2023/01/25

2022年11月に調査を終了したケース

 2022年12月2日、同年11月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、公開決定期限延長のうえ、2023年1月13日付で一部公開決定がなされた。

上記の期間(2022年11月)に調査を終了したのは11件で、このうち9件で調査結果が通知され、残る2件は調査をしない旨が通知されている。

さて、今回公開された案件のうち最も興味深い案件は、ネットカフェを住所とする転入届の受付を拒否されたとする第2022-49である。市の回答では、どのような場合にネットカフェを住所とすることが認められるかという要件が示されているが、札幌市中央区において実際に認められ事例は存在しない模様である。

また、「路面電車無料デー」の実施にともなう定期券の取り扱いについて苦情が申し立てられた第2022-44号も興味深い。市の回答では「定期券は特定の区間を繰り返し乗車する利用者に対して、一定の割引率を適用した乗車券」であると説明がなされているが、札幌市電の定期券は利用区間が特定されることなく、全区間が利用できる取り扱いとなっている。

そのため、定期券利用者が「路面電車無料デー」に乗車する場合、実質的には定期券の日割額を負担していることになるのみならず、「路面電車無料デー」が含まれないように定期券を購入することも不可能である。したがって、当ブログ開設者は申立人の主張にも一理あると考えるのだが、いかがであろうか(ただし、どのように定期券利用者の不利益を解消するかは、考慮を要するところである)。

このほか、第2022-52号第2022-54号および第2022-58号は、いずれも当ブログ開設者の申し立てた苦情である。このうち、第2022-52号は、公文書公開請求に関する苦情であるが、①いわゆる「個人情報」として非公開になる情報がどのようなカテゴリーのものがあるか、②当該情報を非公開とする際、決定通知書にどのような記載がなされるべきか、といった点について、市の対応に不備があるとして苦情を申し立てたのであるが、調査担当のオンブズマンにも申立ての趣旨が理解できるように文章化するには、まだまだ当ブログ開設者の力量が不足していた模様である(あえて言うまでもないが、「皮肉」である。)。

次に、第2022-54号及び第2022-58号は、苦情申立てを受理したオンブズマン事務局の対応等についての苦情である。いずれも「調査しない旨」が通知されているが、第2022-54号のオンブズマン判断の問題点は、第2022-58号の申し立てにおいて指摘した。

また、第2022-58号については、その趣旨は実質的にみて第2022-54号においてオンブズマンが「調査しない」と判断したことに対する苦情であるとして、「オンブズマンの行為」についての苦情は調査対象とならないというのであれば当ブログ開設者も理解できる。

しかしながら、「オンブズマンが既に調査を実施した苦情については、オンブズマンは調査を行うことができません。オンブズマンが調査を行わないと判断した苦情についても同様です」というのでは、苦情の実体的な中身(については調査を実施していない)と、調査しないというオンブズマン判断とを混同している点で、オンブズマン判断は言葉足らずであると言わざるを得ないだろう。

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①第2022-43号
 市の保育施設が建設されるに際し地域住民に対する説明を欠いたり、建物の高さについての説明が一貫性を欠いたこと、騒音や眺望が妨げられる等の支障があること及び情報公開請求に際し職員からやめてほしいと言われたことなどについて、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

②第2022-44号
 定期券を購入して路面電車を利用している申立人が、「路面電車無料デー」が設けられたことを理由として、日割りでの払い戻しまたは定期券の期限の延長を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)

③第2022-45号
 申立人の自宅裏の市有地に散在する単管パイプ等の取り扱いについて、市に真摯な対応を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)

④第2022-47号
 生活保護を受給する申立人が担当ケースワーカーの対応に不満があるとして、上司による対応等を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑤第2022-48号
 申立人がかつて勤務していた介護保険事業所が報酬を不正に請求しているという申し出をきっかけとして、市が事業所から提供を受けた資料について申立人が個人情報開示請求をしたところ、すでに廃棄済みであることを理由として非開示決定がなされたことを不服として、再度調査を実施することを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
⑥第2022-49号
 札幌市外からの転入手続きの際、ネットカフェを新しい住所とする転入届の受付を拒否されたとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
⑦第2022-50号
 生活保護を受給する申立人が、生活扶助が1万円ほど少なくなったのは誰かが着服したためではないかとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
⑧第2022-52号
 札幌市オンブズマンの調査に関する文書について公文書公開請求を行った申立人が、非公開部分の特定をするとともに当該箇所を非公開とする理由を明確に記載した通知書の交付を求め、あわせて決定通知書記載の非公開理由のひな形について、非公開情報該当性についての記載の明確にすることを求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:田村智幸)
⑨第2022-53号
 申立人が区保健センターで子どもの乳幼児健康診断を受けた際、45分以上も待機することになったとして、待機時間の改善を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:原俊彦)
⑩第2022-54号
 オンブズマンに苦情を申し立てたところ、調査が開始される前に調査対象となる部局の職員が申立人に接触を図ることはオンブズマン調査の公正・中立性に疑義を生じさせるとして、苦情が申し立てられたケース。申立人が「利害」を有さないとして、苦情について調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:田村智幸)
⑪第2022-58号
 オンブズマンが調査を実施する要件たる「申立人の利害」について市民に周知を図ること、オンブズマン事務局がオンブズマンの公正・中立性に疑義を生じさせる行為を慎むこと及び苦情申立がなされた場合にはオンブズマンが調査を実施する・しないに関わらず「受理通知」を送付することを求めて、苦情が申し立てられたケース。いずれも「オンブズマンの行為」に対する苦情であるとして、調査しない旨が通知された。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)