2019/07/22

2019年6月に調査を終了したケース

2019年7月1日、同年6月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、7月16日に一部公開決定がなされた。 

上記の期間(2019年6月)に調査を終了したのは11件で、このうち8件で調査結果が通知されている。また、残る3件は申立人による苦情申し立ての取り下げにより、調査が終了している。


ところで、今回公開された調査のうち、最も興味深いのが第2019-14号である。この案件は、札幌市が障がい者を対象として実施する「交通費助成」と、各交通事業者が実施する「福祉割引」の制度では、その対象者を異にしていることから(精神障がい者は、各交通事業者による「福祉割引」の対象外となっている)、申立人が苦情を申し立てた案件である。札幌市としては、各関係機関に対し、精神障がい者に対する「割引運賃」制度の導入を要望しているそうだが、速やかに実現してほしいものである。また、この案件では、交通事業者による福祉割引が「市の事業ではない」ことを理由として、オンブズマンが苦情申立を門前払いをしていないことにも好感が持てる。

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①第2019-5号
 娘がBCGワクチンを接種した際、ヒ素が混入していないワクチンを摂取することもできるという情報提供が不十分であったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

②第2019-8号
 施設に入所する生活保護受給者が、指定難病の診察を受けられずにいるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

③第2019-9号
 市営住宅に入居する申立人が、団地の指定管理者である管理体制がずさんであるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

④第2019-10号
 国民健康保険加入手続きについて、必要書類についての説明のほか、対応した職員の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑤第2019-12号
 通所していた就労移行支援事業所で虐待を受けていたことを市の担当課に通報したにもかかわらず、その後、十分な対応がなされていないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

⑥第2019-14号
 精神障害者についても、他の障害者同様にタクシー料金の福祉割引の対象としてほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑦第2019-15号
 自宅に隣接する地区センター駐車場から、車の出入りや風により埃が舞い込み、暮らしに支障が生じているとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑧第2019-17号
 子どものマイナンバーカードを受け取りに行った際、担当者が本人確認書類の取り扱いを誤ったため、自宅と区役所間をもう一往復することを余儀なくされたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
⑨第2019-18号
 生活保護を受給する母が入所する施設を移動する際、申立人が立て替えた敷金について、母が退所した際に施設から返金されたところ、保護課から当該敷金を返還するよう求められたとして、苦情申し立てられたケース。申立人による苦情の取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑩第2019-21号
 札幌市の集会施設で行われている活動が政教分離原則に違反するとして、苦情が申し立てられたケース。当該集会施設の運営は町内会で行われており、市の業務ではない旨を説明したところ、申立人が苦情を取り下げ、調査が終了した。(担当オンブズマン:房川樹芳)


⑪第2019-22号
 自動車販売業の店舗前の道路改修により段差が大きくなり、車が損傷する恐れがあるとして市に改善を求めたが取り合ってもらえないとして、苦情が申し立てられたケース。その後、修復工事がなされて段差が解消したことにより、申立人が苦情を取り下げ調査は終了した。(担当オンブズマン:杉岡直人)


2019/07/21

札幌市オンブズマン苦情処理日数の状況(オンブズマン別・2018年度まで)

前回のエントリーでは、年度別の処理状況を紹介したが、このエントリーでは、オンブズマン別の処理状況を紹介する。「年度別」の処理日数の状況と同様に、新たに「中央値」についても掲載している。

札幌市オンブズマンの制度が発足した2001年3月(年度としては2000年度)以来、オンブズマンは、各年度の3月1日付で2年任期で任用されていることから、初年度の任用期間は当該年度の3月、1か月間だけである。そこで、データとしての信頼度を高めるため、以下の表では、任用初年度は2年度目と合算し、13か月間に申し立てられた苦情の処理状況について計上した。

また、オンブズマンの任用期間の最終年度は、4月から翌年2月末までの11か月間の任用となる。したがって、まるまる1年には1か月不足することになるが、最終年度については、この11か月間に申し立てられた苦情の処理状況について計上した(それ以外の年度については、4月から翌年3月までの12か月間に申し立てられた苦情の処理状況について計上してある)。

このほか、「取扱件数」のうち、「結果通知処理件数」に計上した件数は、「苦情等調査結果通知書」が発送された案件のものである。そして、「平均処理日数」、「中央値」及び「30日以内処理率」のデータは、この苦情等調査結果通知が発送された案件について、算出したしたものである。

札幌市オンブズマン制度史上最も愚鈍なオンブズマンが誰か、以下のデータから探求するのも一興であろう。

(1) 廣岡得一郎(弁護士・2001年3月1日〜2005年2月28日)


取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2000/01年度
57
39
43.67
29
56.4%
2002年度
33
27
28.85
26
66.7%
2003年度
32
29
26.38
25
53.8%
2004年度
28
18
29.11
26
66.7%
通算
150
113
33.37
28
64.6%

(2) 長井敬子(札幌地方・簡易裁判所民事調停委員、人権擁護委員・2001年3月1日〜2005年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2000/01年度
62
42
38.29
31
47.6%
2002年度
41
32
31.88
28
68.8%
2003年度
39
26
33.73
31
38.5%
2004年度
23
20
33.10
30
55.0%
通算
165
120
34.73
30
52.5%

(3) 三谷鉄夫(北海道大学名誉教授・2001年3月1日〜2004年2月29日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2000/01年度
58
39
49.54
29
53.8%
2002年度
37
29
32.45
28
62.1%
2003年度
32
26
29.50
30
53.8%
通算
127
94
38.72
29
56.4%

(4) 佐藤譲治(元会社役員・2004年3月1日〜2008年2月29日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2003/04年度
36
31
31.55
29
64.5%
2005年度
35
30
22.73
22
96.7%
2006年度
39
33
23.42
25
93.9%
2007年度
30
26
24.00
22
92.3%
通算
140
120
25.48
25
86.7%

(5) 文仙俊一(弁護士・2005年3月1日〜2009年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2004/05年度
41
36
27.44
27.5
75.0%
2006年度
38
32
27.03
26.5
90.6%
2007年度
37
28
24.50
23.5
89.3%
2008年度
33
29
31.14
28
75.9%
通算
149
125
27.54
27
82.4%

(6) 杉野目康子(翻訳家、元北海道教育委員・2005年3月1日〜2009年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2004/05年度
36
29
24.55
27
72.4%
2006年度
38
27
25.59
27
92.6%
2007年度
39
31
24.90
23
87.1%
2008年度
31
29
34.48
29
69.0%
通算
144
116
27.37
27
80.2%

(7) 前野正明(元会社役員・2008年3月1日〜2012年2月29日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2007/08年度
48
46
31.70
27.5
78.3%
2009年度
43
36
38.36
35
38.9%
2010年度
46
37
34.12
35
45.9%
2011年度
35
27
45.78
44
18.5%
通算
172
146
36.56
31.5
49.3%

(8) 岩本勝彦(弁護士・2009年3月1日〜2013年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2008/09年度
54
43
32.40
30
58.1%
2010年度
43
37
35.54
29
51.4%
2011年度
46
43
35.77
35
39.5%
2012年度
42
36
25.56
22.5
80.6%
通算
185
159
32.49
29
56.6%

(9) 井上宏子(消費生活アドバイザー・20009年3月1日〜2013年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2008/09年度
46
39
38.54
36
35.9%
2010年度
41
35
34.69
30
51.4%
2011年度
40
37
37.78
35
35.1%
2012年度
33
25
27.28
27
80.0%
通算
160
136
35.27
31
47.8%

(10) 相澤重明(札幌家庭裁判所家事調停委員・2012年3月1日〜2016年2月29日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2011/12年度
46
39
34.13
30
53.8%
2013年度
42
35
31.11
30
57.1%
2014年度
46
39
34.15
30
51.3%
2015年度
31
26
36.92
36
23.1%
通算
165
139
33.90
31
48.2%

(11) 三木正俊(弁護士・2013年3月1日〜2017年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2012/13年度
50
43
29.63
28
72.1%
2014年度
43
35
34.57
33
45.7%
2015年度
51
40
32.35
30
55.0%
2016年度
25
22
33.55
32.5
31.8%
通算
169
140
32.26
30
58.5%

(12) 吉田かよ子(北星学園大学教授・2013年3月1日〜2015年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2012/13年度
48
40
29.13
28
75.0%
2014年度
34
28
32.96
31
50.0%
通算
82
68
30.71
29
64.7%

(13) 岩田雅子(札幌地方・簡易裁判所民事調停委員・2015年3月1日〜2019年2月28日)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2014/15年度
46
41
30.76
28
63.4%
2016年度
34
31
34.26
30
58.1%
2017年度
28
20
36.25
34.5
35.0%
2018年度
20
17
39.35
41
17.6%
通算
128
109
34.10
31
49.5%

(14) 杉岡直人(北星学園大学教授・2016年3月1日〜現職)
取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2015/16年度
42
36
34.81
32
47.2%
2017年度
27
24
37.71
35.5
20.8%
2018年度
26
20
42.60
38
15.0%
通算
95
80
37.56
35
31.3%

(15) 房川樹芳(弁護士・2017年3月1日〜現職)
取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2016/17年度
34
29
35.38
30
51.7%
2018年度
28
26
*37.62
*36
19.2%
通算
62
55
*36.44
*35
34.5%
*を付したデータは、2018年度の案件のうち1件について推定値に基づくことを示している。


(16) 八木橋眞規子(札幌地方・簡易裁判所民事調停委員・2019年3月1日~現職)

取扱件数
結果通知
処理件数
結果通知
平均処理
日数
結果通知
処理日数
中央値
結果通知
30日以内
処理率
2018年度
3
3
48.33
53
0.0%
通算
3
3
48.33
53
0.0%

続いて、年度別の処理状況と同様に、各オンブズマンの処理日数区分ごとの度数分布の表を作成した。


(表1)
   
20日
以内
 21日〜
30日
 31日〜
45日
46日〜
60日
61日〜
90日
91日
以上
30日
以内
処理率
30日
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
件数
処理率
廣岡
23
20.4%
50
55.6%
24
21.2%
9
8.0%
2
1.8%
5
4.4%
64.6%
35.4%
長井
16
13.3%
47
39.2%
39
32.5%
7
5.8%
8
6.7%
3
2.5%
52,5%
47.5%
三谷
18
19.1%
35
37.2%
24
25.5%
5
5.3%
7
7.4%
5
5.3%
56.4%
43.6%
佐藤
22
18.3%
82
68.3%
12
10.0%
3
2.5%
1
0.8%
0
0.0%
86.7%
13.3%
文仙
20
16.0%
83
66.4%
17
13.6%
3
2.4%
1
0.8%
1
0.8%
82.4%
17.6%
杉野目
25
21.6%
68
58.6%
14
12.1%
6
5.2%
3
2.6%
0
0.0%
80.2%
19.8%
前野
13
8.9%
59
40.4%
40
27.4%
22
15.1%
10
6.8%
2
1.4%
49.3%
50.7%
岩本
20
12.6%
70
44.0%
48
30.2%
15
9.4%
6
3.8%
0
0.0%
56.6%
43.4%
井上
13
9.6%
52
38.2%
47
34.6%
17
12.5%
5
3.7%
2
1,5%
47.8%
52.2%
相澤
7
5.0%
60
43.2%
52
37.4%
18
12.9%
2
1.4%
0
0.0%
48.2%
51.8%
三木
7
5.0%
69
49.3%
52
37.1%
10
7.1%
2
1.4%
0
0.0%
54.3%
45.7%
吉田
3
4.4%
41
60.3%
21
30.9%
2
2.9%
1
1.5%
0
0.0%
64.7%
35.3%
岩田
5
4.6%
49
45.0%
39
35.8%
16
14.7%
1
0.9%
0
0.0%
49.5%
50.5%
杉岡
1
1.3%
24
30.0%
40
50.0%
10
12.5%
5
6.3%
0
0.0%
27.5%
72.5%
房川
0
0.0%
19
34.5%
26
47.2%
10
18.2%
0
0.0%
0
0.0%
34.5%
65.5%
八木橋
0
0.0%
0
0.0%
1
33.3%
2
66.7%
0
0.0%
0
0.0%
0.0%
0.0%
通算
193
11.2%
808
46.9%
495
28.7%
155
8.2%
54
3.0%
18
1.0%
58.1%
41.9%

(表1)よりもさらに、度数分布を細かく区分し、平均処理日数の短い順に並べたのが、以下の(グラフ1)である。

(グラフ1)


以上のデータからは、現役のオンブズマンが、年数を重ねるほど、処理に時間を要するようになっている。

「事案によっては、1か月で調査を結果を出すことは、困難なケースも増えてきている」(平成30年度札幌市オンブズマン活動状況報告書・巻頭言・実質1頁)と泣き言をいうオンブズマンもいるところ、"愚鈍なオンブズマンもいたものだ"と嘲笑されないためにも、処理が遅滞化する原因を探求し、対策を講じることが求められているように思われる。