(全文参照)
まず、裁決までの経緯を振り返っておく。2022年9月1日付で行った公文書公開請求に対し、同月27日付でなされた一部公開決定において、苦情等調査結果通知書第2022-22号が公開された(当初公開分)。この案件は、敬老優待乗車証のチャージのために郵便局を訪れた際の職員の対応に不満を覚えた申立人が、市に対応を求めたものの適切な対処がなされないとして苦情が申し立てられた事案である。
そして、当初公開された上記通知書においては、市とチャージ業務について業務委託契約を締結した日本郵便北海道支社の業務マニュアルを引用した箇所が非公開とされていたことから、当ブログ開設者が当該箇所の公開を求めて審査請求をしたところ、公開を命ずる裁決が出されるとともに、裁決書と合わせて、苦情等調査結果通知書第2022-22号が送られてきた(裁決後の通知書)。
なお、この裁決では、上記マニュアルを引用した箇所について、「本件非公開部分を公開しても申立人と郵便局員とのやり取りの内容が明らかになるものとは認められず、特定の個人を識別することはできない」として、条例7条1号に定める非公開情報(いわゆる「個人情報」)には該当しないと判断されている(同号は「非公開情報」として「個人に関する情報で、特定個人を識別することができるもの」を規定する)。
ここでのポイントは、特定個人識別性がないことを理由として非公開情報ではないと判断している点である。この点、当ブログ開設者による、マニュアルを引用した箇所は「個人に関する情報」には該当しないという主張は、残念ながら採用されなかった。
また、裁決は条例7条1号の非公開情報該当性を否定するとともに、条例7条5号オ(いわゆる「事務事業情報」)該当性も否定した(同号オは「事務又は事業の性質上、公にすることにより、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすと認められるもの」を非公開情報と規定する)。
以上の次第で、今回の裁決は、オンブズマンによる「苦情等調査結果通知書」について、通知書の記載内容は「個人に関する情報」であるが、「特定個人識別性」が認められない限り条例7条1号が規定する非公開情報(いわゆる「個人情報」)には該当しないことを明確にした点で、大きな意義があると思われる。
その一方で、条例7条5号オが規定する非公開情報(いわゆる「事務事業情報」)該当性に関しては、条例7条1号が規定する非公開情報該当性と結びつけた判断をしている。しかしながら、こうした判断が適切かどうかは、なお議論の余地があると思われる。特定個人識別性がある箇所を非公開にしたとしても、自らが申し立てた苦情(について記載された文書)が公文書公開の対象となること自体、苦情申立を忌避する理由となると思われるからである。
また、今回の審査請求においては、審査請求書に「苦情等調査結果通知書を公開することによりオンブズマンがいかにずさんな調査を行っているかが明らかになり、「市民のオンブズマン制度への信頼を失わせ」る可能性がある」旨も記載した。裁決書記載の「審査請求書による請求人の主張」においては見事なまでに無視されたが、その理由は定かでない。
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