これまで未掲載だったのは、第30−46号の苦情等結果通知書において、「苦情申立日」が非公開とされたことを不服として、審査請求を行なっていたためである。
そもそもの不服は、平成30年(2018年)12月17日付の公文書一部公開決定において、「公文書一部公開決定通知書(以下、「通知書」という。)」では、第30−46号の非公開部分が、「①申立人の来館日、②申立人が職員に同行を求めた際の具体的な発言内容が分かる部分」と記載されていたにもかかわらず、交付を受けた当該文書の写しでは、「苦情申立日」も黒塗りされていた、ということである。
そこで、通知書に「非公開部分」としての記載のない部分については非公開とする決定がなされておらず、「苦情申立日」は公開されなければならないと考え、審査請求を行うことにした。
もっとも、行政不服審査法は、「処分に対し不服がある者」(行政不服審査法2条)が審査請求をすることができると規定している。したがって、「苦情申立日」を非公開とする決定(=処分)が存在しないのであれば、「処分に対する不服申し立て」自体が成立しないことになる。そこで、審査請求の対象とする「処分」をどのように構成するか、ない知恵を絞ることになった(「決定」から「公開」に至る一連の過程を「処分」と考えた。)。
この点、現時点で改めて考えると、「写しの交付」(=「公開」)を「処分」と構成し、通知書に「非公開部分」として記載されていない「苦情申立日」を非公開とする「公開」処分を不服として審査請求をするのが、自らの主張に最も忠実な理論構成であった。したがって、この点の主張をしなかったことは、審査請求をする上で、戦略的ミスを犯したと言わざるをえない(ただし、公文書の「公開」に処分性が認められるかということ自体、一つの論点である。「公開」は「決定」に基づいて行われる単なる事実上の行為であり、「処分性」がないとされる可能性も十分あると思われる)。
(追記:なお、上記の「処分性」について行政情報課に確認したところ、「公開」は単なる事実上の行為で処分性は認められないものの、「決定」から「公開」に至る一連の手続きが「処分」であり、審査請求が可能であるという説明を受けた。その限りでは、「処分性」に関する当ブログ開設者の見解が受け入れられた模様である。)
結局、平成30年(2018年)12月17日付の原決定に対し、2019年2月4日に行なった審査請求は、2019年12月11日付の札幌市個人情報保護・情報公開審査会(以下、「審査会」という。)の答申を経て、2020年1月15日付の札幌市長名による裁決が原決定を取り消し、この裁決に基づいて「再決定」(2020年1月16日付)がなされた。
ただし、再決定の内容を記載した文書には、第30−46号の非公開部分を「ア 申立人の来館日 イ 申立人が苦情申立てを行った日 ウ 申立人が職員に同行を求めた際の具体的な発言内容が分かる部分」という記載がなされていた。原決定の通知書の記載に加えて、「イ 申立人が苦情申立てを行った日」についても、通知書に非公開とする部分として記載される結果となったわけである。
そこで、この再決定に対し、改めて2020年4月14日付で審査請求(2020年4月14日付)を行なったところ、2020年11月10日付で、再決定は妥当であるとする札幌市個人情報保護・情報公開審査会の答申が出された。したがって、近日中に審査請求を退ける裁決が出されるものと思われる(追記:2020年12月7日付で札幌市長名の裁決が行われたが、請求棄却であった)。
ところで、この答申では、「先行裁決は、原決定の取消しを行ったに過ぎず、処分の変更を行ったものではないことから、変更裁決を行うに当たり不利益変更を禁ずる審査法第48条が適用される事例ではない」という判断が示されている。
先行裁決が「処分の変更を行ったものではない」ということは、原決定の通知書に「申立人が苦情申立てを行なった日」が「非公開部分」として記載されていなくても、原決定において「申立人が苦情申立てを行なった日」を非公開とする処分がなされている、というのが審査会の判断のようである。
このような判断を認めるならば、通知書に「非公開部分」として記載しない部分について、公開の段階で非公開とする取り扱いがまかり通ることになりはしないか、当ブログ開設者は懸念する。この懸念が杞憂であることを願わずにはいられない。