2022/06/20

札幌市オンブズマン苦情処理日数の状況(オンブズマン別・2021年度まで)

前回のエントリーでは、オンブズマン調査の年度別の処理状況を紹介した。このエントリーでは、オンブズマン別の処理状況を紹介する。

ところで、札幌市オンブズマンの制度が発足した2001年3月(年度としては2000年度)以来、オンブズマンは、各年度の3月1日付で2年任期で任用されている。そのため、初年度の任用期間は当該年度の3月、1か月間だけとなる。そこで、データとしての信頼度を高めるため、以下の表では、任用初年度は2年度目と合算し、13か月間に申し立てられた苦情の処理状況について計上している。

また、オンブズマンの任用期間の最終年度は、4月から翌年2月末までの11か月間の任用である。したがって、まるまる1年には1か月不足することになるが、最終年度については、この11か月間に申し立てられた苦情の処理状況について計上している(それ以外の年度については、4月から翌年3月までの12か月間に申し立てられた苦情の処理状況について計上してある)。

このほか、「取扱件数」のうち、「結果通知処理件数」に計上した件数は、「苦情等調査結果通知書」が発送された案件のものである。そして、「平均処理日数」、「中央値」及び「30日以内処理率」のデータは、この苦情等調査結果通知が発送された案件について、算出したものである。

(1) 廣岡得一郎(弁護士・2001年3月1日〜2005年2月28日)


取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2000/01年度
57
39
43.67
29
56.4%
2002年度
33
27
28.85
26
66.7%
2003年度
32
29
26.38
25
53.8%
2004年度
28
18
29.11
26
66.7%
通算
150
113
33.37
28
64.6%

(2) 長井敬子(札幌地方・簡易裁判所民事調停委員、人権擁護委員・2001年3月1日〜2005年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2000/01年度
62
42
38.29
31
47.6%
2002年度
41
32
31.88
28
68.8%
2003年度
39
26
33.73
31
38.5%
2004年度
23
20
33.10
30
55.0%
通算
165
120
34.73
30
52.5%

(3) 三谷鉄夫(北海道大学名誉教授・2001年3月1日〜2004年2月29日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2000/01年度
58
39
49.54
29
53.8%
2002年度
37
29
32.45
28
62.1%
2003年度
32
26
29.50
30
53.8%
通算
127
94
38.72
29
56.4%

(4) 佐藤譲治(元会社役員・2004年3月1日〜2008年2月29日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2003/04年度
36
31
31.55
29
64.5%
2005年度
35
30
22.73
22
96.7%
2006年度
39
33
23.42
25
93.9%
2007年度
30
26
24.00
22
92.3%
通算
140
120
25.48
25
86.7%

(5) 文仙俊一(弁護士・2005年3月1日〜2009年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2004/05年度
41
36
27.44
27.5
75.0%
2006年度
38
32
27.03
26.5
90.6%
2007年度
37
28
24.50
23.5
89.3%
2008年度
33
29
31.14
28
75.9%
通算
149
125
27.54
27
82.4%

(6) 杉野目康子(翻訳家、元北海道教育委員・2005年3月1日〜2009年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2004/05年度
36
29
24.55
27
72.4%
2006年度
38
27
25.59
27
92.6%
2007年度
39
31
24.90
23
87.1%
2008年度
31
29
34.48
29
69.0%
通算
144
116
27.37
27
80.2%

(7) 前野正明(元会社役員・2008年3月1日〜2012年2月29日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2007/08年度
48
46
31.70
27.5
78.3%
2009年度
43
36
38.36
35
38.9%
2010年度
46
37
34.12
35
45.9%
2011年度
35
27
45.78
44
18.5%
通算
172
146
36.56
31.5
49.3%

(8) 岩本勝彦(弁護士・2009年3月1日〜2013年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2008/09年度
54
43
32.40
30
58.1%
2010年度
43
37
35.54
29
51.4%
2011年度
46
43
35.77
35
39.5%
2012年度
42
36
25.56
22.5
80.6%
通算
185
159
32.49
29
56.6%

(9) 井上宏子(消費生活アドバイザー・20009年3月1日〜2013年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2008/09年度
46
39
38.54
36
35.9%
2010年度
41
35
34.69
30
51.4%
2011年度
40
37
37.78
35
35.1%
2012年度
33
25
27.28
27
80.0%
通算
160
136
35.27
31
47.8%

(10) 相澤重明(札幌家庭裁判所家事調停委員・2012年3月1日〜2016年2月29日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2011/12年度
46
39
34.13
30
53.8%
2013年度
42
35
31.11
30
57.1%
2014年度
46
39
34.15
30
51.3%
2015年度
31
26
36.92
36
23.1%
通算
165
139
33.90
31
48.2%

(11) 三木正俊(弁護士・2013年3月1日〜2017年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2012/13年度
50
43
29.63
28
72.1%
2014年度
43
35
34.57
33
45.7%
2015年度
51
40
32.35
30
55.0%
2016年度
25
22
33.55
32.5
31.8%
通算
169
140
32.26
30
58.5%

(12) 吉田かよ子(北星学園大学教授・2013年3月1日〜2015年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2012/13年度
48
40
29.13
28
75.0%
2014年度
34
28
32.96
31
50.0%
通算
82
68
30.71
29
64.7%

(13) 岩田雅子(札幌地方・簡易裁判所民事調停委員・2015年3月1日〜2019年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2014/15年度
46
41
30.76
28
63.4%
2016年度
34
31
34.26
30
58.1%
2017年度
28
20
36.25
34.5
35.0%
2018年度
20
17
39.35
41
17.6%
通算
128
109
34.10
31
49.5%

(14) 杉岡直人(北星学園大学教授・2016年3月1日〜2020年2月29日)
取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2015/16年度
42
36
34.81
32
47.2%
2017年度
27
24
37.71
35.5
20.8%
2018年度
26
20
42.60
38
15.0%
2019年度
24
20
36.20
36.5
20.0%
通算
119
100
37.34
36
29.0%

(15) 房川樹芳(弁護士・2017年3月1日〜2021年2月28日
取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2016/17年度
34
29
35.38
30
51.7%
2018年度
28
26
*37.62
*36
19.2%
2019年度
43
32
36.25
36
25.0%
2020年度
27
16
33.06
34
37.5%
通算
132
103
*35.85
*35
32.0%
*を付したデータは、2018年度の案件のうち1件について推定値に基づくことを示している。

(16) 八木橋眞規子(札幌地方・簡易裁判所民事調停委員・2019年3月1日~現職)
取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2018/19年度
50
38
41.82
38.5
26.3%
2020年度
27
22
33.91
31.5
40.9%
2021年度
40
31
42.42
42
12.9%
通算
117
91
40.11
37
25.3%

(17) 原俊彦(札幌市立大学名誉教授・2020年3月1日~現職)
取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2019/20年度
39
26
39.81
38.5
23.1%
2021年度
30
22
43.91
38.5
18.2%
通算
69
48
39.81
38.5
23.1%

(18)田村智幸(弁護士・2021年3月1日~現職)
取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2020/21年度
47
29
43.28
41
24.1%
通算
47
29
43.28
41
24.1%

以下の(グラフ1)は、オンブズマン別の結果通知の平均処理日数を示したものである。なお、上記のオンブズマン別の表は、オンブズマンの任期の古い順に並べたものだが、以下のグラフも同順である。


(グラフ1)

次に、年度別の処理状況と同様に、各オンブズマンの処理日数区分ごとの度数分布の表を作成した。

(表1)
   
20日
以内
 21日〜
30日
 31日〜
45日
46日〜
60日
61日〜
90日
91日
以上
30日
以内
処理率
30日
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
廣岡
23
20.4%
50
55.6%
24
21.2%
9
8.0%
2
1.8%
5
4.4%
64.6%
35.4%
長井
16
13.3%
47
39.2%
39
32.5%
7
5.8%
8
6.7%
3
2.5%
52,5%
47.5%
三谷
18
19.1%
35
37.2%
24
25.5%
5
5.3%
7
7.4%
5
5.3%
56.4%
43.6%
佐藤
22
18.3%
82
68.3%
12
10.0%
3
2.5%
1
0.8%
0
0.0%
86.7%
13.3%
文仙
20
16.0%
83
66.4%
17
13.6%
3
2.4%
1
0.8%
1
0.8%
82.4%
17.6%
杉野目
25
21.6%
68
58.6%
14
12.1%
6
5.2%
3
2.6%
0
0.0%
80.2%
19.8%
前野
13
8.9%
59
40.4%
40
27.4%
22
15.1%
10
6.8%
2
1.4%
49.3%
50.7%
岩本
20
12.6%
70
44.0%
48
30.2%
15
9.4%
6
3.8%
0
0.0%
56.6%
43.4%
井上
13
9.6%
52
38.2%
47
34.6%
17
12.5%
5
3.7%
2
1,5%
47.8%
52.2%
相澤
7
5.0%
60
43.2%
52
37.4%
18
12.9%
2
1.4%
0
0.0%
48.2%
51.8%
三木
7
5.0%
69
49.3%
52
37.1%
10
7.1%
2
1.4%
0
0.0%
54.3%
45.7%
吉田
3
4.4%
41
60.3%
21
30.9%
2
2.9%
1
1.5%
0
0.0%
64.7%
35.3%
岩田
5
4.6%
49
45.0%
39
35.8%
16
14.7%
1
0.9%
0
0.0%
49.5%
50.5%
杉岡
3
3.0%
26
26.0%
53
53.0%
13
13.0%
5
5.0%
0
0.0%
29.0%
71.0%
房川
1
1.1%
32
31.1%
53
51.5%
17
16.5%
0
0.0%
0
0.0%
32.0%
68.0%
八木橋
1
1.1%
22
24.2%
39
34.1%
22
24.2%
7
7.7%
0
0.0%
25.3%
74.7%
1
2.1%
9
18.8%
24
50.0%
11
22.9%
1
2.1%
2
4.2%
20.8%
79.2%
田村
0
0.0%
7
24.1%
10
34.5%
8
27.6%
4
13.8%
0
0.0%
24.1%
75.9%
通算
198
10.1%
861
44.0%
607
31.0%
204
10.4%
66
3.4%
20
1.0%
54.1%
45.9%

(表1)よりもさらに度数分布を細かく区分し、平均処理日数の短い順に並べたのが、以下の(グラフ2)である。このグラフは、処理日数の短いオンブズマンの順に並べてある。

(グラフ2)

前回のエントリーで紹介したように、2021年度に調査結果を通知するまでに要した日数は(2021年3月に就任した田村智幸オンブズマンは2020年度の申立分を含む)、制度発足以来最長を記録している。個別のオンブズマンの処理日数を前年度と比較した場合、八木橋眞規子オンブズマンは8.5日、原俊彦オンブズマンは4.1日、処理日数が伸びている。また、田村智幸オンブズマンも、他のオンブズマンと同様の処理日数を要している(八木橋42.42日、原43.91日、田村43.28日)。

ところで、2021年度申立分のみの処理件数を見た場合、取扱件数は、八木橋40件、原30件、田村42件である(田村オンブズマン担当分は上記の表から2020年度申立分の件数を除いた件数)。他の2名に比べて、原俊彦オンブズマンの取り扱い件数が目立って少なくなっている。

また、調査結果を通知した件数も、八木橋31件、原22件、田村26件と、3人の中で最小となっている。このような事情は、原俊彦オンブズマンの取扱件数が少ないことによって、他のオンブズマンに過大な負担を負わせている可能性を示唆している。同額のオンブズマン報酬が支払われているなか、こうした偏りをどのように評価するのが適切であろうか。

一つの考え方は、できるだけ優秀なオンブズマンが多くの案件を担当することが市民にとっても利益になる、という立場である。しかし、担当件数が相対的に少ないオンブズマンは、経験を積むことでオンブズマンとしての力量を備える機会が与えられないことになる。また、優秀なオンブズマンも、多くの件数を担当することになれば、個別の調査のクオリティが低下するおそれも否定できまい。

別の考え方としては、オンブズマンごとの担当案件の件数はできるだけ等しくする、という立場である。しかし、担当するオンブズマンによって調査の水準に大きなバラつきがあるなか、調査の水準があまり高くないオンブズマンが担当する案件が増えることは、苦情を申し立てる市民の立場からすると望ましいとはいえないであろう。

札幌市オンブズマンこれまで、調査を担当するオンブズマンに当たり外れはなく、外れしかいないという意味で、苦情を申し立てる市民にとって、誰が調査を担当するかはさほど重要ではなかった(ように思われる)。しかし、オンブズマンによる調査を担当する力量に大きな差があることが顕著になってきた現状では、そろそろ、担当オンブズマンの専門的バックグラウンドに留意した担当案件の配分を模索すべきあろう。もっとも、眠れるオンブズマン原俊彦が担当しても差し支えない案件があれば、だが。