2019年12月1日、同年11月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、12月15日に一部公開決定がなされた。
上記の期間(2019年11月)に調査を終了したのは12件で、このうち9件で調査結果が通知されている。また、1件は申立人による苦情申し立ての取り下げにより、2件は調査をしない旨が通知され、調査が終了している。
その中で注目されるのが、第2019-61号である。この案件は、り災証明書における損壊の程度に関し苦情が申し立てられた事例であるが、オンブズマンは、「そのような専門的知見を持たないオンブズマンが調査・判断をすることは相当ではない」として、札幌市オンブズマン条例16条2項が定める、「調査することが相当でない特別の事情があると認められるとき」という、調査対象外事項に該当すると判断した。さしづめ、札幌市オンブズマンの”ど素人宣言”とでも言えようか。
ところで、札幌市オンブズマンは、「人格が高潔で、行政に関し優れた識見を有する者のうちから、議会の同意を得て、市長が委嘱する」(札幌市オンブズマン条例8条2項)とされている。したがって、オンブズマン自身が「そのような専門的知見」を持たないことを公言してはばからないとしても、どのような点で「行政に関し優れた識見を有する者」であるのか、大いに関心をひかれるところである。
もっとも、「行政に関し優れた識見を有する者」をオンブズマンに任用しようにも、森羅万象あらゆる行政に関して精通した人物を任用することなど、そもそも無理な話であるようにも思われる。そうであるならば、特定分野に精通した人物をオンブズマンとして任用するにしても、専門外の事項についてはど素人であるということを、制度としては織り込み済みと考えるべきなのかもしれない。
また、オンブズマンが苦情として取り扱う事項についてど素人であったとしても、そのことで直ちに制度運用に支障が生じると断言するのも困難である。むしろ、オンブズマン調査の対象となった部局には、ど素人のオンブズマンにも理解できるように説明することが求められるのであり、オンブズマンによる調査は、市職員が対外的な説明能力を向上させる絶好の機会になり得るものである。つまり、オンブズマンによる調査過程そのものが、札幌市オンブズマン制度の目的である「市政の改善」(札幌市オンブズマン条例1条)につながるわけである。
それにもかかわらず、今回の第2019-61号では、市の回答が示されることなく調査が終了している。当ブログ開設者は、市職員による説明機会の喪失という不利益は決して小さくないと考えるが、残念ながら担当オンブズマンは、苦情に関する事項について専門的知見を持たないのみならず、オンブズマン制度の存在意義についての知見も欠いているように思われる。
①第2019-52号
障害福祉サービス受給者証の更新手続きについて問い合わせた際の職員対応等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマ:八木橋眞規子)
②第2019-53号
生活保護受給者に対する担当ケースワーカーによる一連の対応等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
③第2019-54号
隣地の住宅新築工事において違法なブロック塀が設置されているにもかかわらず、市の対応が不十分であるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
④第2019-55号
日常生活用具の給付決定に時間がかかったために消費税増税分の負担を強いられることになったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
⑤第2019-56号
市営住宅退去時に敷金を超える金額を負担するよう請求されたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
⑥第2019-57号
生活保護受給者が、水道を止められたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
⑦第2019-58号
街路灯から落下したサビにより車の屋根が損傷したことに関し、市には賠償責任はないという回答のほか、職員の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
⑧第2019-59号
市営住宅の自治会に対する市の指導が不十分である等、市の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
⑨第2019-61号
地震で損壊した住宅が「一部損壊」と判定されたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。「苦情について調査しない」旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
⑩第2019-63号
生活保護受給者が担当ケースワーカーから、同じマンションの居住者の前で名前を呼ばれたのは個人情報の漏洩であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
⑪第2019-64号
国民健康保険料の滞納により財産を差し押さえられたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人の苦情取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:房川樹芳)
⑫第2019-71号
市営温水プールの水泳教室における先生の評価に納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。当該水泳教室は温水プールの指定管理者の独自事業で「市の業務」に該当しないとして、「苦情について調査しない旨」が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
上記の期間(2019年11月)に調査を終了したのは12件で、このうち9件で調査結果が通知されている。また、1件は申立人による苦情申し立ての取り下げにより、2件は調査をしない旨が通知され、調査が終了している。
その中で注目されるのが、第2019-61号である。この案件は、り災証明書における損壊の程度に関し苦情が申し立てられた事例であるが、オンブズマンは、「そのような専門的知見を持たないオンブズマンが調査・判断をすることは相当ではない」として、札幌市オンブズマン条例16条2項が定める、「調査することが相当でない特別の事情があると認められるとき」という、調査対象外事項に該当すると判断した。さしづめ、札幌市オンブズマンの”ど素人宣言”とでも言えようか。
ところで、札幌市オンブズマンは、「人格が高潔で、行政に関し優れた識見を有する者のうちから、議会の同意を得て、市長が委嘱する」(札幌市オンブズマン条例8条2項)とされている。したがって、オンブズマン自身が「そのような専門的知見」を持たないことを公言してはばからないとしても、どのような点で「行政に関し優れた識見を有する者」であるのか、大いに関心をひかれるところである。
もっとも、「行政に関し優れた識見を有する者」をオンブズマンに任用しようにも、森羅万象あらゆる行政に関して精通した人物を任用することなど、そもそも無理な話であるようにも思われる。そうであるならば、特定分野に精通した人物をオンブズマンとして任用するにしても、専門外の事項についてはど素人であるということを、制度としては織り込み済みと考えるべきなのかもしれない。
また、オンブズマンが苦情として取り扱う事項についてど素人であったとしても、そのことで直ちに制度運用に支障が生じると断言するのも困難である。むしろ、オンブズマン調査の対象となった部局には、ど素人のオンブズマンにも理解できるように説明することが求められるのであり、オンブズマンによる調査は、市職員が対外的な説明能力を向上させる絶好の機会になり得るものである。つまり、オンブズマンによる調査過程そのものが、札幌市オンブズマン制度の目的である「市政の改善」(札幌市オンブズマン条例1条)につながるわけである。
それにもかかわらず、今回の第2019-61号では、市の回答が示されることなく調査が終了している。当ブログ開設者は、市職員による説明機会の喪失という不利益は決して小さくないと考えるが、残念ながら担当オンブズマンは、苦情に関する事項について専門的知見を持たないのみならず、オンブズマン制度の存在意義についての知見も欠いているように思われる。
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①第2019-52号
障害福祉サービス受給者証の更新手続きについて問い合わせた際の職員対応等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマ:八木橋眞規子)
②第2019-53号
生活保護受給者に対する担当ケースワーカーによる一連の対応等について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
③第2019-54号
隣地の住宅新築工事において違法なブロック塀が設置されているにもかかわらず、市の対応が不十分であるとして苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
④第2019-55号
日常生活用具の給付決定に時間がかかったために消費税増税分の負担を強いられることになったとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
⑤第2019-56号
市営住宅退去時に敷金を超える金額を負担するよう請求されたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
⑥第2019-57号
生活保護受給者が、水道を止められたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)
⑦第2019-58号
街路灯から落下したサビにより車の屋根が損傷したことに関し、市には賠償責任はないという回答のほか、職員の一連の対応について苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
⑧第2019-59号
市営住宅の自治会に対する市の指導が不十分である等、市の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)
⑨第2019-61号
地震で損壊した住宅が「一部損壊」と判定されたことに納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。「苦情について調査しない」旨が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
⑩第2019-63号
生活保護受給者が担当ケースワーカーから、同じマンションの居住者の前で名前を呼ばれたのは個人情報の漏洩であるとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)
⑪第2019-64号
国民健康保険料の滞納により財産を差し押さえられたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人の苦情取り下げにより、調査は終了している。(担当オンブズマン:房川樹芳)
⑫第2019-71号
市営温水プールの水泳教室における先生の評価に納得がいかないとして、苦情が申し立てられたケース。当該水泳教室は温水プールの指定管理者の独自事業で「市の業務」に該当しないとして、「苦情について調査しない旨」が通知され、調査は終了している。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)