上記の期間(2024年6月)に調査を終了したのは13件で、このうち12件で調査結果が通知された。また、残る1件は調査しない旨が通知された。
さて、今回もまた、当ブログ開設者の興味関心を喚起する案件が目白押しである。そのうち、「火葬場予約システム」が導入されたことを契機として申し立てられた第2024-13号は、「ゆりかごから墓場まで」、札幌市の業務がいかに広範にわたるかを示していると思われた。以下では、当ブログ開設者の関心を引いたポイントをできるだけ簡潔に紹介する。
まずは、道路を通行する自動車により振動の被害を受けている旨の苦情が申し立てられた第2024-12号である。この案件の担当オンブズマン梶井祥子は、「本件道路の舗装は法定基準を満たしており、舗装構成には問題がない」と判断した。
しかしながら、道路交通振動については、振動規制法16条が「測定に基づく要請」について規定している。札幌市においても、道路交通振動の状況についてwebサイトで公開しており、環境局が当該業務を所管している。
本件調査の「市の回答」においても、申立人が「環境局に言っても対応してくれない」と主張していることや、環境局都市環境推進部環境対策課にも匿名の意見が寄せられていることなど、申立人による(と思われる)「環境局」への働きかけについての言及があるほか、調査対象部局自体も、「限度を超えた振動も確認できなかった」旨、言及している。
この点、市の回答にいう「限度を超えた振動」とは、上記の振動規制法に基づく限度基準を指すと思われるのだが、調査担当オンブズマン梶井祥子は、本件苦情に係る道路の舗装が法定基準を満たしている、ということ以上の説明を調査対象部局に求めることはしなかった。
以上の次第で、本件調査の実質的意義をより高めようとうするならば、上記の回答にある「限度」とはどのような根拠に基づき、具合的にどのような基準であるかということや、限度を超える振動が確認できた場合に市がどのような対応をするかについて、市に説明を求める必要があったと当ブログ開設者は考えている(考えられる論点は、舗装の法定基準は満たすものの振動の限度基準を超えるケースの取扱いである)。
ところで、調査担当のオンブズマンは、担当案件にどれだけ心血を注ぐべきであろうか。とりわけ、今回公開された案件のうち、第2024-3号、第2024-4号、第2024-5号および第2024-14号のように(いずれも申立人の子が通う学校の教員の対応に関わる苦情である)、申立人が情緒の安定を欠くという印象を抱かせる苦情については、第2024-21号の担当オンブズマン梶井祥子がそうしたように、「冷酷非道」に徹することも求められる場合もあるのではないか。むしろ、プロならばそうすることもまた、一つの識見たりうるのではないか。
しかしながら、残念なことに、上記4件の調査担当オンブズマンである梶井祥子は「冷酷非道」に徹することはなかった。その結果、当ブログ開設者は同オンブズマンの調査への取り組みは一貫性を欠くという印象を抱くことになった。それとも、調査担当オンブズマンの梶井祥子は、今回公開分の4件の調査に手を焼いているなか、新たに申し立てられた第2024-21号については「冷酷非道」に徹するように方針転換した、ということであろうか。
次に紹介するのは、札幌プレミアム商品券の申し込みを受け付けた旨の返信メールがこない旨の苦情が申し立てられた第2024-15号である。プレミアム商品券に関しては、2023年度にも発券場所が少ない等の苦情(第2023-27号)が申し立てられており、当ブログ開設者も南区内に発券場所のローソンが5店舗しかないというのはさすがに少なすぎると指摘したところである(このエントリー)。
そして、2024年度のプレミアム商品券である。2024年度は2023年度と同様の紙商品券に加えて、スマホ商品券が追加された。また、紙商品券もコンビニ端末での発券手続を不要とする「改善」が図られたはずだったのだが、本件苦情が申し立てられる事態となった。その経緯は結果通知書本体で確認していただきたい。
ところで、当ブログ開設者は、本件における市の対応は、「返信メールが来ない」という申立人からの問い合わせに適切に対応できておらず、大いに問題があったと考えている。しかし、市の対応は頑なで、その旨の謝罪一つするつもりもないようだ。
調査担当オンブズマンも、「想定外の事態に対し、担当課及び事務局の方々は混乱の中で、尽力されたものとオンブズマンは思います」などと、市の対応を持ち上げている。その一方で、申立人への個別的対応の適否については、申立人が主張する「業務不履行」は認められないと判断したが、問い合わせに適切に対応できていない点で、「業務の履行は適切さを欠いた」と当ブログ開設者は考えている。
最後に、第2024-26号である。この案件は、不動産を所有する会社が入居者である生活保護受給者に退去を求めたところ、当該入居者から提訴され多大な迷惑と損害を被ったとして苦情が申し立てられた案件である。調査担当オンブズマンは、本件苦情がすでに調査を終了した第2023-17号と一連のものであるとして調査を実施しなかった。
当ブログ開設者は、調査ずみの案件において、調査担当オンブズマンが申立人の稚拙な主張を咀嚼せずに調査を実施した結果、調査対象部局から必要な説明を受けることができず、本件調査担当オンブズマンも、そうした調査対象部局の説明のブランク(その限りで「調査は未実施」というのが当ブログ開設者の評価である。)を埋めるつもりもなかったものと受け止めている。
この点、調査ずみの案件では、生活保護受給者が転居する場合に保護課はどの程度関与するか、とりわけ、保護費の支給の可否を判断する際、①ペットを飼育する保護受給者の転居先におけるペット飼育の可否を確認することの要否や、②保護受給者が入居する住居から退去を求められた場合の転居費用の支給の可否といった一般論が、市の回答で示されるように「問い」の建て方が工夫されてしかるべきであったと当ブログ開設者は考えている。
おそらく、苦情ベースでものを考えるのと、制度ベースでものを考えるかで苦情の見え方が異なってくるのであろう。その結果、調査を実施する際の「問い」の建て方も異なってくるというのが当ブログ開設者の理解である。当ブログ開設者としては、こうしたギャップが埋まることを願っている。
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①第2024-3号
申立人の子が通う学校において他の児童に対し教員による不適切な指導が行われており、申立人の子も心理的に負担に感じているようであるとして、そうした教員の指導の改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)
②第2024-4号
申立人の子が通っていた学校において、申立人の子を含む子どもたちに対し複数の教員から不適切な指導が行われていたとして、そうした教員たちの指導の改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)
③第2024-5号
申立人の子どもたちが通っていた学校では他の子どもに対し教員から不適切な指導がなされ、申立人自身も教員から嫌がらせを受け体調を崩すこともあるなど、当該学校では教員による不適切な指導がなされているとして改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)
④第2024-10号
生活保護を受給している申立人が長期にわたり家庭訪問がなされず、訪問された際にも極めて短時間で不十分であったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)
⑤第2024-12号
自宅前を大型車が通行するたびに自宅が振動するため土木センターに苦情を伝えても「道路に問題はない」として対応してもらえないとして、道路を直すなどの対策をとることを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)
⑥第2024-13号
札幌市の火葬場では2024年3月から「火葬場予約システム」を導入したが、予約時間の枠にずれて到着した場合の案内が不十分である等、霊柩車の運行会社から改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
⑦第2024-14号
申立人の子が通う学校において、担任が子の性格や特性に対応した適切な指導をしていないことに不満を覚え教育委員会に対応を求めたにもかかわらず、教育委員会が十分な調査を実施しないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)
⑧第2024-15号
札幌プレミアム商品券をwebから申し込んだが来るはずの返信メールが来ず、そのことについて問い合わせのメールを送っても満足な対応がなされないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)
⑨第2024-18号
市営住宅に入居する申立人が階下から犬の鳴き声がして騒々しいことを住宅管理公社および市住宅課に相談しても解決しないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
⑩第2024-19号
市営住宅に住む申立人が同じ棟に住む他の住民の一連の迷惑行為について市住宅課に対応を求めても十分対応がなされないとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:梶井祥子)
⑪第2024-20号
法律事務所に勤務する申立人が不動産競売申立書に添付する「公課証明書」を取得する際に市役所を訪問いた際の市職員の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:神谷奈保子)
⑫第2024-22号
地下鉄駅でエスカレーターを利用していたところ突然停止したため歩いて登っていた際に転倒し負傷したが、一連の駅職員の対応が不十分であるとして苦情が申し立てられたケース。申(担当オンブズマン:神谷奈保子)
⑬第2024-26号
生活保護受給者が入居していた賃貸物件を所有する会社が当該受給者から提訴され多大な迷惑と損害が生じたとして、保護課が当該受給者の提訴のため法テラスを紹介した経緯等についての説明を求めて苦情が申し立てられたケース。すでに調査を終了した第2023-17号と一連の苦情申し立て内容であるとして調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)