2018/04/15

無許可架橋に関するオンブズマン調査について(第27−126号、第28−発1号)

朝日新聞デジタルに、札幌市内で市が管理する普通河川に架けられた橋1660カ所のうち、約500カ所が無許可であることが分かった、という記事が掲載された(2018年4月14日付)。記事の中でも紹介されているが、市の河川管理課が無許可で架けられた橋について調査する契機となったのが、市民による札幌市オンブズマンへの苦情申し立てに基づく調査(第27−126号)及びオンブズマンが自己の発意に基づく調査である(第28−発1号)。

今回の朝日新聞の報道により、札幌市オンブズマンに興味を持たれた方への情報提供のため、公文書公開請求により取得した各調査の調査結果通知書をここに示し、若干のコメントを付すことにする。

①苦情等調査結果通知書(平成28年5月10日付・第27−126号)
 この苦情は、札幌市が管理する普通河川に架橋しようとした市民が、市から許可を受けるとともに、占用料の支払いが必要である旨の説明を受けたことから、無許可で架橋している者との公平な取り扱いを求め、申し立てられたものである。
 申立人の具体的な主張は、(ア)許可を受けて架橋しても無許可者同様に占用料を徴収しない、(イ)許可を受け占用料を支払うが、無許可架橋者からも架橋時点に遡って占用料を徴収することの確約、(ウ)無許可架橋の黙認、いずれかの対応を求めるものである。
 これに対し、市は、(あ)当初の説明に加え、(い)無許可の橋が設置されている状況を是正していくこと、(う)占用料の納付義務は許可を受けてから発生するので、無許可の橋の設置者から過去に遡って占用料を徴収することはできない、と回答している。
 以上をふまえ、オンブズマンは、市が申立人に対し、条例の取り扱いを説明し、理解を求めたことについて問題があったとはいえないが、無許可で橋を設置した者と不公平にならないよう、早期に状況が是正されるよう、適切な対応がなされることを期待する旨の判断を行った。

②苦情等調査結果通知書(平成29年3月24日付・第28−発1号)
 この調査は、上記の苦情調査の後、オンブズマンが自己の発意に基づき、札幌市が管理する普通河川に設置された橋の管理の実態について、調査したものである。
 この調査において、市は、(あ)無許可で設置された橋の全体数は把握しておらず、今後の調査により把握していく、(い)無許可の橋は、正規の手続きを経て占用料を納付している市民との公平性を保てないため是正していかなければならない、(う)今後のスケジュールとしては、平成28年度には河川巡視を実施し、平成29年度からデータとの照合、権利関係の調査及び治水上の安全性の把握に着手するとともに、平成30年度までに指導・是正に着手する予定である旨の回答を行っている。
 これに対し、オンブズマンは判断において、(ア)今後の対応は是正へ向けてスピート感をもって取り組むこと、(イ)いつまでに是正を完了するか目標を立てて取り組むことを要請している。


以上のオンブズマンによる調査をふまえ、札幌市が管理する普通河川に無許可で架けられた橋について把握した実態が、今回、報道されたわけである。法令に則り適切な河川管理を行うという観点からは、札幌市の今回の取り組みは、評価されるべきである。

しかしながら、今般の札幌市の対応は、将来へ向けて改善をはかるものであるとはいえ、第27−126号の申立人が求める「公平な取り扱い」という観点からは、なお課題が残るといわざるを得ない。苦情等調査結果通知書第27−126号における市の回答にあるように、「占用料の納付義務は許可を受けてから発生するので、無許可の橋の設置者から過去に遡って占用料を徴収することはできない」ならば、現在、無許可で橋を架けている者は、過去分の占用料のみならず、今後も許可を受けるまでの期間、占用料の支払いを免れることになるからである。

こうした事態を看過できないとするならば、過去、無許可のまま普通河川に架けられた橋が放置された結果、占用料が徴収されず市に財産的な損害が発生したことは「財務会計上の怠る事実」であるとして、その是正を求める住民監査請求を行うということも、一つの対応となるかもしれない。

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