2026/01/08

このブログの読み方

札幌市オンブズマンによる調査内容を紹介するこのブログ、平成28年(2016年)4月以降に調査を終了した案件を紹介しているが、本ブログの開設者としては、このような作業には、主として以下の3つの意義があると考えている。

(1)オンブズマン「活動状況報告書」に掲載されない案件を紹介する
(2)オンブズマン「活動状況報告書」に掲載されない「市の回答」部分を紹介する
(3)「活動状況報告書」が発行されるよりも早くオンブズマン調査の内容を紹介する

以上を目的として、各月ごとに、調査を終了した案件を紹介するエントリーを作成してきた(なお、ブログ開設の意図については、「札幌市オンブズマン観察記はじめます」において、より詳しく説明している)。

しかしながら、このような紹介方法ではインデックス機能が弱く、同種の内容の苦情調査であっても、その終了月が異なる場合には両者を比較するのは困難であった。そこで、各年度に終了した調査を分野別に分類するエントリーを作成したものの、こうしたエントリーもまた、各月ごとのエントリーに埋没することが懸念されるところである。

以上のことから、このエントリーでは、これまで作成したエントリーを類型別に整理することで、読者の利便性を高めることを試みる。

各リンク先では、苦情の概要を紹介し、調査結果通知書等の全文のpdfファイルのリンクを張り付けてある。また、各月ごとに調査を終了した案件を紹介するエントリーにおいては、調査結果通知書等の1枚目の画像データも掲載してある。

読者諸氏においては、本ブログで紹介するデータを通じ、札幌市オンブズマンの活動状況を「観察」していただきたい。

〇オンブズマン調査の分野別分類
 平成29年度(2017年度)終了分
 平成28年度(2016年度)終了分

〇オンブズマン調査の調査終了時期別リスト
・2025年度
 4月5月6月7月8月9月10月、11月、12月、1月、2月、3月
・2024年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2023年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2022年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2021年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2020年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・2019年度
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・平成30年度(2018年度)
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・平成29年度(2017年度)
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
・平成28年度(2016年度)
 4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月

〇オンブズマン調査の処理日数の状況

 ・年度別
  2022年度まで(最新版)

2026/01/07

「札幌市オンブズマン」を過大評価する朝日新聞

 2026年1月6日、朝日新聞朝刊に「札幌市、重大事態認定せず」という記事が掲載された(北海道支社版のみならず、東京本社・名古屋本社版・大阪本社版・西部本社版も同様。web版は1月5日付)。

記事の内容は、8年前(2018年)に市立高校1年生の女子生徒が下校中に同学年の男子生徒から体を触られ不登校になり、3か月後にPTSDと診断されたところ、その案件について札幌市が2025年に「いじめ重大事態」と認め調査を始めたというものである(以下、この調査を便宜的に「調査A」という。)。また、記事では事案発生の翌年(2019年)に「第三者機関に重大事態に当たる可能性を指摘」されていたことも紹介されている。

以上が「有料会員」登録しなくても読める記事の内容であるが、この「第三者機関」こそ、札幌市オンブズマンである。そして、上記の「重大事態に当たる可能性」を指摘しているのが、苦情等調査結果通知書第30-55号である(2019年3月22日付・担当オンブズマン:杉岡直人。以下、当該苦情等調査結果通知書を「通知書」、実施された調査を「調査B」という。なお、調査Bは調査Aよりも時間的に先行する)。当ブログでは、このエントリーで当該案件を紹介している。

この調査Bの通知書は、A4用紙55枚におよぶ「超大作」であるが、現時点で再読すると、調査担当オンブズマン杉岡直人の指摘は捉えるべきポイントがややずれているように思われる。それと同時に、当ブログ開設者がその点について無自覚であったことが、今さらながら悔やまれる。おそらく、当ブログ開設者は公開を受けた当時に通知書が「超大作」であるがゆえ、「流し読み」したものと思われる。この点については恥じ入るばかりである。

とはいえ、当ブログ開設者に公開された調査Bの通知書は「非公開」とされた箇所が多く、前提となる事実関係が十分に把握できなかったのも事実である。こうした観点からは、今回の朝日新聞の記事は、被害者の高校生が受けた加害行為が明らかになった点に意義がある。そのことによって、当該オンブズマンによる調査Bのあり方を考える際、「いじめ防止対策推進法」の規定が手がかりになることが明らかになったからである(なお、調査Bの通知書において、同法は参照されていない)。

この点、上記の記事の有料部分は、「いじめ防止対策推進法は、いじめにより子どもが不登校を余儀なくされたり、深刻な被害を受けたりした疑いがあれば『重大事態』だと定義。被害に遭った子どもの心のケアといった対策に役立てるため、学校側に『速やかに、事実関係を明確にする調査を行う』ことを義務づけている」ことを紹介している。そして、札幌市は今般、同法に基づく調査に着手したというのが記事の内容である(なお、根拠条項は同法28条1項である)。

また、当該オンブズマンによる調査B(第30-55号)においても、「今回の事案は(中略)いじめにおける重大事態に相当する内容であると考えます」という判断が示されていた

しかしながら、同法が規定する「重大事態」においてなされる調査は、「当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため」になされるものである(同法28条1項)。したがって、被害者を救済したり、加害者に行為を止めさせることを目的としているわけではない。それでもなお、今回の事案において「重大事態」においてなされる調査に意義があるとすれば、「当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供する」(同条2項)とされていることが指摘できるであろう(したがって、今回の朝日新聞の記事は「調査」の目的についての説明が不正確である)。

ところで、オンブズマンによる調査Bがなされたのは、被害者に対する学校および教育委員会の対応が不十分であるとして苦情が申し立てられたからである。この点、「いじめ防止対策推進法」は、第四章において「いじめ防止等に関する措置」を規定している点が重要である(「重大事態への対処」が規定されているのは第五章である)。なかでも同法23条3項は、「いじめがあったことが確認された場合」において、「いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援」、「いじめを行った児童等に対する指導」および「その保護者に対する助言」を「継続的に行う」ことを規定している。

この点、調査Bの契機となった苦情申立てにおいては、学校の対応が不十分な点として「加害者に対する懲戒」が適切になされていないという点についても主張されている。しかしながら、「いじめ防止対策推進法」23条3項の規定を前提にするならば、たとえ上記苦情の申立人が学校に対し「加害生徒に対する懲戒」を求めたとしても、より優先されるのは「いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援」であり、「いじめを行った児童等に対する指導」になるといえるだろう。

ところが、残念なことに「いじめを受けた児童又はその保護者に対する支援」が不十分だった結果として、上記苦情の申立人は「加害生徒に対する懲戒」を求めることになったのであろうと、現時点において当ブログ開設者は考えている。また、オンブズマンによる調査Bにおいても、被害生徒および家族に対する支援が不十分であったことが厳しく指摘されている。

また、学校の対応の適切さという観点からは、「いじめ防止対策推進法」23条5項についても考慮しておく必要があると思われる。同項は、「いじめを受けた児童等の保護者といじめを行った児童等の保護者との間で争いが起きることのないよう」に学校が必要な措置を講ずることを規定しているからである。

実際、上記苦情の申立人は、学校の対応により加害行為をした生徒の家族との直接交渉の開始が大幅に遅れた、という主張をしている。しかしながら、通知書の以下の記載は、学校と教育委員会は、いじめ被害者と加害者の保護者間で「争いが起きることがないよう」に、直接交渉の場をお膳立てすべく尽力していたと評価することができるようにも思われる(ただし、こうした評価が「甘い」という批判は甘受する)。

「同月26日、当該高校にて、子の代理人、Aの代理人、学校、教育委員会の四者が話し合いを行い、子の登校の実現に向けて協議しました。学校からは、両者が顔を合わせないための校内での動線について配慮案を複数提示しました。また、登校時のルートについても配慮したいため、子の代理人に対し、子の登校(車での送迎)ルートを教えてほしいと依頼しました。」(※ここに記されたAとは加害生徒である。通知書16頁)

以上の次第で、当該オンブズマンによる調査Bにおいては、学校および教育委員会が「いじめ防止対策推進法」23条が規定する一連の措置を適切に講じたか、という点を中心的な論点とする必要があったと当ブログ開設者は考えている。ところが、調査担当オンブズマン杉岡直人はこうした発想を欠き、当ブロブ開設者も通知書の公開を受けた当時は、そのような発想を欠いていた。痛恨の極みである。

ここでようやく、冒頭に挙げた朝日新聞の記事についてである。この記事は、「弁護士らからなる第三者機関に重大事態に当たる可能性を指摘され」ていたにもかかわらず、長期間経過後に被害者側から疑問を呈されたことを契機として、「いじめ防止対策推進法」が規定する重大事案についての調査を開始した札幌市の対応に批判的である。

また、有料会員登録することで読める箇所(以下に指摘する記事の記述も同様に、有料会員登録することで読める箇所である)においても、「市が設置し、弁護士ら有識者でつくる市オンブズマン」という記載があるように、この記事を執筆した記者の古畑航希は、札幌市オンブズマンに弁護士が携わっていることに一定の意義を見出しているようである。

ところが、上記調査Bの担当オンブズマンの杉岡直人は、その当時、北星学園大学社会福祉学部教授であって弁護士ではない。したがって、札幌市オンブズマンによる調査を権威づけるする理由として弁護士が携わっていることを強調することは、ミスリーディングであるという印象である。

さらに、記事には「弁護士ら有識者でつくる市オンブズマン」という記述もあるが、札幌市オンブズマンは、議会の同意を得て市長が委嘱するのであって(札幌市オンブズマン条例8条2項)、有識者が市オンブズマンをつくっているわけではない。

この点、記事には「同市のオンブズマンは市条例にもとづく第三者機関」という記述もあるが、前記の「有識者でつくる市オンブズマン」という記述が併存していることからすると、この記者は行政オンブズマンである札幌市オンブズマンと、民間のいわゆる「市民オンブズマン」との区別がついていないのかもしれない(ちなみに、「札幌市民オンブズマン」の代表は島田度弁護士で、現在「札幌市オンブズマン」に任用されている3人のうちの1人が樋川恒一弁護士である)。

このほか、記事は「市が19年11月にまとめたオンブズマンへの報告書」が、「重大事態や検証には言及しなかった」という記述がある。この「報告書」とは、調査を実施したオンブズマンが通知書に記載した「意見」をふまえ、調査対象部局がその後どのような対応をしたか、さらには現在の状況について、オンブズマン事務局長名での照会に対する回答内容が記載された文書のことである。

したがって、照会内容に対する回答文書という性格上、「重大事態に相当する」旨の指摘をするのみで「重大事態として取り扱う」ことを求めているわけではないオンブズマンの意見に対し報告書が「重大事態」に言及しないことも、「本格的な検証」を行った上で「被害生徒の学習環境の確保について、十分な検討を求める」オンブズマンの意見に対し報告書が「検証」について言及しないことも、照会に対する回答文書という上記「報告書」の性格からすると、やむを得ないように思われる(ただし、照会事項を明確に特定している場合にはこの限りでない)。

・・・いかがであろうか。当ブログはここ最近の傾向として、札幌市オンブズマンが行う調査が積み残した課題を指摘することに注力してきた。そのため、このエントリーにおいても、冒頭に挙げた朝日新聞の記事を契機として、オンブズマンが実施した調査Bについて同様の指摘を行うこととしたものである。

これに対し、冒頭の記事は札幌市オンブズマンの判断を当然視、あるいは神聖視し、疑問を差し挟むことをしていない。当ブログ開設者が、朝日新聞が札幌市オンブズマンを過大評価していると感じる所以である。1月6日付「素粒子」も参照されたい。

【参照条文】
◯いじめ防止対策推進法
第四章 
(いじめの防止等に関する措置)
第23条
1〜2 (略)
3 学校は、前項の規定による事実の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該学校の複数の教職員によって、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行うものとする。
4 学校は、前項の場合において必要があると認めるときは、いじめを行った児童等についていじめを受けた児童等が使用する教室以外の場所において学習を行わせる等いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにするために必要な措置を講ずるものとする。
5 学校は、当該学校の教職員が第3項の規定による支援又は指導若しくは助言を行うに当たっては、いじめを受けた児童等の保護者といじめを行った児童等の保護者との間で争いが起きることのないよう、いじめの事案に係る情報をこれらの保護者と共有するための措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
(以下略)

第五章 重大事態への対処
(学校の設置者又はその設置する学校による対処)
第28条 学校の設置者又はその設置する学校は、次に掲げる場合には、その事態(以下「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。
一 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
二 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
2 学校の設置者又はその設置する学校は、前項の規定による調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供するものとする。
(以下略)