2023/04/29

2023年2月に調査を終了したケース

 2023年3月1日、同年2月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、3月15日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2023年2月)に調査を終了したのは6件で、このうち苦情申し立てに基づくものが5件、オンブズマンの自己の発意に基づくもの(いわゆる「発意調査」)が1件となっている。また、苦情申立に基づく調査のうち、3件で調査結果が通知され、残る2件のうち1件で調査をしない旨、1件で調査中止が通知されている。

さて、今回公開分の発意調査(第2022-発1号)は、札幌市オンブズマンが2年ぶりに実施したものである。調査を担当したのは、この2月に通算4年の任期を満了した八木橋オンブズマンである。八木橋オンブズマンが発意調査を実施するのは4年の任期で初であり、「置き土産」といえるかもしれない。なお、調査内容については、調査結果通知書の本体でご確認いただきたい。

また、今回公開分では、調査手続きの観点から第2022-70号が興味深い。この案件は、札幌市の業務を受託した企業の従業員が、市職員から「パワハラ」を受けたとして苦情が申し立てられた案件である。ただし、「パワハラ」を受けたと主張する本人の「代理人」として、同僚から苦情が申し立てられている。

調査を担当オンブズマンによると、「なかなか連絡がつかない申立人自身の本件調査の継続の意思確認に少々時間を要した」とのことであるが、申立人の「顕在化した問題を調査中止で収めることは希望しない」意思が確認できたとして、調査結果が通知されている。

この点、調査対象部局内においても、「代理人による苦情申立てであるが、申立人がこの内容を承知しているか疑問である」という主張が存在したことが、「市の回答」部分に記載されている。そのため、当ブログ開設者は、代理人による苦情申立てがなされた後、当初は苦情申立に消極的だった申立人が「翻意」したという心象を抱いている。

したがって、本来ならば本件については申立人の意思が不明確であることを理由としていったん調査を終了し、別途、申立人の意思が明確な苦情申立がなされたならば、改めてオンブズマンは調査に着手すべきであったと考えている。ただし、「簡易迅速」という札幌市オンブズマン制度の趣旨に照らすと、そこまで厳格な手続きを求めることが適切かは、検討する余地はあるだろう。

なお、本件では申立人(代理人)の主張を受け、市の回答において「パワハラの成否」について言及されている。その趣旨は「市職員の申立人への対応は適切さを欠いたものの、パワハラではない」というものである。

このような説明は、「募ったが募集していない」という時の首相の国会答弁へのオマージュかもしれないが、対応の適否と「パワハラ」の成否を区分して論じることに実益があるとは思われない。調査担当のオンブズマンは、市にこうした弁明の余地を認めずに、市職員の申立人への対応の適否についてのみ論ずれば十分であったと思われる。

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①第2022-70号
 札幌市の業務を受託した企業の従業員が当該業務の遂行過程において、市職員から怒鳴りつけられる等のパワハラ行為を受けたとして、当該職員への処分等の対処を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

②第2022-71号
 水道料金の不払いを理由として給水停止の通知を受けたことを不服として、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

③第2022-77号
 札幌市に寄付をするに際し特定の日付を希望日として伝えていたにもかかわらず、市からの連絡が途絶えたことにより当該特定の日付で寄付することができなかったとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

④第2022-78号
 中通りにある有料駐車場付近の除雪に関し苦情が申し立てられたケース。申立人が「申立ての原因となった事実についての利害を有しない」(札幌市オンブズマン条例16条1項1号)として、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑤第2022-79号
 申立人の関係者が生活保護を受給しているところ、申立人が保護課に対し当該受給者への対応を求めても適切な対応がなされなかったとして苦情が申し立てられたケース。申立人の苦情申立ての取り下げにより、調査は中止された。(担当オンブズマン:原俊彦)

⑥第2022-発1号
 札幌市がIT技術の活用を推進していくなかで、高齢者等新たな技術への対応が困難と考えられる市民に対しどのように対処していくかについて、オンブズマンが自己の発意により調査を実施したケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)