2021年7月に入り、札幌市オンブズマンの2020年度活動状況報告書が公表された。そこで、オンブズマン事務局に各案件の処理日数のデータ提供を依頼し、提供を受けたデータに基づいて、以下の表及びグラフを作成した。
ところで、(表1)の「結果通知処理件数」とは、「苦情申立件数」のうち、オンブズマンが「苦情等調査結果通知」を発送し、調査を終了した案件の件数である。これらの案件においける「処理日数」とは、原則として苦情申し立てを受理した日から、「苦情等調査結果通知書」の発送までに要した日数である(したがって、申立人に苦情の内容を確認するために要した日数は算定から除外されている)。
また、札幌市オンブズマンの制度が発足した初年度の2000年度は、3月から制度がスタートし、運用されたのがわずか1か月間にとどまっている。そのため、この期間の処理状況は便宜的に2001年度と合算し、2000/01年度の13か月間に申し立てられた案件の処理状況を合算して計上してある。そして、以後の各年度は、当該年度の12か月間に申し立てられた案件の処理状況を計上した(したがって、調査終了が翌年度となった案件は、申立時点を基準として処理状況を計上している)。
さて、2020年度における札幌市オンブズマンの苦情処理の状況であるが、2019年度から取扱件数が激減し、2年ぶりに100件を切っている(90件)。また、「苦情申立件数」に対する「結果通知処理件数」の割合(66.7%)が、制度発足当初を除くと過去最低を記録するとともに、「結果通知処理件数」自体も過去最低の60件となっている。
ところで、(表1)の「結果通知処理件数」とは、「苦情申立件数」のうち、オンブズマンが「苦情等調査結果通知」を発送し、調査を終了した案件の件数である。これらの案件においける「処理日数」とは、原則として苦情申し立てを受理した日から、「苦情等調査結果通知書」の発送までに要した日数である(したがって、申立人に苦情の内容を確認するために要した日数は算定から除外されている)。
また、札幌市オンブズマンの制度が発足した初年度の2000年度は、3月から制度がスタートし、運用されたのがわずか1か月間にとどまっている。そのため、この期間の処理状況は便宜的に2001年度と合算し、2000/01年度の13か月間に申し立てられた案件の処理状況を合算して計上してある。そして、以後の各年度は、当該年度の12か月間に申し立てられた案件の処理状況を計上した(したがって、調査終了が翌年度となった案件は、申立時点を基準として処理状況を計上している)。
さて、2020年度における札幌市オンブズマンの苦情処理の状況であるが、2019年度から取扱件数が激減し、2年ぶりに100件を切っている(90件)。また、「苦情申立件数」に対する「結果通知処理件数」の割合(66.7%)が、制度発足当初を除くと過去最低を記録するとともに、「結果通知処理件数」自体も過去最低の60件となっている。
なお、「苦情申立件数」に対する「結果通知処理件数」の割合は、2019年度に77.0%を記録するまでは、2005年度から2018年度にかけて80%台を維持していたことからすると、ここ2年の札幌市オンブズマンは、調査を実施すること自体に後ろ向きである、という評価が可能かもしれない。
また、2020年度は、申立人が「苦情申立ての原因となった事実についての利害を有しない」(札幌市オンブズマン条例16条1項1号)として調査が実施されなかった件数が10件であった。この件数は、2016年度から2020年度にかけて、0件-2件-1件-2件-10件と推移しており、2020年度は激増したことが見てとれる。
この点、当ブログ開設者は、第2020-20号の苦情を申し立てるために原俊彦オンブズマンと面談した際、「オンブズマンの申し合わせにより、『申立人の利害』は限定的に解することになった」、という趣旨の説明を受けたことがある。当ブログ開設者は、オンブズマンとしては、調査を実施する件数を絞り込む意図を有しているのだと理解したが、札幌市オンブズマンの制度発足時、市長がオンブズマン制度の運用について、「市民の権利利益を擁護するというオンブズマン制度の目的に照らして、できる限り広く取り扱うことにしたい」という議会答弁を行っている。
そこで、当ブログ開設者は、この市長答弁と原俊彦オンブズマンの発言の整合性を問うべくオンブズマン事務局に照会した。これを受け、オンブズマン事務局が原俊彦オンブズマンに確認したところ、申立人の利害を限定的に解することになったという説明はしておらず、そのような申し合わせをした事実もない、という回答を得たということであった。
当ブログ開設者は、オンブズマンが調査を実施することで得られる知見は、市民にとっても有益であり、できる限りオンブズマンは調査を実施することが望ましいと考えているが、札幌市オンブズマンも制度が発足して20年が経過しており、現在の運用のあり方が適切か、検討すべき時期にある可能性は否定できない。とりわけ、調査対象を絞り込み、精度の高い調査を実施するという対応は、十分に検討するに値すると思われる。
(表1)
苦情申立
件数
|
結果通知
処理件数 |
結果通知
平均処理
日数
|
結果通知
処理日数
中央値
|
結果通知
30日以内
処理率
|
|
2000/01年度
|
177
|
120
|
43.69
|
29
|
52.5%
|
2002年度
|
111
|
88
|
31.14
|
28
|
65.9%
|
2003年度
|
113
|
83
|
30.07
|
30
|
54.2%
|
2004年度
|
93
|
74
|
30.78
|
28
|
63.5%
|
2005年度
|
103
|
88
|
24.78
|
26
|
83.0%
|
2006年度
|
115
|
92
|
25.32
|
25.5
|
92.4%
|
2007年度
|
111
|
90
|
24.40
|
23
|
88.9%
|
2008年度
|
117
|
108
|
32.45
|
28
|
73.1%
|
2009年度
|
133
|
109
|
36.62
|
32
|
44.0%
|
2010年度
|
130
|
109
|
34.79
|
32
|
49.5%
|
2011年度
|
125
|
111
|
38.94
|
37
|
32.4%
|
2012年度
|
135
|
110
|
29.16
|
28
|
71.8%
|
2013年度
|
122
|
104
|
29.84
|
28
|
68.3%
|
2014年度
|
129
|
107
|
33.45
|
30
|
51.4%
|
2015年度
|
130
|
109
|
33.05
|
31
|
47.7%
|
2016年度
|
100
|
88
|
35.36
|
31.5
|
45.5%
|
2017年度
|
82
|
67
|
35.76
|
33
|
38.8%
|
2018年度
|
77
|
66
|
*40.06
|
*37
|
15.2%
|
2019年度
|
122
|
94
|
38.84
|
37
|
23.4%
|
2020年度
|
90
|
60
|
34.50
|
34
|
38.3%
|
全期間
通算 |
2315
|
1877
|
*33.28
|
*30
|
55.7%
|
*を付したデータは、2018年度の案件のうち1件について推定値に基づくことを示している。
次に、年度別の平均処理日数をグラフ化したものが、以下の(グラフ1)である。2018年度の処理の遅滞をピークとして、以後は平均処理日数が短縮化する傾向に転じたことが見て取れる。こうした傾向が今後も継続するか否か、調査そのもののクオリティとあわせて、引き続き、状況を観察する必要があると思われる。
(グラフ1)
次に、以下の(表2)は、制度発足以来の処理日数の度数分布を取りまとめたものである。4年ぶりに処理日数が20日以内の案件があるほか、2018年度と比較した場合には、「21日~30日」の割合が増加する一方で、「31日~45日」の割合が10%以上低下しており、処理日数の短縮を読み取ることができる。
(表2)
20日
以内
|
21日〜
30日
|
31日〜
45日
|
46日〜
60日
|
61日〜
90日
|
91日
以上
|
30日
以内
処理率
|
30日
超
処理率
| |||||||
件数
|
処理率
|
件数
|
処理率
|
件数
|
処理率
|
件数
|
処理率
|
件数
|
処理率
|
件数
|
処理率
| |||
2000/01
年度
|
20
|
16.7%
|
43
|
35.8%
|
26
|
21.7%
|
10
|
8.3%
|
9
|
7.5%
|
12
|
10.0%
|
52.5%
|
47.5%
|
2002
年度
|
20
|
22.7%
|
38
|
43.2%
|
17
|
19.3%
|
5
|
5.7%
|
7
|
8.0%
|
1
|
1.1%
|
65.9%
|
34.1%
|
2003
年度
|
13
|
15.7%
|
32
|
38.6%
|
33
|
39.8%
|
5
|
6.0%
|
0
|
0.0%
|
0
|
0.0%
|
54.2%
|
45.8%
|
2004
年度
|
7
|
9.5%
|
40
|
54.1%
|
21
|
28.4%
|
4
|
5.4%
|
2
|
2.7%
|
0
|
0.0%
|
63.5%
|
36.5%
|
2005
年度
|
20
|
22.7%
|
53
|
60.2%
|
15
|
17.0%
|
0
|
0.0%
|
0
|
0.0%
|
0
|
0.0%
|
83.0%
|
17.0%
|
2006
年度
|
21
|
22.8%
|
64
|
69.6%
|
5
|
5.4%
|
1
|
1.1%
|
0
|
0.0%
|
1
|
1.1%
|
92.4%
|
7.6%
|
2007
年度
|
21
|
23.3%
|
59
|
65.6%
|
7
|
7.8%
|
2
|
2.2%
|
1
|
1.1%
|
0
|
0.0%
|
88.9%
|
11.1%
|
2008
年度
| 7 |
6.5%
|
72
|
66.7%
|
15
|
13.9%
|
8
|
7.4%
|
4
|
3.7%
|
2
|
1.9%
|
73.1%
|
26.9%
|
2009
年度
|
7
|
6.4%
|
41
|
37.6%
|
34
|
31.2%
|
20
|
18.3%
|
7
|
6.4%
|
0
|
0.0%
|
44.0%
|
56.0%
|
2010
年度
|
14
|
12.8%
|
40
|
36.7%
|
35
|
32.1%
|
14
|
12.8%
|
5
|
4.6%
|
1
|
0.9%
|
49.5%
|
50.5%
|
2011
年度
|
6
|
5.4%
|
30
|
27.0%
|
51
|
45.9%
|
15
|
13.5%
|
8
|
7.2%
|
1
|
0.9%
|
32.4%
|
67.6%
|
2012
年度
|
20
|
18.2%
|
59
|
53.6%
|
20
|
18.2%
|
10
|
9.1%
|
1
|
0.9%
|
0
|
0.0%
|
71.8%
|
28.2%
|
2013
年度
|
8
|
7.7%
|
63
|
60.6%
|
28
|
26.9%
|
4
|
3.8%
|
1
|
1.0%
|
0
|
0.0%
|
68.3%
|
31.7%
|
2014
年度
| 1 |
0.9%
|
54
|
50.5%
|
39
|
36.4%
|
10
|
9.3%
|
3
|
2.8%
|
0
|
0.0%
|
51.4%
|
48.6%
|
2015
年度
|
8
|
7.3%
|
44
|
40.4%
|
45
|
41.3%
|
12
|
11.0%
|
0
|
0.0%
|
0
|
0.0%
|
47.7%
|
52.3%
|
2016
年度
| 0 |
0.0%
|
40
|
45.5%
|
33
|
37.5%
|
13
|
14.8%
|
2
|
2.3%
|
0
|
0.0%
|
45.5%
|
54.5%
|
2017
年度
|
0
|
0.0%
|
26
|
38.8%
|
31
|
46.3%
|
8
| 11.9% |
2
|
3.0%
|
0
|
0.0%
|
38.8%
|
61.2%
|
2018
年度
|
0
|
0.0%
|
10
|
15.2%
|
40
|
60.6%
|
14
| 21.2% |
2
|
3.0%
|
0
|
0.0%
|
15.2%
|
84.9%
|
2019
年度
|
3
|
3.2%
|
19
|
20.2%
|
46
|
48.9%
|
20
| 21.3% |
6
|
6.4%
|
0
|
0.0%
|
23.4%
|
76.6%
|
2020
年度
|
1
| 1.7%
| 22
| 36.7%
| 30
| 50.0%
| 7
| 11.7% | 0
| 0.0%
|
0
|
0.0%
| 38.3%
| 61.7%
|
全期間
通算 | 197 |
10.5%
|
849
|
45.2%
|
571
| 30.4%
|
182
|
9.7%
|
60
|
3.2%
|
18
|
1.0%
|
55.7%
|
44.3%
|
さらに、以下の(グラフ2)は、(表2)よりも度数分布を細かく区分し、度数分布の経年変化を示した。
(グラフ2)
2020年度の札幌市オンブズマンは、前年度よりも取り扱い件数を大きく減らすとともに、苦情処理の平均処理日数をやや短縮している。当ブログ開設者は昨年、「取り扱い件数が少ないと作業効率が低下し、処理日数の遅滞化をもたらす」と記したが、2020年度は、この分析とは異なる傾向が示されたことになる。
しかしながら、処理日数の短縮は、オンブズマンが困難な調査を忌避したり、調査の水準を犠牲にすることでも実現可能である。2021年度も引き続き、札幌市オンブズマンの苦情調査の内容はもちろん、苦情の取扱件数及び処理日数にも注目していきたい。
※なお、オンブズマン別の処理日数の状況については、このエントリーで紹介している。
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