2019/08/26

2019 年7月に調査を終了したケース

2019年8月1日、同年7月に札幌市オンブズマンによる調査が終了した案件の調査結果等について公文書公開請求を行ったところ、8月15日に一部公開決定がなされた。 

上記の期間(2019年7月)に調査を終了したのは12件で、このうち8件で調査結果が通知されている。また、残る4件のうち2件は申立人による苦情申し立ての取り下げ、2件は申立人に調査しない旨が通知され、調査が終了している。


このうち、(オンブズマン判断の妥当性が疑わしいという意味で)興味深いのが、第2019-34号である。この案件は、札幌市役所に臨時職員として勤務していた申立人が、アルバイトに応募した際の書類を見た職員から連絡がきたことを契機に申し立てられた苦情である。担当オンブズマンは、連絡をした職員の行為は、「市の機関の業務の執行に関する」ものではないとして、調査を行わない旨を決定した。

しかしながら、札幌市個人情報保護条例は、「個人情報取扱事務の目的に照らし保有する必要がなくなった個人情報については、確実に、かつ、速やかに廃棄し、又は消去すること」を規定するとともに(同条例11条1項3号)、「実施機関の職員(…中略…)又は職員であった者は、その事務に関して知り得た個人情報の内容をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。」と定めている(同条例11条2項)。

当ブログ開設者としては、アルバイトに応募するために提出した書類を見た職員が私的にその情報を利用することは、札幌市個人情報保護条例が禁ずる「不当な目的」による使用に他ならず、「個人情報の適正管理」という、まさに「市の機関の業務の執行」に不備があった事例であると考えている。

また、オンブズマンは、申立人に対し、札幌市が設ける「ハラスメント」の相談窓口を紹介しているが、市職員が申立人に連絡したことが、オンブズマンのいうように「市の機関の業務の執行」でないならば、当該相談窓口が想定する「ハラスメント」に該当するかの否かも疑問である。すなわち、市職員の業務外の行為も、当該窓口の相談対象となるのか、ということである(ただし、申立人が相談窓口で話を聞いてもらうことにより、一定の効用が得られる可能性はあるかもしれない)

したがって、申立人の苦情が個人情報を記載した書類の廃棄を求める内容であることからすると、オンブズマンはむしろ、札幌市個人情報保護条例が規定する「利用停止請求権」(同条例33条1項)を紹介すべきであったと思われる。

もっとも、この「利用停止請求権」を行使するとしても、まずは個人情報の開示決定を受ける必要がある。そのため、あえてこうした迂遠な手続きを利用することなく、オンブズマンに苦情を申し立てることには十分な理由がある。それにもかかわらず、オンブズマンがこの案件の調査を実施しないのでは、「市民の権利利益を擁護する」(札幌市オンブズマン条例1条)制度が泣こうというものである。


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①第2019-11号
 自宅周辺部の除雪方法及びその後の職員の一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

②第2019-19号
 生活保護の受給している申立人から、保護費の支給を求めて苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)

③第2019−20号
 国民健康保険の被保険者証が郵送されてこないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)



④第2019−23号
 児童クラブの利用料の口座引き落とし手続きを完了しているにもかかわらず、当該利用料の督促状が届いたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)




⑤第2019−24号
 生活保護を受給している申立人から、転居の関連する費用のうち現住居から退去する費用についても保護費を支給してほしいとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)




⑥第2019−25号
 入居しているグループホームから満足のいくサービスを受けられないでいると市に訴えているにもかかわらず、市の対応が不十分で何ら改善が図られないとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:杉岡直人)


⑦第2019−27号
 生活保護を受給している申立人から、担当ケースワーカーによる公的年金に関する説明をはじめとする一連の対応について、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑧第2019−28号
 建築計画概要書と異なる建物が建っていることに対する市の担当課の対応について、苦情が申し立てられたケース。オンブズマンが既に調査を行った内容と重複する苦情であるとして、申立人に調査を実施しない旨が通知された。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑨第2019−29号
 市営住宅の居住者と同居していたと主張する申立人が、同住宅の共同物置に保管されていた申立人の荷物が何の断りもなく市の倉庫に移動されたのみならず、荷物の量も減っていたとして、苦情が申し立てられたケース。(担当オンブズマン:房川樹芳)

⑩第2019-31号
 突然に生活保護が打ち切られたとして、苦情が申し立てられたケース。申立人による苦情の取り下げにより、調査を終了している。(担当オンブズマン:杉岡直人)

⑪第2019−34号
 臨時職員として勤務していた札幌市の職員から電話がきたが、アルバイトに応募した際の書類から電話番号を知ったということだったとして、個人情報の管理の徹底を求めて苦情が申し立てられたケース。申立人に対しては、調査を実施しない旨が通知された。
(担当オンブズマン:八木橋眞規子)

⑫第2019−35号
 電話を受けた保護課の職員が、勝手に電話を担当ケースワーカーに転送したとして、苦情が申し立てられたケース。申立人による苦情の取り下げにより、調査を終了している。(担当オンブズマン:杉岡直人)