2022/02/21

オンブズマン再任(2022年)

2022年2月21日、以下の議案が札幌市議会に提出され、同日、議会の同意を得た。これにより、原俊彦氏(大学名誉教授)がオンブズマンとして2期目の委嘱がなされ(任期は2024年2月29日まで)、2022年3月1日以降も引き続き1年間、八木橋真紀子氏(オンブズマン2期目2年目・民事調停委員)、田村智幸氏(オンブズマン1期目2年目・弁護士)と3名の体制で、札幌市オンブズマンの職務が遂行される。


ところで、当ブログ開設者は、原俊彦氏のオンブズマン1期目の「功績」は、オンブズマンは安易に調査に着手せず、市民自ら対応できることは自ら行動するという、市民の自律性・主体性の確立を促す一方で、満足に文章を書くこともままならない市民の苦情(※1)については、オンブズマンが調査を実施して手厚く支援するという、新たな札幌市オンブズマン像を打ち出した点にあると考えている。


また、原俊彦氏が調査を実施した案件についても、判断が明らかに間違っていたり、見当が外れている案件が数多ある。そのため、原俊彦氏にオンブズマンを委嘱するのが適切か疑問なしとしないものの(※2)、結果として、市民に対し、安易にオンブズマンを頼ることなく、市民自らの主体的な行動を促すことにつながっている可能性がある。

さらに、市民にとっては、原俊彦氏が何を理解していないかを探求することによって、制度への理解を深めることが期待できるとともに、調査対象となる市の担当部局にとっても、原俊彦氏にも理解できるような説明を心がけることは、市民一般に向けた説明能力の向上をもたらすことが期待できる。

このように、原俊彦氏のオンブズマン1期目の「功績」は、満足な調査をすることままならぬ人物(※3)がオンブズマンに委嘱されると、かえって、市民の主体的な行動を促すのみならず、市民が制度への理解を深めたり、市の担当部局が市民に向けた説明を改善する等の効果をもたらす可能性が浮き彫りになったことである。

もっとも、このような原俊彦氏の「功績」は、オンブズマンに期待される役割が適切に果たされた成果といえるのかということや、原俊彦氏の「功績」が支払われたオンブズマン報酬・月額55万円×24か月の総額1,320万円(税引前)に釣り合っているかについては、別途検討の必要性がある。ただし、他の人物にオンブズマンに委嘱していたならばより多くの成果がえられたという保障はなく、市民としては、札幌市が上記の額を負担することについては、甘受せざるをえないように思われる。

当ブログ開設者はこれまで、原俊彦氏を”眠れるオンブズマン”と呼んできた。オンブズマン2期目の原俊彦氏が、これまで同様に眠り続けたとしても、そのことで市民や市の担当部局への効果が期待できるならば、(やむを得ないが)それでよし。三年寝太郎よろしく突然目覚めるや否や、市民のための力仕事に尽力するならば、それもまたよし、である。オンブズマン原俊彦氏の2期目から、目を離すことができない。

(※1)
「文章を書くこともままならない市民」というのは、2020年7月28日に当ブログ開設者が苦情申立てのためオンブズマンと面談した際(その案件が、第2020-20号である)、担当の原俊彦オンブズマンが行った発言である。曰く、「オンブズマンとは、ろくに文章を書くこともままならない市民が利用する制度」であるそうだ。
 ただし、後日オンブズマン事務局に照会した回答によると、「そのような発言をした事実は確認できなかった」との由。原俊彦オンブズマンが自己の発言を記憶する能力を欠くか、適切さを欠く発言であることがあまりにも明らかであるため、発言した事実を否定せざるを得なかったかのいずれかであろう。

(※2)
各月の公開分を紹介する際、原俊彦氏の担当案件を含めて、各案件の看過できない問題点を指摘してきた。このほか、原俊彦氏のオンブズマンとしての適格性については、第2021-87号及び第2021-92号の「苦情申立ての趣旨」も参照されたい。

(※3)「満足な調査をすることままならぬ人物」とは、いうまでもないことだが、「文章を書くこともままならない市民」という原俊彦氏の発言に対する当てこすりである。こうしたオンブズマンでも適切な調査が実施できるように、場合によっては、苦情申立人自らオンブズマンに対し、噛んで含めるような説明をすることが必要かもしれない。

2022/02/19

2022年1月に調査を終了したケース

 2022年2月1日、同年1月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、2022年2月14日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年1月)に調査を終了したのは9件で、このうち4件で調査結果が通知されている。また、残る5件のうち3件は調査をしない旨が通知され、2件は申立人の取り下げによる調査中止により、調査が終了している。

さて、今回の公開された案件のうち、最も興味深いのは、札幌市文化芸術活動再開支援事業の支援金についての苦情(第2021-75号)である。事業の詳細は、札幌市の担当部局(市民文化局文化部文化振興課)のサイト及び同事業の事務局のサイトで確認して頂くとして、
札幌市がこのような「文化芸術活動の復興」を目的とする事業を実施していることに驚いた。

ところで、この案件では、支援金の交付決定通知を受けているにもかかわらず、事後的に決定が誤りであったとして、支援金が支給されなかったことについて苦情が申し立てられた。その後、オンブズマンによる調査の過程で、支援金の支払いがなされるに至っており、その限りでは、めでたし、めでたしである。

しかしながら、この調査では、①支援金の支払い先が実演や展示のイベントが開催される施設であること(したがって、本件の苦情申立てを行ったのはイベントの主催者であると思われるが、支援金の直接の支払先ではない)、②申請から支払いに至るプロセスが、申請→支援金交付決定→イベント終了後の実績報告→支援金の支払い、となること、③イベントの主催者が手続きを行う相手方は施設であること、④施設が市(実際は委託先の事務局)に申請を行うとともに、前述したように支援金の支払い先となること等、支援金支払いの制度枠組みについての説明が必ずしも十分ではない。

そのためでもあるのか、オンブズマン判断は、支援金交付決定が適切になされたかについて論ずる一方で、いったん交付決定を行った支援金を事後的に支給しないことの当否については、全く論じられていない。すなわち、交付決定に問題があったとしても、そのことが直ちに交付決定後の支援金不支給を正当化することにはならない、という視点が完全に欠落しているということである。

つまり、交付決定後に交付金を支給しないならば、交付決定自体を取り消したり、実績報告後になされる実際の交付金の支給額を0円として決定する等、次のステップの手続きが必要になるはずである。したがって、この案件では、すでに交付決定がなされている以上、もともとの交付決定が適切でなかったとすれば、その後始末をどのようにつけるのが適切であるかが論じられる必要がある。この点が論じられてはじめて、将来的な改善策として、そもそもの交付決定が適切になされるための方策が論じられるべきであろう。

もっとも、この案件を担当したのは、原俊彦オンブズマンである。今回紹介する別件の苦情(いずれも当ブログ開設者が申し立てた案件)、第2021-87号及び第2021-92号では、いずれも具体的なオンブズマン名は記されていないものの、原俊彦オンブズマンがいかにオンブズマンとしての適格性を欠くのか、申立人の主張が苦情申立ての趣旨において滾々と繰り広げられている。この第2021-75号も、オンブズマンとしての適格性に疑問を抱かせるエピソードの一つに位置づけることができるもしれない.

このほか、第2021-92号における「調査しない」という判断の理由づけが適切ではない旨、このエントリーで論じている。あわせて参照していただけると幸いである。

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①第2021-73号
 生活保護の受給者が、通院のための自動車の利用を認めないという判断およびそのことに伴う市職員の一連の対応に納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

②第2021-75号
 コンサートの実施に当たり、札幌市文化芸術活動再開支援事業の支援金を申請し、いったんは交付決定通知を受けたが、コンサート実施後に他の助成金を受給していることを理由として支援金が支給されなかったことについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

③第2021-76号
 生活保護受給者が、担当ケースワーカーが保護停止の事例を挙げて不安をあおる等の対応をすることが不満であり、担当者の交代を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

④第2021-78号
 有料道路障害者割引の適用を受けるために必要な車載器番号が変更されたにもかかわらず、割引申請の更新の都度、市の担当者が旧番号を申請書類に記載したために長らく割引を受けてこられなかったとして、この間の経緯の説明を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑤第2021-80号
 シルバー人材センターの派遣事業として児童館に派遣された申立人が館長からパワハラを受け、そのことについて市の担当課に対処を求めたにもかかわらず、引き続き就労できるよう働きかける等の十分な対応がなされないとして、苦情が申し立てられたケース。その後、申立人による苦情申立ての取り下げにより、調査は中止されている。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑥第2021-87号
 2022年2月末をもって1期目の任期を満了するオンブズマンについて2期目の任用予定の有無を照会したところ、任用予定をブラックボックス化した回答しかなされなかったとして、手続きをブラックボックス化する理由の説明を求めて苦情が申し立てられたケース。苦情について調査しない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑦第2021-88号
 滞納していた国民健康保険の保険料について、就職したことにより毎月の賃金から天引きされると思っていたが、その後、滞納分の保険料について一括納付を求められたことを契機として、滞納分の取扱いについて職員から適切な説明がなされたなかったこと等について、苦情が申し立てられたケース。その後、申立人の苦情取り下げにより、調査は中止されている。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑧第2021-92号
 2022年2月末で任期を満了するオンブズマンについて、2期目の任用予定の存否及び委嘱過程をブラックボックス化する理由の説明を求めて苦情が申し立てられたケース。苦情について調査しない旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:田村智幸)

⑨第2021-93号
 市が行った違法建築物の調査について、調査結果及び調査内容について報告してほしいとして、苦情が申し立てられたケース。苦情について調査しない旨が通知され、調査は終了しているた。(担当オンブズマン:原俊彦)