上のことから、このエントリーでは、これまで作成したエントリーを類型別に整理することで、読者の利便性を高めることを試みる。

各リンク先では、苦情の概要を紹介し、調査結果通知書等の全文のpdfファイルのリンクを張り付けてある。また、各月ごとに調査を終了した案件を紹介するエントリーにおいては、調査結果通知書等の1枚目の画像データも掲載してある。

読者諸氏においては、本ブログで紹介するデータを通じ、札幌市オンブズマンの活動状況を「観察」していただきたい。

〇オンブズマン調査の分野別分類
 平成29年度(2017年度)終了分
 平成28年度(2016年度)終了分

〇オンブズマン調査の調査終了時期別リスト
・2024年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月、2月、3月
・2023年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2022年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2021年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2020年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2019年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・平成30年度(2018年度)
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・平成29年度(2017年度)
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・平成28年度(2016年度)
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月

〇オンブズマン調査の処理日数の状況

 ・年度別
  2022年度まで(最新版)

2025/03/26

2025年1月に処理を完了した案件

 2025年2月1日、同年1月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、同年3月19日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2025年1月)に処理を完了したのは7件で、このうち3件で調査結果が通知された。残る4件のうち1件の苦情は取下げ、2件が調査しない旨、1件が調査中止が通知され処理を完了した。

なお、今回公開分から、「調査終了」の文言は調査結果を通知した場合に限定し、申し立ての取り下げ等「調査終了」以外の場合を含めて「処理を完了」の文言を用いることにする。

さて、今回公開された案件は、なんとも「ねちっこい」申立人の苦情が複数あり興味深い。まず、第2024-74号は予約図書の取り置き期限の延長を求めての「3度目」の苦情申し立てである。第2024-75号は町内会における助成金の不正を主張するおそらく「2度目」の苦情申し立てである。どちらもあまり後味はよろしくない。

また、第2024-61号は学校で使用する教材(おそらく情報通信端末)に不具合が生じたことに端を発する苦情である。そもそもの発端から1年以上学校とのやり取りを経たうえで、ようやく苦情申し立てに至っている。

この事案、非公開とされた箇所が多く、どのようなやりとりがなされたのか不明な点が多いものの、「学校のメールアドレスを教えほしい」という申立人の要望に対し、「文字ではなく、直接の口頭のやり取りにより保護者の考えていることや抱いている気持ちをより感じて理解できると考えている」という学校サイドの説明が興味深い。

おそらく、メールの場合は一方的に送信することが可能であり、アドレスを公開することでその対応に追われるのを避けたいというのが学校サイドの本音であろう。苦し紛れにも見える「慎重な説明」は、過剰に申立人を刺激しないように配慮したものと思われる。ただし、そうした配慮が奏功したかは不明である。

ところで、札幌市では国の「GIGAスクール構想」の下、小学校・中学校では1人1台の情報端末が貸与されている模様である(くわしくはここ)。これに対し、札幌市立の高校では2022年4月から端末の「購入」が求められているようである。

この点、自前の端末が利用可能であれば新規に端末を購入するための金銭負担が不要になる一方で、その場合には端末を接続する技術的仕様が問題になる、ということが本件苦情により可視化されたと思われる。今回の苦情を契機として、保護者等に対しこれらの事情についての適切な説明がなされることを期待する。

【おしらせ】
当ブログではこれまで、毎月1日に前月に処理を完了した案件について公文書公開請求をしてきたところ、当ブログ解説者の過誤により2025年2月に処理を完了した案件については、同年3月25日付の請求となった。そのため、当ブログにおけるそれらの案件の紹介は5月半ば以降になると思われる。この点、お詫びするとともに読者諸賢にはご了解いただきたい。

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①第2024-61号
 申立人の子が通う学校で使用する教材(情報通信端末と思われる)に不具合が生じたところ、特定の業者からの購入を強要する等、学校及び教育委員会の対応に問題があるとして苦情が申し立てられた事例。(担当オンブズマン:神谷菜保子)

②第2024-64号
 給湯ボイラーの減圧弁が不調になった原因が水道工事が行われた際の断水が原因であると思われるため水道局に減圧弁の交換を要請したが、水道局が交換に応じないとして苦情が申し立てられた事例。(担当オンブズマン:神谷奈保子)

③第2024-66号
 申立人は生活保護を受給する親族に所有する住宅を貸与し親族が受給する保護費から賃料名義で貸与した金銭の返還を受けているところ、申立人の関知しないところで保護課が当該親族の転居を進めたことに納得がいかないとして苦情が申し立てられた事例。(担当オンブズマン:梶井祥子)


④第2024-67号
 生活保護を受給する申立人が証券口座を新規に開設した際に口座に振り込まれた金額を収入申告したところ、その金額が控除が全くなされないままに収入認定されたことを不服として苦情が申し立てられた事例。当該取り扱いについて北海道知事に対する審査請求がなされているとして調査が中止された。(担当オンブズマン:田村智幸)


⑤第2024-73号
 体育館でバドミントンをする際の利用料についての不満を伝えているにもかかわらず、市民文化局地域振興部区政課は一方的な主張を繰り返すだけでこちらの話に耳を傾けないとして苦情が申し立てられた事例。オンブズマンは申立人が求める金額の引き下げを強制する権限がないことを説明したところ、苦情申し立てが取り下げられた。(担当オンブズマン:神谷奈保子)
⑥第2024-74号
 貸し出し予約をした図書の取り置き期限の延長ができないという図書館の説明に納得がいかないとして苦情が申し立てられた事案。同旨の苦情については第2024‐50号で調査結果を通知し、再調査を求める苦情についても第2024-65号で再調査をしない旨を通知しているとして、本件についても調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:梶井祥子)

⑦第2024-75号
 市が支給する町内会への助成金について一部の町内会で横領が行われていることから市に調査を求めて苦情が申し立てられた事案。当該不正については申立人に利害がなく、申立人が2023年度に申し立てた事案(おそらく第2023-43号)及び本件の内容に照らしても助成金に不正が行われている事情は伺われないとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)

2025/03/04

2024年12月に調査を終了したケース

 2025年1月1日、2024年12月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、決定期間延長のうえ、2025年2月14日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2024年12月)に処理が終了したのは5件で、全5件で調査結果が通知された。

今回、公開を受けた案件のうち、もっとも興味深い案件は、国民健康保険料の滞納により差し押さえを受けた際に事前の連絡がなかったとして苦情が申し立てられた第2024-63号である。この案件における市の回答は、法に基づいた適正な業務の執行が行われているか、明確性に欠けるきらいがあると思われる。

すなわち、国民健康保険法79条の2は、「市町村が徴収する保険料・・・(中略)・・・は、地方自治法第231条の3第3項に規定する法律で定める歳入」である旨を規定する。

そして、地方自治法231条の3第3項は、「普通地方公共団体の歳入(以下この項及び次条第一項において「分担金等」という。)につき第一項の規定による督促を受けた者が同項の規定により指定された期限までにその納付すべき金額を納付しないときは、当該分担金等並びに当該分担金等に係る前項の手数料及び延滞金について、地方税の滞納処分の例により処分することができる」旨が規定されている。

さらに、同条1項は、「普通地方公共団体の歳入を納期限までに納付しない者があるときは、普通地方公共団体の長は、期限を指定してこれを督促しなければならない」旨規定し、地方税法は一般に「滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る・・・(中略)・・・地方団体の徴収金を完納しないとき」には、「滞納者の財産を差し押えなければならない」旨を規定しているのである。

なお、地方税法は一般に「納期限後二十日以内に、督促状を発しなければならない」ことを規定するところ、札幌市国民健康保険条例では、「納期限後30日以内までに督促状を発しなければならない」とされている(同条例21条)。

以上の次第で、徴収金の滞納者が督促を受けてもなお徴収金を完納しない場合、「滞納者の財産を差し押さえなければならない」というのが法令の規定である。

ところが、市の回答では、「差押えという強力な権限の行使にあたっては、滞納者の実情を踏まえ、合理的な判断の下、適切に行う必要があ」(る)とともに、「「差押えをしなければならない日」を迎えたすべての滞納者に対し差押えをすることは非現実的でもある」という説明がなされるのみである。

本来ならば、督促後の財産差押えが法令上義務づけられている以上、その義務の履行しないことが正当化されるためには法令上の根拠が必要になると思われるのだが、市の回答ではこの点の説明が欠けているわけである。

この点、思い出されるのが、市税を滞納し「差押通知書」の送付を受けた申立人が苦情を申し立てた第2023-4号である。この案件では、「申立人に納付誠意がないと判断し、財産の差押えをすべく、最終通告として・・・(中略)・・・差押予告書・・・(中略)・・・を申立人に発送」したという市の回答がなされている。

この回答を契機として、当ブログ開設者は、徴収金の滞納者に「納付誠意」がある場合には、地方税法が規定する「換価の猶予」(同法15条の5(職権)及び同法15条の6(申請))が適用されている可能性があると考えるようになった。

そうすると、本件の国民健康保険法の場合も同様に、督促後に徴収金が期限までに納付されずに「滞納者の財産を差し押さえなければならない」はずのケースにおいて、職権で「換価の猶予」がなされている可能性があると思われる。

ただし、前述の第2023-4号及び本件・第2024-63号のいずれの案件においても、直ちに差押えに踏み切らない取扱いが地方税法の定める「換価の猶予」である旨の市の回答がなされているわけではない。当ブログ開設者が市の回答は明確性に欠けると感じる所以である。

また、「換価の猶予」はその期間の上限が1年とされるなど厳格な要件が定められている(地方税法15条の5第1項及び同法15条の6第1項)ことから、これらの要件を潜脱すべく法令に定めのない「事実上の運用」がなされている可能性もある(「換価の猶予」については過去にこのエントリーでも言及した)。

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①第2024-56号
 自宅とは別に所有する土地・建物が面する道路を建築基準法42条2項に規定する道路として指定することを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)


②第2024-57号
 スポットクーラーの購入費用を保護費として支給することを検討しないという保護下の説明に納得がいかないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

③第2024-59号
 申立人が居住するマンション前の歩道が通学路となっているため市に歩道を除雪するよう求めたところ、今季は車道への影響を見ることとし来季に判断するという電話での回答があったが、文書での回答がなされておらず、回答内容にも疑義があるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)

④第2024-60号
 市から路線測量の業務を受託した事業者が業務外の古タイヤ片付け作業を行ったにも関わらず委託業務成績評定の標定点が低かったことに納得がいかないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑤第2024-63号
 国民健康保険の保険料を滞納していた申立人がこれまで納付相談をしてきたにもかかわらず、事前連絡もなく預金口座を差し押さえられたとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)